問1 ★
, のとき、 と を求めなさい。
答えを見る答えを閉じる
,
和・差・実数倍は成分ごとに計算します。
積は「左は横、右は縦」です。 の 成分なら、 の第 1 行 と の第 1 列 の内積をとります。
- 成分:
- 成分:
- 成分:
- 成分:
ちなみに で、 とは一致しません。行列の積では交換法則が成り立たないので、問われた順序どおりに掛けます。
目次 / 数検対策(準2級・2級・準1級) / 数検準1級
—— 行列と一次変換 第1〜9章を、数検準1級の出題形式で ——
数検準1級の「行列と一次変換」の類題です。行列の計算・逆行列・行列式・連立一次方程式・ケーリー・ハミルトンの定理と $A^n$・一次変換の像と原像・回転と拡大・合成変換と逆変換・図形の像までを20問にまとめました。行列は現行課程の教科書にはありませんが(旧数学C)、数検準1級の出題範囲なので、この分野の第1〜9章の道具だけで解ける形にしてあります。2次(数理技能)では、逆行列をかけるときに「左からか右からか」を書き分けること、$\Delta = 0$ の場合を落とさないことが部分点の分かれ目です。問6では加法定理(三角比と三角関数 第9章)、問9と問19では無限等比級数と数列の極限(微分積分 第10章)、問14では複素数平面(複素数平面と二次曲線 第1〜2章)、問16では合成関数(いろいろな関数 第6章)、問20では数学的帰納法(数列 第8章)も使います。
この章は「 を見る」「どちら側からかけるかを書く」の2つに尽きます。 は逆行列の有無・解の個数・面積の倍率をまとめて教えてくれる数で、掛ける側の指定は行列ならではの作法です。
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=難問です。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
, のとき、 と を求めなさい。
,
和・差・実数倍は成分ごとに計算します。
積は「左は横、右は縦」です。 の 成分なら、 の第 1 行 と の第 1 列 の内積をとります。
ちなみに で、 とは一致しません。行列の積では交換法則が成り立たないので、問われた順序どおりに掛けます。
問2 ★
, のとき、 をみたす行列 を求めなさい。
なので は正則で
の両辺に右から をかけると 、つまり です。
()と混同しないでください。左からかけるか右からかけるかで答えが変わります。確かめ: です。
問3 ★
連立方程式 の解を、係数行列の逆行列を使って求めなさい。
とすると、連立方程式は と 1 本に書けます。 なので
両辺に左から をかけて
クラメルの公式でも同じです。, を で割ります。
問4 ★
について、ケーリー・ハミルトンの定理を使って を と で表しなさい。
(成分では )
対角和は 、 なので、ケーリー・ハミルトンの定理より
なので が存在します。両辺に をかけると なので
成分で書くと となり、逆行列の公式 と一致します。
問5 ★
行列 で表される一次変換を とする。点 の像と、 によって点 に移る点を求めなさい。
像は ,移る前の点(原像)は
像は行列を左からかけるだけです。
原像は逆にたどります。 なので
確かめ: です。 なので原像はただ 1 つに決まります。
問6 ★
原点のまわりに だけ回転する一次変換を表す行列を とする。 であることを使って、 と の値を求めなさい。
,
左辺を成分で計算します。
成分は 、 成分は です。
右辺は なので、成分を比べて
「 回してから 回せば 回したことになる」という当たり前の事実が、そのまま加法定理になっています。
問7 ★
2次の正方行列 , が , をみたすとき、,, を求めなさい。
,,
2次の正方行列では、実数倍は行と列の両方にきくので です。
を繰り返して
( の行列式をとると )なので
としないよう注意してください。成分が 4 つとも 2 倍になるので、 は 倍です。
問8 ★
のとき、自然数 に対して を求めなさい。
まず何乗かして規則を予想します。
右上は 、右下は 。右上は右下より だけ小さいので、 と予想できます。
数学的帰納法で示します。 のときは で成り立ちます。 で成り立つとすると
となり でも成り立ちます。よって
(証明終)
問9 ★★
ある地域には動画サービス A と B の 2 つだけがあり、住民は必ずどちらか一方を使っている。毎月はじめに、A の利用者の が B に移り、B の利用者の が A に移る。 か月後に A を使っている人の割合を 、B を使っている人の割合を とする()。はじめは全員が A を使っていたとして、次の (1),(2) を求めなさい。
