問1
の値を求めなさい。
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(、第3象限)
目次 / 三角比と三角関数 / 数学II
—— 単位円の点の座標を「実数 θ の関数」として読み直す ——
第5章の終わりで、単位円上の点 P を「一般角 θ の動径と単位円の交点」と読み直し、「どんな実数 θ にも P が 1 つ決まる」ことを確かめました。この章では、その P の x 座標・y 座標を cos θ・sin θ と呼び直して、sin・cos・tan を「すべての実数で定義された関数」=三角関数にします。第2章で 0° から 180° に広げたときと同じく、「もとの範囲では前の定義と一致する」ことを確認してから先へ進みます。象限ごとの符号、相互関係、そして第5章の j20 で出した「原点対称・x 軸対称・y 軸対称」を sin・cos の公式に書き直し、新しく「直線 y = x 対称(π/2 − θ)」を加えます。最後に「θ を動かすと sin θ がどう動くか」を単位円で追いかけて、第7章のグラフにつなぎます。
第5章の最後で確かめたことを、もう一度書きます。始線 を一般角 だけ回した動径は、 がどんな実数でも単位円とただ 1 点で交わります。その交点を とすると、どんな実数 に対しても点 が 1 つ決まる——つまり「 を入れると の座標が出てくる」対応は、実数全体で定義された関数です。この座標に、第2章と同じ名前を付けます。
一般角 の動径と単位円の交点を とするとき
と定める。こうして実数 に値を対応させる ,, を三角関数という。
時計の秒針を思い浮かべてください。秒針の先端の「高さ」と「中心から見た左右の位置」は、針が何周してきたかに関係なく、今どこを指しているかだけで決まります。一般角 の「何周したか」の部分は動径の位置に影響しないので、・ も「今の位置」だけで決まる——第5章の「時計の針は今どこを指しているかだけ読む」を、そのまま座標に翻訳したのが公式1です。
三角関数とは「一般角 の動径と単位円の交点の 座標・ 座標・その比」であり、実数全体で定義された関数( だけは を除く)だということです。
次の角 について、,, の値を求めなさい。
【解答】
(1) なので、動径は第3象限にあり、 軸の負の部分と の角をなします。 から 軸に下ろした垂線で直角三角形を作ると、斜辺 、角 なので 2 辺の長さはどちらも 。第3象限なので , ともに負です。
(2) の動径は、 の動径を 軸で折り返した位置(第4象限)にあります。大きさは の三角定規で読み、 座標だけ負にします。
(3) なので、動径は と同じ位置、 です。
第2章と同じ「三角定規で大きさ・位置で符号」の 2 段階です。違うのは、 が 軸の下(第3・第4象限)にも来るので、 も負になりうることです。
第2章では「 と は鈍角で負」でした。動径が下半分にも来る今は、 の符号も加わって 4 通りになります。
| 動径の位置 | 第1象限 | 第2象限 | 第3象限 | 第4象限 |
|---|---|---|---|---|
| ( 座標) | ||||
| ( 座標) | ||||
| () |
地図の方角で考えると覚えやすくなります。原点を自分の家、 軸の正の向きを東、 軸の正の向きを北とすると、 は「東西のどちらにどれだけ」、 は「南北のどちらにどれだけ」です。第2象限は北西なので「北= は正、西= は負」、第3象限は南西なので両方とも負、第4象限は南東なので「南= が負、東= が正」。 は 2 つの比なので、東西と南北の符号が同じ(北東・南西)で正です。
三角関数の符号は動径のある象限で決まり、 は上半分、 は右半分、 は第1・第3象限で正になるということです。
(1) のとき、,, の符号を求めなさい。
(2) かつ のとき、 の動径は第何象限にあるか答えなさい。
【解答】
(1) は と の間なので、動径は第4象限にあります。公式2より
(2) より と は同符号。 なので でもあります。両方とも負になるのは第3象限です。
「積が正 ⇒ 同符号」と読み替えてから表を見る、という順番です。
第1章で三平方の定理から、第2章で円の方程式から導いた相互関係の式は、 がどんな実数でも同じ形で成り立ちます。理由は変わりません——点 は単位円 の上にあるからです。
