問1
直角三角形で、角 の対辺が 、隣辺が 、斜辺が であるとき、 を求めなさい。
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(対辺÷斜辺)
目次 / 三角比と三角関数 / 数学I
—— 直角三角形の「辺の比」に名前をつける ——
この章では、直角三角形の辺の比に名前をつけた「三角比」(sin・cos・tan)を学びます。角度が決まれば辺の比が決まる——この1つの事実から、辺の長さを求めたり、木や塔の高さを地面から測ったりできるようになります。角度はすべて「度」で表します。
直角三角形には、直角のほかにもう2つの角があります。そのうち1つの角を (シータ)と呼ぶことにすると、3つの辺にはそれぞれ名前がつきます。
大事なのは、対辺と隣辺は「どの角を とみるか」で入れ替わるということです。斜辺だけは、どの角から見ても同じです。
直角三角形で、角 ()に対して
「斜辺が分母なら か 、対辺が分子なら か 」と、分母・分子で覚えると混乱しにくくなります。筆記体の s・c・t の書き順で辺をなぞる覚え方も有名です。
三角比は、道路標識にすでに使われています。坂道の標識にある「勾配 10%」は、「水平に 100 m 進むと 10 m 上がる」という意味。これは 、つまり そのものです。急な坂ほど の値が大きくなります。
三角比とは、直角三角形の「2辺の比」に ・・ という名前をつけたもので、角度だけで値が決まるということです。
直角三角形で、角 の対辺の長さが 、隣辺の長さが であるとき、,, の値を求めなさい。
【解答】
まず斜辺の長さを三平方の定理で求めます。
定義にあてはめると
分母に が残るときは、分母・分子に同じ数をかけて有理化した形を最終的な答えにします。
三角比は、ふつうは表や電卓で値を調べます。ところが ・・ の3つだけは、三角定規の形から正確な値が分かります。
表を丸暗記するより、三角定規の絵を描いて「対辺÷斜辺」などと読み取るほうが確実です。
三角定規がこの2種類しかないのは偶然ではありません。正三角形と正方形という「いちばん基本的な図形」を半分に切ると、この2つになるからです。だからこそ辺の比が や というきれいな数で書けます。
・・ の三角比は、2種類の三角定規の辺の比 , を読み取れば求められるということです。
直角三角形で、斜辺の長さが 、1つの角が であるとき、 の対辺と隣辺の長さを求めなさい。
【解答】
なので
なので
「求めたい辺」と「分かっている辺」の両方を含む三角比を選ぶのがコツです。
,, は別々の量に見えますが、じつは1つが分かると残りの2つも決まります。
3つの値のうち1つが分かれば、この関係で残りが芋づる式に決まります。 が分かれば (1) で 、さらに (2) で 。 が分かれば (3) で 、そして (2) で 、という流れです。
なお、この章では なので、,, はすべて正です。 から を求めるときに、負の値を捨ててよいのはそのためです。
三角比は3つで1セットになっていて、1つの値から相互関係を使って残りの2つが決まるということです。
で のとき、, の値を求めなさい。
【解答】
より
なので
次に より
これは「対辺 3、隣辺 4、斜辺 5」の直角三角形を思い浮かべても同じ答えになります。
直角三角形の直角でない2つの角は、足すと になります。つまり一方が なら、もう一方は です。同じ三角形を「もう一方の角から見る」と、対辺と隣辺が入れ替わります。
の対辺は の隣辺、 の隣辺は の対辺になるためです。
同じ坂道でも、坂の下から見上げる角と、坂の上から水平線までを測る角は互いに補い合って になります。見る場所が変わるだけで、坂そのものは同じ。だから と が入れ替わるだけで、値は共通しています。
この公式を使うと、 より大きい角の三角比を より小さい角で表せます。三角比の表が から までしか無くても、 のように読み替えれば足りるわけです。
と は同じ直角三角形の2つの角なので、 と が入れ替わるだけで三角比の値は共通だということです。
次の三角比を、 以下の角の三角比で表しなさい。また、(3) の値を求めなさい。
【解答】
(1) なので
(2) なので
(3) なので
「 つの角を足すと 」に気づけば、相互関係の公式が使える形になります。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
直角三角形で、角 の対辺が 、隣辺が 、斜辺が であるとき、 を求めなさい。
(対辺÷斜辺)
問2
直角三角形で、角 の対辺が 、隣辺が 、斜辺が であるとき、 と を求めなさい。