(1) となる行列 と、 を の式で表したもの
(2)
上の (1),(2) を求めなさい。
(1) , (2)
(1) A に残るのは A の利用者の 、B から移ってくるのは B の利用者の なので
を代入して 1 文字にします。
をみたす は なので、両辺から を引くと
より なので
( の対角和は 、 なので、 が背負う 2 次方程式は 、その解 と が上の「落ち着き先」と「公比」の正体です。 に 2 解を代入して解いても同じ式が出ます。)
(2) なので
最初の割合が何であっても に近づきます。確かめ: で、1 か月後に A が という条件に合っています。
問10 ★★
一次変換 が行列 で表されている。 によって次の (1),(2) がどのような曲線に移るか、その方程式を求めなさい。
(1) 双曲線
(2) 円
上の (1),(2) の像の方程式を求めなさい。
(1) 双曲線 (2) 円
点 の像を とすると
なので、 は平面全体を平面全体にうつし、曲線の像も曲線全体になります。
(1) 積をとると和と差の積の形が現れます。
よって像は です(座標軸を漸近線とする直角双曲線)。
(2) 平方の和をとります。
よって像は 、原点を中心とする半径 の円です。
半径 の円(面積 )が半径 の円(面積 )に移っており、面積はちょうど 倍です。確かめ:点 の像は で、たしかに 上にあります。
問11 ★★
とする。自然数 に対して (, は実数)と表せることを用いて、次の (1),(2) を求めなさい。
(1) , を , で表した式
(2)
上の (1),(2) を求めなさい。
(1) , (2)
対角和は 、 なので、ケーリー・ハミルトンの定理より
( は判別式が で実数解をもたないので、2 解を代入する方法は使えません。そこで漸化式を立てます。)
(1) の両辺に左から をかけ、 で次数を下げます。
と は 1 次独立( は の形ではない)なので、係数を比べて
(2) より 。順に計算します。
確かめ: なので で一致します。
問12 ★★
銅と亜鉛だけからできた合金が 2 種類ある。合金 X は重さの が銅で が亜鉛、合金 Y は重さの が銅で が亜鉛である。この 2 種類をとかして混ぜ、新しい合金を作る。次の (1),(2) を求めなさい。
(1) 銅 g、亜鉛 g からなる合金を作るときに使う X,Y の重さ
(2) 銅 g、亜鉛 g(,)からなる合金が作れるための , の条件(X,Y の一方だけを使う場合も含める)
上の (1),(2) を求めなさい。
(1) X を g、Y を g (2)
X を g、Y を g 使うとすると、銅と亜鉛の重さについて
なので、, はただ 1 組に決まります。
(1) , を代入します。
確かめ:銅は g、亜鉛は g です。
(2) 一般の , では
実際に作れるのは かつ のときだけです(負の重さは使えません)。
等号は、X だけを使うとき()と Y だけを使うとき()にあたります。連立方程式が解けても、解が問題の条件に合うかを最後に吟味するのが文章題の作法です。
問13 ★★
2次の正方行列 , について、 は一般には成り立たない。このことを具体例で示し、さらに で ( は実数)であるとき、この等式が成り立つような をすべて求めなさい。
例: のとき左辺 、右辺 で一致しない。
反例 とすると なので
両者は一致しません。よって等式は一般には成り立ちません。(実数倍が と 2 乗できくことが、成り立たない理由そのものです。)
のとき なので
一方
なので、両辺を で割って
つまり のときだけです(このとき両辺とも )。(証明終)
問14 ★★
とする。 を (,, は原点のまわりの 回転を表す行列)の形に表し、 を求めなさい。また、その結果が複素数 の値と対応していることを確かめなさい。
,。 で、実数 に対応する行列が
の形なので、 でくくります。
の形の行列(原点中心の 倍の拡大)はどんな行列とも交換可能なので、 乗はそのまま分けられます。
( は、回転を 回続けることが 回転になるということです。)
複素数との対応 複素数 に行列 を対応させると、和も積も対応が保たれます。 に対応するのは で、ド・モアブルの定理より
実数 に対応する行列は で、 と一致します。回転を表す行列と複素数の積は、同じことを別の言葉で書いたものです。