電車はどれだけ走ってもレールから降りません。単位円がレール、点 が電車です。 が増えても減っても、1 周しても逆走しても、 の座標はつねにレールの式 を満たす——それが (1) です。座標の値は刻々と変わるのに、この 1 本の関係だけは決して崩れません。
相互関係の 3 つの式は、 が単位円から離れないという事実そのものなので、角の範囲を実数全体に広げても同じ形で使えるということです。
の動径が第4象限にあり、 のとき、, の値を求めなさい。
【解答】
公式3(1) より
第4象限では なので
公式3(2) より
第2章までは「 は負にならない」と決めつけられましたが、今は の符号も象限で確かめます。「第4象限 ⇒ が負」を最初に書いてから計算を始めると、符号の付け忘れが減ります。
第5章の j20 で、角 の点 に対して
でした。公式1で , と呼び直せば、この 3 つの図がそのまま公式になります。さらに、 の動径は の動径と同じ位置なので、点も同じです。
を整数とする。
| 角 | 図の意味 | |||
|---|---|---|---|---|
| 同じ動径( 周の差) | ||||
| 軸対称 | ||||
| 原点対称(半周) | ||||
| 軸対称 |
紙に単位円と点 を描き、折り紙のように扱ってみてください。 軸で谷折りすると は に重なり(高さだけ反転=)、 軸で折ると に重なり(左右だけ反転=)、紙を机の上で半回転させると に来ます(両方反転=)。第2章の「鏡」は 軸で折ることだけでしたが、今は折る線が 2 本と、回す操作が 1 つに増えました。表を丸暗記するより、「どの線で折ったか」を思い出すほうが確実です。
は 軸対称、 は原点対称、 は 軸対称なので、符号だけが変わり、 は同じ動径なので何も変わらないということです。
次の値を求めなさい。
【解答】
(1) なので、原点対称の行より
(2) 軸対称の行より、 は変わりません。
(3) なので、 軸対称の行より
(4) なので
どの公式を使っても、最後は から までの角(三角定規の角)の値に帰着します。まず を足し引きして に入れ、次に や の形に分解する、という順で進めます。
公式4の 3 つの対称は、 軸・ 軸・原点でした。もう 1 本、大事な折り線があります。直線 です。第1章の の公式( と が入れ替わる)は、この折り線の話でした。第5章では触れていないので、ここで初めて扱います。
角 の動径は、 軸の正の部分(角 )から時計回りに 戻った位置です。角 の動径が 軸から反時計回りに 進んだ位置なので、2 本の動径は 軸と 軸のちょうど真ん中の直線 について対称です。直線 で折り返すと、点の 座標と 座標が入れ替わります。
| 角 | 図の意味 | |||
|---|---|---|---|---|
| 直線 対称(座標の入れ替え) | ||||
| で折ってから 軸で折る |
正方形の折り紙を対角線で折ると、タテの長さとヨコの長さが入れ替わります。単位円を描いた紙を直線 (対角線)で折るのも同じで、 の「高さ」が折り返した点の「横の位置」になります。公式4の折り線( 軸・ 軸)は符号を変えるだけでしたが、対角線で折ると役割そのものが入れ替わる——だから が になります。
は直線 対称なので と が入れ替わり、 はそれに 軸対称を重ねたものなので に負がつくということです。
(1) を、 と見て公式5で求めなさい。
(2) を、 と見て公式5で求めなさい。
(3) を簡単にしなさい。ただし ( は整数)とします。
【解答】
(1) 公式5の 2 行目より
(2) 同じく 2 行目の より
(3) 公式5の 1 行目より なので
(1) は と見て公式4で としても同じ値です。どちらの分解でも答えは一致します——公式が「正しく作られている」ことの小さな確認になっています。
第1章で「 が増えると は増える」と書きました。あれは角を鋭角に限っていたからで、一般角ではそうなりません。点 を単位円の上で反時計回りに動かして、 座標()を追いかけてみます。
そして で は出発点に戻り、以後は同じことの繰り返しです(公式4の )。この「 ごとに同じ値に戻る」性質を周期といい、第7章で正確に定義します。 は と の間を行ったり来たりする——第2章の小話で「観覧車のゴンドラの影は一直線上を往復する」と書いたのは、この動きのことでした。
