目次 / 三角比と三角関数 / 数学I

第3章 正弦定理・余弦定理

—— 角と辺を「行き来する」2つの定理 ——

第1章・第2章で、角から三角比の値を出せるようになりました。この章では、その三角比を使って「三角形の一部(いくつかの辺と角)が分かれば、残りがすべて決まる」ことを学びます。道具は正弦定理と余弦定理の 2 つです。第2章で出てきた鈍角の三角比(cos が負になる)が、そのまま活躍します。角度は引き続き「度」で表します。三角形の面積は次の第4章で扱います。

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この章の記号

三角形 ABCABC では、頂点 AA の角の大きさをそのまま AA と書き、その向かい側の辺 BCBC の長さを aa と書きます。同じように ∠B\angle B の向かいが bb=CA{}= CA、∠C\angle C の向かいが cc=AB{}= AB です。「角と、その向かいの辺が同じ文字」というルールを覚えておくと、この章の式が読みやすくなります。

三角形の内角の和は 180∘180^\circ なので、AA+B{}+ B+C{}+ C=180∘{}= 180^\circ です。角が 1 つだけ 90∘90^\circ より大きいこともあります(鈍角三角形)。そのとき、その角の cos⁡\cos は第2章で学んだとおり負になります。

正弦定理——辺と「向かいの角の sin」の比はどの辺でも同じ

三角形の 3 つの頂点を通る円を外接円といい、その半径を RR と書きます。どんな三角形にも外接円はただ 1 つあります。

O B C A A′ a 2R(直径) ∠A′ = ∠A(同じ弧 BC の円周角)。∠A′CB = 90° なので a = 2R sin A′ = 2R sin A

図で、BB を通る直径のもう一方の端を A′A' とします。直径に立つ円周角は 90∘90^\circ なので、三角形 A′BCA'BC は ∠A′CB\angle A'CB=90∘{}= 90^\circ の直角三角形です。斜辺は直径 BA′BA'=2R{}= 2R、∠A′\angle A' の対辺は BCBC=a{}= a ですから、第1章の定義から

sin⁡A′\displaystyle \sin A'=a2R\displaystyle {}= \frac{a}{2R}

ところで ∠A′\angle A' と ∠A\angle A は、同じ弧 BCBC の上に立つ円周角なので等しい。したがって sin⁡A\sin A=a2R{}= \dfrac{a}{2R}、つまり aa=2Rsin⁡A{}= 2R\sin A です。頂点 BB,CC についても同じことができます。

公式1:正弦定理

三角形 ABCABC の外接円の半径を RR とすると

asin⁡A\displaystyle \frac{a}{\sin A}=bsin⁡B\displaystyle {}= \frac{b}{\sin B}=csin⁡C\displaystyle {}= \frac{c}{\sin C}=2R\displaystyle {}= 2R
  • 「辺 ÷ 向かいの角の sin⁡\sin」は、3 つの辺のどれで計算しても同じ値 2R2R になります。
  • AA が鈍角のときも成り立ちます(理由は厳密定義ページ)。sin⁡\sin は鈍角でも正なので、符号の心配はいりません。

三角形の 3 頂点が、1 つの舞台(外接円)の縁に立っている場面を思い浮かべてください。舞台の大きさ RR を決めると、「向かいの角が 30∘30^\circ の辺は長さ RR」「90∘90^\circ の辺は 2R2R(直径)」というように、辺の長さが角だけで決まります。大きい角の向かいには大きい辺、という直感を、正弦定理は数式にしたものです。

正弦定理とは「辺の長さ ÷ 向かいの角の sin⁡\sin」が三角形の中でつねに一定(=2R= 2R)だという定理で、1 つの辺と 2 つの角が分かれば残りの辺と RR が求まるということです。

例題1:正弦定理で辺と外接円の半径を求める

三角形 ABCABC で AA=45∘{}= 45^\circ,BB=60∘{}= 60^\circ,aa=2{}= \sqrt{2} のとき、bb と外接円の半径 RR を求めなさい。


【解答】

正弦定理 asin⁡A\dfrac{a}{\sin A}=bsin⁡B{}= \dfrac{b}{\sin B} より

b\displaystyle b=asin⁡Bsin⁡A\displaystyle {}= \frac{a\sin B}{\sin A}=2⋅32÷22\displaystyle {}= \sqrt{2} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} \div \frac{\sqrt{2}}{2}=2⋅32⋅22\displaystyle {}= \sqrt{2} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} \cdot \frac{2}{\sqrt{2}}=3‾\displaystyle {}= \underline{\sqrt{3}}

また asin⁡A\dfrac{a}{\sin A}=2R{}= 2R より

2R\displaystyle 2R=2÷22\displaystyle {}= \sqrt{2} \div \frac{\sqrt{2}}{2}=2\displaystyle {}= 2⟹R\displaystyle {}\Longrightarrow\qquad R=1‾\displaystyle {}= \underline{1}

「求めたい辺」と「分かっている辺」の 2 つだけを取り出して等式を作るのがコツです。3 つ全部を同時に使う必要はありません。

余弦定理——三平方の定理に「角の補正」をつける

第2章の問題 j20 で、単位円上の 2 点 A(1, 0)A(1,\ 0),P(cos⁡θ, sin⁡θ)P(\cos\theta,\ \sin\theta) の距離を計算し

AP2\displaystyle AP^2=2\displaystyle {}= 2−2cos⁡θ\displaystyle {}- 2\cos\theta

を得ました。これは「2 辺が 11,11 で、その間の角が θ\theta の三角形」の残りの辺を求めたことになります。この 2 辺を一般の長さ bb,cc に広げたものが余弦定理です。

x y A(原点) B(c, 0) C(b cos A, b sin A) A c b a b sin A b cos A(負) A が鈍角でも C の座標は (b cos A, b sin A) のまま。cos A が負なので C は y 軸の左側にくる

三角形 ABCABC を、頂点 AA が原点、BB が xx 軸上の点 (c, 0)(c,\ 0) になるように置きます。すると CC は、原点から距離 bb、角 AA の方向にある点なので、第2章の単位円の考え方(半径を bb 倍する)から C(bcos⁡A, bsin⁡A)C(b\cos A,\ b\sin A) です。AA が鈍角なら cos⁡A\cos A<0{}< 0 なので CC は yy 軸の左側にきますが、座標の式はそのままです。

BB と CC の距離が aa なので、三平方の定理から

a2\displaystyle a^2=(bcos⁡A−c)2\displaystyle {}= (b\cos A - c)^2+(bsin⁡A)2\displaystyle {}+ (b\sin A)^2=b2cos⁡2A\displaystyle {}= b^2\cos^2 A−2bccos⁡A\displaystyle {}- 2bc\cos A+c2\displaystyle {}+ c^2+b2sin⁡2A\displaystyle {}+ b^2\sin^2 A=b2\displaystyle {}= b^2+c2\displaystyle {}+ c^2−2bccos⁡A\displaystyle {}- 2bc\cos A

(cos⁡2A\cos^2 A+sin⁡2A{}+ \sin^2 A=1{}= 1 を使いました)。j20 は bb=c{}= c=1{}= 1 の特別な場合だったわけです。

公式2:余弦定理
a2\displaystyle a^2=b2\displaystyle {}= b^2+c2\displaystyle {}+ c^2−2bccos⁡A,\displaystyle {}- 2bc\cos A,b2\displaystyle b^2=c2\displaystyle {}= c^2+a2\displaystyle {}+ a^2−2cacos⁡B,\displaystyle {}- 2ca\cos B,c2\displaystyle c^2=a2\displaystyle {}= a^2+b2\displaystyle {}+ b^2−2abcos⁡C\displaystyle {}- 2ab\cos C
  • 「求めたい辺の 2 乗 = 残り 2 辺の 2 乗の和 − 2 × 残り 2 辺の積 × はさむ角の cos⁡\cos」と読みます。
  • AA=90∘{}= 90^\circ なら cos⁡A\cos A=0{}= 0 で、三平方の定理 a2a^2=b2{}= b^2+c2{}+ c^2 に戻ります。
  • AA が鈍角なら cos⁡A\cos A<0{}< 0 なので、−2bccos⁡A-2bc\cos A は正の数になり、a2a^2 は b2b^2+c2{}+ c^2 より大きくなります。

