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第7章 二項分布

—— 「n 回中に何回起こるか」の分布を、2 つの数 n と p だけで言い表す ——

場合の数と確率の分野(第7章)で、反復試行で「$n$ 回中ちょうど $k$ 回」起こる確率を求めました。この章では、その回数を確率変数とみて、分布全体に**二項分布**という名前を付けます。第6章の道具を使うと、期待値と分散が $np$,$np(1-p)$ という短い式にまとまります。さらに、確率がいちばん大きくなる回数、起こった割合のぶれ方を調べ、最後に第5章で実験の表から見積もった仮説検定の確率を、二項分布で正確に求め直します。第8章の正規分布へ進むための足場になる章です。

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「何回起こったか」を確率変数にする

場合の数と確率の分野(第7章 公式3)では、1 回の試行で事象 AA が起こる確率を pp とするとき、この試行を nn 回くり返して AA がちょうど kk 回起こる確率が

nCk pk(1−p)n−k{}_n\mathrm{C}_k\, p^k (1 - p)^{n-k}

になることを学びました。そこでは「ちょうど 22 回」「44 回以上」のように、回数を 1 つずつ決めて確率を求めました。

この章では、AA が起こる回数そのものを確率変数 XX とみて、kk=0{}= 0 から nn までの確率をまとめて 1 つの確率分布として扱います。すると第6章の期待値・分散の道具がそのまま使え、回数の「平均の見込み」と「ぶれの大きさ」が短い式で求まります。

二項分布

公式1:二項分布

1 回の試行で事象 AA が起こる確率を pp(00<p{}< p<1{}< 1)、qq=1{}= 1−p{}- p とする。この試行を nn 回くり返す反復試行で、AA が起こる回数を XX とすると

P(X=k)\displaystyle P(X = k)=nCk pkqn−k\displaystyle {}= {}_n\mathrm{C}_k\, p^k q^{n-k}(k=0, 1, 2, …, n)\displaystyle (k = 0,\ 1,\ 2,\ \ldots,\ n)

である。この確率分布を二項分布といい、B(n, p)B(n,\ p) で表す。XX の分布が B(n, p)B(n,\ p) であることを「XX は二項分布 B(n, p)B(n,\ p) に従う」という。

XXPP
00nC0 qn{}_n\mathrm{C}_0\, q^n
11nC1 pqn−1{}_n\mathrm{C}_1\, p q^{n-1}
⋮\vdots⋮\vdots
kknCk pkqn−k{}_n\mathrm{C}_k\, p^k q^{n-k}
⋮\vdots⋮\vdots
nnnCn pn{}_n\mathrm{C}_n\, p^n
計11

BB は二項分布を表す英語 binomial distribution の頭文字です。「二項」という名前は、表の確率が、2 つの項の和 (q+p)(q + p) を nn 乗して展開したときの各項

(q+p)n\displaystyle (q + p)^n=nC0 qn\displaystyle {}= {}_n\mathrm{C}_0\, q^n+nC1 pqn−1\displaystyle {}+ {}_n\mathrm{C}_1\, p q^{n-1}+⋯\displaystyle {}+ \cdots+nCn pn\displaystyle {}+ {}_n\mathrm{C}_n\, p^n

になっていることから来ています(数と式の分野 第7章の二項定理)。qq+p{}+ p=1{}= 1 なので、確率の合計はちょうど 1n1^n=1{}= 1 です。

種まきで考えてみましょう。種の袋に「発芽率 8080%」と書いてあり、1010 粒まくとします。芽が出る粒の数は 00 から 1010 のどれにもなりえますが、「どの数がどれだけ出やすいか」は、まいた粒の数 nn=10{}= 10 と発芽率 pp=0.8{}= 0.8 の 2 つだけで完全に決まります。どの粒が芽を出したかは問わず、数だけを数えるのが二項分布です。

B(10, 1/2)(期待値 5) 0.1 0.2 0.3 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 B(10, 1/5)(期待値 2) 0.1 0.2 0.3 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 横軸:起こる回数 k 縦軸:確率 P(X = k) 破線:期待値

pp=12{}= \dfrac{1}{2} のときは P(X=k)P(X = k)=P(X=n−k){}= P(X = n - k) となり、分布は左右対称です。pp が 12\dfrac{1}{2} より小さいと山は左に寄り、右に長く裾をひきます(第1章 公式5 と同じ言い方です)。

二項分布 B(n, p)B(n,\ p) は、確率 pp の事象が nn 回中に何回起こるかの分布で、回数 nn と確率 pp の 2 つだけで決まるということです。

例題1:芽が出る種の数

発芽率が 34\dfrac{3}{4} の種を 44 粒まきます。各粒が芽を出すかどうかは互いに影響しないものとし、芽が出た粒の数を XX とします。XX の確率分布と、確率 P(X≧3)P(X \geqq 3) を求めなさい。


【解答】

XX は二項分布 B(4, 34)B\left(4,\ \dfrac{3}{4}\right) に従うので

P(X=k)\displaystyle P(X = k)=4Ck(34)k(14)4−k\displaystyle {}= {}_4\mathrm{C}_k \left(\frac{3}{4}\right)^k \left(\frac{1}{4}\right)^{4-k}=4Ck×3k256\displaystyle {}= \frac{{}_4\mathrm{C}_k \times 3^k}{256}

です。kk=0,{}= 0, 1,\ 1, 2,\ 2, 3,\ 3, 4\ 4 を代入すると、分子は 11,4×34 \times 3=12{}= 12,6×96 \times 9=54{}= 54,4×274 \times 27=108{}= 108,8181 となります。

XX0011223344計
PP1256\dfrac{1}{256}12256\dfrac{12}{256}54256\dfrac{54}{256}108256\dfrac{108}{256}81256\dfrac{81}{256}11

分子の合計は 11+12{}+ 12+54{}+ 54+108{}+ 108+81{}+ 81=256{}= 256 で、確率の合計が 11 になっています。

P(X≧3)\displaystyle P(X \geqq 3)=108256\displaystyle {}= \frac{108}{256}+81256\displaystyle {}+ \frac{81}{256}=189256\displaystyle {}= \frac{189}{256}

より P(X≧3)=189256‾\underline{P(X \geqq 3) = \dfrac{189}{256}} です。

二項分布の期待値と分散

例題1 の表から期待値を計算します。値と確率の分子の積の合計は

0×1\displaystyle 0 \times 1+1×12\displaystyle {}+ 1 \times 12+2×54\displaystyle {}+ 2 \times 54+3×108\displaystyle {}+ 3 \times 108+4×81\displaystyle {}+ 4 \times 81=768\displaystyle {}= 768

なので

E(X)\displaystyle E(X)=768256\displaystyle {}= \frac{768}{256}=3\displaystyle {}= 3

となります。44 粒のうち 34\dfrac{3}{4} が芽を出すなら 33 粒、という直感どおりの値です。これは偶然ではありません。

公式2:二項分布の期待値・分散・標準偏差

確率変数 XX が二項分布 B(n, p)B(n,\ p) に従うとき、qq=1{}= 1−p{}- p として

E(X)\displaystyle E(X)=np,\displaystyle {}= np,V(X)\displaystyle V(X)=npq,\displaystyle {}= npq,σ(X)\displaystyle \sigma(X)=npq\displaystyle {}= \sqrt{npq}

である。

理由は、第6章の実践 問20 の考え方で説明できます。kk 回目の試行で AA が起これば 11、起こらなければ 00 をとる確率変数を XkX_k とすると、AA が起こった回数は

X\displaystyle X=X1\displaystyle {}= X_1+X2\displaystyle {}+ X_2+⋯\displaystyle {}+ \cdots+Xn\displaystyle {}+ X_n

と、00 か 11 を nn 個足したものになります。各 XkX_k は

E(Xk)\displaystyle E(X_k)=1×p\displaystyle {}= 1 \times p+0×q\displaystyle {}+ 0 \times q=p,\displaystyle {}= p,V(Xk)\displaystyle V(X_k)=E(Xk2)\displaystyle {}= E(X_k^2)−{E(Xk)}2\displaystyle {}- \{E(X_k)\}^2=p\displaystyle {}= p−p2\displaystyle {}- p^2=pq\displaystyle {}= pq

です。和の期待値は期待値の和(第6章 公式5)なので E(X)E(X)=np{}= np。さらに各回の試行は独立なので、X1X_1,…,XnX_n も互いに独立で、分散も足せます(第6章 公式6)。よって V(X)V(X)=npq{}= npq です。nCk{}_n\mathrm{C}_k の入った和を直接計算しなくても、「11 回分」を nn 倍するだけで済むわけです。

野球の打率を思い浮かべると、期待値の式はすぐ納得できます。打率 33 割の打者が 44 回打席に立てば、ヒットの本数の期待値は 4×0.34 \times 0.3=1.2{}= 1.2 本です。一方、分散 npqnpq の pqpq=p(1−p){}= p(1 - p) は、pp=12{}= \dfrac{1}{2} のとき最大の 14\dfrac{1}{4} になり、pp が 00 や 11 に近いほど小さくなります。99 割打つ打者や 11 割しか打てない打者の結果はだいたい読めますが、五分五分の打者は打つか打たないか最も読めない、ということです。

二項分布 B(n, p)B(n,\ p) の期待値は npnp、分散は np(1−p)np(1-p) で、どちらも「11 回分」の pp,p(1−p)p(1-p) を nn 倍したものだということです。

例題2:期待値と標準偏差

(1) 例題1 の確率変数 XX の期待値と分散を、公式2 を使ってそれぞれ求めなさい。

(2) 11 個のさいころを 180180 回投げるとき、11 の目が出る回数 YY の期待値と標準偏差をそれぞれ求めなさい。


【解答】

(1) XX は B(4, 34)B\left(4,\ \dfrac{3}{4}\right) に従うので

E(X)\displaystyle E(X)=4×34\displaystyle {}= 4 \times \frac{3}{4}=3‾,\displaystyle {}= \underline{3},V(X)\displaystyle V(X)=4×34×14\displaystyle {}= 4 \times \frac{3}{4} \times \frac{1}{4}=34‾\displaystyle {}= \underline{\frac{3}{4}}

確かめ:例題1 の表から、値の 2 乗と確率の分子の積の合計は 1212+4×54{}+ 4 \times 54+9×108{}+ 9 \times 108+16×81{}+ 16 \times 81=2496{}= 2496 です。E(X2)E(X^2)=2496256{}= \dfrac{2496}{256}=394{}= \dfrac{39}{4} なので、V(X)V(X)=394{}= \dfrac{39}{4}−32{}- 3^2=34{}= \dfrac{3}{4} となり、一致します。

