問1
二次方程式 の解を求めなさい。
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目次 / 二次関数 / 数学I
—— 因数分解・平方完成・解の公式で、グラフと x 軸の交点を求める ——
第4章では、$x$ 軸との交点が分かっているところから二次関数の式を決めました。この章では向きを戻して、式が分かっているときに $x$ 軸との交点を**求める**方法を学びます。$y = 0$ とおいた $ax^2 + bx + c = 0$ が二次方程式です。解き方は、因数分解・平方完成・解の公式の 3 つ。どれを選ぶかの目安を身につけたうえで、出てきた解が問題の条件に合うかを確かめる「解の吟味」、文字を含む方程式の場合分け、2 つの方程式に共通な解まで進みます。解の公式は数と式 第11章でも学びましたが、ここでは**実数の解**に絞って扱います。
のとき、 の形に整理できる方程式を、 についての二次方程式といいます。方程式を満たす の値を解、解をすべて求めることを「方程式を解く」といいます。この章では、特に断らないかぎり、解は実数の範囲で考えます。
第1章の公式5で、「 の実数解は、 のグラフと直線 の共有点の 座標」だと学びました。 の場合を考えると、次のようになります。
の実数解は、 のグラフと 軸の共有点の 座標
第4章の結びで予告した なら、下の図の 2 つの点の 座標が解です。図からは「 と の間に 1 つ、 と の間に 1 つ」までは読めますが、正確な値は計算で求めるしかありません。その道具をこれから 3 つ用意します。
2 つの実数 , について
これを使い、次の手順で解く。
のとき、すなわち のときは解が の 1 つだけになる。これを重解という。
かけ算の答えが になるのは、かけた数のどれかが のときに限られます。 も も にはなりません。
クリスマスツリーに巻く、昔ながらの直列の電飾を思い浮かべてください。電球が 1 つでも切れると、列全体が消えてしまいます。逆に、列が消えているなら、どこかの電球が切れているはずです。「列が消える」が 、「どれかが切れている」が「 または 」にあたります。どこが切れているかは 1 つずつ確かめる、というのが手順 3 です。
気をつけたいのは、右辺を にしてから因数分解することです。 を「 または 」とするのは誤りです。かけて になる組み合わせは でも でもよく、1 つに絞れないからです。 だけが特別なのです。
もう 1 つ、両辺を で割らないことも大切です。 の両辺を で割ると になりますが、 も解です。 が かもしれないのに割ってしまったせいで、解を 1 つ失いました。
右辺を にして因数分解できれば、「どれかの因数が 」から解がすぐに求まるということです。
次の二次方程式を解きなさい。
(1)
(2)
(3)
(4)
【解答】
(1) より
(2) たすき掛けで 。 または なので
(3) 右辺を移して 、すなわち より
(4) より なので (重解)
(1) は、第2章の実践問題 j08 で「 のグラフと 軸の交点」を求めたときと同じ計算です。(4) のグラフ は、頂点 で 軸に接しています。重解はグラフでは「 軸にちょうど触れる」形になり、第6章で詳しく扱います。
は、整数の範囲ではうまく因数分解できません。こういうときは、第2章で身につけた平方完成が使えます。
のとき
なら (重解)、 なら、2 乗して負になる実数はないので実数解はない。
は、両辺を で割って の項まで平方完成すれば、この形に直せる。
の解は だけではなく、 もあります。2 乗すると符号の情報が消えるので、戻るときは の両方を考えます。
アナログ時計で、12 の位置から 離れたところを指している針を思い浮かべてください。それは 3 の位置かもしれないし、9 の位置かもしれません。「どれだけ離れているか」しか分からなければ、答えは左右に 1 つずつあります。 も同じで、分かっているのは「 から だけ離れている」ことだけなので、解は の左右に 1 つずつです。上の図で、2 つの解 が軸 から等しい距離にあるのはこのためです。
平方完成して の形にすれば、 と の両方を付けて解ける( なら実数解はない)ということです。
次の二次方程式を、平方完成を用いて解きなさい。
(1)
(2)
(3)
【解答】