余弦定理は「三平方の定理の補正つき版」です。直角三角形なら a2a^2=b2{}= b^2+c2{}+ c^2 でぴったり。角 AA を 90∘90^\circ から少し閉じると、向かいの辺 aa は短くなるので 2bccos⁡A2bc\cos A の分だけ引く。逆に 90∘90^\circ より開くと aa は長くなるので、その分を足す——足すか引くかを cos⁡A\cos A の符号が自動的に決めてくれます。開いた扉の端と壁の距離が、扉の開き具合(角)で決まるのと同じ仕組みです。

余弦定理は「2 辺とその間の角」から残りの辺を求める公式で、cos⁡\cos の符号のおかげで鋭角でも鈍角でも同じ 1 本の式で済むということです。

例題2:2 辺とその間の角から残りの辺を求める

三角形 ABCABC で、次の場合の aa を求めなさい。

(1) b\displaystyle \text{(1)}\ b=3,\displaystyle {}= 3, c\displaystyle \ c=8,\displaystyle {}= 8, A\displaystyle \ A=60∘\displaystyle {}= 60^\circ(2) b\displaystyle \text{(2)}\ b=3,\displaystyle {}= 3, c\displaystyle \ c=5,\displaystyle {}= 5, A\displaystyle \ A=120∘\displaystyle {}= 120^\circ

【解答】

(1) cos⁡60∘\cos 60^\circ=12{}= \dfrac{1}{2} なので

a2\displaystyle a^2=32\displaystyle {}= 3^2+82\displaystyle {}+ 8^2−2⋅3⋅8⋅12\displaystyle {}- 2 \cdot 3 \cdot 8 \cdot \frac{1}{2}=9\displaystyle {}= 9+64\displaystyle {}+ 64−24\displaystyle {}- 24=49\displaystyle {}= 49

aa>0{}> 0 より aa=7‾{}= \underline{7}。

(2) cos⁡120∘\cos 120^\circ=−12{}= -\dfrac{1}{2} なので

a2\displaystyle a^2=32\displaystyle {}= 3^2+52\displaystyle {}+ 5^2−2⋅3⋅5⋅(−12)\displaystyle {}- 2 \cdot 3 \cdot 5 \cdot \left(-\frac{1}{2}\right)=9\displaystyle {}= 9+25\displaystyle {}+ 25+15\displaystyle {}+ 15=49\displaystyle {}= 49

aa>0{}> 0 より aa=7‾{}= \underline{7}。

(2) では cos⁡\cos が負なので、引くはずの項が足し算に変わっています。33 と 55 を 120∘120^\circ に開くと、33 と 88 を 60∘60^\circ に閉じたときと同じ長さ 77 になる——鈍角の cos⁡\cos を正しく使えば、こういう対応も見えてきます。

余弦定理で角を求める——鋭角か鈍角かは cos の符号で分かる

余弦定理を cos⁡A\cos A について解くと、3 辺から角を求める式になります。

公式3:3 辺から角を求める式と、鋭角・直角・鈍角の判定
cos⁡A\displaystyle \cos A=b2+c2−a22bc,\displaystyle {}= \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc},cos⁡B\displaystyle \cos B=c2+a2−b22ca,\displaystyle {}= \frac{c^2 + a^2 - b^2}{2ca},cos⁡C\displaystyle \cos C=a2+b2−c22ab\displaystyle {}= \frac{a^2 + b^2 - c^2}{2ab}

分母 2bc2bc は正なので、cos⁡A\cos A の符号は分子 b2b^2+c2{}+ c^2−a2{}- a^2 の符号で決まります。

a2a^2 と b2+c2b^2 + c^2 の大小cos⁡A\cos A の符号AA
a2<b2+c2a^2 < b^2 + c^2++鋭角
a2=b2+c2a^2 = b^2 + c^200直角
a2>b2+c2a^2 > b^2 + c^2−-鈍角

三角形が鋭角三角形・直角三角形・鈍角三角形のどれかは、最大の辺の向かいの角(最大の角)について調べれば決まります。

3 本の棒を三角形の形につないでみると、どこも動かせない「カチッ」とした形になります。四角形だと平行四辺形のようにぐらつくのに、三角形はぐらつかない。つまり 3 辺が決まれば角は勝手に決まる。公式3はその「勝手に決まる角」を計算で取り出す式です。

cos⁡A\cos A を求めたあとは、第2章の「cos⁡\cos の値から角を求めると 1 つに決まる」(公式5)を思い出してください。sin⁡\sin と違って、cos⁡\cos からなら鋭角か鈍角かで迷うことがありません。

3 辺が分かれば公式3で cos⁡\cos の値が出て、角が 1 つに決まる。その符号が正なら鋭角、負なら鈍角で、三平方の定理の「==」を「<<」「>>」に広げたものと見なせるということです。

例題3:3 辺から角を求め、三角形の形を判定する

(1) 三角形 ABCABC で aa=7{}= 7,bb=3{}= 3,cc=5{}= 5 のとき、AA を求めなさい。

(2) 3 辺の長さが 44,55,66 の三角形は、鋭角三角形・直角三角形・鈍角三角形のどれかを定めなさい。


【解答】

(1) 公式3より

cos⁡A\displaystyle \cos A=32+52−722⋅3⋅5\displaystyle {}= \frac{3^2 + 5^2 - 7^2}{2 \cdot 3 \cdot 5}=9+25−4930\displaystyle {}= \frac{9 + 25 - 49}{30}=−1530\displaystyle {}= \frac{-15}{30}=−12\displaystyle {}= -\frac{1}{2}

0∘0^\circ<A{}< A<180∘{}< 180^\circ で cos⁡A\cos A=−12{}= -\dfrac{1}{2} となるのは AA=120∘‾{}= \underline{120^\circ}。

(例題2の (2) で作った三角形を、逆にたどったことになります。)

(2) 最大の辺 66 の向かいの角を θ\theta とすると

cos⁡θ\displaystyle \cos\theta=42+52−622⋅4⋅5\displaystyle {}= \frac{4^2 + 5^2 - 6^2}{2 \cdot 4 \cdot 5}=16+25−3640\displaystyle {}= \frac{16 + 25 - 36}{40}=540\displaystyle {}= \frac{5}{40}>0\displaystyle {}> 0

最大の角が鋭角なので、この三角形は鋭角三角形です。

鋭角三角形‾\underline{\text{鋭角三角形}}

角の大きさそのものは三角定規の角ではないので出せませんが、符号だけなら分子の 626^2 と 424^2+52{}+ 5^2 の大小比較(3636<41{}< 41)で決まります。

三角形の決定——どの情報がそろえば三角形は 1 つに決まるか

中学で学んだ三角形の合同条件は「3 辺」「2 辺とその間の角」「1 辺とその両端の角」の 3 つでした。合同条件とは「その情報で三角形が 1 つに決まる」という意味ですから、正弦定理・余弦定理を使えば、これらの情報から残りの辺と角を実際に計算できます。

公式4:三角形の決定と定理の使い分け
分かっている情報使う定理三角形は決まるか
1 辺と 2 角(例:aa,BB,CC)残りの角は 180∘180^\circ から引く → 正弦定理1 つに決まる
2 辺とその間の角(例:bb,cc,AA)余弦定理で aa → 公式3で角1 つに決まる
3 辺余弦定理(公式3)で角1 つに決まる
2 辺と一方の対角(例:aa,bb,AA)正弦定理で sin⁡B\sin BBB が 2 つになることがある

