問1
を因数分解した式を求めなさい。
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(共通因数 でくくる)
目次 / 数と式 / 数学I
—— 足し算の形の式を「かけ算の形」に戻す ——
この章では、第1章の展開をちょうど逆にたどる「因数分解」を学びます。共通因数をくくり出す基本から、乗法公式の逆、係数のついた2次式を分解する「たすき掛け」、3次の公式、置き換えや文字の整理を使う工夫まで、順に積み上げます。因数分解は、方程式や不等式を解くときの入口になる大切な技術です。
第1章では を展開して にしました。この章では、その矢印を逆向きにたどります。
整式をいくつかの整式の積の形に書き直すことを因数分解といい、かけ合わされているひとつひとつの式( や )を因数といいます。数の を素因数分解するのと同じ発想を、文字の式でおこなうわけです。
分配法則 を右から左へ読んだものが、共通因数のくくり出しです。因数分解の問題を見たら、どんな公式よりも先に「全部の項に共通なものはないか」を確かめる習慣をつけてください。これを忘れると、あとの公式がうまく当てはまらなくなります。
言葉にも同じ操作があります。「りんごジャム、いちごジャム、ももジャム」を「りんご・いちご・もものジャム」と言いかえるとき、共通する「ジャム」を1回だけ外に出していますね。どの項にも付いている部分を外に出し、残りをかっこにまとめるのが、共通因数でくくるということです。
因数分解は展開の逆で、その第一歩は「すべての項に共通する因数をかっこの外に出す」ことだということです。
次の式を因数分解した式を求めなさい。
【解答】
(1) 係数 と の最大公約数は 、文字は と が1個ずつ共通しています。
(2) と符号を入れかえると、 が共通因数として現れます。
と は「符号だけが違うかたまり」です。見逃さないようにしましょう。
第1章の公式4(2次の乗法公式)の (1)〜(4) を、右辺から左辺へ読むと、そのまま因数分解の公式になります。
(4) は「かけて定数項、足して の係数」になる2数 , を見つける。
(1)(2) は、両端の項が の形になっていて、真ん中の項が「両端のもとの数どうしの積の2倍」になっているかを確かめます。(3) は2乗どうしの引き算を見たら即座に使えるもので、登場回数がいちばん多い公式です。
(4) の2数探しは、クイズに似ています。「2人の年齢をかけると 、足すと 。何歳と何歳?」と聞かれたら、かけて になる組( と , と , と )を書き出して、足して になるものを選びますね。答えは と 。足し算の組は無数にありますが、かけ算の組は限られるので、かけ算の側から候補を挙げるのが近道です。定数項が負なら2数は異符号、正なら同符号、と符号から絞りこむこともできます。
2次の乗法公式を逆に読めば因数分解の公式になり、 は「かけて 、足して 」の2数を、かけ算の組から探せばよいということです。
次の式を因数分解した式を求めなさい。
【解答】
(1) , で、真ん中は です。公式 (1) より
(2) なので、公式 (3) より
(3) かけて 、足して の2数を探します。かけて になる組のうち、 と が を満たします。
の係数が でない2次式、たとえば は、公式2の (4) では分解できません。第1章の公式4 (5) を逆に使います。
なら、, と分けて並べ、斜めにかけます。
和が で一致したので、上の段を横に読んで 、下の段を読んで 、つまり です。
たすき掛けは、数字を合わせるダイヤル錠に似ています。正解の番号を一発で当てる公式はありませんが、試す組の数は限られていて、合う組に出会えばカチッと開きます。候補を減らすコツは2つあります。定数項の符号で2数の符号を決めること。そして、もとの式に共通因数がないのなら、 の と が共通の約数をもつ組(たとえば になる組)は最初から除いてよいことです。
の係数が でない2次式は、係数と定数項をそれぞれ2数の積に分けて並べ、斜めの積の和が の係数に合う組を探せばよいということです。
次の式を因数分解した式を求めなさい。
【解答】
(1) 図のとおり、 です。
(2) 、 などの組を試します。, と , を並べると
斜めの積 と の和が で一致します。
検算として展開すると、 で、もとの式に戻ります。
第1章の公式5(3次の乗法公式)も、逆に読むと因数分解の公式になります。
(1)(2) の符号は「1つめのかっこはもとの式と同じ、 の前は逆、 の前はいつもプラス」。
(1)(2) の2つめのかっこ は、有理数の範囲ではこれ以上分解できません。 と見間違えて、さらに分解しようとしないよう注意してください。
3次式の公式を使うには、 や を見た瞬間に「」「」と気づけることが大切です。九九を覚えていると「」を見て「」がすぐ浮かぶように、立方数 を「3乗の九九」として覚えておくと、公式の出番に気づく速さがまるで違ってきます。
は符号を「同じ・逆・プラス」と並べた2つのかっこに分かれ、係数 の式は にまとまるということです。
次の式を因数分解した式を求めなさい。
【解答】
(1) なので、公式 (1) で , とします。
(2) なので、公式 (2) で とします。
(3) で、, となっているので、公式 (3) の形です。
同じかたまりが何度も出てくる式や、 と だけでできた式は、ひと工夫すると公式の形に持ちこめます。
