問1
一次変換 を表す行列が のとき、 による点 の像を求めなさい。
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より
目次 / 行列と一次変換 / 旧数学C(課程外)
—— 行列を「点を動かす操作」として読み直す ——
第 2 章で、行列 $A$ に点 $(x,\ y)$ の列ベクトルをかける計算をして、その結果を「$A$ による点 $(x,\ y)$ の**像**」と呼びました。ここまでの 5 章では、行列は主に**計算の対象**でした。この章から立場が変わります。行列を**平面上の点を動かす操作**として見るのです。この見方を**一次変換**といい、動かす規則そのものを $f$ という記号で表します。柱になる事実は 1 つだけです。**行列の 2 つの列は、基本ベクトルの行き先そのもの**。つまり「東へ 1 歩」と「北へ 1 歩」がどこに着くかさえ分かれば、平面のどの点の行き先も計算できてしまいます。第 7 章から先の回転・対称移動・合成変換は、すべてこの土台の上に立ちます。
第 2 章で、行列に列ベクトルをかける計算をしました。
出てきた結果を「 による点 の像」と呼びました。あのときは計算練習のつもりでしたが、よく見ると、この式は , の組に別の組を対応させています。点を点に対応させる規則、つまり平面上の点を動かす操作です。この操作そのものに名前と記号を与えるのが、この章の出発点です。
,,, を定数とする。平面上の点 に、
で定まる点 を対応させる規則を一次変換といい、 などの文字で表す。この対応は行列を使えば
と 1 本に書ける。この を、 を表す行列という。
点 が移った先の点を と書き、 の像という。ベクトルで書くときは に対して である。
「一次」というのは、 と が , の 1 次式(定数項なし)になっている、という意味です。中学で習った比例 の、平面版だと思ってよいでしょう。比例が「 を 倍に伸ばす」だったのに対し、こちらは「平面全体を引き伸ばしたりねじったりする」ことになります。
方眼紙をゴムのシートだと思ってください。原点に画びょうを刺して留めたまま、シートの端をつかんで引っぱる。ゴムなので伸びたり斜めに傾いたりしますが、破れたり折れ曲がったりはしません。方眼のマス目は、引っぱられたあとも平行四辺形のマス目のままです。一次変換とは、この「原点を留めたまま、ゴムシートをまっすぐ引っぱる」操作にあたります。行列の 4 つの成分が、どちらの向きにどれだけ引っぱるかを決めているのです。
, がどちらも , の 1 次式で書ける点の移し方を一次変換といい、その規則は 行列 1 つに丸ごと詰め込めるということです。
一次変換 が
で与えられている。次の問いに答えなさい。
(1) を表す行列 を求めなさい。
(2) による点 の像を求めなさい。
(3) による点 の像を求めなさい。
【解答】
(1) の係数を第 1 列、 の係数を第 2 列に並べます。 の式が第 1 行、 の式が第 2 行です。
(2) 点を列ベクトルにして、左から をかけます。
(3) 同じように計算します。
連立の形と行列の形は、同じ規則の書き方の違いです。(1) の逆向き、つまり行列から連立の形に戻す作業もできるようにしておきます。
一次変換には、定義からすぐ出てくる大事な性質があります。
一次変換 について
である。実際、 となる。
したがって、原点を動かしてしまう移し方は一次変換ではない。たとえば平行移動
は一次変換ではない。
ゴムシートの例えで言えば、原点に刺した画びょうです。どれだけ引っぱっても、留めてある 1 点だけは動きません。
平行移動が仲間に入れないのは、意外に思えるかもしれません。図形の移動といえば、平行移動・回転・対称移動がひと組で語られてきたからです。しかし一次変換の式には定数項を置く場所がありません。 に を足した式は、1 次式ではなく「1 次式 定数」になってしまいます。無理に仲間に入れるにはひと工夫が必要で、その工夫は小話で紹介します。
判定のときは、順番に 2 つ見ます。原点が動いていないか、そして , が , の 1 次式になっているか。どちらかが崩れていれば一次変換ではありません。
一次変換は原点を必ず原点に移すので、平行移動のように原点がずれる移し方や、2 次以上の式が混じる移し方は一次変換ではないということです。
次の (1)〜(3) の対応が一次変換であるかどうかを、理由をつけて確かめなさい。
(1) 点 を点 に移す対応
(2) 点 を点 に移す対応
(3) 点 を点 に移す対応
【解答】
(1) , で、どちらも定数項のない 1 次式です。よって一次変換である。表す行列は
の式に が出てこないので、第 2 行第 2 列に を書き忘れないようにします。
(2) には定数項 があります。原点 の行き先を見ると で、原点が動いています。公式2 より一次変換ではない。
(3) 原点は に移りますが、 は 1 次式ではありません。よって一次変換ではない。