最後の行は合同条件に入っていません。sin⁡B\sin B の値から BB を求めると、第2章のとおり BB と 180∘−B180^\circ - B の 2 つが候補になるためです。候補それぞれについて AA+B{}+ B<180∘{}< 180^\circ かどうかを確かめ、成り立つものだけを採用します。

三角形を注文するときの注文書を想像してください。「辺 55 と辺 77、その間の角 60∘60^\circ」と書けば、職人はただ 1 つの三角形を届けてくれます。ところが「辺 55 と辺 77、辺 55 の向かいの角 40∘40^\circ」だと、条件を満たす三角形が 2 種類作れることがあり、どちらを届けるか決まりません。注文書に何を書けば 1 つに決まるか——それが「三角形の決定」です。

使い分けの目安は単純で、角が 2 つ分かっているなら正弦定理、辺が 2 つ以上と間の角なら余弦定理です。

「1 辺 2 角」「2 辺と間の角」「3 辺」のどれかが分かれば三角形は 1 つに決まり、正弦定理か余弦定理で残りを計算できる。「2 辺と対角」だけは答えが 2 つになりうるので、候補を両方確かめる必要があるということです。

例題4:2 辺と対角——答えが 2 つになる場合

三角形 ABCABC で aa=2{}= \sqrt{2},bb=2{}= 2,AA=30∘{}= 30^\circ のとき、BB と CC を求めなさい。


【解答】

正弦定理 asin⁡A\dfrac{a}{\sin A}=bsin⁡B{}= \dfrac{b}{\sin B} より

sin⁡B\displaystyle \sin B=bsin⁡Aa\displaystyle {}= \frac{b\sin A}{a}=2⋅122\displaystyle {}= \frac{2 \cdot \dfrac{1}{2}}{\sqrt{2}}=12\displaystyle {}= \frac{1}{\sqrt{2}}=22\displaystyle {}= \frac{\sqrt{2}}{2}

0∘0^\circ<B{}< B<180∘{}< 180^\circ でこれを満たすのは BB=45∘{}= 45^\circ と BB=135∘{}= 135^\circ の 2 つです。どちらも AA+B{}+ B<180∘{}< 180^\circ(30∘+45∘30^\circ + 45^\circ=75∘{}= 75^\circ,30∘+135∘30^\circ + 135^\circ=165∘{}= 165^\circ)なので、両方とも三角形として成り立ちます。

  • BB=45∘{}= 45^\circ のとき CC=180∘−30∘−45∘{}= 180^\circ - 30^\circ - 45^\circ=105∘{}= 105^\circ
  • BB=135∘{}= 135^\circ のとき CC=180∘−30∘−135∘{}= 180^\circ - 30^\circ - 135^\circ=15∘{}= 15^\circ
(B, C)=(45∘, 105∘),‾\displaystyle \underline{\rule[-0.25em]{0em}{1.0000em}(B,\ C) = (45^\circ,\ 105^\circ),} (135∘, 15∘)‾\displaystyle \underline{\rule[-0.25em]{0em}{1.0000em}\ (135^\circ,\ 15^\circ)}

aa<b{}< b なので、aa の向かいの角 AA より BB のほうが大きい。45∘45^\circ も 135∘135^\circ も 30∘30^\circ より大きいので、どちらも捨てられません。もし aa>b{}> b なら BB<A{}< A が必要なので、鈍角のほうは自動的に消えます。

辺の比は sin の比——正弦定理と余弦定理を組み合わせる

正弦定理 aa=2Rsin⁡A{}= 2R\sin A,bb=2Rsin⁡B{}= 2R\sin B,cc=2Rsin⁡C{}= 2R\sin C から、2R2R を消すと辺の比と sin⁡\sin の比が一致することが分かります。

公式5:辺の比と sin の比
a:b:c\displaystyle a : b : c=sin⁡A:sin⁡B:sin⁡C\displaystyle {}= \sin A : \sin B : \sin C

sin⁡A:sin⁡B:sin⁡C\sin A : \sin B : \sin C=p:q:r{}= p : q : r が与えられたら、aa=pk{}= pk,bb=qk{}= qk,cc=rk{}= rk(kk>0{}> 0)とおいて余弦定理(公式3)に代入すれば、kk は約分で消えて角が求まります。

「正弦定理で辺の比に直し、余弦定理で角を出す」という 2 段構えは、入試でもよく出る型です。正弦定理は「辺 ⇔ sin⁡\sin」の翻訳係、余弦定理は「3 辺 ⇔ 角」の計算係、と役割を分けて考えると見通しがよくなります。

sin⁡\sin の比は辺の比と同じなので、sin⁡\sin の比が分かったら辺を pk,pk, qk,\ qk, rk\ rk とおいて余弦定理に持ち込めばよいということです。

例題5:sin の比から角を求める

三角形 ABCABC で sin⁡A:sin⁡B:sin⁡C\sin A : \sin B : \sin C=5:7:8{}= 5 : 7 : 8 のとき、BB を求めなさい。


【解答】

公式5より a:b:ca : b : c=5:7:8{}= 5 : 7 : 8 なので、aa=5k{}= 5k,bb=7k{}= 7k,cc=8k{}= 8k(kk>0{}> 0)とおけます。公式3より

cos⁡B\displaystyle \cos B=c2+a2−b22ca\displaystyle {}= \frac{c^2 + a^2 - b^2}{2ca}=64k2+25k2−49k22⋅8k⋅5k\displaystyle {}= \frac{64k^2 + 25k^2 - 49k^2}{2 \cdot 8k \cdot 5k}=40k280k2\displaystyle {}= \frac{40k^2}{80k^2}=12\displaystyle {}= \frac{1}{2}

したがって BB=60∘‾{}= \underline{60^\circ}。

kk は分子・分母の両方に k2k^2 として現れて消えるので、実際には aa=5{}= 5,bb=7{}= 7,cc=8{}= 8 と置いて計算しても同じ結果になります。

基礎確認問題(全5問)

まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。

問1

三角形 ABCABC で AA=30∘{}= 30^\circ,aa=4{}= 4 のとき、外接円の半径 RR を求めなさい。

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答え

4‾\underline{4}(aa=2Rsin⁡A{}= 2R\sin A より 44=2R⋅12{}= 2R \cdot \dfrac{1}{2})

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問2

三角形 ABCABC で bb=2{}= 2,cc=3{}= 3,AA=60∘{}= 60^\circ のとき、aa を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

7‾\underline{\sqrt{7}}(a2a^2=4{}= 4+9{}+ 9−2⋅2⋅3⋅12{}- 2 \cdot 2 \cdot 3 \cdot \dfrac{1}{2}=7{}= 7)

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問3

三角形 ABCABC で aa=3{}= \sqrt{3},bb=1{}= 1,cc=1{}= 1 のとき、AA を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

120∘‾\underline{120^\circ}(cos⁡A\cos A=1+1−32⋅1⋅1{}= \dfrac{1 + 1 - 3}{2 \cdot 1 \cdot 1}=−12{}= -\dfrac{1}{2})

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問4

3 辺の長さが 33,55,66 の三角形は、鋭角三角形・直角三角形・鈍角三角形のどれかを定めなさい。

つまずいたときは:
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答え

鈍角三角形‾\underline{\text{鈍角三角形}}(最大辺について 626^2=36{}= 36>32{}> 3^2+52{}+ 5^2=34{}= 34)

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問5

三角形 ABCABC で sin⁡A:sin⁡B:sin⁡C\sin A : \sin B : \sin C=3:4:5{}= 3 : 4 : 5 のとき、a:b:ca : b : c を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