(2) YY は B(180, 16)B\left(180,\ \dfrac{1}{6}\right) に従うので

E(Y)\displaystyle E(Y)=180×16\displaystyle {}= 180 \times \frac{1}{6}=30‾,\displaystyle {}= \underline{30},V(Y)\displaystyle V(Y)=180×16×56\displaystyle {}= 180 \times \frac{1}{6} \times \frac{5}{6}=25,\displaystyle {}= 25,σ(Y)\displaystyle \sigma(Y)=5‾\displaystyle {}= \underline{5}

180180 回投げると、11 の目は平均して 3030 回、ぶれの目安は 55 回ほどです。

確率が最大になる回数

例題1 の表では XX=3{}= 3 の確率がいちばん大きくなっていました。回数が多くなると、表を全部書き出すのは大変です。そこで、隣り合う確率の比を調べます。

公式3:確率が最大になる回数

XX が二項分布 B(n, p)B(n,\ p) に従うとき、pkp_k=P(X=k){}= P(X = k) とおくと、kk=0,{}= 0, 1,\ 1, …,\ \ldots, n\ n−1{}- 1 について

pk+1pk\displaystyle \frac{p_{k+1}}{p_k}=(n−k) p(k+1) q\displaystyle {}= \frac{(n - k)\,p}{(k + 1)\,q}

である。この比が 11 より大きい間は確率は増え、11 より小さくなると減る。

比の式は、nCk+1{}_n\mathrm{C}_{k+1}=nCk×n−kk+1{}= {}_n\mathrm{C}_k \times \dfrac{n - k}{k + 1} から出ます。pk+1p_{k+1} は pkp_k にくらべて pp が 1 つ増え、qq が 1 つ減るので

pk+1pk\displaystyle \frac{p_{k+1}}{p_k}=n−kk+1×pq\displaystyle {}= \frac{n - k}{k + 1} \times \frac{p}{q}

です。kk が大きくなると分子 nn−k{}- k は減り、分母 kk+1{}+ 1 は増えるので、比はだんだん小さくなります。つまり確率は、比が 11 を超えている間は増え続け、比が 11 を下回った後は減り続けます。山が 1 つだけの形になるのはこのためです。

一列に並んだ人を、前から順に隣の人と背比べしていく場面に似ています。列が「だんだん高くなり、あるところからだんだん低くなる」並び方だと分かっていれば、全員の身長を測らなくても、「次の人のほうが高いか」だけを比べていけば、初めて低くなる直前の人がいちばん背の高い人だと分かります。比 pk+1pk\dfrac{p_{k+1}}{p_k} が 11 より大きいかどうかが、この「次の人のほうが高いか」にあたります。

二項分布の確率は隣どうしの比 (n−k)p(k+1)q\dfrac{(n-k)p}{(k+1)q} が 11 を超える間は増え、下回ると減るので、この比と 11 を比べれば確率が最大になる回数が分かるということです。

例題3:成功回数の最も起こりやすい値

11 回の成功率が 0.30.3 の試行を 2020 回くり返します。成功する回数 XX について、確率 P(X=k)P(X = k) が最大になる kk を求めなさい。


【解答】

XX は B(20, 0.3)B(20,\ 0.3) に従います。pkp_k=P(X=k){}= P(X = k) とすると、公式3 より

pk+1pk\displaystyle \frac{p_{k+1}}{p_k}=(20−k)×0.3(k+1)×0.7\displaystyle {}= \frac{(20 - k) \times 0.3}{(k + 1) \times 0.7}=3(20−k)7(k+1)\displaystyle {}= \frac{3(20 - k)}{7(k + 1)}

pk+1pk\dfrac{p_{k+1}}{p_k}>1{}> 1 となるのは

3(20−k)\displaystyle 3(20 - k)>7(k+1)\displaystyle {}> 7(k + 1)  ⟺  60\displaystyle {}\iff 60−3k\displaystyle {}- 3k>7k\displaystyle {}> 7k+7\displaystyle {}+ 7  ⟺  k\displaystyle {}\iff k<5.3\displaystyle {}< 5.3

のときです。したがって

  • kk=0,{}= 0, 1,\ 1, …,\ \ldots, 5\ 5 では pk+1p_{k+1}>pk{}> p_k なので、p0p_0<p1{}< p_1<⋯{}< \cdots<p6{}< p_6
  • kk=6,{}= 6, 7,\ 7, …,\ \ldots, 19\ 19 では pk+1p_{k+1}<pk{}< p_k なので、p6p_6>p7{}> p_7>⋯{}> \cdots>p20{}> p_{20}

となり、確率が最大になるのは k=6‾\underline{k = 6} です(p6p_6≒0.192{}\fallingdotseq 0.192)。

期待値は 20×0.320 \times 0.3=6{}= 6 で、この例では最も起こりやすい回数と一致しています。いつも一致するとは限りませんが、確率が最大になる回数は期待値 npnp のすぐ近く(11 未満の差)にあることが知られています(厳密定義のページ)。

起こった割合のぶれ

アンケートや品質検査では、回数 XX そのものより、nn 回のうち何割で起こったかという割合 Xn\dfrac{X}{n} を見ることが多くあります。

公式4:割合の期待値と標準偏差

XX が二項分布 B(n, p)B(n,\ p) に従うとき、割合 RR=Xn{}= \dfrac{X}{n} について

E(R)\displaystyle E(R)=p,\displaystyle {}= p,V(R)\displaystyle V(R)=pqn,\displaystyle {}= \frac{pq}{n},σ(R)\displaystyle \sigma(R)=pqn\displaystyle {}= \sqrt{\frac{pq}{n}}

である。

RR=1nX{}= \dfrac{1}{n}X なので、第6章 公式4 で aa=1n{}= \dfrac{1}{n},bb=0{}= 0 として

E(R)\displaystyle E(R)=1n×np\displaystyle {}= \frac{1}{n} \times np=p,\displaystyle {}= p,V(R)\displaystyle V(R)=(1n)2×npq\displaystyle {}= \left(\frac{1}{n}\right)^2 \times npq=pqn\displaystyle {}= \frac{pq}{n}

となります。割合の期待値はもとの確率 pp そのもので、標準偏差は n\sqrt{n} に反比例して小さくなります。回数を 44 倍にすると割合のぶれは 12\dfrac{1}{2}、100100 倍にすると 110\dfrac{1}{10} です。

10 回(σ ≒ 0.158) 0.1 0.2 0.3 0 0.5 1 40 回(σ ≒ 0.079) 0.1 0.2 0.3 0 0.5 1 横軸:表の割合 R 縦軸:確率 回数を 4 倍にすると σ は半分

雨の降り始めを思い出してください。最初の数滴では、地面のどこに雨粒が落ちたかはまだらで、ある場所だけが濡れていたりします。けれども雨粒の数が増えるにつれて、地面は一様に濡れていきます。1 回ずつの結果はばらばらでも、回数が増えると「起こった割合」は確率 pp のまわりにそろってきます。第6章の厳密定義で証明した大数の法則を、二項分布の式で具体的に見ているわけです。

nn 回中に起こった割合の期待値は pp で、標準偏差 p(1−p)n\sqrt{\dfrac{p(1-p)}{n}} は回数を増やすほど小さくなる(回数 44 倍でぶれは半分)ということです。

例題4:表の割合のぶれ

硬貨を nn 回投げ、表が出た割合を RR とします。

(1) nn=100{}= 100 のときの RR の標準偏差

(2) nn=400{}= 400 のときの RR の標準偏差

(3) RR の標準偏差が 0.020.02 になる nn の値

上の (1)〜(3) をそれぞれ求めなさい。


【解答】

表が出る回数は B(n, 12)B\left(n,\ \dfrac{1}{2}\right) に従うので、公式4 より σ(R)\sigma(R)=14n{}= \sqrt{\dfrac{1}{4n}}=12n{}= \dfrac{1}{2\sqrt{n}} です。

(1) σ(R)\sigma(R)=12×10{}= \dfrac{1}{2 \times 10}=0.05‾{}= \underline{0.05}

(2) σ(R)\sigma(R)=12×20{}= \dfrac{1}{2 \times 20}=0.025‾{}= \underline{0.025}

(3) 12n\dfrac{1}{2\sqrt{n}}=0.02{}= 0.02 より n\sqrt{n}=25{}= 25,n=625‾\underline{n = 625}

(1) から (2) で回数は 44 倍、標準偏差は半分になっています。

二項分布で仮説検定の確率を求める

第5章では、「コインを 2020 回投げる実験を 10001000 セット」行った相対度数を使って、仮説検定の確率を見積もりました。二項分布を使えば、この確率を正確に計算できます。

公式5:二項分布による仮説検定の確率

帰無仮説のもとで、ある回数 XX が二項分布 B(n, p)B(n,\ p) に従うとする。実際に cc 回起こったとき、対立仮説が「pp より起こりやすい」なら

P(X≧c)\displaystyle P(X \geqq c)=∑k=cnnCk pkqn−k\displaystyle {}= \sum_{k=c}^{n} {}_n\mathrm{C}_k\, p^k q^{n-k}

を、対立仮説が「pp より起こりにくい」なら P(X≦c)P(X \leqq c) を求めて、有意水準と比べる。cc が端に近いときは、少ない項の和で求められる。

第5章の公式4(実際の結果と同じか、それより対立仮説に有利な結果の確率)を、二項分布の言葉で書いただけです。違うのは、実験の相対度数ではなく本当の確率を使う点です。

体重計を、目盛りの粗いものから精密なものに替えるようなものです。「5050 kg 以下なら出場できる」という基準のとき、0.50.5 kg 刻みの体重計で 50.050.0 と表示されても、本当は 50.250.2 kg かもしれません。基準から遠い人ならどちらの体重計でも判定は同じですが、基準すれすれの人は精密な体重計でないと判定を誤ります。第5章で実験の表を使ったときも、有意水準すれすれの問題で結論が入れかわる例がありました。

B(20, 1/2):B を選ぶ人数 0.05 0.10 0.15 0 2 4 6 8 10 12 14 15 16 18 20 15 以上:約 0.0207 14 を加えると:約 0.0577

帰無仮説のもとで回数が二項分布に従うなら、「実際の回数以上(以下)」の確率を二項分布の和で正確に求めて、有意水準と比べればよいということです。

例題5:パッケージの検定を正確に

第5章 例題4 と同じく、新しいパッケージ B と今までのパッケージ A を 2020 人に見せたところ、1515 人が B を選びました。

(1) 「A と B は同じ程度に好まれる(各人が B を選ぶ確率は 12\frac{1}{2})」という帰無仮説のもとで、B を選ぶ人が 1515 人以上になる確率