たとえば点 は に移り、点 は に移ります。もとの点を 倍にしたのに、像は 倍ではなく 倍になってしまいました。この「倍にしてから移す」と「移してから倍にする」がずれるところが、1 次式でないことの正体です。次の節で、一次変換ならこのずれが起きないことを確かめます。
一次変換のいちばん役に立つ性質は、足し算と実数倍を素通りさせることです。
一次変換 と、任意のベクトル ,、任意の実数 , について
が成り立つ。この 2 つをまとめて
と書ける。この性質を の線形性という。
証明は、行列の計算法則を並べるだけです。 でしたから、
は第 2 章の分配法則そのもの、
は実数倍と積の交換(第 1 章・第 2 章)そのものです。第 2 章で証明した地味な法則が、ここで「操作としての行列」の性質に化けました。
身近な言い方をすると、別々に運んでから合わせても、合わせてから運んでも同じということです。荷物 と荷物 を同じトラックで運ぶとき、1 個ずつ運んで着いた先で並べても、まとめて積んで運んでも、着く場所は変わりません。そして荷物を 3 倍に増やせば、届く量も 3 倍になります。当たり前に思えますが、例題2 (3) のように 2 乗が入ると、この当たり前が崩れるのでした。
たとえば 、、 で確かめてみます。, で、和のほうは の像が 。たしかに と一致します。図にすると、平行四辺形が平行四辺形のまま移っていることが見えます。
ゴムシートの例えで「マス目は平行四辺形のマス目のまま」と言ったのは、この図のことです。線形性は、方眼が方眼として保たれることの式による表現だといえます。
一次変換では「足してから移す」と「移してから足す」が一致し、実数倍も同じように素通りするので、 と さえ分かれば , の 1 次結合の像は行列を知らなくても計算できるということです。
一次変換 について , であることが分かっている。次のベクトルの像を求めなさい。
(1)
(2)
【解答】
, そのものが何であるかも、 を表す行列も与えられていません。それでも公式3 だけで答えが出ます。
(1)
(2) 引き算は 倍の足し算だと思えば、係数をそのまま外に出せます。
「係数を の外へ出す」という一手だけで済みました。この身軽さが線形性のありがたみです。
ここがこの章の柱です。 に基本ベクトル をかけてみます。
出てきたのは の第 1 列です。同じく をかけると
で、第 2 列が出てきます。偶然ではなく、 をかけるとは「第 1 列だけを 倍、第 2 列を 倍して足す」ことだからです。
一次変換 を表す行列 について
すなわち、 の第 1 列は 、第 2 列は である。
逆に、 と が分かれば を表す行列が決まり、任意の点の像は
で計算できる。
後半の式は、線形性と成分表示を組み合わせただけです。ベクトルの第 2 章で、どんなベクトルも と書けました。ここに公式3 を使うと
となります。
で図にしてみます。, ですから、, が作っていた 1 辺 の正方形は、この 2 本が作る平行四辺形に移ります。
道案内にたとえると、こういうことです。知らない町で「東へ 1 歩進んだらどこに着くか」と「北へ 1 歩進んだらどこに着くか」の 2 つだけを教えてもらう。それだけで、「東へ 3 歩、北へ 2 歩」の行き先は自分で計算できます。(東 1 歩の行き先)(北 1 歩の行き先)です。平面には無限に点があるのに、たった 2 点の行き先を決めれば全部決まってしまう。これが一次変換の情報量の少なさであり、 の行列 1 つで書ける理由でもあります。
第 5 章の厳密定義で「 が伸ばす 2 方向に合わせて方眼紙の目盛りを引き直す」という話をしました。あのときの「方眼紙の目盛り」が、いま言っている 2 本の基本ベクトルにあたります。
行列の 2 つの列は基本ベクトルの行き先そのものなので、, の像を横に並べて書けば を表す行列がすぐ手に入るということです。
一次変換 が , をみたしている。次の問いに答えなさい。
(1) を表す行列 を求めなさい。
(2) による点 の像を求めなさい。
(3) による点 の像を求めなさい。
【解答】
(1) 2 つの像を、順に第 1 列・第 2 列として横に並べます。
(2) なので、像は 2 つの像の和です。
(3) 係数が と になるだけです。
もちろん (1) で求めた を直接かけても同じです。上の図(fig02)は、この による正方形の移り方を描いたものです。(2) の答え が平行四辺形の向かいの頂点になっています。
公式4 は「, の像が分かれば行列が決まる」という話でした。では、基本ベクトルでない 2 点の像が分かっている場合はどうでしょうか。
1次独立な 2 つのベクトル ,(平行でない 2 本)について , が分かっているとする。, を横に並べた行列を 、像を並べた行列を とすると
, が1次独立であることが、 が正則()であること、つまり が存在することにあたる(第 3 章)。
が成り立つのは、第 2 章 j06 で見たしくみです。列ベクトルを横に並べて 1 つの行列にしておけば、 をかけるだけで 2 点の像が同時に出てきます。そこを逆向きに使って を取り出すのが公式5 です。