3:4:5‾\underline{3 : 4 : 5}(正弦定理より辺の比は sin⁡\sin の比に等しい)

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実践問題(全20問)

難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。

問1 ★

三角形 ABCABC で AA=60∘{}= 60^\circ,BB=45∘{}= 45^\circ,aa=32{}= 3\sqrt{2} のとき、bb を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

bb=23{}= 2\sqrt{3}

解説

正弦定理 asin⁡A\dfrac{a}{\sin A}=bsin⁡B{}= \dfrac{b}{\sin B} より

b\displaystyle b=asin⁡Bsin⁡A\displaystyle {}= \frac{a\sin B}{\sin A}=32⋅22÷32\displaystyle {}= 3\sqrt{2} \cdot \frac{\sqrt{2}}{2} \div \frac{\sqrt{3}}{2}=3⋅23\displaystyle {}= 3 \cdot \frac{2}{\sqrt{3}}=63\displaystyle {}= \frac{6}{\sqrt{3}}=23‾\displaystyle {}= \underline{2\sqrt{3}}

「分かっている辺と角のペア」と「求めたい辺とその向かいの角」の 2 組だけで等式を作ります。

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問2 ★

三角形 ABCABC で aa=6{}= \sqrt{6},bb=2{}= 2,AA=60∘{}= 60^\circ のとき、BB を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

BB=45∘{}= 45^\circ

解説

正弦定理より

sin⁡B\displaystyle \sin B=bsin⁡Aa\displaystyle {}= \frac{b\sin A}{a}=2⋅326\displaystyle {}= \frac{2 \cdot \dfrac{\sqrt{3}}{2}}{\sqrt{6}}=36\displaystyle {}= \frac{\sqrt{3}}{\sqrt{6}}=12\displaystyle {}= \frac{1}{\sqrt{2}}=22\displaystyle {}= \frac{\sqrt{2}}{2}

候補は BB=45∘,{}= 45^\circ, 135∘\ 135^\circ ですが、135∘135^\circ のときは AA+B{}+ B=195∘{}= 195^\circ>180∘{}> 180^\circ となって三角形になりません。

B\displaystyle B=45∘‾\displaystyle {}= \underline{45^\circ}

sin⁡\sin から角を求めるときは、必ず「もう 1 つの候補」を AA+B{}+ B<180∘{}< 180^\circ で確かめます。

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問3 ★

外接円の半径が 33 の三角形 ABCABC で CC=120∘{}= 120^\circ のとき、cc を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

cc=33{}= 3\sqrt{3}

解説

cc=2Rsin⁡C{}= 2R\sin C より

c\displaystyle c=2⋅3⋅sin⁡120∘\displaystyle {}= 2 \cdot 3 \cdot \sin 120^\circ=6⋅32\displaystyle {}= 6 \cdot \frac{\sqrt{3}}{2}=33‾\displaystyle {}= \underline{3\sqrt{3}}

sin⁡120∘\sin 120^\circ=sin⁡60∘{}= \sin 60^\circ で正なので、鈍角でも正弦定理はそのまま使えます。

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問4 ★

三角形 ABCABC で bb=4{}= 4,cc=5{}= 5,AA=60∘{}= 60^\circ のとき、aa を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

aa=21{}= \sqrt{21}

解説

余弦定理より

a2\displaystyle a^2=42\displaystyle {}= 4^2+52\displaystyle {}+ 5^2−2⋅4⋅5⋅cos⁡60∘\displaystyle {}- 2 \cdot 4 \cdot 5 \cdot \cos 60^\circ=16\displaystyle {}= 16+25\displaystyle {}+ 25−20\displaystyle {}- 20=21\displaystyle {}= 21

aa>0{}> 0 なので aa=21‾{}= \underline{\sqrt{21}}。

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問5 ★

三角形 ABCABC で aa=2{}= \sqrt{2},cc=3{}= 3,BB=135∘{}= 135^\circ のとき、bb を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

bb=17{}= \sqrt{17}

解説

cos⁡135∘\cos 135^\circ=−22{}= -\dfrac{\sqrt{2}}{2} なので、余弦定理より

b2\displaystyle b^2=c2\displaystyle {}= c^2+a2\displaystyle {}+ a^2−2cacos⁡B\displaystyle {}- 2ca\cos B=9\displaystyle {}= 9+2\displaystyle {}+ 2−2⋅3⋅2⋅(−22)\displaystyle {}- 2 \cdot 3 \cdot \sqrt{2} \cdot \left(-\frac{\sqrt{2}}{2}\right)=11\displaystyle {}= 11+6\displaystyle {}+ 6=17\displaystyle {}= 17

bb>0{}> 0 なので bb=17‾{}= \underline{\sqrt{17}}。cos⁡\cos が負なので、引く項が足し算に変わっています。

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問6 ★

三角形 ABCABC で aa=7{}= \sqrt{7},bb=2{}= 2,cc=3{}= 3 のとき、AA を求めなさい。

つまずいたときは:
答えを見る
答え

AA=60∘{}= 60^\circ

解説
cos⁡A\displaystyle \cos A=b2+c2−a22bc\displaystyle {}= \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc}=4+9−72⋅2⋅3\displaystyle {}= \frac{4 + 9 - 7}{2 \cdot 2 \cdot 3}=612\displaystyle {}= \frac{6}{12}=12\displaystyle {}= \frac{1}{2}

0∘0^\circ<A{}< A<180∘{}< 180^\circ なので AA=60∘‾{}= \underline{60^\circ}。cos⁡\cos から角を求めるときは答えが 1 つに決まります。

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問7 ★

三角形 ABCABC で aa=13{}= \sqrt{13},bb=3{}= 3,cc=1{}= 1 のとき、AA を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

AA=120∘{}= 120^\circ

解説
cos⁡A\displaystyle \cos A=b2+c2−a22bc\displaystyle {}= \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc}=9+1−132⋅3⋅1\displaystyle {}= \frac{9 + 1 - 13}{2 \cdot 3 \cdot 1}=−36\displaystyle {}= \frac{-3}{6}=−12\displaystyle {}= -\frac{1}{2}

cos⁡A\cos A<0{}< 0 なので AA は鈍角で、AA=120∘‾{}= \underline{120^\circ}。

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問8 ★

3 辺の長さが 22,33,44 の三角形は、鋭角三角形・直角三角形・鈍角三角形のどれかを定めなさい。

つまずいたときは:
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答え

鈍角三角形

解説

最大の辺 44 の向かいの角を θ\theta とすると、cos⁡θ\cos\theta の分子は

22\displaystyle 2^2+32\displaystyle {}+ 3^2−42\displaystyle {}- 4^2=4\displaystyle {}= 4+9\displaystyle {}+ 9−16\displaystyle {}- 16=−3\displaystyle {}= -3<0\displaystyle {}< 0

cos⁡θ\cos\theta<0{}< 0 なので最大の角が鈍角であり、この三角形は 鈍角三角形‾\underline{\text{鈍角三角形}} です。

424^2=16{}= 16>22{}> 2^2+32{}+ 3^2=13{}= 13 と大小比較するだけでも判定できます。

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問9 ★★

三角形 ABCABC で aa=4{}= 4,BB=45∘{}= 45^\circ,CC=75∘{}= 75^\circ のとき、bb と外接円の半径 RR を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

bb=463,{}= \dfrac{4\sqrt{6}}{3},RR=433{}= \dfrac{4\sqrt{3}}{3}

解説

まず残りの角を求めます。AA=180∘−45∘−75∘{}= 180^\circ - 45^\circ - 75^\circ=60∘{}= 60^\circ。

正弦定理より

b\displaystyle b=asin⁡Bsin⁡A\displaystyle {}= \frac{a\sin B}{\sin A}=4⋅22÷32\displaystyle {}= 4 \cdot \frac{\sqrt{2}}{2} \div \frac{\sqrt{3}}{2}=423\displaystyle {}= \frac{4\sqrt{2}}{\sqrt{3}}=463‾\displaystyle {}= \underline{\frac{4\sqrt{6}}{3}} R\displaystyle R=a2sin⁡A\displaystyle {}= \frac{a}{2\sin A}=42⋅32\displaystyle {}= \frac{4}{2 \cdot \dfrac{\sqrt{3}}{2}}=43\displaystyle {}= \frac{4}{\sqrt{3}}=433‾\displaystyle {}= \underline{\frac{4\sqrt{3}}{3}}