も も実数なので、横軸に 、縦軸に をとれば、ふつうの関数と同じようにグラフが描けます。上の 4 段階の増減をつなげると、なめらかな波の形になるはずです。第7章では、その波(サインカーブ)と ・ のグラフを描き、公式5の「」が「 のグラフを横に ずらすと のグラフになる」という意味だったことを確かめます。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
の値を求めなさい。
(、第3象限)
問2
の値を求めなさい。
()
問3
の値を求めなさい。
(、)
問4
の動径が第3象限にあるとき、 の符号を求めなさい。
(第3象限では 座標が負)
問5
を で表しなさい。
(原点対称)
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
のとき、,, の値を求めなさい。
なので、動径は第3象限にあり、 軸の負の部分と の角をなします。大きさは の三角定規、符号は第3象限なので , ともに負です。
は負÷負で正です。第3象限で が正になるのは、公式2の表の通りです。
問2 ★
のとき、,, の値を求めなさい。
の動径は、 の動径を 軸で折り返した位置(第4象限)です。公式4の 軸対称の行より
負の角では 座標だけが反転します。 はそのままです。
問3 ★
のとき、,, の値を求めなさい。
まず を引いて に入れます。
よって動径は の位置(第2象限)にあります。 軸対称の行より
「 を足し引きする → の形に分解する」の 2 段階です。
問4 ★
のとき、, の値を求めなさい。また、 が定義されるかどうかを確かめなさい。
, は定義しない
の動径は 軸の負の部分にあり、単位円との交点は です。
なので は で割ることになり、定義しません。 が定義されないのは のときで、 は の場合です。
問5 ★
(1) かつ
(2) かつ
上の (1),(2) それぞれについて、条件を満たす の動径がある象限を求めなさい。
(1) 第3象限 (2) 第2象限
公式2の表を使います。
(1) なのは第1象限か第3象限。そのうち なのは第3象限です。
(2) なのは第2象限か第3象限。そのうち なのは第2象限です。
2 つの条件で象限を 1 つに絞る問題です。 の符号は「 と の符号が同じか違うか」と読み替えると速いです。
問6 ★
の動径が第3象限にあり、 のとき、, の値を求めなさい。
公式3(1) より
第3象限では なので
第1章・第2章と同じ の数値ですが、第3象限なので も も負、 だけ正です。
問7 ★
上の 3 つを、 より大きく より小さい角の三角関数で表しなさい。また、その値を求めなさい。
(1) (2) (3)
(1) なので、 軸対称の行より
(2) なので、原点対称の行より
(3) 軸対称の行より
公式4を使えば、どんな角の三角関数も から の角の値に直せます。
問8 ★
上の式を簡単にして、 で表しなさい。
1 項ずつ公式で書き直します。
したがって
が絡む 2 つは と が入れ替わり、 が絡む 2 つは入れ替わらない——この見分けが要点です。
問9 ★★
の動径が第2象限にあり、 のとき、, の値を求めなさい。
第2象限では なので
の直角三角形です。第2象限なので と が負、 は正です。
問10 ★★
のとき、, の値を求めなさい。
公式3(3) より
なので、動径は第1象限か第3象限にあります。象限が指定されていないので、 は正・負の両方がありえます。
なので、 と同じ符号になります。
前者が第1象限、後者が第3象限です。 の値だけでは象限が 1 つに決まらないので、答えは 2 組になります(第2章の例題4と同じ状況)。
問11 ★★
のとき、 と の値を求めなさい。
両辺を 2 乗して を使います。
3 乗の和は、 を使って
なので、動径は第2象限か第4象限にあります。「和を 2 乗すると積が出る」のは、 があるからです。
問12 ★★
のとき、 と の値を求めなさい。
両辺を 2 乗します。
は ・ に直して通分します。
は、この先も何度も使う変形です。
問13 ★★
上の式の値を求めなさい。
各因数を書き直します。
したがって