を右からかける点に注意してください。 の両辺に右から をかけて 、つまり です。行列は交換できないので(第 2 章)、うっかり と書くと別物になってしまいます。
平行でない 2 点の行き先が分かれば一次変換はただ 1 つに決まり、像を並べた行列に、もとの点を並べた行列の逆行列を右からかければ求められるということです。
一次変換 が点 を点 に移し、点 を点 に移すとき、 を表す行列 を求めなさい。
【解答】
もとの 2 点を並べた行列と、像を並べた行列を作ります。
の行列式は なので、 は正則です(2 点 , は原点と同一直線上にない、ということでもあります)。
を計算します。
検算します。,。どちらも条件どおりです。
とおいて 4 つの文字の連立方程式を解く手もあります。,,, の 4 本で、 の 2 本と の 2 本に分かれるので解けます。答えは同じですが、公式5 なら逆行列 1 回で済みます。
これまでは「点を与えて像を求める」向きでした。逆に、移った先を与えて、もとの点をさがすこともできます。
一次変換 によって点 に移る点を、 の原像という。 を表す行列を 、 とすると、原像 は
をみたす。これは連立一次方程式なので(第 4 章)、
「像を求める」が をかける計算だったのに対し、「原像を求める」は で移した結果から出発して、もとを解く計算です。足跡を見つけて、その人がどこに立っていたかを割り出すようなものです。 なら足跡と立ち位置が 1 対 1 に対応しますが、 だと事情が変わります。
のときの 2 つの場合は、第 4 章でもう見ています。連立一次方程式の解が「無数」か「なし」に分かれるのと、まったく同じ現象です。行列の側から言えば、 の一次変換は平面全体を 1 本の直線(または原点だけ)に押しつぶしてしまいます。押しつぶされた直線の上の点には原像がぞろぞろあり、直線から外れた点には原像が 1 つもない、というわけです。第 3 章で「立体を壁に映した影」の例えを使いましたが、あの影の中の 1 点には、もとの立体の何点もが重なって映っています。つぶれた一次変換の像を詳しく調べるのは第 9 章です。
原像を求めることは連立一次方程式 を解くことで、 なら をかけて一発、 なら解が無数かないかの場合分けになるということです。
が表す一次変換 によって点 に移る点を求めなさい。
【解答】
なので、 は正則です。
求める点 は です。
検算すると です。原像を求めたら像に戻して確かめる、を習慣にしておくと符号のミスに気づけます。
が表す一次変換 について、次の問いに答えなさい。
(1) 点 に移る点をすべて求めなさい。
(2) 点 に移る点があるかどうかを確かめなさい。
【解答】
なので、 は使えません。連立方程式として解きます。
(1) を求める点とすると
上の式を で割ると 、下の式に をかけても 。2 本が同じ式なので、条件は の 1 本だけです。( は実数)とおくと なので
つまり直線 の上のすべての点が、点 に移ります。
(2) 同じように立てます。
下の式を 倍すると です。上の式は なので、 となって矛盾します。よって原像は存在しない。
種明かしをすると、この による像は必ず直線 の上に乗ります。実際 とおくと像は の形になり、 をみたします。平面全体がこの 1 本の直線につぶれてしまうので、直線上の点 には原像が無数にあり、直線の外の点 には 1 つもない、ということです。 の一次変換がどんな図形を作るかは、第 9 章でくわしく調べます。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
一次変換 を表す行列が のとき、 による点 の像を求めなさい。
より
問2
一次変換 が で与えられているとき、 を表す行列を求めなさい。
( の係数が第 1 列、 の係数が第 2 列)
問3
一次変換 が , をみたすとき、 を表す行列を求めなさい。
像を横に並べるだけです。
問4
一次変換 について , のとき、 を求めなさい。
問5
が表す一次変換によって点 に移る点を求めなさい。
, より
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
が表す一次変換 による、(1) 点 、(2) 点 の像をそれぞれ求めなさい。
(1) 点 (2) 点
点を列ベクトルにして、左から をかけます。
(1)
(2)
(1) は 軸上の点に、(2) は 軸上の点に移りました。どちらもたまたまですが、 なので、この で平面がつぶれているわけではありません。
問2 ★
(1) 一次変換 を表す行列を求めなさい。(2) が表す一次変換を、, の連立の形で表しなさい。
(1) (2)
(1) の式が第 1 行、 の式が第 2 行です。 の係数を第 1 列、 の係数を第 2 列に置きます。
(2) 逆向きの読みかえです。
第 1 行第 2 列が なので の式に が現れません。逆に、連立の形から行列を作るときは、現れない文字の係数を として書き忘れないことが大事です。
問3 ★
一次変換 が , をみたす。(1) を表す行列 (2) による点 の像 をそれぞれ求めなさい。