「1 辺と 2 角」は、分かっている辺の向かいの角を 180∘180^\circ から求めてから正弦定理に入ります。

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問10 ★★

三角形 ABCABC で AA=30∘{}= 30^\circ,aa=3{}= \sqrt{3},bb=3{}= 3 のとき、BB,CC,cc を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

(B, C, c)(B,\ C,\ c)=(60∘, 90∘, 23),{}= (60^\circ,\ 90^\circ,\ 2\sqrt{3}), (120∘, 30∘, 3)\ (120^\circ,\ 30^\circ,\ \sqrt{3})

解説

正弦定理より

sin⁡B\displaystyle \sin B=bsin⁡Aa\displaystyle {}= \frac{b\sin A}{a}=3⋅123\displaystyle {}= \frac{3 \cdot \dfrac{1}{2}}{\sqrt{3}}=32\displaystyle {}= \frac{\sqrt{3}}{2}

候補は BB=60∘,{}= 60^\circ, 120∘\ 120^\circ。どちらも AA+B{}+ B<180∘{}< 180^\circ なので両方成り立ちます。

BB=60∘{}= 60^\circ のとき CC=90∘{}= 90^\circ で

c\displaystyle c=asin⁡Csin⁡A\displaystyle {}= \frac{a\sin C}{\sin A}=3⋅1÷12\displaystyle {}= \sqrt{3} \cdot 1 \div \frac{1}{2}=23\displaystyle {}= 2\sqrt{3}

BB=120∘{}= 120^\circ のとき CC=30∘{}= 30^\circ で

c\displaystyle c=asin⁡Csin⁡A\displaystyle {}= \frac{a\sin C}{\sin A}=3⋅12÷12\displaystyle {}= \sqrt{3} \cdot \frac{1}{2} \div \frac{1}{2}=3\displaystyle {}= \sqrt{3} (B, C, c)=(60∘, 90∘, 23),‾\displaystyle \underline{\rule[-0.25em]{0em}{1.2061em}(B,\ C,\ c) = (60^\circ,\ 90^\circ,\ 2\sqrt{3}),} (120∘, 30∘, 3)‾\displaystyle \underline{\rule[-0.25em]{0em}{1.2061em}\ (120^\circ,\ 30^\circ,\ \sqrt{3})}

2 つめは CC=A{}= A=30∘{}= 30^\circ の二等辺三角形(cc=a{}= a=3{}= \sqrt{3})になっています。「2 辺と対角」では、このように三角形が 2 種類できることがあります。

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問11 ★★

三角形 ABCABC で sin⁡A:sin⁡B:sin⁡C\sin A : \sin B : \sin C=1:3:2{}= 1 : \sqrt{3} : 2 のとき、AA,BB,CC を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

AA=30∘,{}= 30^\circ,BB=60∘,{}= 60^\circ,CC=90∘{}= 90^\circ

解説

正弦定理より a:b:ca : b : c=1:3:2{}= 1 : \sqrt{3} : 2 なので、aa=k{}= k,bb=3k{}= \sqrt{3}k,cc=2k{}= 2k(kk>0{}> 0)とおけます。

cos⁡C\displaystyle \cos C=a2+b2−c22ab\displaystyle {}= \frac{a^2 + b^2 - c^2}{2ab}=k2+3k2−4k22⋅k⋅3k\displaystyle {}= \frac{k^2 + 3k^2 - 4k^2}{2 \cdot k \cdot \sqrt{3}k}=0\displaystyle {}= 0⟹C\displaystyle {}\Longrightarrow\qquad C=90∘\displaystyle {}= 90^\circ cos⁡A\displaystyle \cos A=b2+c2−a22bc\displaystyle {}= \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc}=3k2+4k2−k22⋅3k⋅2k\displaystyle {}= \frac{3k^2 + 4k^2 - k^2}{2 \cdot \sqrt{3}k \cdot 2k}=6k243k2\displaystyle {}= \frac{6k^2}{4\sqrt{3}k^2}=32\displaystyle {}= \frac{\sqrt{3}}{2}⟹A\displaystyle {}\Longrightarrow\qquad A=30∘\displaystyle {}= 30^\circ

BB=180∘−30∘−90∘{}= 180^\circ - 30^\circ - 90^\circ=60∘{}= 60^\circ。

A=30∘,‾\displaystyle \underline{\rule[-0.1944em]{0em}{0.9186em}A = 30^\circ,}B=60∘,‾\displaystyle \underline{\rule[-0.1944em]{0em}{0.9186em}\quad B = 60^\circ,}C=90∘‾\displaystyle \underline{\rule[-0.1944em]{0em}{0.9186em}\quad C = 90^\circ}

辺の比 1:3:21 : \sqrt{3} : 2 は第1章の三角定規そのものです。sin⁡\sin の比を見た瞬間に辺の比に翻訳できれば、あとは余弦定理の計算だけです。

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問12 ★★

三角形 ABCABC で a2a^2=b2{}= b^2+c2{}+ c^2+bc{}+ bc が成り立つとき、AA を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

AA=120∘{}= 120^\circ

解説

与えられた等式から b2b^2+c2{}+ c^2−a2{}- a^2=−bc{}= -bc なので

cos⁡A\displaystyle \cos A=b2+c2−a22bc\displaystyle {}= \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc}=−bc2bc\displaystyle {}= \frac{-bc}{2bc}=−12\displaystyle {}= -\frac{1}{2}

よって AA=120∘‾{}= \underline{120^\circ}。

余弦定理を「b2b^2+c2{}+ c^2−a2{}- a^2 のかたまりを cos⁡A\cos A に翻訳する式」と見ると、この種の問題はすぐに解けます。

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問13 ★★

三角形 ABCABC で bb=2{}= 2,cc=3{}= 3,AA=120∘{}= 120^\circ のとき、aa と外接円の半径 RR を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

aa=19,{}= \sqrt{19},RR=573{}= \dfrac{\sqrt{57}}{3}

解説

余弦定理より

a2\displaystyle a^2=22\displaystyle {}= 2^2+32\displaystyle {}+ 3^2−2⋅2⋅3⋅cos⁡120∘\displaystyle {}- 2 \cdot 2 \cdot 3 \cdot \cos 120^\circ=4\displaystyle {}= 4+9\displaystyle {}+ 9+6\displaystyle {}+ 6=19\displaystyle {}= 19⟹a\displaystyle {}\Longrightarrow\qquad a=19‾\displaystyle {}= \underline{\sqrt{19}}

次に正弦定理 aa=2Rsin⁡A{}= 2R\sin A より

R\displaystyle R=a2sin⁡A\displaystyle {}= \frac{a}{2\sin A}=192⋅32\displaystyle {}= \frac{\sqrt{19}}{2 \cdot \dfrac{\sqrt{3}}{2}}=193\displaystyle {}= \frac{\sqrt{19}}{\sqrt{3}}=573\displaystyle {}= \frac{\sqrt{57}}{3} R\displaystyle R=573‾\displaystyle {}= \underline{\frac{\sqrt{57}}{3}}