(1) 定数項を右辺に移し、両辺に の係数の半分の 2 乗 を足します。
よって なので
(2) 両辺を で割ってから同じようにします。
なので
(3) より 。左辺は 以上、右辺は負なので、これを満たす実数 はありません。
(3) のグラフ は頂点が の下に凸の放物線で、 軸より上にあって交わりません。「実数解がない」とは、グラフが 軸と共有点をもたないことです。
例題2 の平方完成を、係数を文字のまま一度だけやっておけば、あとは数を当てはめるだけで済みます。それが解の公式です。
二次方程式 は、 のとき実数解をもち、その解は
のときは、実数解をもたない。
の係数が偶数で と書けるときは、次の形を使うと約分の手間が省ける。
導き方は、例題2 と同じ手順です。両辺を で割り、定数項を移して平方完成します。
右辺の分母 は正なので、右辺が 以上かどうかは の符号で決まります。 なら、平方根をとって
となり( が付いているので を にしてよい)、公式が得られます。数と式 第11章では、 のときも虚数を使って解を表しましたが、この分野では実数解だけを扱います。この が、第6章で主役になる判別式です。
年賀状の宛名を 100 枚書くとき、1 枚ずつ手で配置を考える人はいません。一度きれいなテンプレートを作っておけば、あとは住所と名前を差し込むだけで印刷できます。平方完成を毎回やるのが手書き、解の公式が「,, を差し込むテンプレート」です。
どの方法を選ぶかの目安は、次のとおりです。
| 式のようす | 選ぶ方法 |
|---|---|
| すぐに因数分解できる | 因数分解(公式1) |
| の形、または の項がない | 平方根(公式2) |
| 因数分解しにくく、 の係数が偶数 | の公式 |
| それ以外 | 解の公式 |
係数に分数や小数があるときは、先に両辺を何倍かして整数にし、 の係数が負なら 倍して正にしておくと、計算ミスが減ります。
解の公式は平方完成を一度だけ文字でやった結果で、 の係数が偶数なら の形を使うと速いということです。
次の二次方程式を解きなさい。
(1)
(2)
(3)
(4)
【解答】
(1) ,, を公式に入れて
(2) なので として
(3) 両辺を 倍して 。 として
(4) なので として
(4) のように係数に根号があっても、 の公式はそのまま使えます。(2) を のままの公式で解くと となり、約分が 1 回増えます。
方程式を解いて出てきた値が、そのまま問題の答えになるとはかぎりません。
次のような問題では、文字がとれる値の範囲を先に書き出し、解いたあとで範囲に入る解だけを残す。これを解の吟味という。
カーナビに目的地を入れると、候補のルートがいくつか出てきます。けれども、その中に工事で通行止めの道を通るものがあれば、選ぶことはできません。候補を出すまでが「方程式を解く」、通れないルートを外すのが「解の吟味」です。計算そのものは道路の事情を知らないので、条件と照らし合わせるのはこちらの仕事になります。
第4章の実践問題 j14 でも、 から出た を「場面に合わない」として捨てました。あれが解の吟味です。
方程式を解く前に文字の範囲を書き出しておき、出てきた解がその範囲に入っているかを最後に必ず確かめるということです。
(1) 縦 m,横 m の長方形の土地に、同じ幅の道を縦と横に 1 本ずつ通し、残りの土地の面積を m² にしたいと考えています。道の幅を求めなさい。道は土地の辺と平行で、土地の端から端まで通っているものとします。
(2) 方程式 の実数解を求めなさい。
(3) 方程式 を解きなさい。
【解答】
(1) 道の幅を m とします。道幅は正で、縦の長さより短いので です。道の部分を端に寄せて考えると、残りの土地は縦 ,横 の長方形と同じ面積になります。
のうち、 を満たすのは です。
(2) とおくと、 で
のうち を満たすのは 。 より
を捨てたのは、 を満たす実数がないからです。
(3) 絶対値の中の符号で場合分けします。
(i) のとき なので
なので、 は と の間にあり、 を満たします。 は負なので満たしません。
(ii) のとき なので
のうち、 を満たすのは です。
(i),(ii) を合わせて
合鍵が本物かどうかは、鍵穴に差して回してみれば分かります。「 が解である」とは、 という鍵を方程式という鍵穴に差したら回る、つまり代入すると等式が成り立つということです。解の 1 つを教えてもらったら、まず差してみる。それが、定数を決める式になります。