公式で書き直したあと、相互関係で 1 つの数にまとまる問題です。 によらず値が決まります。
問14 ★★
の値を求めなさい。
3 つとも、 を足し引きして に入れてから公式4を使います。
負の角は の公式で処理しても構いません。 で同じ値です。
問15 ★★
の動径が第3象限にあるとき、,, の符号をそれぞれ求めなさい。
まず公式で の三角関数に直し、次に第3象限の符号(,,)を当てはめます。
図で確かめるなら、第3象限の動径を 回すと第4象限( が負)、 軸で折ると第4象限( が正)、半周回すと第1象限( が正)です。
問16 ★★
のとき、次の等式が成り立つことを示しなさい。
また、 と をそれぞれ , で表しなさい。
(和は )
公式3(3) より なので
したがって
(証明終)
だけで書かれた式は、 で に戻すのが定石です。
問17 ★★★
の値を求めなさい。
の値は三角定規では出ません。そこで 4 つの角を の三角関数にそろえることを考えます。
したがって
値が分からない角でも、 で を に変え、 で をそろえれば、相互関係で消えます。「足して になる組を探す」のがこの型の要点です。
問18 ★★★
であることを用いて、次の等式が成り立つことを示しなさい。ただし については ( は整数)とします。
また、この等式を用いて の値を求めなさい。
(証明)
とおくと です。公式4の原点対称の行と公式5の 1 行目を順に使います。
(証明終)
なので
と見て としても同じです。公式4と公式5を組み合わせると、 のような公式も自分で作れます。表を増やして暗記する必要はありません。
問19 ★★★
で のとき、 と の値を求めなさい。
差を 2 乗して積を使います。
よって です。符号を決めるには、 で と のどちらが大きいかを調べます。
公式5より で、 のとき です。 から の範囲では角が大きいほど は大きい(第1章)ので
3 乗の差は より
で になり、それより大きい角では が を追い越す——単位円で が直線 より上にあるのが の範囲です。
問20 ★★★
単位円上で、角 の動径と単位円の交点を 、角 の動径と単位円の交点を とします。
(1) の座標を , で表しなさい。
(2) のそれぞれについて、 と の値を求め、等しいことを確かめなさい。
(3) を で表しなさい。
(1) (2) 順に (両者一致) (3)
(1) 公式5の 2 行目より
なので
図で言えば、 を原点のまわりに反時計回りに 回した点が です。「 座標と 座標を入れ替えて、新しい 座標に負をつける」が四分の一回転の座標の動きです。
(2) は角 の を直接読み、 は角 の を読みます。
(3) なので、公式4の の行と公式5より
(2) の表は「 の値の表を だけ先に読むと の値の表になる」ことを示しています。第7章でグラフを描くと、これは「 のグラフを左に ずらすと のグラフに重なる」という形で現れます。(3) は、そのずらし方が の整数倍だけ余分に動かしても変わらない(周期 )ことの確認です。
という記号は、この章でようやく「実数 を入れると値が出てくる関数」になりました。けれども歴史の上では、 はずっと「三角形の辺の比」や「円の弦の長さ」として扱われていました。プトレマイオスの弦の表(第2章の小話)も、インドやアラビアの数学者たちの正弦表も、角の値ごとに長さを並べた表であって、関数という見方はまだありませんでした。
「三角関数は実数の関数だ」と正面から書いたのは、18 世紀スイスの数学者レオンハルト・オイラーだとされています。1748 年の『無限解析入門』で、オイラーは ・ を三角形から切り離し、「変数 に対して という量が定まる」と扱いました。単位円(半径 )を基準にとって を長さでなく数として扱ったのも、この本の流儀です。ここでの「関数」は、いま私たちが使っている「入力に出力を対応させる規則」という意味そのものでした(※「関数」という言葉の由来や、オイラー以前の先駆者については諸説あり)。
豆知識
,, という 3 文字の略記が広く定着したのもオイラーの影響が大きいと言われています。彼は という関数の書き方、円周率の 、自然対数の底 、虚数単位 など、今の数学の記号をいくつも定着させました。この章の「単位円の座標を と呼ぶ」という見方は、300 年近く前にオイラーが選んだ書き方をなぞっているわけです。