(1) (2) 点
(1) 公式4 より、 が第 1 列、 が第 2 列です。
(2) なので、像も同じ係数の 1 次結合になります。
(1) の を直接かけても同じです。。式の見た目はそっくりで、じつは同じ計算をしています。
問4 ★
一次変換 について , が分かっている。 を表す行列を求めずに、(1) (2) をそれぞれ求めなさい。
(1) (2)
公式3(線形性)で、係数をそのまま の外へ出します。
(1)
(2)
, の成分も も与えられていないのに答えが出ます。線形性さえあれば、中身を知らなくても 1 次結合の像は計算できるということです。
問5 ★
が表す一次変換 によって点 に移る点を求めなさい。
点
なので は正則です。求める点を とすると なので、両辺に左から をかけます。
検算します。 で条件どおりです。 は 左からかけます。 の は左にいるので、それを消すには左から です。
問6 ★
平面上のすべての点を 軸方向に 、 軸方向に だけ平行移動する対応は、一次変換でないことを示しなさい。
原点 が点 に移るので、 をみたさず一次変換でない。
この対応は点 を点 に移します。
一次変換 を表す行列を とすると
なので、一次変換は原点を必ず原点に移します(公式2)。
ところがこの平行移動では、原点 の行き先は で、原点ではありません。原点が原点に移らないので、この対応は
別の示しかたもあります。行列 をどう選んでも を全部の でみたすことはできない、と言ってもよいでしょう。定数項を置く場所がないからです。平行移動を無理に行列で扱う工夫は、小話 kb2 で紹介します。
問7 ★
が表す一次変換 による、3 点 ,, の像をそれぞれ求めなさい。
は 、 は点 、 は点 に移る。
原点は公式2 よりそのまま原点です。残りの 2 点を計算します。
2 点の像は、, を横に並べた行列に をかけて一度に出すこともできます(第 2 章 j06)。
おまけに面積を見ておきます。三角形 の面積は 、像の三角形の面積は で、ちょうど 倍です。この は 。第 3 章の小話で予告した「面積は 倍」が顔を出しています。証明は第 9 章です。
問8 ★
次の 3 つの対応
(1) 点 を点 に移す対応
(2) 点 を点 に移す対応
(3) 点 を点 に移す対応
について、一次変換であるかどうかを理由をつけて確かめなさい。
(1) 一次変換である() (2) 一次変換でない(原点が に移る) (3) 一次変換でない( は 1 次式でない)
見るところは 2 つです。原点が動いていないかと、, が , の 1 次式(定数項なし)か。
(1) , はどちらも定数項のない 1 次式です。よって一次変換である。
(2) 原点 の行き先は で、原点ではありません。よって一次変換ではない(平行移動です)。
(3) 原点は原点に移りますが、 は 1 次式ではありません。よって一次変換ではない。
(3) は線形性が崩れることでも確かめられます。 の像は 、 の像は です。線形性が成り立つなら後者は前者の 倍、つまり でなければなりません。一致しないので一次変換ではありません。
問9 ★★
一次変換 が点 を点 に、点 を点 に移すとき、 を表す行列 を求めなさい。
もとの 2 点を並べた行列 と、像を並べた行列 を作ります。
の行列式は なので は正則で、2 点は原点と同一直線上にありません。
公式5 より です。
検算します。、。どちらも合っています。 を右からかけることを忘れないでください。
問10 ★★
一次変換 が , をみたすとき、 を表す行列を求めずに を求めなさい。
を、像の分かっている 2 本の 1 次結合で表すのが方針です。
とおくと
上の式から 。下の式に代入して 、つまり なので 、 です。
あとは線形性(公式3)で係数を外に出します。
公式5 で を求めても構いません。 となり、 で一致します。ただし 1 点の像だけ聞かれているなら、, を出すほうが計算量は少なくて済みます。
問11 ★★
が表す一次変換 について、(1) 点 に移る点をすべて求め、(2) 点 に移る点があるかどうかを確かめなさい。
(1) 直線 上のすべての点、すなわち点 ( は任意の実数) (2) 存在しない
なので は使えません。連立方程式として解きます(公式6)。
(1)
上の式を で割ると下の式と同じになります。条件は の 1 本だけなので、解は無数にあります。 とおくと なので
ただし は任意の実数です。これは直線 上の点全部です。
(2)
下の式を 倍すると ですが、上の式は です。 となって矛盾するので、点 に移る点は
第 4 章で見た「 なら解なしか無数」の 2 つの場合が、そのまま原像の 2 つの場合になっています。ちなみに なので、この による像は必ず直線 の上に乗ります。点 はこの直線上にあり、点 は外にあります。
問12 ★★
一次変換 を表す行列が であり、 が点 を点 に移すとき、, の値を定めなさい。
,
像の条件を成分ごとに書き下します。