(隣辺÷斜辺),(対辺÷隣辺)
問3
を求めなさい。
( の三角定規で の対辺 、斜辺 )
問4
を求めなさい。
問5
を求めなさい。
( の対辺 、隣辺 )
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
の直角三角形 で、,, である。,, の値を求めなさい。
角 から見ると、斜辺は 、対辺は 、隣辺は です。
問2 ★
直角三角形で、角 の隣辺が 、斜辺が であるとき、,, の値を求めなさい。
対辺の長さを三平方の定理で求めます。
よって
問3 ★
,, の値を求めなさい。
の三角定規で、 の対辺は 、斜辺は 。 の隣辺は 、斜辺は 。 の三角定規で、 の対辺と隣辺はどちらも です。
となっているのは、 だからです。
問4 ★
直角三角形で、斜辺の長さが 、1つの角が であるとき、 の対辺の長さを求めなさい。
より
問5 ★
直角三角形で、角 の隣辺の長さが であるとき、対辺と斜辺の長さを求めなさい。
対辺 ,斜辺
より
より
( の直角三角形は直角二等辺三角形なので、対辺=隣辺 でもすぐ分かります。)
問6 ★
で のとき、, の値を求めなさい。
より
なので 。
問7 ★
と を、それぞれ 以下の角の三角比で表しなさい。
, なので
問8 ★
の値を求めなさい。
なので
問9 ★★
で のとき、, の値を求めなさい。
。 なので
問10 ★★
で のとき、, の値を求めなさい。
より
なので 。
より なので
(対辺 、隣辺 、斜辺 の直角三角形を描いても同じ結果です。)
問11 ★★
地面に垂直に立つ木から m 離れた地点で、木のてっぺんを見上げる角(仰角)を測ると であった。目の高さを m、 として、木の高さを求めなさい。
m(約 m)
目の高さから上の部分を m とすると、水平距離 m が隣辺、 が対辺の直角三角形ができるので
木の高さは、これに目の高さを足して
問12 ★★
, の二等辺三角形 がある。頂点 から辺 に下ろした垂線の長さと、辺 の長さを求めなさい。
垂線の長さ ,
垂線の足を とすると、三角形 は の直角三角形で、斜辺 , です。
二等辺三角形なので は の中点であり
問13 ★★
の値を求めなさい。
それぞれ展開すると
足すと の項が打ち消し合い、 が残ります。 なので、値は 。 の値によらず一定になります。
問14 ★★
のとき、 の値を求めなさい。
分母・分子を で割ると、 だけの式になります。
と をそれぞれ求めてもよいのですが(,)、 で割る方法は が分数や無理数でもそのまま使えます。
問15 ★★
が成り立つことを示しなさい。
左辺を , で表して通分すると右辺に一致する。
なので、左辺は
となり、右辺に一致します。(証明終)
を含む等式は「 と に直して通分し、 を使う」のが定石です。
問16 ★★
上の式の値を求めなさい。
足して になる角どうしを組にします。, なので
問17 ★★★
で のとき、 と の値を求めなさい。
の両辺を 2 乗すると
なので
次に、 を使うと
が与えられたら「2 乗して を出す」のが第一手です。
問18 ★★★
水平な地面に垂直に立つ塔がある。地点 から塔の先端を見上げる仰角は で、 から塔に向かって m 進んだ地点 から見上げる仰角は であった。目の高さを無視して、塔の高さを求めなさい。
m
塔の高さを m、塔の根元を とします。
直角三角形 (仰角 )で より
直角三角形 (仰角 )で より
なので
塔の根元まで行けなくても、2 地点の仰角と距離だけで高さが分かります。「 と を両方 で表して、差が 」という立式がポイントです。
問19 ★★★
,, の直角三角形 がある。辺 を の側に延長し、 となる点 をとる。このとき の大きさを求め、それを用いて と の値を求めなさい。
三角形 は の三角定規の形なので、, です。
三角形 は の二等辺三角形で、。底角は等しいので
直角三角形 で、角 の対辺は 、隣辺は です。
斜辺 は三平方の定理から
なので 。よって
三角定規に二等辺三角形をくっつけるだけで、 という新しい角の三角比が正確に求まります。
問20 ★★★
で のとき、,, の値を求めなさい。
の両辺を 2 乗すると
次に
では , なので 。よって
最後に、問15 で示した を使うと
平方根をとるときに「符号が決められるか」を必ず確認しましょう。ここでは の範囲から正と決まりました。