の係数が文字のときの場合分けは、見落としやすい落とし穴です。「方程式 」と書いてあっても、「二次方程式」と断っていなければ、 で一次方程式になる場合も含まれます。
解が分かっていれば代入して定数を決め、 の係数が文字なら かどうかで分け、共通解は とおいて連立させるということです。
(1) 二次方程式 の解の 1 つが であるとき、定数 の値と、もう 1 つの解を求めなさい。
(2) を定数とします。方程式 を解きなさい。
(3) 2 つの二次方程式 , が共通の実数解をもつように、定数 の値を定め、そのときの共通解を求めなさい。
【解答】
(1) を代入して より 。方程式は
となり、もう 1 つの解は です。
(2) 左辺は と因数分解できます(展開すると で一致します)。
のとき 方程式は となり、。
のとき より 。とくに なら で、(重解)です。
まとめると、次のようになります。
(3) 共通解を とおくと
上の式から下の式を引いて を消すと
のとき 2 つの方程式はどちらも になります。 なので実数解がなく、不適です。
のとき 下の式に入れて より 。このとき 2 つの方程式は
で、確かに を共通にもちます。
のとき 2 つの方程式はまったく同じ式になるので、「実数解があれば全部が共通解」になるところでした。実数解がないので、ここでは捨てます。
この章では、 の右辺 が正なら解が 2 つ、 なら重解で 1 つ、負なら実数解がないことを見ました。解の公式で言えば、 の中身 の符号がそれを決めています。第6章では、この を判別式 と名づけ、方程式を解かなくても実数解の個数、つまりグラフと 軸の共有点の個数が分かることを学びます。
第4章の実践問題 j19 では、放物線が 軸から切り取る線分の長さを平方完成から求めました。解の公式を使えば、2 つの解の差として
となり、長さは と書けます。ここでも判別式が顔を出します。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
二次方程式 の解を求めなさい。
()
問2
二次方程式 の解を求めなさい。
()
問3
二次方程式 の解を求めなさい。
()
問4
二次方程式 の解を求めなさい。
(解の公式で )
問5
二次方程式 の解を求めなさい。
( として )
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
(1)
(2)
(3)
上の (1)〜(3) の二次方程式の解を、それぞれ求めなさい。
(1) (2) (3) (重解)
どれも因数分解できるので、公式1 を使います。
(1) かけて 、足して になる 2 数は と です。
(2) たすき掛けで です(展開すると )。
(3) より なので、(重解)です。グラフ は頂点 で 軸に接しています。
問2 ★
(1)
(2)
上の (1),(2) の方程式の解を、それぞれ求めなさい。
(1) (2)
どちらも、そのままでは公式1 を使えません。右辺を にしてから因数分解します。
(1) 両辺を で割ると の解を失います。右辺を移して
(2) 「 または 」とするのは誤りです(かけて になる組は無数にあります)。左辺を展開して右辺を移すと
確かめると、 で 、 で です。
問3 ★
(1)
(2)
(3)
上の (1)〜(3) の方程式の解を、それぞれ求めなさい。
(1) (2) (3)
の 1 次の項がない、または の形なので、平方根をとります(公式2)。 を忘れないようにします。
(1) より
(2) なので 。
(3) より 。
問4 ★
(1)
(2)
上の (1),(2) の二次方程式の解を、平方完成を用いてそれぞれ求めなさい。
(1) (2)
定数項を右辺に移し、両辺に「 の係数の半分の 2 乗」を足します。
(1)
より
(2) まず両辺を で割ります。
なので
解の公式()でも となり、一致します。
問5 ★
実数解がないときは「実数解はない」と答えることにします。
(1)
(2)
(3)
上の (1)〜(3) の二次方程式の実数解を、それぞれ求めなさい。
(1) (2) (3) 実数解はない
(1) ,, として
(2) の係数が偶数なので として
(3) です。 の中が負になるので、。