2 つのベクトルが等しいのは成分がそれぞれ等しいときなので(第 1 章)
このとき で、 です。未知の成分が 2 つで、条件式も 2 本なので決まりました。未知が 4 つあるときは、1 点の像だけでは足りず 2 点必要になります(公式5)。
問13 ★★
が表す一次変換 によって、直線 上の点が移る先の図形を求めなさい。
軸(直線 )全体
直線 上の点は、媒介変数 を使って と表せます。この点の像を求めます。
よって像は です。 が実数全体を動くと も実数全体を動くので、像がえがく図形は
なので、この は平面をつぶしていません。それでも「特定の 1 本の直線」が別の 1 本の直線に移ることは起こります。像が 軸ぴったりになるのは、 が のとき になるからです。
直線が直線に移る、という現象そのものは一次変換に共通の性質です。第 9 章でその理由をきちんと扱います。
問14 ★★
が表す一次変換 について、 をみたす でないベクトル をすべて求めなさい。
( は でない実数)
なので、条件は です。右辺を と書き直して移項します。
をそのまま移項して「」と書いてはいけません。行列と数は引けないので、単位行列を使って の姿にします(第 2 章)。
これは同次連立一次方程式です(第 4 章)。
2 本が同じ式で、行列式も なので、自明でない解( 以外の解)があります。 なので とおいて
検算します。 で条件どおりです。
意味を見ておきます。直線 の上の点は、 で移しても向きが変わらず、原点からの距離がちょうど 倍になるだけです。ゴムシートを引っぱったとき、この向きだけはまっすぐ 倍に伸びる、というわけです。 以外の倍率でこうなる向きがあるかどうかは j17 で調べます。
問15 ★★
一次変換 を表す行列を とする。任意のベクトル , と任意の実数 , に対して が成り立つことを示しなさい。
と、行列の分配法則および実数倍の性質(第 1 章・第 2 章)から従う。
示すべきことは、行列の言葉に直せば です。使う道具は 2 つだけです。
証明 を表す行列を とすると、定義より任意のベクトル について である。よって
分配法則より
実数倍と積の関係より
よって示された。(証明終)
とすれば 、 とすれば が出るので、公式3 の 2 本はこの 1 本に含まれています。
なお、この主張の逆(線形性をみたす対応は必ず一次変換である)も成り立ちます。そちらは j20 で示します。
問16 ★★
次の 2 つの対応
(1) 点 を点 に移す対応
(2) 点 を点 に移す対応
について、一次変換であるかどうかを理由をつけて確かめなさい。
(1) 一次変換でない(絶対値があり線形性が崩れる) (2) 一次変換である(。 でもよい)
(1) 原点は原点に移りますが、 は 1 次式ではありません。絶対値がついているので、負になるはずのところが符号を変えてしまいます。
反例で線形性の崩れを見せると確実です。 の像は です。いっぽう の像は です。線形性が成り立つなら後者は前者の 倍、つまり でなければなりません。一致しないので
(2) , で、どちらも定数項のない 1 次式です。よって
表す行列は です。ここが落とし穴です。 なので、この は平面全体を 軸につぶしてしまいます。逆行列もありません。それでも一次変換ではあるのです。一次変換の定義に「」という条件は入っていません。
が必要になるのは、原像がただ 1 つに決まってほしいとき(公式6)や、逆変換を作りたいとき(第 8 章)です。定義と、その先で効いてくる条件を区別しておきましょう。
問17 ★★★
が表す一次変換 について、 をみたす でないベクトル が存在するような実数 をすべて求め、それぞれに対する を定めなさい。
のとき 、 のとき (どちらも )
j14 と同じ形ですが、 も未知です。条件を移項します。
これは についての同次連立一次方程式です。第 4 章で見たように、同次連立が 以外の解(自明でない解)をもつ条件は、係数行列の行列式が になることです。
展開して整理します。
それぞれについて を求めます。
のとき
とおくと なので 。検算すると です。
のとき
なので 。検算すると です。
ここで出てきた の 2 次方程式 を見てください。 の対角和は 、行列式は 。第 5 章でこの行列が背負っていた 2 次方程式そのものです。 は「 が引き伸ばす 2 方向の倍率」で、 はその向きを指しています。第 5 章の厳密定義ページで固有値・固有ベクトルと呼んだものの、幾何的な正体がこれです。(2 本を並べた行列)を使うと が対角行列になるのも、この 2 方向を新しい目盛りに選んだから、と読めます。
問18 ★★★
一次変換 が点 を点 に、点 を点 に移す。(1) を表す行列 を求め、(2) によって点 に移る点を求めなさい。
(1) (2) 点
(1) 公式5 を使います。
の行列式は なので正則です。
検算します。、。条件どおりです。
(2) 原像を求めます(公式6)。 なので が使えます。
検算すると です。
(2) は線形性だけでも解けます。 を像 2 本の 1 次結合 で表すと , となり、原像は です。分数が出るので、この問題では を使うほうが楽でした。