の正式名は「正弦」。弦とは弓の弦のことで、円に張った弦の長さから三角比が生まれた名残です。この言葉は、古代インドのサンスクリット語で弦を意味する「ジヤー(jyā)」から始まりました。それがアラビア語に音写されたとき、母音を書かない習慣のせいで「jb」という意味不明の綴りになり、後の翻訳者がこれを「ジャイブ(jaib)=ふところ・入り江」と読み違えたといわれます。12 世紀にラテン語へ訳されるとき「入り江」を意味する sinus が当てられ、それが英語の sine になりました(※諸説あり)。
豆知識
つまり「サイン」という名前そのものには、三角形とも弦とも関係のない意味しかありません。インド → アラビア → ヨーロッパと 1000 年かけて旅をするうちに、途中で意味を落としてきた言葉なのです。ちなみに は「補う(co-)サイン」、 の という意味で、この章の公式4がそのまま名前になっています。
江戸時代の商人・伊能忠敬は、50 歳を過ぎてから天文学を学び、17 年かけて日本全国を歩いて測量し、驚くほど正確な日本地図を完成させました。測量の基本は、歩幅や縄で測った距離と、方位磁石で測った方角を積み重ねていく方法です。加えて、遠くの山や岬を複数の地点から観測し、見える方向の角度から位置を割り出しました。地点間の距離と角度が分かれば、直角三角形を作って残りの辺が計算できる——これはまさに、この章で学んだ三角比の考え方です。
豆知識
夜には星の高度(見上げる角度)を測って緯度を求めることも欠かしませんでした。歩いた距離は地球 1 周分に近いともいわれます(※諸説あり)。三角比と星の角度だけで、衛星も無い時代に日本の形が描かれたのです。
古代ギリシャの哲学者タレスは、エジプトを訪れたときにピラミッドの高さを言い当てて人々を驚かせた、という逸話があります。方法はシンプルで、「自分の影の長さが自分の身長とぴったり同じになる時刻」を待ち、そのときのピラミッドの影の長さを測っただけ。影と身長が等しいということは、太陽の光の角度が 、つまり の状態です。だからピラミッドの影の長さが、そのまま高さになります(※諸説あり。棒の影との比を使ったという説もあります)。
三角比の表も電卓も無い時代に、「角度が同じなら辺の比は同じ」という事実だけで巨大な建造物を測ってしまう。この章の実践問題で木や塔の高さを求めたのと、発想はまったく同じです。
※ここは発展ページです。高校の範囲では「直角三角形の辺の比」という理解で十分ですが、「三角形の大きさが変わっても本当に同じ値になるの?」「三角比は関数なの?」が気になる人のために、少し厳密な見方を紹介します。
とする。, である直角三角形 をとり、
と定める。
この定義には、じつは 1 つ確認しておくべきことがあります。「 の直角三角形」は無数にあります(大きさが自由だからです)。どの三角形を選んでも同じ値になるのでなければ、 という記号は意味をなしません。
, の直角三角形 と、, の直角三角形 について
が成り立つ。
証明 2 つの三角形は、2 組の角がそれぞれ等しい( と )ので相似である。相似な図形では対応する辺の比がすべて等しいから、。これを比の形に書き直せば上の 3 つの等式が得られる。(証明終)
このように「定義がきちんと意味を持つ(選び方によらない)」ことを確かめる作業を、数学では well-defined(ウェルディファインド)の確認と呼びます。三角比の定義が成り立つのは、相似という数学の下支えがあるからです。
定理1により、角 を 1 つ決めるごとに の値がただ 1 つ決まる。すなわち は、 の範囲の角を実数に対応させる関数である。, についても同様である。
「三角比は関数だ」という見方は、第6章で ,, を三角関数として扱うときの出発点になります。この章では角の範囲が から の間に限られていますが、第2章と第6章で定義を広げ、どんな角に対しても値が決まるようにしていきます。なお、直角三角形の角は 未満なので、 はこの定義では意味を持ちません(隣辺の長さが になり、割り算ができないためです)。
のとき
証明 定義1の直角三角形 で、三平方の定理より 。両辺を で割ると
また
最後に、第 1 式の両辺を で割り、第 2 式を用いると
(証明終)
**補足: が大きくなると三角比はどう変わるか。**斜辺の長さを に固定して角 を から へ大きくしていくと、対辺はどんどん長く( から へ)、隣辺はどんどん短く( から へ)なります。したがって は増加し、 は減少し、 は増加して限りなく大きくなります。この「増減のようす」は、第7章でグラフを描くときにそのまま形になって現れます。
この章の学習が終わったら
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