(2) 有意水準 0.050.05 で「B のほうが好まれる」と判断されるために、B を選ぶ人数が少なくとも何人必要か

上の (1)、(2) をそれぞれ求めなさい。ただし、次の値を使ってよいものとします。

kk1314151617181920
20Ck{}_{20}\mathrm{C}_k77520387601550448451140190201

また、2202^{20}=1048576{}= 1048576 です。


【解答】

B を選ぶ人数を XX とすると、帰無仮説のもとで XX は B(20, 12)B\left(20,\ \dfrac{1}{2}\right) に従い、P(X=k)P(X = k)=20Ck220{}= \dfrac{{}_{20}\mathrm{C}_k}{2^{20}} です。

(1) kk=15,{}= 15, 16,\ 16, …,\ \ldots, 20\ 20 の 20Ck{}_{20}\mathrm{C}_k の合計は

15504\displaystyle 15504+4845\displaystyle {}+ 4845+1140\displaystyle {}+ 1140+190\displaystyle {}+ 190+20\displaystyle {}+ 20+1\displaystyle {}+ 1=21700\displaystyle {}= 21700

なので

P(X≧15)\displaystyle P(X \geqq 15)=217001048576\displaystyle {}= \frac{21700}{1048576}≒0.0207‾\displaystyle {}\fallingdotseq \underline{0.0207}

(2) (1) より P(X≧15)P(X \geqq 15)≦0.05{}\leqq 0.05 なので、1515 人なら棄却されます。1414 人のときは

P(X≧14)\displaystyle P(X \geqq 14)=38760+217001048576\displaystyle {}= \frac{38760 + 21700}{1048576}=604601048576\displaystyle {}= \frac{60460}{1048576}≒0.0577\displaystyle {}\fallingdotseq 0.0577>0.05\displaystyle {}> 0.05

で棄却されません。人数が少ないほどこの確率は大きくなるので、必要な人数は 15 人‾\underline{15 \text{ 人}} です。

第5章の実践 問9 では、実験の表(1414 回以上の相対度数 0.0500.050)から「1414 人」と答えました。正確な確率で計算し直すと、境目は 1515 人に変わります。

基礎確認問題(全5問)

まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。

問1

確率変数 XX が二項分布 B(5, 13)B\left(5,\ \dfrac{1}{3}\right) に従うとき、P(X=2)P(X = 2) を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

5C2(13)2(23)3{}_5\mathrm{C}_2 \left(\dfrac{1}{3}\right)^2 \left(\dfrac{2}{3}\right)^3=10×19×827{}= 10 \times \dfrac{1}{9} \times \dfrac{8}{27}=80243‾{}= \underline{\dfrac{80}{243}}

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問2

確率変数 XX が二項分布 B(100, 0.2)B(100,\ 0.2) に従うとき、XX の期待値と分散をそれぞれ求めなさい。

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答え

E(X)E(X)=100×0.2{}= 100 \times 0.2=20‾{}= \underline{20},V(X)V(X)=100×0.2×0.8{}= 100 \times 0.2 \times 0.8=16‾{}= \underline{16}

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問3

硬貨を 400400 回投げるとき、表が出る回数 XX の標準偏差を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

XX は B(400, 12)B\left(400,\ \dfrac{1}{2}\right) に従うので、σ(X)\sigma(X)=400×12×12{}= \sqrt{400 \times \dfrac{1}{2} \times \dfrac{1}{2}}=100{}= \sqrt{100}=10‾{}= \underline{10}

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問4

確率変数 XX が二項分布 B(4, 12)B\left(4,\ \dfrac{1}{2}\right) に従うとき、P(X≧1)P(X \geqq 1) を求めなさい。

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答え

余事象を使って 11−P(X=0){}- P(X = 0)=1{}= 1−(12)4{}- \left(\dfrac{1}{2}\right)^4=1516‾{}= \underline{\dfrac{15}{16}}

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問5

確率変数 XX が二項分布 B(n, p)B(n,\ p) に従い、E(X)E(X)=6{}= 6,V(X)V(X)=4.2{}= 4.2 です。nn と pp の値をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

npnp=6{}= 6,np(1−p)np(1 - p)=4.2{}= 4.2 より 11−p{}- p=0.7{}= 0.7、よって p=0.3‾\underline{p = 0.3},n=20‾\underline{n = 20}

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実践問題(全20問)

難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。

問1 ★

11 個のさいころを 44 回投げ、33 の倍数の目が出る回数を XX とします。XX の確率分布と、確率 P(X≧2)P(X \geqq 2) を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え
XX0011223344計
PP1681\dfrac{16}{81}3281\dfrac{32}{81}2481\dfrac{24}{81}881\dfrac{8}{81}181\dfrac{1}{81}11

P(X≧2)P(X \geqq 2)=1127{}= \dfrac{11}{27}

解説

33 の倍数の目(33,66)が出る確率は 26\dfrac{2}{6}=13{}= \dfrac{1}{3} なので、XX は B(4, 13)B\left(4,\ \dfrac{1}{3}\right) に従います。

P(X=k)\displaystyle P(X = k)=4Ck(13)k(23)4−k\displaystyle {}= {}_4\mathrm{C}_k \left(\frac{1}{3}\right)^k \left(\frac{2}{3}\right)^{4-k}=4Ck×24−k81\displaystyle {}= \frac{{}_4\mathrm{C}_k \times 2^{4-k}}{81}

kk=0,{}= 0, 1,\ 1, 2,\ 2, 3,\ 3, 4\ 4 の分子は 1×161 \times 16=16{}= 16,4×84 \times 8=32{}= 32,6×46 \times 4=24{}= 24,4×24 \times 2=8{}= 8,1×11 \times 1=1{}= 1 で、合計は 8181 です。

XX0011223344計
PP1681\dfrac{16}{81}3281\dfrac{32}{81}2481\dfrac{24}{81}881\dfrac{8}{81}181\dfrac{1}{81}11
P(X≧2)\displaystyle P(X \geqq 2)=24+8+181\displaystyle {}= \frac{24 + 8 + 1}{81}=3381\displaystyle {}= \frac{33}{81}=1127‾\displaystyle {}= \underline{\frac{11}{27}}
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問2 ★

的に当たる確率が 0.60.6 の人が、的に向けて 55 回投げます。各回の結果は互いに影響しないものとします。44 回以上当たる確率を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

0.336960.33696

解説

当たる回数を XX とすると、XX は B(5, 0.6)B(5,\ 0.6) に従います。

P(X=4)\displaystyle P(X = 4)=5C4×0.64×0.4\displaystyle {}= {}_5\mathrm{C}_4 \times 0.6^4 \times 0.4=5×0.1296×0.4\displaystyle {}= 5 \times 0.1296 \times 0.4=0.2592\displaystyle {}= 0.2592 P(X=5)\displaystyle P(X = 5)=0.65\displaystyle {}= 0.6^5=0.07776\displaystyle {}= 0.07776

「ちょうど 44 回」と「ちょうど 55 回」は排反なので

P(X≧4)\displaystyle P(X \geqq 4)=0.2592\displaystyle {}= 0.2592+0.07776\displaystyle {}+ 0.07776=0.33696‾\displaystyle {}= \underline{0.33696}
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問3 ★

44 択の問題が 2020 問あり、すべての問題で選択肢の中からでたらめに 11 つを選んで答えます。正解する問題の数を XX とするとき、XX の期待値と標準偏差をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

期待値 55,標準偏差 152\dfrac{\sqrt{15}}{2}

解説

1 問ごとに正解する確率は 14\dfrac{1}{4} で、各問の結果は互いに影響しないので、XX は B(20, 14)B\left(20,\ \dfrac{1}{4}\right) に従います。公式2 より

E(X)\displaystyle E(X)=20×14\displaystyle {}= 20 \times \frac{1}{4}=5‾\displaystyle {}= \underline{5} V(X)\displaystyle V(X)=20×14×34\displaystyle {}= 20 \times \frac{1}{4} \times \frac{3}{4}=154,\displaystyle {}= \frac{15}{4},σ(X)\displaystyle \sigma(X)=154\displaystyle {}= \sqrt{\frac{15}{4}}=152‾\displaystyle {}= \underline{\frac{\sqrt{15}}{2}}

152\dfrac{\sqrt{15}}{2}≒1.94{}\fallingdotseq 1.94 なので、でたらめに答えると正解数は平均 55 問、ぶれの目安は 22 問ほどです。

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問4 ★

確率変数 XX が二項分布 B(n, p)B(n,\ p) に従い、期待値が 1212、標準偏差が 33 です。nn と pp の値をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

nn=48{}= 48,pp=14{}= \dfrac{1}{4}

解説

標準偏差が 33 なので分散は 99 です。公式2 より

np\displaystyle np=12,\displaystyle {}= 12,np(1−p)\displaystyle np(1 - p)=9\displaystyle {}= 9

2 つ目の式を 1 つ目の式で割ると 11−p{}- p=912{}= \dfrac{9}{12}=34{}= \dfrac{3}{4} なので、p=14‾\underline{p = \dfrac{1}{4}} です。1 つ目の式に代入して n4\dfrac{n}{4}=12{}= 12,n=48‾\underline{n = 48} となります。

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問5 ★

66 枚の硬貨を同時に投げ、表が出る枚数を XX とします。

(1) P(X=3)P(X = 3)

(2) P(2≦X≦4)P(2 \leqq X \leqq 4)

上の (1)、(2) の値をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

(1) 516\dfrac{5}{16} (2) 2532\dfrac{25}{32}

解説

XX は B(6, 12)B\left(6,\ \dfrac{1}{2}\right) に従うので、P(X=k)P(X = k)=6Ck26{}= \dfrac{{}_6\mathrm{C}_k}{2^6}=6Ck64{}= \dfrac{{}_6\mathrm{C}_k}{64} です。

(1)

P(X=3)\displaystyle P(X = 3)=6C364\displaystyle {}= \frac{{}_6\mathrm{C}_3}{64}=2064\displaystyle {}= \frac{20}{64}=516‾\displaystyle {}= \underline{\frac{5}{16}}

(2) 6C2{}_6\mathrm{C}_2=15{}= 15,6C4{}_6\mathrm{C}_4=15{}= 15 なので

P(2≦X≦4)\displaystyle P(2 \leqq X \leqq 4)=15+20+1564\displaystyle {}= \frac{15 + 20 + 15}{64}=5064\displaystyle {}= \frac{50}{64}=2532‾\displaystyle {}= \underline{\frac{25}{32}}

余事象を使って 11−1+6+6+164{}- \dfrac{1 + 6 + 6 + 1}{64}=5064{}= \dfrac{50}{64} と求めることもできます。

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問6 ★

11 個のさいころを 6060 回投げるとき、11 の目が出る回数 XX の期待値、分散、標準偏差をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