問19 ★★★
一次変換 を表す行列を とする。平面上のどの点の像も直線 上にあるとき、,,, がみたす条件を求めなさい。また、このとき となることを示しなさい。
条件は かつ 。このとき 。
点 の像は
です。これが直線 上にある、つまり が成り立つので
どの点でも成り立つ、というのが条件です。整理すると
これがすべての実数 , について成り立つには、 と の係数がどちらも でなければなりません( を入れれば 、 を入れれば が出ます)。
このとき行列式を計算します。
「係数がどちらも 」と言えるのは、, が自由に動けるからです。, に制限がある(たとえば特定の直線上だけ)場合は、この結論は出ません。j13 で なのに像が 軸に乗ったのは、動く点を直線 上に限っていたからです。
なお は、第 2 行が第 1 行の 倍という形です。逆に なら必ず平面が直線か 1 点につぶれるのかどうかは、第 9 章で扱います。
問20 ★★★
平面上のベクトルにベクトルを対応させる規則 が、任意のベクトル , と任意の実数 について
をみたすとする。このとき は一次変換である、すなわち となる行列 が存在することを示しなさい。
とおけばよい。 と 2 つの条件から が従う。
j15 の逆です。「一次変換なら線形性をもつ」は示しました。ここでは「線形性をもつなら一次変換である」を示します。 については、与えられた 2 つの等式以外に何も分かっていないところがポイントです。式が書けるとも限らないのに、行列で書けることを示すわけです。
方針は公式4 そのものです。基本ベクトルの像を横に並べて を作り、それでうまくいくことを確かめる。
証明 , の成分を
とおき、これを列に並べて
と定める。任意のベクトル は
と表せる(ベクトル 第 2 章)。仮定の 1 つめ(足し算を保つ)より
仮定の 2 つめ(実数倍を保つ)より
よって、すべての について が成り立つ。, は定数項のない 1 次式なので、 は一次変換である。(証明終)
この証明は の一意性も教えてくれます。 と書ける行列 があれば、 を入れれば第 1 列が、 を入れれば第 2 列が決まってしまいます。表す行列は 1 つしかない、ということです。
j15 と合わせると、「一次変換である」と「線形性をもつ」は同じことを言っていると分かりました。だから一次変換は、式の形()でも、性質(足し算と実数倍を保つ)でも定義できます。大学の線形代数では後者を定義に選びます。そのほうが平面に限らない広い場面で使えるからです。くわしくは厳密定義のページで。
のマスに から を 1 回ずつ入れて、縦・横・斜めのどの列の和も等しくする。これが魔方陣です。答えはこれです。
和はすべて 。ここで意外な事実があります。 の魔方陣は、回転と裏返しを同じものとみなせば、これ 1 つしかありません。 個の数の並べ方は 通りもあるのに、条件を満たすのは 通りだけで、しかもその 通りは全部この 1 枚を回したり裏返したりしたものなのです。
中央が になるのも、偶然ではなく証明できます。和を とし、2 本の対角線・中央の行・中央の列の 4 本を足すと です。この 4 本は、中央のマスを 4 回、残りの 8 マスを 1 回ずつ数えています。全体の和は なので
から の総和は なので 、中央は で決まりです。
さて、一次変換とどう関係するのか。 通りを移り合わせる「回転と裏返し」が、まさに一次変換だからです。正方形の中心を原点に取ると、 ずつの回転 4 つと、縦・横・2 本の対角線に関する裏返し 4 つ。合わせて つの動きが、正方形を自分自身にぴったり重ねます。どれも原点を動かさない移し方なので、 の行列で書けます。たとえば対角線に関する裏返しは 、 の回転は です。第 7 章で回転と対称移動の行列を作れば、 つ全部を書き下せます。
ちなみに「 から を 1 回ずつ」という条件を外し、「縦・横・斜めの和が等しい の実数の表」を全部集めると、その集まりは足し算と実数倍で閉じています(魔方陣を 2 枚足しても、実数倍しても、また魔方陣です)。第 1 章の厳密定義で出てきた部分空間です。自由度を数えると で、あらかじめ 3 枚選んでおけば、どんな魔方陣もその 1 次結合で書けてしまいます。
豆知識
デューラーの銅版画『メランコリアI』(1514 年)には の魔方陣が描き込まれていて、最下段の真ん中 2 マスが , と並んでいます。制作年の をそこに埋め込んだ、というわけです。魔方陣の起源は中国の伝説『洛書』にさかのぼるとされます(※諸説あり)。
一次変換は原点を動かせません。だから平行移動は一次変換ではない——本文でそう確かめました。困るのは、現実の応用では移動も回転も伸縮も、ぜんぶまとめて扱いたいということです。
そこで考え出されたのが、ちょっとずるい手です。平面上の点 を、3 つめの成分に を足して と書く。そして の行列をかけます。
軸方向に 、 軸方向に の平行移動になりました。定数項を置く場所がないと言っていたのに、 という成分をわざわざ連れてきたことで、右端の列が定数項の置き場になったのです。この書き方を同次座標といいます。