(3) は平方完成でも確かめられます。 となり、2 乗が負になる実数はありません。
問6 ★
(1)
(2)
(3)
上の (1)〜(3) の二次方程式の解を、それぞれ求めなさい。
(1) (2) (3)
係数を整数に、 の係数を正にしてから解きます。
(1) 両辺を 倍して 。
(2) 分母の最小公倍数 を両辺に掛けて 。
(3) 両辺を 倍して 。 として
問7 ★
二次方程式 の解の 1 つが であるとき、定数 の値と、もう 1 つの解を求めなさい。
,もう 1 つの解
が解なので、代入すると等式が成り立ちます(公式5)。
方程式は となり
解は です。 が確かに解に含まれていることも確かめられます。
問8 ★
連続する 3 つの自然数があり、いちばん小さい数の 2 乗が、残りの 2 つの数の和に等しくなっています。この 3 つの自然数を求めなさい。
いちばん小さい数を とすると、3 つの数は ,, で、 は自然数( の整数)です。
のうち、自然数なのは です(解の吟味)。
確かめ:。 なら でも式は成り立ちますが、自然数ではないので答えになりません。
問9 ★★
(1)
(2)
上の (1),(2) の二次方程式の解を、それぞれ求めなさい。
(1) (2)
どちらも の係数が「 何か」なので、 の公式を使います。
(1) ,, として
(2) , として
, なので
(2) の 2 つの解は、かけると になっています。係数が左右対称()な方程式では、 が解なら も解になるからです。
問10 ★★
方程式 の実数解を求めなさい。
とおきます。第3章で学んだとおり、先に の変域を調べておきます。
方程式は
のうち、 を満たすのは だけです。 は、 すなわち となり、実数解がありません。
のとき
問11 ★★
(1)
(2)
上の (1),(2) の方程式の実数解を、それぞれ求めなさい。
(1) (2)
とおくと で、 の二次方程式になります。
(1) より 。 はどちらも を満たします。 または なので
解が 4 つあります。
(2) より 。 は を満たさないので捨て、 です。 より
問12 ★★
方程式 の解を求めなさい。
左辺は 以上なので、右辺も 以上でなければなりません。まず 、すなわち が必要です。
のもとで、 は または と同じです。
のとき
より 。
のとき
より 。
確かめ: で 、 で 。捨てた は、左辺 、右辺 で成り立ちません。
の符号( か か)で場合分けしても、同じ答えになります。
問13 ★★
周の長さが cm,対角線の長さが cm の長方形があり、縦の長さは横の長さより短くなっています。この長方形の縦と横の長さを求めなさい。
縦 cm,横 cm
縦を cm とすると、縦と横の和は cm なので、横は cm です。縦が横より短いので 、すなわち です。
三平方の定理より
のうち、 を満たすのは 。横は です。
は「縦 ,横 」で、縦と横が入れかわった同じ長方形です。条件「縦が横より短い」で 1 つに絞りました。
問14 ★★
放物線 と直線 の共有点の座標を求めなさい。
,
共有点は両方の式を同時に満たすので、 を消去します(第3章の 1 文字消去と同じ考え方)。
のとき 、 のとき です。
は放物線の式に入れても同じ値になります(,)。共有点の 座標は、二次方程式 の実数解です。直線との共有点が何個あるかは、第6章の判別式で調べられます。
問15 ★★
を定数とします。方程式 の解を求めなさい。
または のとき ;それ以外のとき
左辺は と因数分解できます(展開すると で一致します)。
のとき 方程式は となり、。
のとき より 。 2 つが一致するのは 、すなわち のときで、このとき (重解)です。
「方程式」とだけ書かれているので、 の係数が になる も調べる必要があります。
問16 ★★
二次方程式 の解が と であるとき、定数 , の値を求めなさい。また、そのときの二次方程式 の解を求めなさい。
,; の解は
, をそれぞれ代入します。
上の式から下の式を引くと なので 、上の式に入れて です。
(別解)解が , で の係数が なので、第4章の分解形と同じく左辺は です。係数を比べて ,。
このとき は 。両辺を 倍して
新しい方程式の解は、もとの解 , の逆数の , になっています。係数の並びを逆にすると、解が逆数になるからです( を に置きかえて を掛けると確かめられます)。