期待値 1010,分散 253\dfrac{25}{3},標準偏差 533\dfrac{5\sqrt{3}}{3}

解説

XX は B(60, 16)B\left(60,\ \dfrac{1}{6}\right) に従います。

E(X)\displaystyle E(X)=60×16\displaystyle {}= 60 \times \frac{1}{6}=10‾,\displaystyle {}= \underline{10},V(X)\displaystyle V(X)=60×16×56\displaystyle {}= 60 \times \frac{1}{6} \times \frac{5}{6}=506\displaystyle {}= \frac{50}{6}=253‾\displaystyle {}= \underline{\frac{25}{3}} σ(X)\displaystyle \sigma(X)=253\displaystyle {}= \sqrt{\frac{25}{3}}=53\displaystyle {}= \frac{5}{\sqrt{3}}=533‾\displaystyle {}= \underline{\frac{5\sqrt{3}}{3}}
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問7 ★

硬貨を 1010 回投げ、表が出るたびに 100100 点をもらい、裏が出るたびに 5050 点を失います。1010 回投げ終えたときの得点を YY 点とするとき、YY の期待値と標準偏差をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

期待値 250250 点,標準偏差 751075\sqrt{10} 点

解説

表の回数を XX とすると、裏の回数は 1010−X{}- X なので

Y\displaystyle Y=100X\displaystyle {}= 100X−50(10−X)\displaystyle {}- 50(10 - X)=150X\displaystyle {}= 150X−500\displaystyle {}- 500

XX は B(10, 12)B\left(10,\ \dfrac{1}{2}\right) に従うので、E(X)E(X)=5{}= 5,V(X)V(X)=10×12×12{}= 10 \times \dfrac{1}{2} \times \dfrac{1}{2}=52{}= \dfrac{5}{2} です。第6章 公式4 より

E(Y)\displaystyle E(Y)=150×5\displaystyle {}= 150 \times 5−500\displaystyle {}- 500=250 点‾\displaystyle {}= \underline{250 \text{ 点}} σ(Y)\displaystyle \sigma(Y)=150×52\displaystyle {}= 150 \times \sqrt{\frac{5}{2}}=150×102\displaystyle {}= 150 \times \frac{\sqrt{10}}{2}=7510 点‾\displaystyle {}= \underline{75\sqrt{10} \text{ 点}}

751075\sqrt{10}≒237{}\fallingdotseq 237 です。表と裏の回数は連動する(一方が 11 増えれば他方が 11 減る)ので、YY を XX だけの式に直してから公式を使います。

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問8 ★

不良品が含まれる割合が 22% の製品の山から、33 個を取り出して検査します。製品の数は十分に多く、各製品が不良品かどうかは互いに影響しないものとします。少なくとも 11 個が不良品である確率を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

0.0588080.058808

解説

不良品の個数を XX とすると、XX は B(3, 0.02)B(3,\ 0.02) に従います。「少なくとも 11 個」は「00 個」の余事象なので

P(X≧1)\displaystyle P(X \geqq 1)=1\displaystyle {}= 1−P(X=0)\displaystyle {}- P(X = 0)=1\displaystyle {}= 1−0.983\displaystyle {}- 0.98^3

0.9820.98^2=0.9604{}= 0.9604,0.9830.98^3=0.9604×0.98{}= 0.9604 \times 0.98=0.941192{}= 0.941192 より

P(X≧1)\displaystyle P(X \geqq 1)=1\displaystyle {}= 1−0.941192\displaystyle {}- 0.941192=0.058808‾\displaystyle {}= \underline{0.058808}
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問9 ★★

11 個のさいころを 1010 回投げ、55 以上の目が出る回数を XX とします。P(X=k)P(X = k) が最大になる kk の値を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

kk=3{}= 3

解説

55 以上の目が出る確率は 13\dfrac{1}{3} なので、XX は B(10, 13)B\left(10,\ \dfrac{1}{3}\right) に従います。pkp_k=P(X=k){}= P(X = k) とすると、公式3 より

pk+1pk\displaystyle \frac{p_{k+1}}{p_k}=(10−k)×13(k+1)×23\displaystyle {}= \frac{(10 - k) \times \frac{1}{3}}{(k + 1) \times \frac{2}{3}}=10−k2(k+1)\displaystyle {}= \frac{10 - k}{2(k + 1)}

これが 11 より大きくなるのは

10\displaystyle 10−k\displaystyle {}- k>2k\displaystyle {}> 2k+2\displaystyle {}+ 2  ⟺  k\displaystyle {}\iff k<83\displaystyle {}< \frac{8}{3}

のときです。kk=0,{}= 0, 1,\ 1, 2\ 2 では pk+1p_{k+1}>pk{}> p_k、kk=3,{}= 3, 4,\ 4, …,\ \ldots, 9\ 9 では pk+1p_{k+1}<pk{}< p_k です(kk=83{}= \frac{8}{3} となる整数はないので、比がちょうど 11 になることはありません)。よって

p0\displaystyle p_0<p1\displaystyle {}< p_1<p2\displaystyle {}< p_2<p3\displaystyle {}< p_3>p4\displaystyle {}> p_4>⋯\displaystyle {}> \cdots>p10\displaystyle {}> p_{10}

となり、最大になるのは k=3‾\underline{k = 3} です。

確かめ:分子(3103^{10} をかけた値)は p2p_2→11520{}\to 11520,p3p_3→15360{}\to 15360,p4p_4→13440{}\to 13440 で、p3p_3 がいちばん大きくなっています。期待値 103\dfrac{10}{3}≒3.3{}\fallingdotseq 3.3 のすぐ近くです。

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問10 ★★

ある町では、住民の 4040% があるテレビ番組を見ています。住民から 600600 人を選び、この番組を見ている人の割合を RR とします。人口は十分に多く、選ばれた各人が番組を見ているかどうかは互いに影響しないものとするとき、RR の期待値と標準偏差をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

期待値 0.40.4,標準偏差 0.020.02

解説

番組を見ている人の数を XX とすると、XX は B(600, 0.4)B(600,\ 0.4) に従い、RR=X600{}= \dfrac{X}{600} です。公式4 より

E(R)\displaystyle E(R)=0.4‾\displaystyle {}= \underline{0.4} V(R)\displaystyle V(R)=0.4×0.6600\displaystyle {}= \frac{0.4 \times 0.6}{600}=0.24600\displaystyle {}= \frac{0.24}{600}=0.0004,\displaystyle {}= 0.0004,σ(R)\displaystyle \sigma(R)=0.0004\displaystyle {}= \sqrt{0.0004}=0.02‾\displaystyle {}= \underline{0.02}

600600 人を調べると、割合は平均 4040%、ぶれの目安は 22 ポイントほどです。

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問11 ★★

11 回の試行で事象 AA が起こる確率は 0.20.2 です。この試行を nn 回くり返し、AA が起こった割合を RR とします。RR の標準偏差が 0.020.02 以下になるような nn の最小値を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

400400

解説

公式4 より

σ(R)\displaystyle \sigma(R)=0.2×0.8n\displaystyle {}= \sqrt{\frac{0.2 \times 0.8}{n}}=0.16n\displaystyle {}= \sqrt{\frac{0.16}{n}}=0.4n\displaystyle {}= \frac{0.4}{\sqrt{n}}

0.4n\dfrac{0.4}{\sqrt{n}}≦0.02{}\leqq 0.02 を解くと

n\displaystyle \sqrt{n}≧0.40.02\displaystyle {}\geqq \frac{0.4}{0.02}=20\displaystyle {}= 20  ⟺  n\displaystyle {}\iff n≧400\displaystyle {}\geqq 400

よって、nn の最小値は 400‾\underline{400} です。

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問12 ★★

あるコインを 1010 回投げたところ、表が 88 回出ました。「このコインは表が出やすい」といえるかどうかを、有意水準 0.050.05 で判断します。帰無仮説は「表と裏の出やすさは同じ(表が出る確率は 12\frac{1}{2})」とします。帰無仮説のもとで表が 88 回以上出る確率と、その結論をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

確率は 7128\dfrac{7}{128}(約 0.05470.0547)。帰無仮説は棄却されず、このコインは表が出やすいとは判断できない。

解説

表の回数を XX とすると、帰無仮説のもとで XX は B(10, 12)B\left(10,\ \dfrac{1}{2}\right) に従い、P(X=k)P(X = k)=10Ck1024{}= \dfrac{{}_{10}\mathrm{C}_k}{1024} です。

10C8{}_{10}\mathrm{C}_8=45{}= 45,10C9{}_{10}\mathrm{C}_9=10{}= 10,10C10{}_{10}\mathrm{C}_{10}=1{}= 1 なので

P(X≧8)\displaystyle P(X \geqq 8)=45+10+11024\displaystyle {}= \frac{45 + 10 + 1}{1024}=561024\displaystyle {}= \frac{56}{1024}=7128‾\displaystyle {}= \underline{\frac{7}{128}}≒0.0547\displaystyle {}\fallingdotseq 0.0547

0.05470.0547>0.05{}> 0.05 なので、帰無仮説は 棄却されない‾\underline{\text{棄却されない}}。したがって、このコインは 表が出やすい‾\underline{\text{表が出やすい}} とは判断できない‾\underline{\text{とは判断できない}} となります。

1010 回中 88 回は多く見えますが、偏りのないコインでも 2020 回に 11 回より少し多い割合で起こる結果です。

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問13 ★★

第5章 実践 問16 では、あるコインを 1010 回投げて表が 11 回しか出なかった結果について、実験の相対度数 0.0100.010 を使い、有意水準 0.010.01 で「このコインは表が出にくい」と判断しました。帰無仮説「表が出る確率は 12\frac{1}{2}」のもとで表が 11 回以下になる確率を二項分布で正確に求め、同じ有意水準での結論を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

確率は 111024\dfrac{11}{1024}(約 0.01070.0107)。帰無仮説は棄却されず、このコインは表が出にくいとは判断できない。

解説

表の回数を XX とすると、帰無仮説のもとで XX は B(10, 12)B\left(10,\ \dfrac{1}{2}\right) に従います。対立仮説は「表が出にくい」なので、11 回以下の確率を求めます(公式5)。

P(X≦1)\displaystyle P(X \leqq 1)=10C0+10C11024\displaystyle {}= \frac{{}_{10}\mathrm{C}_0 + {}_{10}\mathrm{C}_1}{1024}=1+101024\displaystyle {}= \frac{1 + 10}{1024}=111024‾\displaystyle {}= \underline{\frac{11}{1024}}≒0.0107\displaystyle {}\fallingdotseq 0.0107

0.01070.0107>0.01{}> 0.01 なので、帰無仮説は 棄却されない‾\underline{\text{棄却されない}}。したがって、このコインは 表が出にくい‾\underline{\text{表が出にくい}} とは判断できない‾\underline{\text{とは判断できない}} となります。

実験の相対度数 0.0100.010 は本当の確率 0.01070.0107 よりわずかに小さく、有意水準 0.010.01 との大小が入れかわっていました。境目すれすれの判断では、正確な確率が必要です。