この章では、角を「 軸の正の向き(東)から反時計回り」に測りました。ところが船や飛行機、登山の地図、スマートフォンのコンパスが使う方位角は「北から時計回り」に測ります。北が 、東が 、南が 、西が ——ラジアンなら東が 、南が 、西が です。
数学の角 と方位角 の関係は、図を描けばすぐ分かります。数学の角は東から反時計回り、方位角は北から時計回り。2 つの測り方は「直線 で折り返した関係」にあり、 です。北()は数学の 、東()は数学の 。ちょうど公式5の が登場します。方位角 の向きに距離 だけ進んだときの「東向きの移動量」は 、「北向きの移動量」は 。航海の計算では と の役割が数学の教科書と入れ替わって見えますが、それは測り始めの向きと回る向きが違うだけです。
豆知識
なぜ方位角は北から時計回りなのでしょう。北を基準にするのは方位磁針が北を指すから、時計回りなのは北半球で太陽が東→南→西と時計回りに動くから、というのが素直な説明です。第2章の小話で「太陽の 1 日の動き」を の符号の説明に使いましたが、あの動きが方位角の回る向きも決めていたことになります(※歴史的な経緯は諸説あり)。数学が反時計回りを正にしたのは、座標平面で 軸から 軸へ回す向きを正とした約束の結果で、こちらは「自然」というより「決めごと」です。
公式4の の行を見ると、 は「符号が変わらない」、 は「符号だけが反転する」でした。この 2 つの性質には名前があります。 を満たす関数を偶関数、 を満たす関数を奇関数といい、 は偶関数、 と は奇関数です。
「偶」「奇」の名は、, のような偶数乗が を満たし、, のような奇数乗が を満たすことから来ています。 は偶数乗の仲間、 は奇数乗の仲間、というわけです。これは単なる名前の話ではありません。大学の数学では , と、 が本当に偶数乗だけ、 が本当に奇数乗だけの無限の和で書けることが分かります(第5章の「」は、この和の最初の項だけを取ったものです)。名前は偶然ではなく、正体を言い当てていたのです(※このような無限和の議論は高校の範囲外)。
豆知識
第7章でグラフを描くと、偶関数のグラフは 軸について対称、奇関数のグラフは原点について対称になります。 のグラフが 軸で折り返せて、 のグラフが原点で半回転させると重なるのは、この章の 軸対称の公式そのものです。ところで、電卓のなかった時代の三角関数表は、 から ()までしか載っていませんでした。 から は で と を入れ替え、 から は で、それ以降は と で全部が 以下に帰着する——この章の公式4・公式5は、表を 8 分の 1 に圧縮する道具でもありました。
※ここは発展ページです。高校の範囲では「一般角 の動径と単位円の交点の座標が 」という理解と、公式4・公式5が使えれば十分ですが、「第2章の定義と本当に同じものなの?」「対称の公式はまとめて証明できないの?」「 は増えたり減ったりするのに関数と言えるの?」が気になる人のために、根拠を紹介します。
座標平面上で、原点 を中心とする単位円と、 軸の正の部分との交点を とする。一般角 の動径(始線 を だけ回転した半直線)と単位円の交点を とし、
と定める。, は実数全体を定義域とする関数である。さらに 、すなわち ( は整数)のとき
と定める。 の定義域は を満たす実数全体である。
この定義が「関数」として意味を持つのは、どんな実数 に対しても点 がただ 1 つ決まるからです(第5章の定義1:回転の量 を決めれば動径は 1 本に決まり、半直線と円は 1 点で交わる)。 と は別の一般角ですが同じ動径を与えるので、同じ 、同じ値になります。異なる入力が同じ出力を持つことは、関数であることを妨げません。
のとき、定義1で定めた ,(および のとき )は、第2章の定義1(単位円上で から反時計回りに角 進んだ点の座標)で定めた値に等しい。
証明 のとき、始線 を反時計回りに 回転した動径と単位円の交点は、 から円周に沿って反時計回りに中心角 だけ進んだ点にほかならない(弧度法の定義から、単位円では中心角 の弧の長さも である)。したがって両方の定義で点 は同一の点であり、その座標として定めた ,, も一致する。(証明終)