問17 ★★★
2 つの二次方程式 , が共通の実数解をもつように、定数 の値を定め、そのときの共通解を求めなさい。
,共通解
共通解を とおきます。
を消すため、上の式から下の式の 倍を引きます。
のとき 2 つの方程式は と で、どちらも と同じです。
なので実数解がなく、不適です。
のとき 下の式に入れて より 。このとき
となり、確かに が共通の解です。
を消して の方程式にしようとすると 3 次式が出てきて大変です。 を消すと、 という因数分解された形がすぐに得られます。
問18 ★★★
その売上にできないときは「できない」と答えることにします。1 個 円で売ると 1 日に 個売れる商品があり、値段を 円上げるごとに、売れる個数が 個ずつ減ることが分かっています。値下げはしないものとします。
(1) 1 日の売上を 円にする
(2) 1 日の売上を 円にする
(3) 1 日の売上を 円にする
上の (1)〜(3) のようにするための 1 個の値段を、それぞれ求めなさい。
(1) 円または 円 (2) 円 (3) できない
値上げする金額を 円とすると、値段は 円、売れる個数は 個です。値下げはせず、個数は 以上なので です。売上は
これが 円になる条件を整理すると
(1) のとき、 すなわち 。
はどちらも を満たすので、値段は です。
(2) のとき、 すなわち 。(重解)で、範囲を満たします。
(3) のとき、。平方完成すると
で、実数解がありません。
売上を の関数とみて平方完成すると です。第3章のとおり、(値段 円)で最大値 円をとります。最大値より小さい売上なら 2 通りの値段、最大値ちょうどなら 1 通り、最大値を超えると不可能——解の個数とグラフの頂点の関係は、第6章でくわしく扱います。
問19 ★★★
を定数とし、二次方程式 を考えます。
(1) 2 つの解がともに の範囲にある
(2) 2 つの解のうち 1 つだけが の範囲にある
上の (1),(2) の条件を満たす の値の範囲を、それぞれ求めなさい。
(1) (2) ,
まず方程式を解きます。 なので
2 つの解は の値によらず必ず異なり、 です。それぞれが に入る条件は
です。上の範囲を P、下の範囲を Q と呼ぶことにします。
(1) P と Q を両方満たす範囲なので
(2) 「P を満たし Q を満たさない」か「Q を満たし P を満たさない」かのどちらかです。数直線で考えると
境目を確かめます。 なら解は , で、 は範囲に入らず だけが入ります。 なら解は , で、 だけが入ります。どちらも「1 つだけ」に合っています。
この問題は、解が と具体的に求まったので、数直線だけで解けました。解がきれいに求まらないときに、グラフの位置関係に翻訳して解く方法を第8章(解の配置)で学びます。
問20 ★★★
放物線 が 軸と異なる 2 点で交わり、その 2 点間の距離が となるように、定数 の値を定めなさい。
軸との交点の 座標は、 の実数解です。 として解の公式を使うと
異なる 2 点で交わるには、 の中が正であることが必要です。
このとき 2 点間の距離は、2 つの解の差です。
これが なので 、両辺を 2 乗して
このとき なので、(あ)は自動的に満たされます((あ)を不等式として解く必要はありません)。
第4章の実践問題 j19 では、同じ長さを「軸から交点までの距離の 2 倍」として平方完成で求めました。 と平方完成すると、軸 から交点までの距離が で、解の公式の の部分とちょうど一致します。
12 世紀のインドの数学者バースカラ 2 世(1114〜1185 ごろ)は、代数の本『ビージャガニタ』に、詩の形でこんな問題を載せています(※訳によって言い回しは少しずつ違います)。
猿の群れの 8 分の 1 を 2 乗した数の猿が、森ではしゃいでいる。残りの 12 匹は丘の上で騒いでいる。群れは全部で何匹か。
群れを 匹とすると、 です。両辺を 倍して整理すると
となり、 と が出てきます。16 匹なら森に 匹、48 匹なら森に 匹で、どちらも残りはちょうど 12 匹。バースカラは、2 つとも正しい答えだと書き残しました。方程式の解が 2 つあることを、はっきり意識していたのです。
ところが、同じ本の別の問題では態度が変わります。「群れの 5 分の 1 から 3 を引いて 2 乗した数の猿が洞穴に入り、1 匹が木に登っていた」という問題です。式は で、整理すると