置き換えは、長い名前の友達をあだ名で呼ぶのに似ています。「たなかたろうさんとたなかたろうさんのお兄さん」と言うより「タロとタロ兄」のほうがずっと話しやすいですね。 や といった長いかたまりにあだ名 をつけると、式の骨組みが見えて、知っている公式が使えるようになります。話が終わったら本名に戻すことを忘れずに。
複2次式の 2. は、 のように が分解できない場合の手です。 になることを利用して、 を足して引き、平方の差を作ります。
共通のかたまりは1文字に置き換え、複2次式は とおくか、足して引いて平方の差を作れば、公式が使える形になるということです。
次の式を因数分解した式を求めなさい。
【解答】
(1) とおくと、。もとに戻して、それぞれをさらに分解します。
(2) とおくと、 です。
(3) は分解できないので、 を足して引きます。
第1章の実践問題 j17 で展開した を、逆にたどったことになります。
文字が2つ以上ある式は、どの文字に着目するかで難しさが大きく変わります。第1章の「特定の文字について整理する」が、ここで生きてきます。
からまったイヤホンのコードをほどくとき、いきなり真ん中を引っぱると、かえって固く結ばれてしまいます。まず短い端を見つけて、そこから順にほどくのが早道です。式でいう「短い端」が、次数の最も低い文字です。 について3次、 について1次の式なら、 について整理すれば1次式になり、共通因数がすぐに顔を出します。
最後の公式は、第1章の実践問題 j19 で展開した式の逆です。 を使うと、次のように導けます。
3〜4行目では を1つのかたまりとみて、公式4の (1) を使っています。
文字が多い式は、次数が最も低い文字について整理すると、共通因数やたすき掛けの形が見えてくるということです。
次の式を因数分解した式を求めなさい。
【解答】
(1) について3次、 について1次なので、 について整理します。
(2) について整理し、定数項にあたる部分を先に因数分解します。
かけて 、足して になる2式は と です()。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
を因数分解した式を求めなさい。
(共通因数 でくくる)
問2
を因数分解した式を求めなさい。
(2乗の差)
問3
を因数分解した式を求めなさい。
()
問4
を因数分解した式を求めなさい。
(かけて 、足して )
問5
を因数分解した式を求めなさい。
()
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
を因数分解した式を求めなさい。
係数 の最大公約数は 、文字は と が1個ずつ共通しています。
最後の項 をくくると が残ります。かっこの中の を書き忘れないようにしましょう。
問2 ★
を因数分解した式を求めなさい。
なので、 です。
問3 ★
を因数分解した式を求めなさい。
, で、真ん中は です。 より
問4 ★
を因数分解した式を求めなさい。
なので、 を使います。
問5 ★
を因数分解した式を求めなさい。
かけて 、足して の2数を探します。定数項が負なので2数は異符号です。かけて になる組のうち、 となる と が当てはまります。
問6 ★
を因数分解した式を求めなさい。
についての2次式とみると、 の係数は 、定数項は です。かけて 、足して になる2式は と です。
問7 ★
を因数分解した式を求めなさい。
, と分けて並べます。
斜めの積の和 が の係数に一致するので
問8 ★
を因数分解した式を求めなさい。
定数項が正で の係数が負なので、定数項は負の数どうしに分けます。, と並べると
和が で一致するので
問9 ★★
を因数分解した式を求めなさい。
, と並べます。
和が で一致するので
と はどちらも候補の分け方が多い式です。 や のように、1つのかっこの中に共通の約数が出る組は、もとの式に共通因数がないので最初から除けます。
問10 ★★
を因数分解した式を求めなさい。
の2次式とみて、, と並べます。
和が で一致するので
問11 ★★
を因数分解した式を求めなさい。
, なので、 で , とします。
問12 ★★
を因数分解した式を求めなさい。
で、係数の並びが の形になっているか確かめます。
となっているので、 より です。
問13 ★★
を因数分解した式を求めなさい。
まず共通因数 でくくり、残った式をさらに分解します。
で止めると、まだ分解できる因数が残っているので不十分です。
問14 ★★
を因数分解した式を求めなさい。
とおくと
をもとに戻して です。
問15 ★★
を因数分解した式を求めなさい。
, として、2乗の差を2回使います。
は2乗の和なので、これ以上分解できません。
問16 ★★
を因数分解した式を求めなさい。
を含む3項を組にすると、2乗の形が見えます。
2乗の差なので
2つめのかっこでは、 と符号が変わる点に注意します。
問17 ★★★
を因数分解した式を求めなさい。
とおいた は、かけて 、足して になる整数の組がないので分解できません。そこで を作るために を足して引きます。
問18 ★★★
を因数分解した式を求めなさい。
について整理します。
定数項にあたる部分をたすき掛けで分解すると、 です。次に についてたすき掛けをします。
斜めの積の和が の係数 に一致するので
問19 ★★★