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問14 ★★

log⁡102\log_{10} 2=0.3010{}= 0.3010,log⁡103\log_{10} 3=0.4771{}= 0.4771 とします。11 個のさいころを nn 回投げるとき、11 の目が少なくとも 11 回出る確率が 0.90.9 以上になるような nn の最小値を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

1313

解説

11 の目が出る回数を XX とすると、XX は B(n, 16)B\left(n,\ \dfrac{1}{6}\right) に従います。

P(X≧1)\displaystyle P(X \geqq 1)=1\displaystyle {}= 1−P(X=0)\displaystyle {}- P(X = 0)=1\displaystyle {}= 1−(56)n\displaystyle {}- \left(\frac{5}{6}\right)^n≧0.9\displaystyle {}\geqq 0.9  ⟺  (56)n\displaystyle {}\iff \left(\frac{5}{6}\right)^n≦0.1\displaystyle {}\leqq 0.1

両辺の常用対数をとると

nlog⁡1056\displaystyle n \log_{10} \frac{5}{6}≦−1\displaystyle {}\leqq -1

ここで log⁡105\log_{10} 5=1{}= 1−log⁡102{}- \log_{10} 2=0.6990{}= 0.6990,log⁡106\log_{10} 6=log⁡102{}= \log_{10} 2+log⁡103{}+ \log_{10} 3=0.7781{}= 0.7781 なので

log⁡1056\displaystyle \log_{10} \frac{5}{6}=0.6990\displaystyle {}= 0.6990−0.7781\displaystyle {}- 0.7781=−0.0791\displaystyle {}= -0.0791

負の数で割るので不等号の向きが変わり

n\displaystyle n≧10.0791\displaystyle {}\geqq \frac{1}{0.0791}=12.64⋯\displaystyle {}= 12.64\cdots

よって、nn の最小値は 13‾\underline{13} です。

確かめ:(56)12\left(\dfrac{5}{6}\right)^{12}≒0.112{}\fallingdotseq 0.112,(56)13\left(\dfrac{5}{6}\right)^{13}≒0.093{}\fallingdotseq 0.093 です。

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問15 ★★

硬貨を 1010 回投げて表が出る回数を XX、さいころを 1212 回投げて 33 の倍数の目が出る回数を YY とします。硬貨とさいころの結果は互いに影響しないものとします。

(1) XX+Y{}+ Y の期待値と分散

(2) XX−Y{}- Y の期待値と分散

上の (1)、(2) をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

(1) 期待値 99,分散 316\dfrac{31}{6} (2) 期待値 11,分散 316\dfrac{31}{6}

解説

XX は B(10, 12)B\left(10,\ \dfrac{1}{2}\right)、YY は B(12, 13)B\left(12,\ \dfrac{1}{3}\right) に従うので、公式2 より

E(X)\displaystyle E(X)=5,\displaystyle {}= 5,V(X)\displaystyle V(X)=10×12×12\displaystyle {}= 10 \times \frac{1}{2} \times \frac{1}{2}=52,\displaystyle {}= \frac{5}{2},E(Y)\displaystyle E(Y)=4,\displaystyle {}= 4,V(Y)\displaystyle V(Y)=12×13×23\displaystyle {}= 12 \times \frac{1}{3} \times \frac{2}{3}=83\displaystyle {}= \frac{8}{3}

(1) 和の期待値は期待値の和で、XX と YY は独立なので分散も足せます(第6章 公式5・6)。

E(X+Y)\displaystyle E(X + Y)=5\displaystyle {}= 5+4\displaystyle {}+ 4=9‾,\displaystyle {}= \underline{9},V(X+Y)\displaystyle V(X + Y)=52\displaystyle {}= \frac{5}{2}+83\displaystyle {}+ \frac{8}{3}=316‾\displaystyle {}= \underline{\frac{31}{6}}

(2) 差の期待値は期待値の差ですが、独立な差の分散は足します。

E(X−Y)\displaystyle E(X - Y)=5\displaystyle {}= 5−4\displaystyle {}- 4=1‾,\displaystyle {}= \underline{1},V(X−Y)\displaystyle V(X - Y)=52\displaystyle {}= \frac{5}{2}+83\displaystyle {}+ \frac{8}{3}=316‾\displaystyle {}= \underline{\frac{31}{6}}

XX+Y{}+ Y は pp がそろっていないので、二項分布にはなりません。それでも期待値と分散は公式から求められます。

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問16 ★★

確率変数 XX が二項分布 B(5, p)B(5,\ p)(00<p{}< p<1{}< 1)に従い、P(X=1)P(X = 1)=P(X=2){}= P(X = 2) が成り立っています。pp の値と、XX の期待値と分散をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

pp=13{}= \dfrac{1}{3},期待値 53\dfrac{5}{3},分散 109\dfrac{10}{9}

解説

qq=1{}= 1−p{}- p とすると

P(X=1)\displaystyle P(X = 1)=5C1 pq4\displaystyle {}= {}_5\mathrm{C}_1\, p q^4=5pq4,\displaystyle {}= 5pq^4,P(X=2)\displaystyle P(X = 2)=5C2 p2q3\displaystyle {}= {}_5\mathrm{C}_2\, p^2 q^3=10p2q3\displaystyle {}= 10p^2 q^3

5pq45pq^4=10p2q3{}= 10p^2q^3 の両辺を 5pq35pq^3(≠0\neq 0)で割ると qq=2p{}= 2p、つまり 11−p{}- p=2p{}= 2p なので p=13‾\underline{p = \dfrac{1}{3}} です。

E(X)\displaystyle E(X)=5×13\displaystyle {}= 5 \times \frac{1}{3}=53‾,\displaystyle {}= \underline{\frac{5}{3}},V(X)\displaystyle V(X)=5×13×23\displaystyle {}= 5 \times \frac{1}{3} \times \frac{2}{3}=109‾\displaystyle {}= \underline{\frac{10}{9}}

公式3 の比で見ると、p2p1\dfrac{p_2}{p_1}=4p2q{}= \dfrac{4p}{2q}=1{}= 1 から qq=2p{}= 2p と同じ式が得られます。

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問17 ★★★

11 個のさいころを 2323 回投げ、11 の目が出る回数を XX とします。P(X=k)P(X = k) が最大になる kk の値をすべて求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

kk=3,{}= 3, 4\ 4

解説

XX は B(23, 16)B\left(23,\ \dfrac{1}{6}\right) に従います。pkp_k=P(X=k){}= P(X = k) とすると、公式3 より

pk+1pk\displaystyle \frac{p_{k+1}}{p_k}=(23−k)×16(k+1)×56\displaystyle {}= \frac{(23 - k) \times \frac{1}{6}}{(k + 1) \times \frac{5}{6}}=23−k5(k+1)\displaystyle {}= \frac{23 - k}{5(k + 1)}

この比と 11 の大小は、2323−k{}- k と 5k5k+5{}+ 5 の大小、つまり kk と 33 の大小で決まります。

  • kk<3{}< 3(kk=0,{}= 0, 1,\ 1, 2\ 2)のとき、比 >1> 1 で pk+1p_{k+1}>pk{}> p_k
  • kk=3{}= 3 のとき、比 =2020= \dfrac{20}{20}=1{}= 1 で p4p_4=p3{}= p_3
  • kk>3{}> 3(kk=4,{}= 4, …,\ \ldots, 22\ 22)のとき、比 <1< 1 で pk+1p_{k+1}<pk{}< p_k

よって

p0\displaystyle p_0<p1\displaystyle {}< p_1<p2\displaystyle {}< p_2<p3\displaystyle {}< p_3=p4\displaystyle {}= p_4>p5\displaystyle {}> p_5>⋯\displaystyle {}> \cdots>p23\displaystyle {}> p_{23}

となり、最大になるのは k=3,‾\underline{\rule[-0.1944em]{0em}{0.8888em}k = 3,} 4‾\underline{\rule[-0.1944em]{0em}{0.8888em}\ 4} の 2 つです(どちらも約 0.2140.214)。

(n+1)p(n + 1)p=24×16{}= 24 \times \dfrac{1}{6}=4{}= 4 が整数になるとき、このように最大が 2 か所で起こります(厳密定義のページ)。期待値 236\dfrac{23}{6}≒3.83{}\fallingdotseq 3.83 は 33 と 44 の間にあります。

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問18 ★★★

44 択の問題が 88 問あり、ある人が全問に答えました。484^8=65536{}= 65536 を使ってよいものとします。「この人はでたらめに答えた(各問の正解の確率は 14\frac{1}{4})」という帰無仮説を立て、「でたらめより多く正解できる」という対立仮説を調べます。

(1) 有意水準 0.050.05 で帰無仮説が棄却されるために必要な、正解数の最小値

(2) 有意水準 0.010.01 で帰無仮説が棄却されるために必要な、正解数の最小値

上の (1)、(2) をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

(1) 55 問 (2) 66 問

解説

正解数を XX とすると、帰無仮説のもとで XX は B(8, 14)B\left(8,\ \dfrac{1}{4}\right) に従い

P(X=k)\displaystyle P(X = k)=8Ck(14)k(34)8−k\displaystyle {}= {}_8\mathrm{C}_k \left(\frac{1}{4}\right)^k \left(\frac{3}{4}\right)^{8-k}=8Ck×38−k65536\displaystyle {}= \frac{{}_8\mathrm{C}_k \times 3^{8-k}}{65536}

です。kk の大きいほうから分子を求めます。

kk8Ck×38−k{}_8\mathrm{C}_k \times 3^{8-k}
811
78×3=248 \times 3 = 24
628×9=25228 \times 9 = 252
556×27=151256 \times 27 = 1512
470×81=567070 \times 81 = 5670

これを大きいほうから足していくと

P(X≧6)\displaystyle P(X \geqq 6)=1+24+25265536\displaystyle {}= \frac{1 + 24 + 252}{65536}=27765536\displaystyle {}= \frac{277}{65536}≒0.0042\displaystyle {}\fallingdotseq 0.0042 P(X≧5)\displaystyle P(X \geqq 5)=277+151265536\displaystyle {}= \frac{277 + 1512}{65536}=178965536\displaystyle {}= \frac{1789}{65536}≒0.0273\displaystyle {}\fallingdotseq 0.0273 P(X≧4)\displaystyle P(X \geqq 4)=1789+567065536\displaystyle {}= \frac{1789 + 5670}{65536}=745965536\displaystyle {}= \frac{7459}{65536}≒0.1138\displaystyle {}\fallingdotseq 0.1138