なら「5 分の 1 から 3 を引く」と で、問題なく読めます。ところが だと となり、「マイナス 2 匹を 2 乗した数」というおかしな話になります。バースカラはこちらを「人々は認めない」として退けました(※伝わる記述の解釈には諸説あり)。式の上では正しくても、場面に合わない解は捨てる——この章で学んだ解の吟味を、850 年以上前にやっていたことになります。
豆知識
バースカラ 2 世は、同じ時代の天文学書もまとめた人物で、「2 世」と呼ぶのは、7 世紀に同じ名前の数学者(バースカラ 1 世)がいたからです。数と式や三角比の小話に出てきたブラーマグプタ(7 世紀)の仕事を受け継ぎ、負の数の計算規則なども整理しました。負の数を「借金」とみる考え方は、インドの数学で早くから使われていました。
解の公式は、どんな二次方程式にも使える完璧な公式に見えます。ところが、コンピューターにそのまま計算させると、答えが大きくずれることがあります。
を考えましょう。 の係数は (1 億)です。解の公式から、小さいほうの解は
です。 は にとても近いので、この解は に近い小さな数で、正確にはほぼ です。
ふつうのコンピューターは、数を有効数字およそ 16 桁で覚えています。 の小さな端数は、16 桁に丸めた時点でほとんど失われます。そこから を引くと、ほぼ同じ大きさの数どうしが打ち消し合い、残るのは丸めたときの誤差ばかり。実際に計算させると、答えは ほどになり、正しい値から 25% もずれてしまいます。有効数字が一気に減るこの現象を、桁落ちといいます。
直し方は、数と式 第3章の分母の有理化と同じ発想で、今度は分子の根号を消す分子の有理化です。分子と分母に を掛けます。
右の形には引き算がなく、大きな数どうしを足すだけです。これならコンピューターでも が正しく出ます。数学として同じ式でも、計算のしかたで答えの正確さが変わるのです。
豆知識
数値計算の教科書では、この二次方程式の例が桁落ちの定番として紹介されています。大きいほうの解 は足し算なので問題なく求まり、数と式 第11章の解と係数の関係(2 つの解の積 )を使って「小さい解 大きい解」とする直し方もあります。表計算ソフトや電卓でも似たことは起こりますが、どんな値が出るかは内部の計算方法によって違います(※ソフトによって異なる)。
運転中に危ないと気づいてから車が止まるまでには、2 つの距離がかかります。
秒速 m で走る車について、反応時間を 秒、乾いた舗装路とすると、制動距離はおよそ m になります(※タイヤと路面の状態で大きく変わる目安です)。止まるまでの距離は
です。では、「 m 先で必ず止まりたい」とき、出してよい速さの上限はいくつでしょうか。
の解の公式で
速さは正なので、。秒速約 m、時速に直すと約 km です。負の解 は、後ろ向きに走る車の話になってしまうので捨てます。ここでも解の吟味の出番です。
ちなみに、時速 km(秒速約 m)で計算すると、止まるまでに約 m かかります。
豆知識
制動距離が速さの 2 乗に比例するということは、速さが 2 倍になると制動距離は 4 倍になるということです。時速 km のときの制動距離はおよそ m ですが、時速 km では約 m になります。雨でぬれた路面ではタイヤがすべりやすくなり、同じ速さでも制動距離はさらにのびます。教習所の教本などにも、速さごとの停止距離の目安が載っています(※数値は想定する条件によって異なります)。
※ここは発展ページです。高校の範囲では、公式1〜5の手順が使えれば十分です。「かけて なら、どちらかが 」はなぜ言えるのか、解の公式で出した解が「すべての解」だと言い切れるのはなぜか、どんな式変形をすると解が増えたり減ったりするのか——が気になる人のために、根拠を示します。
についての方程式 に対し、 が成り立つ実数 を の実数解という。実数解全体の集合を の解の集合という。
2 つの方程式 , の解の集合が一致するとき、 と は同値であるといい、 と書く。
「方程式を解く」とは、解の集合を求めることです。式変形の各段階が でつながっていれば、最後に出てきた解がちょうど「すべての解」になり、多すぎも少なすぎもしません。この章の議論は、ほとんどがこの一点の確認です。
実数 , について
証明 () にどんな実数を掛けても なので明らかである。