を因数分解した式を求めなさい。
, と見ると、 で ,, とした形です。
に代入します。 で、, なので、後ろのかっこは
よって
検算として を代入すると、左辺 、右辺 で一致します。
問20 ★★★
を因数分解した式を求めなさい。
どの文字についても2次なので、 について整理します。
すべての項に が共通しているのでくくり出します。
文字の順に並べて です。
の係数 は、 を1個だけ含む項 ,, を集めたものです。整理の段階で項の拾い忘れがないか、1つずつ確かめましょう。
「たすき」は、着物の袖が作業のじゃまにならないよう、たくし上げて結ぶひものことです。両肩から背中へ回したひもが、背中で斜めに交わって「×」の形を作ります。たすき掛けで数字を斜めに結ぶ2本の線は、ちょうどこの背中の「×」と同じ形をしています。呼び名の由来をはっきり記した記録は見当たりませんが、この形からの連想と考えるのが自然でしょう。
豆知識
駅伝で走者が受け渡す「たすき」は、片方の肩から反対側の腰へ1本かけるだけで、「×」にはなりません。同じ「たすき」でも、交差するのは着物のほう。計算の名前にふさわしいのは、こちらのたすきです。
この章の式の因数分解は、公式と手順を知っていればほぼ機械的に進められます。ところが、大きな整数の素因数分解となると話は別です。 くらいならすぐに分かっても、何百桁もある数を素因数に分ける速い方法は、ふつうのコンピュータでは見つかっていません。
この「かけるのは一瞬、分けるのは大変」という差を利用したのが、1977 年にリベスト、シャミア、エーデルマンの3人が発表した RSA 暗号です。大きな素数を2つかけた数を「鍵」として公開しても、もとの2つの素数を割り出すのが現実的な時間では不可能なので、安全に通信できます。現在よく使われる鍵は、10 進法で 600 桁を超える大きさです。
豆知識
1994 年、数学者ショアは、量子コンピュータを使えば大きな数の素因数分解が速くできることを理論的に示しました。大きな量子コンピュータが実現すると RSA 暗号は安全でなくなるため、それに備えた新しい暗号方式への切り替えが、世界中で進められています。
例題5で使った「足して引いて平方の差を作る」技には、名前のついた有名な例があります。
これはソフィー・ジェルマンの恒等式と呼ばれます。ジェルマン(1776〜1831)はフランスの数学者です。当時、女性は理工系の学校で学ぶことが認められていなかったため、彼女は「ルブラン氏」という男性の名前を借りて講義ノートを手に入れ、数学者ラグランジュにレポートを送りました。ドイツの大数学者ガウスとも、しばらくはこの男性名のまま手紙をやり取りしています。
この恒等式を使うと、「 が素数になる正の整数 は だけ」ということが分かります。 とすると
で、 なら となり、2つの因数がどちらも 以上になるからです。 のときだけ で素数になります。
※ここは発展ページです。高校の範囲では「それ以上分解できないところまで」という理解で十分ですが、「“それ以上”とは何を基準にしているの?」が気になる人のために、少し厳密な見方を紹介します。以下、 は有理数全体または実数全体のどちらかを表し、「 係数」とは係数がすべて に属することを指します。
次数が 以上の 係数の多項式 が、次数が 以上の 係数の多項式 , を用いて
と表せるとき、 は の範囲で可約であるという。可約でないとき、 の範囲で既約であるという。
「因数分解できるところまでする」とは、既約な多項式どうしの積になるまで分けることです。ここで大事なのは、既約かどうかが数の範囲 によって変わる点です。たとえば は、実数の範囲なら と分解できるので可約です。一方、有理数の範囲では既約になります(第3章で示す「 は有理数でない」ことを使います)。高校で「特に断りがなければ有理数の範囲で」と約束するのは、この基準をそろえるためです。
1次の多項式は、 の範囲で既約である。
証明 1次式 が (, はともに次数 以上)と表せたとする。第1章の定理「積の次数」より だが、, なので左辺は 以上であり、矛盾する。(証明終)
を 係数の2次式または3次式とする。 が の範囲で可約であるための必要十分条件は、 が 係数の1次式を因数にもつことである。
証明 1次式を因数にもてば、 と書け、 なので可約である。
逆に (,)と表せたとすると、 は または である。 以上の2つの整数の和が または になるのは ,, のいずれかなので、, の少なくとも一方は1次式である。(証明終)
定理2を使うと、「分解できない」ことを示せます。たとえば が実数の範囲で1次式 ()を因数にもつとすると、 の両辺に を代入して、左辺は 、右辺は となり矛盾します。よって は実数の範囲で既約です。 の因数 が「これ以上分解できない」のも、同じ考え方で確かめられます。
ただし、この定理は 4次以上では成り立ちません。例題5の はどんな実数 でも値が 以上なので1次式の因数をもちませんが、 と2次式どうしの積に分解できました。 という分かれ方があるためです。
最後に、整数の素因数分解が「順番を除けば1通り」であるのと同じように、多項式を既約な多項式の積に分ける方法も、定数倍と順番の違いを除けば1通りであることが知られています。この証明は大学の代数学で扱われます。
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