からくりは、次元を 1 つ上げたことにあります。平面を「空間の中の、高さ のところに浮かぶ平面」だと思う。すると平面の平行移動は、空間のほうから見れば原点を通る斜めの方向へのずらしで、原点は動いていません。平面での平行移動は、空間での一次変換だったというわけです。
ありがたいのは、これで移動も回転も伸縮も全部「行列をかける」に統一されることです。統一されると何がうれしいか。第 8 章で学ぶように、操作を続けて行うことは行列の積になります。「関節を 曲げて、 cm 先へ伸ばして、また 曲げて」というロボットアームの動きは、行列をいくつも掛けた 1 つの行列にまとめられる。アームの先端がどこにあるかを、関節の角度から一度の計算で出せます。産業用ロボットの制御で当たり前に使われている考え方です。写真のゆがみ補正や、地図の重ね合わせも同じ道具立てです。
豆知識
同次座標の起源は 1827 年、メビウス(「メビウスの帯」のあの人)が『重心座標の計算』で導入した座標にさかのぼるとされます(※諸説あり)。ねじれた帯で有名な人が、画面の中の点の動かし方を支える記法も残していたわけです。
自動車を 1 台作るには鉄がいる。鉄を作るには電気がいる。電気を作るには……と、産業はたがいに材料を買い合っています。この「買い合い」を表に書いたものが産業連関表です。
いま産業が 個あるとして、 番目の産業が 単位作るのに 番目の産業の製品をどれだけ使うか、という数を並べた行列を とします(投入係数行列といいます)。各産業の生産量を並べた列ベクトルを 、家計や輸出など最終的な需要を とすると、生産は「他の産業に材料として使われる分」と「最終需要に応える分」の合計なので
が成り立ちます。 について解きます。、つまり なので
この をレオンチェフ逆行列といいます。第 4 章で学んだ「連立一次方程式を逆行列で解く」が、そのまま経済の道具になっているのです。 に を何度も代入していくと となり、第 5 章の が並ぶ形にもなります。「材料の材料の材料……」と波及がどこまでも続くことの表現です。
この方法を作ったワシリー・レオンチェフは、1930 年代からアメリカ経済の表を作り続け、1973 年にノーベル経済学賞を受けました。日本でも総務省などが数年おきに産業連関表を公表しています。部門の数は数百で、 は数百行数百列の行列です。
ニュースでときどき聞く「経済波及効果は 億円」という数字も、多くはこの逆行列から出ています。あるイベントで直接使われるお金を に入れ、 をかける。宿泊費が増えればシーツのクリーニングが増え、洗剤が増え、石油が増える——その連鎖を、行列 1 つが引き受けているわけです。
※ここは発展ページです。高校の範囲では「一次変換は行列で書ける」「行列の列は基本ベクトルの像」が使えれば十分ですが、なぜ平面に限る必要がないのか、 という形が第 5 章で出てきたのはなぜか、 のときに何が起きているのかが気になる人のために、少し厳密な形にまとめておきます。第 1 章の厳密定義(ベクトル空間と部分空間・次元)、第 4 章の厳密定義(核・階数)、第 5 章の厳密定義(固有値と対角化)を前提にします。
本文では一次変換を「, という式で書ける移し方」と定義しました。式から出発する定義です。ところが j20 で、これは「足し算と実数倍を保つ」という性質による定義と同じことだと分かりました。同じものなら、使いやすいほうを定義に選んでよい。大学では後者を選びます。平面に縛られず、行列という道具を先に用意しなくてもよいからです。
写像 が、任意の と任意の について
をみたすとき、 を線形写像という(「線型写像」とも書く)。とくに のとき を の線形変換という。 の線形変換が、本文でいう一次変換である。
この定義には行列が出てきません。それでも、行列は自動的に現れます。
を線形写像とすると、 行列 がただ 1 つ存在して、すべての について
が成り立つ。この を の表現行列といい、その第 列は である。
証明 の基本ベクトルを とし、 を第 列に並べた 行列を とする。任意の は と表せるので、定義1 の 2 つの条件を繰り返し使って
を得る(最後の等号は、行列とベクトルの積が列の 1 次結合であることによる)。
一意性を示す。 も同じ性質をもつとすると、各 について である。 は の第 列、 は の第 列だから、すべての列が一致し となる。(証明終)
j20 は、この定理の の場合です。証明の骨はまったく同じで、「任意のベクトルを基本ベクトルの 1 次結合に書き、線形性で係数を外に出す」の一手だけです。
写像を決めるのに必要な情報が の像だけ、という点をもう一度かみしめておきたいところです。 には連続無限個の点があるのに、 点の行き先で全部決まってしまう。線形性という条件が、それだけ強いということです。
基本ベクトルが特別なわけではありません。1次独立で空間全体を張る組であれば、何を使っても同じ議論ができます。