「余弦定理で辺 → 正弦定理で RR」の順に使う、典型的な組み合わせです。

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問14 ★★

三角形 ABCABC で aa=3{}= 3,bb=7{}= 7,cc=8{}= 8 のとき、BB と外接円の半径 RR を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

BB=60∘,{}= 60^\circ,RR=733{}= \dfrac{7\sqrt{3}}{3}

解説
cos⁡B\displaystyle \cos B=c2+a2−b22ca\displaystyle {}= \frac{c^2 + a^2 - b^2}{2ca}=64+9−492⋅8⋅3\displaystyle {}= \frac{64 + 9 - 49}{2 \cdot 8 \cdot 3}=2448\displaystyle {}= \frac{24}{48}=12\displaystyle {}= \frac{1}{2}⟹B\displaystyle {}\Longrightarrow\qquad B=60∘‾\displaystyle {}= \underline{60^\circ}

正弦定理 bb=2Rsin⁡B{}= 2R\sin B より

R\displaystyle R=b2sin⁡B\displaystyle {}= \frac{b}{2\sin B}=72⋅32\displaystyle {}= \frac{7}{2 \cdot \dfrac{\sqrt{3}}{2}}=73\displaystyle {}= \frac{7}{\sqrt{3}}=733‾\displaystyle {}= \underline{\frac{7\sqrt{3}}{3}}

3 辺だけが分かっているときは、まず余弦定理で角を 1 つ出すと、正弦定理が使えるようになります。

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問15 ★★

3 辺の長さが (1) 4,4, 6,\ 6, 7\ 7,(2) 4,4, 5,\ 5, 7\ 7,(3) 5,5, 12,\ 12, 13\ 13 である三角形は、それぞれ鋭角三角形・直角三角形・鈍角三角形のどれかを定めなさい。

つまずいたときは:
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答え

(1) 鋭角三角形 (2) 鈍角三角形 (3) 直角三角形

解説

いずれも最大の辺の 2 乗と、残り 2 辺の 2 乗の和を比べます。

(1) 727^2=49{}= 49,424^2+62{}+ 6^2=52{}= 52。4949<52{}< 52 なので最大の角は鋭角で、鋭角三角形‾\underline{\text{鋭角三角形}}。

(2) 727^2=49{}= 49,424^2+52{}+ 5^2=41{}= 41。4949>41{}> 41 なので最大の角は鈍角で、鈍角三角形‾\underline{\text{鈍角三角形}}。

(3) 13213^2=169{}= 169,525^2+122{}+ 12^2=169{}= 169。等しいので最大の角は直角で、直角三角形‾\underline{\text{直角三角形}}。

(1) と (2) は最大辺が同じ 77 でも、残り 2 辺が少し違うだけで形の種類が変わります。三平方の定理の「==」を境に、鋭角と鈍角が分かれるのです。

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問16 ★★

三角形 ABCABC で acos⁡Ba\cos B=bcos⁡A{}= b\cos A が成り立つとき、この三角形がどのような形か定めなさい。

つまずいたときは:
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答え

aa=b{}= b の二等辺三角形

解説

余弦定理で cos⁡A\cos A,cos⁡B\cos B を辺で表します。

a⋅c2+a2−b22ca\displaystyle a \cdot \frac{c^2 + a^2 - b^2}{2ca}=b⋅b2+c2−a22bc\displaystyle {}= b \cdot \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc}

両辺を約分すると

c2+a2−b22c\displaystyle \frac{c^2 + a^2 - b^2}{2c}=b2+c2−a22c\displaystyle {}= \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2c}⟹c2\displaystyle {}\Longrightarrow\qquad c^2+a2\displaystyle {}+ a^2−b2\displaystyle {}- b^2=b2\displaystyle {}= b^2+c2\displaystyle {}+ c^2−a2\displaystyle {}- a^2 2a2\displaystyle 2a^2=2b2\displaystyle {}= 2b^2⟹a\displaystyle {}\Longrightarrow\qquad a=b\displaystyle {}= b(a>0, b>0)\displaystyle (a > 0,\ b > 0)

したがって、a=b の二等辺三角形‾\underline{a = b\ \text{の二等辺三角形}} です。

角の条件を「すべて辺の式」に翻訳するのが、三角形の形を決める問題の定石です。

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問17 ★★★

3 辺の長さが xx,xx+1{}+ 1,xx+2{}+ 2 の三角形が鈍角三角形となるような xx の値の範囲を求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

11<x{}< x<3{}< 3

解説

まず三角形ができる条件です。最大辺 xx+2{}+ 2 が残り 2 辺の和より短ければよいので

x\displaystyle x+(x+1)\displaystyle {}+ (x + 1)>x\displaystyle {}> x+2\displaystyle {}+ 2⟹x\displaystyle {}\Longrightarrow\qquad x>1\displaystyle {}> 1

(xx>1{}> 1 なら 3 辺はすべて正です。)

次に鈍角三角形の条件です。最大辺 xx+2{}+ 2 の向かいの角が鈍角であればよいので

(x+2)2\displaystyle (x + 2)^2>x2\displaystyle {}> x^2+(x+1)2\displaystyle {}+ (x + 1)^2 x2\displaystyle x^2+4x\displaystyle {}+ 4x+4\displaystyle {}+ 4>2x2\displaystyle {}> 2x^2+2x\displaystyle {}+ 2x+1\displaystyle {}+ 1⟹x2\displaystyle {}\Longrightarrow\qquad x^2−2x\displaystyle {}- 2x−3\displaystyle {}- 3<0\displaystyle {}< 0⟹(x−3)(x+1)\displaystyle {}\Longrightarrow\qquad (x - 3)(x + 1)<0\displaystyle {}< 0

よって −1-1<x{}< x<3{}< 3。xx>1{}> 1 と合わせて

1<x<3‾\underline{1 < x < 3}

xx が大きくなるほど 3 辺の長さが近づき、正三角形に近い鋭角三角形になっていきます。境目の xx=3{}= 3(3 辺が 3,3, 4,\ 4, 5\ 5)がちょうど直角三角形です。

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問18 ★★★

三角形 ABCABC で (a+b):(b+c):(c+a)(a + b) : (b + c) : (c + a)=4:5:6{}= 4 : 5 : 6 のとき、この三角形の最大の角の大きさを求めなさい。

つまずいたときは:
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答え

120∘120^\circ(CC が最大の角)

解説

aa+b{}+ b=4k{}= 4k,bb+c{}+ c=5k{}= 5k,cc+a{}+ a=6k{}= 6k(kk>0{}> 0)とおきます。3 式を足すと

2(a+b+c)\displaystyle 2(a + b + c)=15k\displaystyle {}= 15k⟹a\displaystyle {}\Longrightarrow\qquad a+b\displaystyle {}+ b+c\displaystyle {}+ c=152k\displaystyle {}= \frac{15}{2}k

ここから各辺を引くと

c\displaystyle c=152k\displaystyle {}= \frac{15}{2}k−4k\displaystyle {}- 4k=72k,\displaystyle {}= \frac{7}{2}k,a\displaystyle a=152k\displaystyle {}= \frac{15}{2}k−5k\displaystyle {}- 5k=52k,\displaystyle {}= \frac{5}{2}k,b\displaystyle b=152k\displaystyle {}= \frac{15}{2}k−6k\displaystyle {}- 6k=32k\displaystyle {}= \frac{3}{2}k

よって a:b:ca : b : c=5:3:7{}= 5 : 3 : 7。最大の辺は cc なので、最大の角は CC です。aa=5{}= 5,bb=3{}= 3,cc=7{}= 7 として

cos⁡C\displaystyle \cos C=a2+b2−c22ab\displaystyle {}= \frac{a^2 + b^2 - c^2}{2ab}=25+9−492⋅5⋅3\displaystyle {}= \frac{25 + 9 - 49}{2 \cdot 5 \cdot 3}=−1530\displaystyle {}= \frac{-15}{30}=−12\displaystyle {}= -\frac{1}{2} C\displaystyle C=120∘‾\displaystyle {}= \underline{120^\circ}