第2章の厳密定義ページでは、第1章の「辺の比」と第2章の「座標」が鋭角で一致することを、直角三角形を描いて確かめました。今回は「点そのものが同じ」なので証明は短くて済みます。それでも、この確認を飛ばしてはいけません。定義を広げるたびに「もとの範囲では前と同じ値になる」ことを確かめる——これが定義の拡張の作法であり、第1章・第2章・第6章の 3 つの が同じ記号を名乗ってよい根拠です。この章以降、 は「三角比」ではなく「三角関数」と呼びますが、値は 1 つも変わっていません。
すべての実数 について が成り立つ。さらに のとき
が成り立つ。
証明 点 は単位円 の上にあるから、第 1 式が成り立つ。第 2 式は定義1そのものである。第 3 式は、第 1 式の両辺を で割り、第 2 式を用いれば得られる。(証明終)
証明は第2章とまったく同じです。角の範囲を 〜 から実数全体に広げても、「 が単位円上にある」という事実は変わらないからです。
を任意の実数、 を整数とする。角 の動径と単位円の交点を とするとき、次が成り立つ。
| 角 | 対応する点 | との関係 |
|---|---|---|
| 同じ点 | ||
| 軸について対称 | ||
| 原点について対称 | ||
| 軸について対称 | ||
| 直線 について対称 | ||
| 原点を中心に 回転 |
各行の点の 座標が 、 座標が の公式(本文の公式4・公式5)を与える。
証明 ()第5章の公式4より、動径が一致するので点も一致する。
()反時計回りに 回転する操作と時計回りに 回転する操作は、 軸に関する対称移動で互いに移り合う(始線 は 軸上にあるので、対称移動で動かない)。よって角 の点は を 軸で折り返した点 である。
()角 の動径をさらに 回転した半直線は、もとの動径と原点をはさんで反対向きである。単位円上でその方向にある点は、 と原点について対称な点 である。
() なので、上の 2 つを続けて用いると、角 の点 を原点対称に移した となる。これは を 軸で折り返した点である。
()直線 に関する対称移動は、点 を に移す(線分の中点 が直線 上にあり、線分の傾きが で直線と垂直だから)。この対称移動で、 軸の正の部分は 軸の正の部分に、反時計回りの回転は時計回りの回転に移る。したがって「始線から反時計回りに 」の動径は「 軸の正の部分から時計回りに 」、すなわち角 の動径に移る。よって角 の点は を直線 で折り返した である。
() なので、角 の点 を 軸で折り返して 。これは を に移す変換で、原点を中心とする の回転に一致する。(証明終)
証明を見ると、6 つの公式は独立ではなく、「 周」「 軸対称」「原点対称」「直線 対称」の 4 つの基本操作の組み合わせで残りが出てきます。 は 軸対称と原点対称の合成、 は 対称と 軸対称の合成です。本文で「表を暗記するより折り線を思い出す」と書いたのは、この構造のことです。 の公式は、各行の 座標を 座標で割れば得られます( 座標が にならない範囲で)。
**補足:値域・周期・増減。**定義1から、 と のとりうる値の範囲(値域)は、どちらも , です。単位円上の点の座標は から の間にしかないからです。 は、 が に近づくと限りなく大きく(または小さく)なるので、値域はすべての実数です。
定理3の 1 行目 は、 を ずらしても値が変わらないことを述べています。この性質を周期性といい、第7章で「 をすべての で満たす正の数 のうち最小のもの」を周期と定義します。・ の周期は 、 の周期は (定理3の の行で が変わらないため)です。
最後に増減について。第1章では「 が増えると は増える」と書きましたが、それは に限った話です。一般角では、点 が単位円を 1 周するあいだに 座標は と動くので、 は で増加、 で減少、 で増加し、以後これを繰り返します。「増えたり減ったりする」ことと「関数である」ことは矛盾しません。関数の条件は「入力 1 つに出力 1 つ」であって、単調に増えることではないからです。ただし、この往復のせいで「値から角を求める」逆向きの対応は 1 つに決まりません(第2章の補足で見た「 の値から角が 2 つ」が、一般角では無限個になります)。第8章で三角関数の方程式を解くとき、この無限個の解を の形で書き表すことになります。
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