正解数 cc で棄却されるのは P(X≧c)P(X \geqq c) が有意水準以下のときで、この確率は cc が小さいほど大きくなります。

(1) P(X≧5)P(X \geqq 5)≒0.0273{}\fallingdotseq 0.0273≦0.05{}\leqq 0.05,P(X≧4)P(X \geqq 4)≒0.1138{}\fallingdotseq 0.1138>0.05{}> 0.05 なので、最小値は 5 問‾\underline{5 \text{ 問}} です。

(2) P(X≧6)P(X \geqq 6)≒0.0042{}\fallingdotseq 0.0042≦0.01{}\leqq 0.01,P(X≧5)P(X \geqq 5)≒0.0273{}\fallingdotseq 0.0273>0.01{}> 0.01 なので、最小値は 6 問‾\underline{6 \text{ 問}} です。

有意水準を厳しくすると、「でたらめではない」と判断するのに必要な正解数が増えます。

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問19 ★★★

nn 枚の硬貨を同時に投げ、表が出る枚数を XX とします。X2X^2 の期待値が 6060 であるとき、nn の値を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

nn=15{}= 15

解説

XX は B(n, 12)B\left(n,\ \dfrac{1}{2}\right) に従うので、E(X)E(X)=n2{}= \dfrac{n}{2},V(X)V(X)=n4{}= \dfrac{n}{4} です。第6章 公式3 の V(X)V(X)=E(X2){}= E(X^2)−{E(X)}2{}- \{E(X)\}^2 を変形すると

E(X2)\displaystyle E(X^2)=V(X)\displaystyle {}= V(X)+{E(X)}2\displaystyle {}+ \{E(X)\}^2=n4\displaystyle {}= \frac{n}{4}+n24\displaystyle {}+ \frac{n^2}{4}

これが 6060 に等しいので

n2+n4\displaystyle \frac{n^2 + n}{4}=60\displaystyle {}= 60  ⟺  n2\displaystyle {}\iff n^2+n\displaystyle {}+ n−240\displaystyle {}- 240=0\displaystyle {}= 0  ⟺  (n−15)(n+16)\displaystyle {}\iff (n - 15)(n + 16)=0\displaystyle {}= 0

nn は正の整数なので n=15‾\underline{n = 15} です。

確かめ:nn=15{}= 15 のとき E(X2)E(X^2)=154{}= \dfrac{15}{4}+2254{}+ \dfrac{225}{4}=2404{}= \dfrac{240}{4}=60{}= 60 です。

一般に B(n, p)B(n,\ p) では E(X2)E(X^2)=np(1−p){}= np(1 - p)+n2p2{}+ n^2p^2 となります。

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問20 ★★★

11 回の成功率が pp(00<p{}< p<1{}< 1)の試行を 1010 回くり返し、成功した回数を XX とします。成功した回数と失敗した回数の積 YY=X(10−X){}= X(10 - X) を得点とします。

(1) YY の期待値を pp で表した式

(2) (1) の期待値の最大値と、そのときの pp の値

上の (1)、(2) をそれぞれ求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

(1) E(Y)E(Y)=90p(1−p){}= 90p(1 - p) (2) pp=12{}= \dfrac{1}{2} のとき最大値 452\dfrac{45}{2}

解説

(1) XX は B(10, p)B(10,\ p) に従うので、qq=1{}= 1−p{}- p として

E(X)\displaystyle E(X)=10p,\displaystyle {}= 10p,E(X2)\displaystyle E(X^2)=V(X)\displaystyle {}= V(X)+{E(X)}2\displaystyle {}+ \{E(X)\}^2=10pq\displaystyle {}= 10pq+100p2\displaystyle {}+ 100p^2

YY=10X{}= 10X−X2{}- X^2 なので、期待値の線形性(第6章 公式5)より

E(Y)\displaystyle E(Y)=10E(X)\displaystyle {}= 10E(X)−E(X2)\displaystyle {}- E(X^2)=100p\displaystyle {}= 100p−10pq\displaystyle {}- 10pq−100p2\displaystyle {}- 100p^2=100pq\displaystyle {}= 100pq−10pq\displaystyle {}- 10pq=90p(1−p)‾\displaystyle {}= \underline{90p(1 - p)}

(100p100p−100p2{}- 100p^2=100p(1−p){}= 100p(1 - p)=100pq{}= 100pq を使いました。)

(2) 平方完成すると

90p(1−p)\displaystyle 90p(1 - p)=−90(p−12)2\displaystyle {}= -90\left(p - \frac{1}{2}\right)^2+452\displaystyle {}+ \frac{45}{2}

00<p{}< p<1{}< 1 の範囲で、p=12‾\underline{p = \dfrac{1}{2}} のとき最大値 452‾\underline{\dfrac{45}{2}} をとります。

確かめ(pp=12{}= \dfrac{1}{2}):E(X)E(X)=5{}= 5,V(X)V(X)=52{}= \dfrac{5}{2} なので E(X2)E(X^2)=52{}= \dfrac{5}{2}+25{}+ 25=552{}= \dfrac{55}{2}、E(Y)E(Y)=50{}= 50−552{}- \dfrac{55}{2}=452{}= \dfrac{45}{2} です。

E(Y)E(Y) は 10×910 \times 9=90{}= 90 に p(1−p)p(1 - p) をかけた形で、「成功と失敗の組を順番を区別して選ぶ 9090 通り」の期待値として読むこともできます(厳密定義のページ 定理3)。

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数学小話コーナー

2万6000回投げられたさいころ

さいころは本当に公平なのでしょうか。これを、とてつもない回数の実験で確かめようとした人がいます。イギリスの動物学者ウォルター・ウェルドンです。

ウェルドンは、1212 個のさいころをまとめて投げ、55 か 66 の目が出たさいころの個数を数える、という実験をくり返しました。記録された回数は 2630626306 回。さいころ 1 個ずつに直すと、延べ 30 万個を超えます。1894 年、彼はこの結果を、進化や遺伝の研究仲間だったフランシス・ゴルトンへの手紙で報告しています。

さいころが公平なら、55 か 66 が出る個数はこの章の二項分布 B(12, 13)B\left(12,\ \dfrac{1}{3}\right) に従い、期待値は 12×1312 \times \dfrac{1}{3}=4{}= 4 個です。ところが記録の平均は約 4.054.05 個で、55 か 66 がわずかに出すぎていました。0.050.05 個の差は小さく見えますが、2 万回以上の平均です。公式4 の考え方で、回数が多いほど平均のぶれは小さくなるので、この差は偶然では説明しにくい大きさでした。

原因としてよく挙げられるのは、さいころの作り方です。当時のさいころは目の数だけ表面をくぼませていたので、66 の面や 55 の面は削られた分だけ軽くなり、その反対側が下になりやすい、つまり 55 や 66 が上を向きやすい、というわけです(※原因については諸説あり)。

豆知識

ウェルドンの記録は、同僚のカール・ピアソン(第3章の小話に登場)が 1900 年に発表した「カイ二乗検定」の例として使われ、「このさいころは公平とはいえない」という結論が示されました。表の度数と、二項分布から計算した理論上の度数のずれを 1 つの数にまとめて検定する方法で、いまでもアンケートの集計などで広く使われています。

馬に蹴られた兵士と「少数の法則」

めったに起こらない出来事にも、数えてみると規則があります。その有名な例が、ロシア生まれの統計学者ラディスラウス・ボルトキェヴィチが 1898 年の本『少数の法則』で紹介した、プロイセン陸軍の記録です。

調べたのは、「騎兵の部隊で、1 年間に馬に蹴られて亡くなった兵士の数」でした。よく引用されるのは、10 の部隊の 20 年分、合わせて 200200 件の「部隊 × 年」の記録です。

1 年の死者数01234計
件数109652231200

死者は合計 122122 人で、1 件あたりの平均は 0.610.61 人です。

兵士の人数を nn、1 人が 1 年のうちに馬に蹴られて亡くなる確率を pp とすると、死者数は二項分布 B(n, p)B(n,\ p) に従うと考えられます。nn はとても大きく、pp はとても小さい一方、期待値 npnp は 0.610.61 ほどです。このように「npnp を一定に保ったまま nn を大きくしていく」と、二項分布はある決まった形の分布に近づきます。フランスの数学者シメオン・ドニ・ポアソンが 1837 年に示したもので、いまではポアソン分布と呼ばれています(厳密定義のページ 定理6)。

期待値 0.610.61 のポアソン分布から 200200 件のうちの件数を計算すると、00 人から順に約 108.7108.7,66.366.3,20.220.2,4.14.1,0.60.6 となり、表の実際の件数とよく合います。一人ひとりにとってはまれな偶然でも、大勢をまとめると、起こる回数の分布は驚くほど安定しているのです。

豆知識

ポアソン(Poisson)という姓は、フランス語で「魚」という意味です。ポアソン分布は、1 日にかかってくる間違い電話の数や、1 ページの誤植の数のように、「機会はたくさんあるが、1 回ごとにはめったに起こらない」出来事の回数を表すのによく使われます。

満席なのに予約を多めに受ける理由

飛行機の予約では、座席の数より多くの予約を受け付けることがあります。これをオーバーブッキングといいます。予約した人の中には、予定が変わって当日現れない人が一定の割合でいるからです。空席のまま飛ばすと、航空会社にとってはその分の売り上げが失われます。

ここで、架空の数値で考えてみましょう。座席は 100100 席で、予約した人がそれぞれ確率 0.950.95 で現れ、互いに影響しないとします。予約を ss 席分受けると、現れる人の数は二項分布 B(s, 0.95)B(s,\ 0.95) に従います。現れた人が 100100 人を超えると、誰かが乗れなくなります。

受け付ける予約数 ss100101102103105
現れる人数の期待値9595.9596.997.8599.75
101 人以上現れる確率0約 0.006約 0.034約 0.107約 0.392

予約を 102102 席分受ければ、乗れない人が出る確率は 33% ほどに抑えつつ、空席の見込みを減らせます。105105 席分まで増やすと、期待値は 100100 人未満なのに、約 44 割の便で乗れない人が出てしまいます。期待値だけで判断してはいけない、という例です。実際の航空会社は、路線や曜日ごとの過去の記録から現れる確率を見積もり、乗れなかった人への補償の費用も含めて、受け付ける数を決めていると考えられます。

豆知識

工場で作った製品の山から一部だけを取り出して調べる抜き取り検査でも、二項分布が使われます。「5050 個調べて不良品が 11 個以下なら、山全体を合格とする」と決めておくと、不良品の割合が pp の山が合格になる確率は P(X≦1)P(X \leqq 1)(XX は B(50, p)B(50,\ p) に従う)で計算できます。pp ごとにこの確率をグラフにしたものは、検査の性能を表す曲線として使われています。

厳密定義(発展)