問15 ★★
,, のとき、 をみたす行列 を求めなさい。
, なので、, はともに正則です。
の両辺に、左から 、右から をかけます。 と は をはさんで両側にいるので、片側ずつ外す必要があります。
左から順に計算します。
確かめ:、 です。 を右からかけたり を左からかけたりすると、 を取り出せません。
問16 ★★
とし、 を 回合成した関数を とする。一次分数関数 の合成は、係数を並べた行列 の積に対応することが知られている。 として を求め、 を の式で表しなさい。
,
対角和は 、 なので、 が背負う 2 次方程式は
解が相異なる 2 つ なので、 とおいて 2 解を代入する方法が使えます( の左辺は、 を に置きかえた多項式 が で割り切れることと同じなので、 を代入できます)。
なので
この成分を一次分数関数の係数に戻します。分母・分子を で割ると(一次分数関数は係数を同じ数で割っても同じ関数です)
確かめ: で に戻ります。 なら で、これは を直接計算した結果と一致します。 では係数の比が に近づき、( のとき)です。
問17 ★★★
をみたす 2 次の実正方行列 をすべて求めなさい。
, の 4 つ
成分を 文字とおくと 4 次の連立になって手に負えません。ケーリー・ハミルトンの定理を使うと、 が の 1 次式で書けることを逆に利用できます。
の対角和を 、 とおくと
を求める の前に、行列式をとります。 なので
を求める の両辺の対角和をとります。 の対角和は 、 の対角和は なので
になりえないことの確認 もし なら は となり、 は対角成分が等しく他が の行列になります。 はその形ではないので不適です(上で得た はすべて でないので、矛盾はありません)。
を求める なので から
逆の確認 上の 4 つは「 が存在すればこの形」という必要条件から出したので、実際に 2 乗して確かめます。、。符号を変えたものも 2 乗すれば同じです。また、それぞれ対角和と行列式が想定どおり( と )であることも確かめられます。
数の世界で が 2 つなのに対し、行列の「平方根」は 4 つありました。
問18 ★★★
2 次の正方行列 が逆行列をもち、 をみたすとき、 と を求めなさい。
,
与えられた式の両辺に左から をかけます( を使うため)。
の両辺に をかけ、もう一度 で次数を下げます。
ここから周期が見えます。
つまり 乗すると単位行列に戻ります。 を で割ると
なので
補足: とケーリー・ハミルトンの定理 を見比べると、対角和が 、 です。 で対角和が 、つまり は 回転を表す行列(と同じはたらきをする行列)です。 回で一周するので 、 回で半回転なので というわけです。
問19 ★★★
一次変換 が行列 で表されている。点 から始めて、()で点列 を定める。折れ線の長さの総和 を求めなさい。
を の形に直します。 なので
つまり は「原点のまわりに 回して、原点からの距離を にする」変換です。よって
が直角なので、三平方の定理から
でくくると
これは初項 、公比 の等比数列です。 なので無限等比級数は収束して
点列は原点にうず巻きながら近づきます。1 周ぶん( から まで)の長さは で、すでに総和 の 割を超えています。無限に折れ曲がっても長さは有限です。
問20 ★★★
とする。次の (1),(2) を示し、(3) を求めなさい。
(1) すべての自然数 に対して、 となる自然数 , が存在すること
(2) その , が をみたすこと
(3) と の値
上の (1),(2) を示し、(3) を求めなさい。
(1)(2) は解説のとおり(,)。(3) ,
(1) 数学的帰納法で示します。
のとき、, とすれば となり成り立ちます。
のとき (, は自然数)と書けるとすると
ここで
とおくと、右上は 、左下は 、右下は となり、 も同じ形になります。, が自然数なら , も自然数です。よってすべての自然数 で成り立ちます。(証明終)
(2) です。 なので
一方、(1) の形から
よって
(証明終) 行列を 1 回かけるたびに、 をみたす自然数の組が次々と作れることになります。
(3) (1) の漸化式で順に計算します。
確かめ: です。 は のとても良い近似になっています。 のような方程式はペル方程式と呼ばれ、 の整数行列のべき乗が解を量産してくれます。
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