のベクトルの組 が1次独立であり、かつ任意のベクトルがこれらの1次結合で表せるとき、この組を の基底という。このとき表し方は一意で、
の係数の組 を、基底 に関する の成分という。
を標準基底という。
を の線形変換とし、標準基底に関する表現行列を とする。 を別の基底とし、これらを列に並べた行列を とすると、 は正則であり、新しい基底に関する の表現行列は
である。
証明 基底は1次独立なので は正則である(第 3 章 定理2、第 4 章)。 の新しい基底に関する成分を とすると、定義より である。 であり、この像の新しい成分は、両辺に をかけて となる。 から像の成分への対応が をかけることだから、これが新しい表現行列である。(証明終)
第 5 章で が対角行列になる を扱い、「方眼紙の目盛りを が伸ばす 2 方向に合わせて引き直すと、ただの拡大に見える」と例えました。いま言葉が与えられました。目盛りを引き直すとは、基底を取りかえることです。そして第 5 章 定理2 が保証していたのは、相異なる 2 実解をもつなら「 がただの拡大に見える基底」が存在する、ということでした。
本文 j17 で求めた は、その基底そのものです。 に対して , を基底に選べば、 は「 の向きに 倍、 の向きに 倍」に見えます。表現行列は です。第 5 章で「固有値」「固有ベクトル」と呼んだものの幾何的な意味が、これでつながりました。
同じ 1 つの線形変換が、基底の選び方によっていくつもの行列で表せる、というのが定理2 の内容です。行列は変換そのものではなく、変換を座標で書き表したときの姿にすぎません。第 3 章 j14 と第 5 章 定理3 で「 と特性多項式は で変わらない」ことを見ましたが、あれは「姿ではなく変換そのものに属する量」だったわけです。
のときに何が起きているのかを、言葉にしておきます。
線形写像 に対し
をそれぞれ の核、像という。 は の部分空間、 は の部分空間である。
核は、第 4 章の厳密定義で「同次連立一次方程式 の解集合」として登場したものです。 の言葉では「原点に押しつぶされる点の集まり」になります。像は、平面全体が移った先の図形です。
線形写像 について
が成り立つ。また である( は の表現行列)。
証明の概略 の基底 を取り、これを の基底 に拡張する。このとき が の基底になることを示せばよい。張ることは定理1 の計算から従い( なので消える)、1次独立性は から を導き、基底の取り方に反することを見ればよい。(概略終)
で書き下すと、一次変換のつぶれ方が 3 通りに分かれることが分かります。
| 像 | |||
|---|---|---|---|
| 平面全体 | |||
| , | 原点を通る 1 本の直線 | ||
| 原点だけ |
和がいつも になっています。つぶれた次元のぶんだけ、像の次元が落ちるということです。本文 例題7 や j11 で「原像が無数」だったのは だから、つまり原点に移る点が直線 1 本ぶんあり、その 1 本ぶんの自由度がそのまま原像の自由度になったからです。j19 で が出てきたのも、像が直線に収まるなら で、核が 次元ではいられないためです。この表を図形として詳しく見るのが第 9 章です。
小話 kb2 で、平行移動を無理やり行列に入れる工夫を紹介しました。厳密にはこう定義します。
線形写像 とベクトル に対し
で定まる写像 をアフィン写像という。 のときが線形写像である。
平行移動は を恒等写像(表現行列が )にしたアフィン写像です。アフィン写像は一般に なので線形ではありませんが、 のとき
と書けば、 行列による の線形変換の一部として実現できます。 を の平面 に埋め込んでいるわけです。この 行列の全体は積について閉じており(確かめてみてください)、 なので なら正則です。同次座標が便利なのは、この「積で閉じている」という点にあります。
定義1 には、じつは という制限も要りません。第 1 章の厳密定義で挙げたベクトル空間の 8 法則さえあれば、線形写像は定義できます。すると、ふつう「変換」と思わないものまで線形写像に化けます。
微分積分で「和の微分は微分の和」「定数倍は外に出る」と習った法則は、名前を変えれば線形性です。そして基底を取れば、微分という操作にも表現行列がつきます(たとえば 次以下の多項式で を基底に取ると、微分の表現行列は のべき零行列になります)。行列は平面の点を動かす道具にとどまらず、線形な現象すべてを座標で書き表す記法だということです。この立場で組み立て直した分野が線形代数です。
この章で扱えなかったことも案内しておきます。線形写像の合成が行列の積に対応することは、じつは第 2 章の厳密定義で として証明済みです。これを一次変換の言葉で使い直すのが第 8 章で、そこで逆変換と逆行列の対応も扱います。 に内積が入っているとき、長さと角を保つ線形変換(直交変換)だけを集めると回転と鏡映になり、その表現行列は直交行列です。第 7 章で扱う回転の行列は、その 次の場合にあたります。
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