「和の比」は 3 式を足して全体の和を出すと、1 辺ずつ取り出せます。最大の角は最大の辺の向かいにあることも忘れずに。

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問19 ★★★

三角形 ABCABC で acos⁡Ba\cos B+bcos⁡A{}+ b\cos A=c{}= c が成り立つことを示しなさい。

つまずいたときは:
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答え

cos⁡A\cos A,cos⁡B\cos B を余弦定理で辺の式に直し、通分すると 2c22c\dfrac{2c^2}{2c}=c{}= c になる。

解説

余弦定理より cos⁡B\cos B=c2+a2−b22ca{}= \dfrac{c^2 + a^2 - b^2}{2ca},cos⁡A\cos A=b2+c2−a22bc{}= \dfrac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc} なので、左辺は

a⋅c2+a2−b22ca\displaystyle a \cdot \frac{c^2 + a^2 - b^2}{2ca}+b⋅b2+c2−a22bc\displaystyle {}+ b \cdot \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2bc}=c2+a2−b22c\displaystyle {}= \frac{c^2 + a^2 - b^2}{2c}+b2+c2−a22c\displaystyle {}+ \frac{b^2 + c^2 - a^2}{2c}

分母がそろったので、分子を足すと

(c2+a2−b2)\displaystyle (c^2 + a^2 - b^2)+(b2+c2−a2)\displaystyle {}+ (b^2 + c^2 - a^2)=2c2\displaystyle {}= 2c^2

よって左辺は 2c22c\dfrac{2c^2}{2c}=c{}= c となり、右辺に一致します。(証明終)

この等式は「CC から辺 ABAB に垂線を下ろすと、ABAB が bcos⁡Ab\cos A と acos⁡Ba\cos B に分かれる」という図形的な意味を持っています(AA や BB が鈍角のときは cos⁡\cos が負になって、垂線の足が辺の外に出ることに対応します)。第一余弦定理と呼ばれることもあります。

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問20 ★★★

三角形 ABCABC で sin⁡A\sin A=2sin⁡Bcos⁡C{}= 2\sin B\cos C が成り立つとき、この三角形がどのような形か定めなさい。

つまずいたときは:
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答え

bb=c{}= c の二等辺三角形

解説

正弦定理 sin⁡A\sin A=a2R{}= \dfrac{a}{2R},sin⁡B\sin B=b2R{}= \dfrac{b}{2R} と、余弦定理 cos⁡C\cos C=a2+b2−c22ab{}= \dfrac{a^2 + b^2 - c^2}{2ab} を代入して、辺だけの式にします。

a2R\displaystyle \frac{a}{2R}=2⋅b2R⋅a2+b2−c22ab\displaystyle {}= 2 \cdot \frac{b}{2R} \cdot \frac{a^2 + b^2 - c^2}{2ab}

両辺に 2R2R をかけて整理すると

a\displaystyle a=a2+b2−c2a\displaystyle {}= \frac{a^2 + b^2 - c^2}{a}⟹a2\displaystyle {}\Longrightarrow\qquad a^2=a2\displaystyle {}= a^2+b2\displaystyle {}+ b^2−c2\displaystyle {}- c^2⟹b2\displaystyle {}\Longrightarrow\qquad b^2=c2\displaystyle {}= c^2

bb>0{}> 0,cc>0{}> 0 なので bb=c{}= c。したがって b=c の二等辺三角形‾\underline{b = c\ \text{の二等辺三角形}} です。

sin⁡\sin は正弦定理で辺に、cos⁡\cos は余弦定理で辺に直す——2 つの定理を「辺への翻訳機」として同時に使う問題です。

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数学小話コーナー

1 メートルは正弦定理で決められた

いま私たちが使う「メートル」は、もともと「北極から赤道までの子午線の長さの 1000 万分の 1」と定められました。18 世紀末のフランスで、その子午線の長さを実際に測る大事業が行われます。担当したのは天文学者のドランブルとメシャンで、フランス北端のダンケルクからスペインのバルセロナまでを、1792 年から 6 年あまりかけて測量しました。

とはいえ、何百 km もの距離を巻き尺で測るわけにはいきません。彼らが使ったのが三角網です。まず最初の 1 辺(基線)だけを地上で丁寧に測り、あとは教会の塔や山頂を頂点とする三角形を次々につないで、各頂点で角だけを測ります。1 辺と 2 角が分かれば正弦定理で残りの辺が出る——その辺を次の三角形の「分かっている辺」にして、また角を測る。これをくり返して、ダンケルクからバルセロナまで計算でつないだのです。

豆知識

測量の途中で革命の混乱に巻き込まれ、メシャンはスパイと疑われて拘束されたこともあったといいます。こうして決まった長さをもとに、白金のメートル原器が作られました。今のメートルは光の速さで定義されていますが、その値は、正弦定理で測った子午線の長さを受け継いでいます(※測量の詳細は諸説あり)。

『原論』に書かれていた余弦定理

余弦定理は cos⁡\cos を使って書かれているので、三角比が生まれてからの定理だと思われがちです。ところが紀元前 300 年ごろのユークリッド『原論』第 2 巻には、すでに余弦定理と同じ内容が載っています。

ただし書き方がまったく違います。命題 12 は「鈍角三角形では、鈍角の向かいの辺の上の正方形は、残り 2 辺の上の正方形の和より大きい。その差は……」、命題 13 は「鋭角三角形では……小さい。その差は……」という、正方形の面積を比べる言葉で述べられています。「大きい・小さい」で場合を分けているのは、cos⁡\cos が負・正になる場合を、符号ではなく図形の言葉で区別しているからです。

豆知識

この章で「cos⁡\cos の符号のおかげで鈍角でも鋭角でも 1 本の式で済む」と書きました。裏を返せば、負の数や cos⁡\cos を持たなかった古代ギリシャでは、同じ内容を 2 つの命題に分けて書くしかなかったのです。記号が 1 つ増えるだけで、2000 年前の 2 つの定理が 1 行にまとまります(※命題番号は現代の校訂版によります)。

角で決めるか、距離で決めるか——測量と GPS

「三角形の決定」の考え方は、そのまま「自分の位置を決める」技術になっています。

昔ながらの測量は三角測量です。位置の分かっている 2 地点から目標を見て角を測り、「1 辺と 2 角」で三角形を決めます(正弦定理の出番です)。巻き尺を伸ばせない川の向こうや山の上でも、角なら測れるのが強みでした。

いっぽうスマートフォンの GPS は、距離で位置を決めます。人工衛星が発した電波の到着時刻から、各衛星までの距離を計算します。衛星の位置は分かっているので、「複数の点からの距離」で自分の位置が決まる。こちらは「3 辺」で三角形を決めるやり方に近く、三辺測量と呼ばれます。

豆知識

角を測るか、距離を測るか。どちらが得意かは道具しだいで、望遠鏡の時代は角、電波と正確な時計の時代は距離が測りやすくなりました。正弦定理と余弦定理の使い分けは、「手元にある情報が角なのか辺なのか」で決まる——測量の歴史も、まったく同じ理由で道具を選んできたのです。

厳密定義(発展)

※ここは発展ページです。高校の範囲では「正弦定理・余弦定理を使えること」で十分ですが、「なぜ鈍角三角形でも同じ式が成り立つの?」「三角形が 1 つに決まるとはどういうことか?」が気になる人のために、証明と少し厳密な見方を紹介します。