※ここは発展ページです。独立な試行を直積の確率分布として定めることと、反復試行の確率 nCk pkqn−k{}_n\mathrm{C}_k\, p^k q^{n-k} の総和が (p+q)n(p + q)^n=1{}= 1 になることは、場合の数と確率の分野 第7章の厳密定義で示しました(以下「確率 第7章 定理◯」と書きます)。期待値の線形性は確率 第9章、分散と独立な和の分散は第6章の厳密定義で証明済みです。ここではそれらの上に二項分布を定め、期待値・分散を 2 通りに証明し、分布の形・和・パラメータとの関係・極限を調べます。

以下、00<p{}< p<1{}< 1,qq=1{}= 1−p{}- p とします。

二項分布の定義

定義1:ベルヌーイ試行と二項分布

結果が「成功」「失敗」の 2 通りで、成功の確率が pp である試行をベルヌーイ試行という。成功を 11、失敗を 00 で表し、UnU_n={0, 1}n{}= \{0,\ 1\}^n(長さ nn の 00,11 の列全体)の上に

p(ω)\displaystyle p(\omega)=p ω1+⋯+ωn q n−(ω1+⋯+ωn)\displaystyle {}= p^{\,\omega_1 + \cdots + \omega_n}\, q^{\,n - (\omega_1 + \cdots + \omega_n)}(ω=(ω1, …, ωn))\displaystyle (\omega = (\omega_1,\ \ldots,\ \omega_n))

で確率分布を定める(ベルヌーイ試行を nn 回独立にくり返した直積の確率分布。確率 第7章 定義1)。Xk(ω)X_k(\omega)=ωk{}= \omega_k,XX=X1{}= X_1+⋯{}+ \cdots+Xn{}+ X_n とするとき、XX の確率分布を二項分布 B(n, p)B(n,\ p) という。

X(ω)X(\omega)=k{}= k となる ω\omega は、nn 個の位置から 11 を置く kk か所を選ぶ nCk{}_n\mathrm{C}_k 通りで、どれも p(ω)p(\omega)=pkqn−k{}= p^k q^{n-k} です。したがって P(X=k)P(X = k)=nCk pkqn−k{}= {}_n\mathrm{C}_k\, p^k q^{n-k} で、その総和が 11 になることは確率 第7章 定理4 そのものです。本文の公式1 は、この定義を表にしたものです。

一般に、確率変数 YY の分布が B(n, p)B(n,\ p) と同じ表になるとき、「YY は B(n, p)B(n,\ p) に従う」といいます。YY がどんな試行の上で定まっているかは問いません。

各 XkX_k は 11 を確率 pp、00 を確率 qq でとり、X1,X_1, …,\ \ldots, Xn\ X_n は互いに独立です(第6章 定義3。直積の確率分布が各成分の確率の積になっているため)。B(1, p)B(1,\ p) をベルヌーイ分布ともいいます。

期待値と分散

定理1:二項分布の期待値と分散

XX が B(n, p)B(n,\ p) に従うとき、E(X)E(X)=np{}= np,V(X)V(X)=npq{}= npq である。

証明 1(和に分ける) 定義1 の XX=X1{}= X_1+⋯{}+ \cdots+Xn{}+ X_n について、E(Xk)E(X_k)=p{}= p,E(Xk2)E(X_k^2)=E(Xk){}= E(X_k)=p{}= p(Xk2X_k^2=Xk{}= X_k)なので V(Xk)V(X_k)=p{}= p−p2{}- p^2=pq{}= pq である。期待値の線形性(確率 第9章 定理2)より E(X)E(X)=np{}= np。X1,X_1, …,\ \ldots, Xn\ X_n は互いに独立なので、第6章 定理5 より V(X)V(X)=npq{}= npq。

証明 2(表から直接) 11≦k{}\leqq k≦n{}\leqq n で

k⋅nCk\displaystyle k \cdot {}_n\mathrm{C}_k=k⋅n!k! (n−k)!\displaystyle {}= k \cdot \frac{n!}{k!\,(n-k)!}=n⋅(n−1)!(k−1)! (n−k)!\displaystyle {}= n \cdot \frac{(n-1)!}{(k-1)!\,(n-k)!}=n⋅n−1Ck−1\displaystyle {}= n \cdot {}_{n-1}\mathrm{C}_{k-1}

が成り立つ。よって、jj=k{}= k−1{}- 1 とおき、確率 第7章 定理4 を nn−1{}- 1 で使うと

E(X)\displaystyle E(X)=∑k=1nn⋅n−1Ck−1 pkqn−k\displaystyle {}= \sum_{k=1}^{n} n \cdot {}_{n-1}\mathrm{C}_{k-1}\, p^k q^{n-k}=np∑j=0n−1n−1Cj pjq(n−1)−j\displaystyle {}= np \sum_{j=0}^{n-1} {}_{n-1}\mathrm{C}_j\, p^j q^{(n-1)-j}=np(p+q)n−1\displaystyle {}= np (p + q)^{n-1}=np\displaystyle {}= np

分散は、定理3 で求める E(X(X−1))E(X(X-1))=n(n−1)p2{}= n(n-1)p^2 を使うと

V(X)\displaystyle V(X)=E(X(X−1))\displaystyle {}= E(X(X-1))+E(X)\displaystyle {}+ E(X)−{E(X)}2\displaystyle {}- \{E(X)\}^2=n(n−1)p2\displaystyle {}= n(n-1)p^2+np\displaystyle {}+ np−n2p2\displaystyle {}- n^2p^2=np\displaystyle {}= np−np2\displaystyle {}- np^2=npq\displaystyle {}= npq

(証明終)

証明 1 は本文の説明そのもので、第6章の厳密定義の末尾で予告したとおり、定理5 から EE と VV が一度に得られます。証明 2 は nCk{}_n\mathrm{C}_k の性質だけで押し切る方法で、二項分布以外の分布にも応用が利きます。

積の期待値と組の数え上げ

定理2:k⋅nCkk \cdot {}_n\mathrm{C}_k の等式

22≦k{}\leqq k≦n{}\leqq n で k(k−1) nCkk(k-1)\,{}_n\mathrm{C}_k=n(n−1) n−2Ck−2{}= n(n-1)\,{}_{n-2}\mathrm{C}_{k-2} である。

証明 定理1 の証明 2 の等式を 2 回使うと

k(k−1) nCk\displaystyle k(k-1)\,{}_n\mathrm{C}_k=(k−1)⋅n n−1Ck−1\displaystyle {}= (k-1) \cdot n\,{}_{n-1}\mathrm{C}_{k-1}=n⋅(n−1) n−2Ck−2\displaystyle {}= n \cdot (n-1)\,{}_{n-2}\mathrm{C}_{k-2}

(証明終)

nn 人から kk 人の委員を選び、その中から委員長と副委員長を 1 人ずつ決める方法を 2 通りに数えた式、と読むこともできます(左辺は委員が先、右辺は委員長・副委員長が先)。

定理3:階乗モーメント

XX が B(n, p)B(n,\ p) に従うとき

E(X(X−1))\displaystyle E(X(X-1))=n(n−1)p2,\displaystyle {}= n(n-1)p^2,E(X(n−X))\displaystyle E(X(n - X))=n(n−1)pq\displaystyle {}= n(n-1)pq

である。

証明 (第1式)定理2 を使って定理1 の証明 2 と同じように計算すると

E(X(X−1))\displaystyle E(X(X-1))=∑k=2nn(n−1) n−2Ck−2 pkqn−k\displaystyle {}= \sum_{k=2}^{n} n(n-1)\,{}_{n-2}\mathrm{C}_{k-2}\, p^k q^{n-k}=n(n−1)p2(p+q)n−2\displaystyle {}= n(n-1)p^2 (p + q)^{n-2}=n(n−1)p2\displaystyle {}= n(n-1)p^2

(第2式)別の見方で示す。X(ω)X(\omega)=k{}= k のとき、X(n−X)X(n - X)=k(n−k){}= k(n - k) は「ωi\omega_i=1{}= 1 かつ ωj\omega_j=0{}= 0」となる順序づけた添字の組 (i, j)(i,\ j) の個数に等しい。よって

X(n−X)\displaystyle X(n - X)=∑i≠jXi(1−Xj)\displaystyle {}= \sum_{i \neq j} X_i (1 - X_j)

(和は ii≠j{}\neq j となる n(n−1)n(n-1) 組の (i, j)(i,\ j) にわたる)。ii≠j{}\neq j なら XiX_i と 11−Xj{}- X_j は独立(第6章 定理3)なので E(Xi(1−Xj))E(X_i(1 - X_j))=pq{}= pq(確率 第9章 定理5)であり、線形性から E(X(n−X))E(X(n - X))=n(n−1)pq{}= n(n-1)pq を得る。(証明終)

第1式も、同じように X(X−1)X(X-1)=∑i≠jXiXj{}= \sum_{i \neq j} X_i X_j と E(XiXj)E(X_i X_j)=p2{}= p^2 から出せます。本文の実践 問20 は nn=10{}= 10 の第2式で、10×910 \times 9=90{}= 90 の由来はこの組の数です。

分布の形

定理4:確率が最大になる回数と対称性

XX が B(n, p)B(n,\ p) に従い、pkp_k=P(X=k){}= P(X = k),mm=(n+1)p{}= (n + 1)p とする。

(1) mm が整数でなければ、pkp_k を最大にする kk は ⌊m⌋\lfloor m \rfloor(mm を超えない最大の整数)ただ 1 つである。mm が整数ならば、kk=m{}= m−1{}- 1 と kk=m{}= m の 2 つで最大になる。

(2) (1) で最大を与える kk は、どれも ∣k−np∣|k - np|<1{}< 1 を満たす。

(3) pp=12{}= \dfrac{1}{2} のとき、すべての kk で pkp_k=pn−k{}= p_{n-k} である。

証明 (1) は確率 第7章 定理5 である(本文の公式3 の比 pk+1pk\dfrac{p_{k+1}}{p_k}>1{}> 1  ⟺  k{}\iff k<m{}< m−1{}- 1 から従う)。

(2) (1) の kk は mm−1{}- 1≦k{}\leqq k≦m{}\leqq m を満たす。mm=np{}= np+p{}+ p なので

p\displaystyle p−1\displaystyle {}- 1≦k\displaystyle {}\leqq k−np\displaystyle {}- np≦p\displaystyle {}\leqq p

で、00<p{}< p<1{}< 1 より −1-1<k{}< k−np{}- np<1{}< 1 である。

(3) nCk{}_n\mathrm{C}_k=nCn−k{}= {}_n\mathrm{C}_{n-k} と pp=q{}= q から直ちに従う。(証明終)

(1) の最大を与える値を、分布の最頻値(第1章のモードの確率版)といいます。(2) により、最頻値は期待値 npnp からつねに 11 未満しか離れていません。本文の例題3(mm=6.3{}= 6.3 で 66)と実践 問17(mm=4{}= 4 で 33 と 44)が (1) の 2 つの場合にあたります。