() とする。 なら示すことはない。 なら、 には逆数 がある。 の両辺に を掛けて
よって、 または である。(証明終)
証明のかぎは「 でない実数には逆数がある」ことです。 つ以上の積でも、この定理をくり返し使えば「どれかが 」が言えます。公式1の手順 3 は、この定理そのものです。
一方、 から や の値を決めることはできません。, でも , でもよいからです。定理1は、右辺が のときにだけ使える特別な性質です。
実数 について、方程式 の実数解は次のとおりである。
(i) のとき、 の 2 つ
(ii) のとき、 の 1 つ
(iii) のとき、実数解はない
ただし は、2 乗すると になる正の実数である( のときに存在することは、実数の性質として認める)。
証明 (i) なので
定理1より、 または 。 なので で、解はちょうど 2 つである。
(ii) で、定理1より 。
(iii) どんな実数 でも なので、 となる はない。(証明終)
なら、 とおいてこの定理を使えば、 などが得られます。公式2の根拠です。
とし、 とおく。二次方程式 の実数解の集合は
である。とくに、二次方程式の実数解は多くても 2 個である。
証明 次の変形は、どの段階も である。
1 行目は、両辺に でない数 を掛けた(逆に を掛ければ戻る)。2 行目は、両辺に同じ数を足し引きして整理しただけである。
, とおくと、 より と の符号は一致する。定理2を に使う。
のとき、 で、。 がついているので、 を に置きかえても集合としては同じであり、 の 2 個を得る。 なのでこの 2 つは異なる。
のとき、 より の 1 個。 のとき、 に実数解はない。(証明終)
変形がすべて なので、解の公式で出てきた値は「解の候補」ではなく、解そのもの、しかもすべてです。そのため、解の公式で解いたときは、もとの方程式に代入して確かめる必要がありません(計算ミスを見つけるための確かめは、もちろん役に立ちます)。
「多くても 2 個」は、第4章の teigi 定理2(3 点を通る 2 次以下の関数はただ 1 つ)とも関係しています。二次関数 が になる点が 3 つあれば、 と定数関数 が 3 点で一致するので、 は恒等的に になり、二次関数であることに反します。
方程式 (, は の式)について、次が成り立つ。
(i) を の式とする。 は正しいが、逆は一般には成り立たない。 となる で、解が増えることがある。逆に、両辺を で割る変形では、 となる解を失うことがある。
(ii) は正しいが、逆は一般には成り立たない。 は「 または 」と同値である。
(iii) は「 かつ( または )」と同値である。
証明 (i) 前半は明らか。逆が成り立たない例として、 の両辺に を掛けた は、 も解にもつ。
(ii) なので、定理1より は「 または 」と同値。 の側から出てくる解が、もとの方程式の解になるとはかぎらない。
(iii) () なので 。また は か のどちらかなので、 または 。
() で なら なので 。 なら なので 。(証明終)
(iii) の条件 を落とすと、(ii) と同じく解が増えます。実践問題 j12 で最初に「」を書き出したのは、この条件を落とさないためです。
置きかえでも同じことが起こります。 とおいたとき、「 の値に対して、それに対応する実数 があるか」は かどうかで決まります(第3章 teigi 定理4)。 の方程式を解いて出た値のうち、この範囲に入らないものは、 の実数解を 1 つも生みません。実践問題 j10・j11 の「解の吟味」は、同値な変形を保つための手続きだったのです。
, を の式とし、 を でない定数とする。実数 について
証明 (), なら 。
() と から、。(証明終)
連立方程式の片方を「引き算した式」に取りかえても、解の組は変わりません。例題5(3) や実践問題 j17 で、 を消した式 を使ってよいのはこのためです。ただし、取りかえたあとももう一方の式を残しておくことが大切です。引き算した式だけでは条件が 1 つ減り、 のように「引き算した式は満たすが、実数の共通解はない」場合が紛れこみます。 を最後に捨てたのは、残しておいた に実数解がなかったからです。
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