定義1:三角形の記号と外接円

三角形 ABCABC において、∠A\angle A,∠B\angle B,∠C\angle C の大きさをそれぞれ AA,BB,CC と書き、辺 BCBC,CACA,ABAB の長さをそれぞれ aa,bb,cc と書く。AA+B{}+ B+C{}+ C=180∘{}= 180^\circ であり、各角は 0∘0^\circ より大きく 180∘180^\circ より小さい。

三角形 ABCABC の 3 頂点を通る円を外接円といい、その半径を RR で表す。3 点が同一直線上にないとき、それらを通る円はただ 1 つ存在する。

定理1:正弦定理

三角形 ABCABC の外接円の半径を RR とするとき

asin⁡A\displaystyle \frac{a}{\sin A}=bsin⁡B\displaystyle {}= \frac{b}{\sin B}=csin⁡C\displaystyle {}= \frac{c}{\sin C}=2R\displaystyle {}= 2R

証明 aa=2Rsin⁡A{}= 2R\sin A を示せば、bb,cc についても同様である。AA の大きさで 3 つの場合に分ける。

(i) AA=90∘{}= 90^\circ のとき。辺 BCBC は外接円の直径であるから aa=2R{}= 2R。一方 sin⁡90∘\sin 90^\circ=1{}= 1 なので aa=2Rsin⁡A{}= 2R\sin A が成り立つ。

(ii) AA<90∘{}< 90^\circ のとき。BB を通る直径のもう一方の端を A′A' とする。∠A′\angle A' と ∠A\angle A は同じ弧 BCBC の上の円周角なので ∠A′\angle A'=A{}= A。また直径 BA′BA' に立つ円周角だから ∠A′CB\angle A'CB=90∘{}= 90^\circ。直角三角形 A′BCA'BC で、斜辺 BA′BA'=2R{}= 2R,∠A′\angle A' の対辺が BCBC=a{}= a なので

sin⁡A\displaystyle \sin A=sin⁡A′\displaystyle {}= \sin A'=a2R\displaystyle {}= \frac{a}{2R}

(iii) AA>90∘{}> 90^\circ のとき。同じく A′A' をとると、AA と A′A' は弦 BCBC に関して反対側にあるので、円に内接する四角形 ABA′CABA'C の向かい合う角として ∠A′\angle A'=180∘−A{}= 180^\circ - A である。直角三角形 A′BCA'BC で sin⁡A′\sin A'=a2R{}= \dfrac{a}{2R} だから、第2章の定理3より

sin⁡A\displaystyle \sin A=sin⁡(180∘−A′)\displaystyle {}= \sin(180^\circ - A')=sin⁡A′\displaystyle {}= \sin A'=a2R\displaystyle {}= \frac{a}{2R}

いずれの場合も aa=2Rsin⁡A{}= 2R\sin A が成り立つ。(証明終)

(iii) で使ったのは、第2章で証明した sin⁡(180∘−θ)\sin(180^\circ - \theta)=sin⁡θ{}= \sin\theta です。鈍角の三角比を定義しておいたからこそ、正弦定理を鈍角三角形にまで「場合分けなしの 1 本の式」として述べられます。

定理2:余弦定理

三角形 ABCABC において

a2\displaystyle a^2=b2\displaystyle {}= b^2+c2\displaystyle {}+ c^2−2bccos⁡A\displaystyle {}- 2bc\cos A

(bb,cc についても同様の式が成り立つ。)

証明 座標平面上に、AA が原点、BB が xx 軸の正の部分の点 (c, 0)(c,\ 0) となるように三角形を置く。CC は原点からの距離が bb で、xx 軸の正の向きから反時計回りに角 AA の方向にある点である。第2章の定義1(単位円による三角比の定義)で、単位円上の点 (cos⁡A, sin⁡A)(\cos A,\ \sin A) を原点を中心に bb 倍に拡大した点が CC なので

C(bcos⁡A, bsin⁡A)C(b\cos A,\ b\sin A)

これは 0∘0^\circ<A{}< A<180∘{}< 180^\circ の範囲で、AA が鈍角であっても成り立つ(そのとき cos⁡A\cos A<0{}< 0 なので CC の xx 座標は負である)。2 点間の距離の公式より

a2\displaystyle a^2=BC2\displaystyle {}= BC^2=(bcos⁡A−c)2\displaystyle {}= (b\cos A - c)^2+(bsin⁡A−0)2\displaystyle {}+ (b\sin A - 0)^2=b2(cos⁡2A+sin⁡2A)\displaystyle {}= b^2(\cos^2 A + \sin^2 A)−2bccos⁡A\displaystyle {}- 2bc\cos A+c2\displaystyle {}+ c^2

cos⁡2A\cos^2 A+sin⁡2A{}+ \sin^2 A=1{}= 1(第2章の定理2)より a2a^2=b2{}= b^2+c2{}+ c^2−2bccos⁡A{}- 2bc\cos A。(証明終)

教科書によっては、CC から辺 ABAB に垂線を下ろし、AA が鋭角・直角・鈍角のときで図を 3 通り描いて証明します。座標を使えば、単位円の定義が符号を自動的に処理してくれるので、場合分けが要りません。第2章で三角比を「座標」として定義し直した効果が、ここに現れています。

定理3:角の種類と辺の長さの関係

三角形 ABCABC において

A\displaystyle A<90∘\displaystyle {}< 90^\circ  ⟺  a2\displaystyle {}\iff a^2<b2\displaystyle {}< b^2+c2,\displaystyle {}+ c^2,A\displaystyle A=90∘\displaystyle {}= 90^\circ  ⟺  a2\displaystyle {}\iff a^2=b2\displaystyle {}= b^2+c2,\displaystyle {}+ c^2,A\displaystyle A>90∘\displaystyle {}> 90^\circ  ⟺  a2\displaystyle {}\iff a^2>b2\displaystyle {}> b^2+c2\displaystyle {}+ c^2

証明 定理2より b2b^2+c2{}+ c^2−a2{}- a^2=2bccos⁡A{}= 2bc\cos A で、2bc2bc>0{}> 0 である。したがって b2b^2+c2{}+ c^2−a2{}- a^2 の符号は cos⁡A\cos A の符号と一致する。0∘0^\circ<A{}< A<180∘{}< 180^\circ の範囲で、cos⁡A\cos A>0{}> 0  ⟺  A{}\iff A<90∘{}< 90^\circ,cos⁡A\cos A=0{}= 0  ⟺  A{}\iff A=90∘{}= 90^\circ,cos⁡A\cos A<0{}< 0  ⟺  A{}\iff A>90∘{}> 90^\circ(第2章の公式2)だから、主張が従う。(証明終)

真ん中の AA=90∘{}= 90^\circ  ⟺  a2{}\iff a^2=b2{}= b^2+c2{}+ c^2 は、三平方の定理とその逆をまとめたものです。定理3はそれを両側に広げ、「== が << に崩れると鋭角、>> に崩れると鈍角」と述べています。

補足:三角形の決定条件と合同条件。中学で学ぶ三角形の合同条件は「3 辺がそれぞれ等しい」「2 辺とその間の角がそれぞれ等しい」「1 辺とその両端の角がそれぞれ等しい」の 3 つでした。これは「その情報を指定すれば三角形の形と大きさが 1 つに決まる」という主張であり、この章の定理はその「決まる」を計算で実現したものといえます。

いっぽう「2 辺と一方の対角」は合同条件に含まれていません。定理1で求まるのは sin⁡B\sin B の値であり、sin⁡\sin から角を求めると BB と 180∘−B180^\circ - B の 2 つが候補になる(第2章の補足)ためです。候補が 2 つとも AA+B{}+ B<180∘{}< 180^\circ を満たすとき、条件を満たす三角形は 2 つ存在します。これは「sin⁡\sin の値 → 角」の対応が 1 対 1 でないことの、図形における現れです。

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