二項分布の和

定理5:二項分布の再生性

XX が B(m, p)B(m,\ p)、YY が B(n, p)B(n,\ p) に従い、XX と YY が独立ならば、XX+Y{}+ Y は B(m+n, p)B(m + n,\ p) に従う。

証明 00≦k{}\leqq k≦m{}\leqq m+n{}+ n とする。独立性から

P(X+Y=k)\displaystyle P(X + Y = k)=∑iP(X=i) P(Y=k−i)\displaystyle {}= \sum_{i} P(X = i)\,P(Y = k - i)=∑imCi nCk−i  pkq(m+n)−k\displaystyle {}= \sum_{i} {}_m\mathrm{C}_i\, {}_n\mathrm{C}_{k-i}\; p^k q^{(m+n)-k}

(和は 00≦i{}\leqq i≦m{}\leqq m,00≦k{}\leqq k−i{}- i≦n{}\leqq n となる ii にわたる)。ここで、男子 mm 人・女子 nn 人から kk 人を選ぶ方法を、選ばれる男子の人数 ii で分けて数えると

∑imCi nCk−i\displaystyle \sum_{i} {}_m\mathrm{C}_i\, {}_n\mathrm{C}_{k-i}=m+nCk\displaystyle {}= {}_{m+n}\mathrm{C}_k

(ヴァンデルモンドの等式)である。よって P(X+Y=k)P(X + Y = k)=m+nCk pkq(m+n)−k{}= {}_{m+n}\mathrm{C}_k\, p^k q^{(m+n)-k} となる。(証明終)

「mm 回の反復試行と nn 回の反復試行を続けて行えば、mm+n{}+ n 回の反復試行」という当たり前の事実を、分布の計算で確かめたものです。成功の確率がそろっていることが必要で、本文の実践 問15 の B(10, 12)B\left(10,\ \frac{1}{2}\right) と B(12, 13)B\left(12,\ \frac{1}{3}\right) の和は二項分布になりません。例えば B(1, 12)B\left(1,\ \frac{1}{2}\right) と B(1, 13)B\left(1,\ \frac{1}{3}\right) の独立な和 SS は P(S=0)P(S = 0)=13{}= \frac{1}{3},P(S=1)P(S = 1)=12{}= \frac{1}{2},P(S=2)P(S = 2)=16{}= \frac{1}{6} ですが、B(2, r)B(2,\ r) で P(S=0)P(S = 0)=(1−r)2{}= (1-r)^2,P(S=2)P(S = 2)=r2{}= r^2 を同時に満たす rr はありません(11−r{}- r=13{}= \frac{1}{\sqrt{3}},rr=16{}= \frac{1}{\sqrt{6}} で、和が 11 にならない)。

仮説検定と確率 pp の関係

本文の公式5 では、帰無仮説を「pp=12{}= \frac{1}{2}」のように 1 つの値に決めて確率を計算しました。「pp≦12{}\leqq \frac{1}{2}」のように幅のある帰無仮説でも pp=12{}= \frac{1}{2} で計算すればよいことを、次の定理が保証します。

定理6:片側の確率は pp について増加する

nn と 11≦c{}\leqq c≦n{}\leqq n を固定し、XX が B(n, p)B(n,\ p) に従うときの P(X≧c)P(X \geqq c) を F(p)F(p) とおく。00<p{}< p<1{}< 1 で

F′(p)\displaystyle F'(p)=n⋅n−1Cc−1 pc−1(1−p)n−c\displaystyle {}= n \cdot {}_{n-1}\mathrm{C}_{c-1}\, p^{c-1} (1 - p)^{n-c}>0\displaystyle {}> 0

であり、F(p)F(p) は pp について増加する。

証明 aja_j=n−1Cj pj(1−p)n−1−j{}= {}_{n-1}\mathrm{C}_j\, p^j (1 - p)^{n-1-j}(00≦j{}\leqq j≦n{}\leqq n−1{}- 1)、ana_n=0{}= 0 とおく。11≦k{}\leqq k≦n{}\leqq n について、積の微分と、定理1 の証明 2 の等式 k⋅nCkk \cdot {}_n\mathrm{C}_k=n⋅n−1Ck−1{}= n \cdot {}_{n-1}\mathrm{C}_{k-1}、およびそれと同様に示せる (n−k) nCk(n-k)\,{}_n\mathrm{C}_k=n⋅n−1Ck{}= n \cdot {}_{n-1}\mathrm{C}_k を使うと

ddp(nCk pk(1−p)n−k)\displaystyle \frac{d}{dp}\Big({}_n\mathrm{C}_k\, p^k (1-p)^{n-k}\Big)=nCk(k pk−1(1−p)n−k\displaystyle {}= {}_n\mathrm{C}_k \Big(k\,p^{k-1}(1-p)^{n-k}−(n−k) pk(1−p)n−k−1)\displaystyle {}\qquad - (n-k)\,p^k (1-p)^{n-k-1}\Big)=n (ak−1−ak)\displaystyle {}= n\,(a_{k-1} - a_k)

となる(kk=n{}= n のときは第2項が 00 で、ana_n=0{}= 0 と合う)。kk=c{}= c から nn まで足すと、隣どうしが打ち消し合って

F′(p)\displaystyle F'(p)=n((ac−1−ac)+(ac−ac+1)\displaystyle {}= n\big((a_{c-1} - a_c) + (a_c - a_{c+1})+⋯+(an−1−an))\displaystyle {}\qquad + \cdots + (a_{n-1} - a_n)\big)=n (ac−1−an)\displaystyle {}= n\,(a_{c-1} - a_n)=n ac−1\displaystyle {}= n\,a_{c-1}

00<p{}< p<1{}< 1 で ac−1a_{c-1}>0{}> 0 なので F′(p)F'(p)>0{}> 0 である。(証明終)

したがって、帰無仮説が「pp≦12{}\leqq \frac{1}{2}」のとき、「XX≧c{}\geqq c となる確率」が最も大きくなるのは pp=12{}= \frac{1}{2} の場合です。pp=12{}= \frac{1}{2} で計算した確率が有意水準以下なら、幅の中のどの pp でも有意水準以下になり、第1種の誤りの確率(第5章 定義3)は有意水準を超えません。直感的には「成功しやすいほど、多く成功しやすい」という当然の事実ですが、式で確かめると上のように打ち消し合いの和になります。

まれな出来事の極限

定理7:ポアソンの少数の法則

λ\lambda>0{}> 0 を定数とし、nn>λ{}> \lambda に対して XnX_n が B(n, λn)B\left(n,\ \dfrac{\lambda}{n}\right) に従うとする。各 kk=0,{}= 0, 1,\ 1, 2,\ 2, …\ \ldots について

lim⁡n→∞P(Xn=k)\displaystyle \lim_{n \to \infty} P(X_n = k)=e−λ λkk!\displaystyle {}= e^{-\lambda}\,\frac{\lambda^k}{k!}

である。

証明 kk を固定し、nn>k{}> k とする。pp=λn{}= \dfrac{\lambda}{n} を代入して整理すると

P(Xn=k)\displaystyle P(X_n = k)=n(n−1)⋯(n−k+1)k!⋅λknk\displaystyle {}= \frac{n(n-1)\cdots(n-k+1)}{k!} \cdot \frac{\lambda^k}{n^k}⋅(1−λn)n−k\displaystyle \qquad \cdot \left(1 - \frac{\lambda}{n}\right)^{n-k}=λkk!⋅∏i=0k−1(1−in)\displaystyle {}= \frac{\lambda^k}{k!} \cdot \prod_{i=0}^{k-1} \left(1 - \frac{i}{n}\right)⋅(1−λn)n⋅(1−λn)−k\displaystyle \qquad \cdot \left(1 - \frac{\lambda}{n}\right)^{n} \cdot \left(1 - \frac{\lambda}{n}\right)^{-k}

nn→∞{}\to \infty で、有限個(kk 個)の積 ∏(1−in)\prod \left(1 - \frac{i}{n}\right) は 11 に、(1−λn)−k\left(1 - \frac{\lambda}{n}\right)^{-k} も 11 に収束する。また hh=−λn{}= -\dfrac{\lambda}{n} とおくと hh→0{}\to 0 で

(1−λn)n\displaystyle \left(1 - \frac{\lambda}{n}\right)^{n}={(1+h)1h}−λ\displaystyle {}= \Big\{(1 + h)^{\frac{1}{h}}\Big\}^{-\lambda}→e−λ\displaystyle {}\to e^{-\lambda}

である(微分積分の分野 第11章の ee の定義)。以上をかけ合わせて結論を得る。(証明終)

右辺の P(k)P(k)=e−λλkk!{}= e^{-\lambda}\dfrac{\lambda^k}{k!}(kk=0,{}= 0, 1,\ 1, 2,\ 2, …\ \ldots)を期待値 λ\lambda のポアソン分布といいます(小話 kb2)。とりうる値が無限個あるので、確率の合計が 11 になることは無限個の和 ∑k=0∞λkk!\displaystyle \sum_{k=0}^{\infty} \frac{\lambda^k}{k!}=eλ\displaystyle {}= e^{\lambda} を使って示します(大学で学ぶ exe^x の級数展開)。期待値 λ\lambda も分散 λ\lambda も、npnp=λ{}= \lambda,np(1−p)np(1-p)=λ(1−λn){}= \lambda\left(1 - \frac{\lambda}{n}\right)→λ{}\to \lambda の極限として納得できます。

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定理7 は「npnp を一定にして nn を大きくする」極限でした。一方、pp を固定したまま nn を大きくすると、期待値 npnp も標準偏差 npq\sqrt{npq} も大きくなり、分布は広がりながら左右対称な釣り鐘形に近づきます。標準化した X−npnpq\dfrac{X - np}{\sqrt{npq}} の分布は、nn→∞{}\to \infty で標準正規分布に近づくことが知られています(ド・モアブル=ラプラスの定理)。

例えば B(20, 12)B\left(20,\ \frac{1}{2}\right) では npnp=10{}= 10,npq\sqrt{npq}=5{}= \sqrt{5}≒2.24{}\fallingdotseq 2.24 で、「期待値から標準偏差の 22 倍以内」にあたる 66≦X{}\leqq X≦14{}\leqq 14 の確率は

1\displaystyle 1−2×217001048576\displaystyle {}- 2 \times \frac{21700}{1048576}≒0.959\displaystyle {}\fallingdotseq 0.959

です。第3章で「正規分布なら 2σ2\sigma 以上離れるのはおよそ 55%」と紹介した値に、nn=20{}= 20 でもう近くなっています。第8章では、この釣り鐘形の曲線を連続型の確率分布として定め、二項分布の確率を面積で近似する方法を学びます。

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