問1
方程式 の解を求めなさい。
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(右辺 なので 2 乗して )
目次 / いろいろな関数 / 数学III
—— 2 乗する前に、符号の条件を書いておく ——
第3章で描いた無理関数のグラフを使って、$\sqrt{x + 2} = x$ のような**無理方程式**と、$\sqrt{x + 2} > x$ のような**無理不等式**を解きます。根号を外すには両辺を 2 乗しますが、2 乗すると「正か負か」の情報が消えるため、第2章とは別の理由で無縁解が紛れこみます。第2章と同じ「グラフで見通しを立てる → 式で解く → 確認する」の 3 段の手順で進め、最後に、文字を含む方程式の解の個数を、端点と接点に注目して数えます。
のように、根号の中に未知数を含む方程式を無理方程式といいます。根号を外すには、両辺を 2 乗します。
2 乗した式を解くと、 より です。ところが をもとの式に代入すると、左辺は ,右辺は で、成り立ちません。
原因は 2 乗にあります。 なのに、2 乗すると となって区別がつかなくなります。2 乗は「符号の違い」を消してしまう操作なので、もとの式を満たさない値まで解の候補に入ってくるのです。第2章では分母を払ったときに無縁解が出ましたが、無理方程式では2 乗したときに無縁解が出る、というわけです。
そこで、2 乗する前に「右辺は 以上でなければならない」という条件を書いておきます。 は 以上の値しかとらないので、それと等しい右辺 も 以上のはずだからです。
根号の中が 以上という条件()は、書かなくてかまいません。 なら、 は自動的に 以上になるからです。根号が 2 つあるときは、根号を 1 つずつ左右に分けてから 2 乗し、残った根号をもう一度 2 乗します。
落とし物センターに「黒い傘をなくしました」と問い合わせると、係の人は黒い傘をいくつも出してきます。色だけで探すと、他人の傘まで候補に入るからです。最後に、持ち手に貼った名前シールを確かめて、ようやく自分の傘が決まります。2 乗は「色だけで探す」段階、 の確認が「名前シールを見る」段階にあたります。
無理方程式は、根号を片側に残して「反対側が 以上」という条件を書いてから 2 乗し、その条件で解を選べばよいということです。
次の方程式の解を求めなさい。
(1)
(2)
【解答】
(1) 右辺が 以上なので 。両辺を 2 乗すると
のうち、 を満たすのは だけです。よって
(2) 右辺が 以上なので 。両辺を 2 乗すると
のうち、 を満たすのは です。よって
確かめ: のとき、左辺 ,右辺 で一致します。 では左辺 ,右辺 となり、成り立ちません。
無縁解がどこから来たのかは、グラフで見るとはっきりします。
方程式 の解は、第2章 公式2 と同じく、 と直線 の共有点の 座標です。一方、2 乗した は、「放物線 と直線 の共有点」を探す式になっています。第3章 公式5 で見たように、 は放物線 の上半分だけでした。2 乗した式は、下半分 との交点まで拾ってしまいます。
図の白丸 が、無縁解 の正体です。
2 乗した方程式 の解は、 の解と の解を合わせたものである。 を満たす解が の解、 を満たす解が の解になる。
グラフでいえば、 が放物線の上半分、 が下半分で、2 乗した方程式は両方との交点を一度に求めています。無縁解は「間違った答え」ではなく、「下半分の方程式の答え」です。
二段ベッドの部屋で「このベッドで寝ている人」を数えると、上の段の人も下の段の人も数えてしまいます。自分が知りたいのが上の段の人だけなら、最後に「上の段かどうか」を確かめる必要があります。2 乗した方程式は二段ベッド全体を見ていて、 という条件が「上の段」を選ぶ目じるしです。
2 乗した方程式は放物線の上半分と下半分の両方との交点を求めていて、無縁解とは下半分との交点のことだということです。
次の方程式の解を求めなさい。
(1)
(2)
【解答】
(1) と (2) は、2 乗するとどちらも同じ方程式になります。
より、候補は です。
(1) 右辺が 以上なので 。これを満たすのは で、
確かめ:左辺 ,右辺 。
(2) 左辺は 以下なので、右辺も ,すなわち 。これを満たすのは で、
確かめ:左辺 ,右辺 。
(1) の無縁解 は、(2) のちゃんとした解になっています。公式2 のとおり、2 乗した方程式の 2 つの解が、上半分と下半分に 1 つずつ分かれたわけです。
のように、根号の中に未知数を含む不等式を無理不等式といいます。第2章と同じく、この不等式の解は「 のグラフが直線 より上にある の範囲」です。
図1で読みとります。無理関数のグラフには漸近線がない代わりに、端点 があり、 ではグラフそのものがありません。上下が入れかわりうるのは、共有点の だけです。
| の範囲 | |||
|---|---|---|---|
| 曲線と直線 | 曲線がない | 曲線が上 | 直線が上 |
たとえば では曲線上が ,直線上が で曲線が上、 では曲線上が ,直線上が で直線が上です。解は と分かります(図1の緑の太線)。
不等式 ( は無理式)の解は、 のグラフが のグラフより上にある の範囲である。
分数関数の漸近線の はいつでも解から除きましたが、無理関数の端点の は定義域に入っているので、解に含まれることがあります。区切った範囲の中で 1 か所だけ調べれば、その範囲全体の上下が決まるのは第2章と同じです。
お店の混み具合を 2 軒で比べる場面を考えます。片方の店が 10 時開店なら、10 時より前は比べようがありません。比べ始めるのは開店の 10 時ちょうどからで、その時刻の混み具合は比べる対象に入ります。無理関数の端点は、この開店時刻にあたります。
無理不等式は、定義域の中だけを見て、共有点で区切った範囲ごとに曲線が上か下かを読めば解け、端点の は解に入ることがあるということです。
図1を使って、次の不等式の解を求めなさい。
(1)
(2)
【解答】
定義域は ,共有点の 座標は です(例題1(1))。
(1) 曲線が直線より上にあるのは、端点から共有点の手前までです。 では が成り立つので含めます。
(2) 曲線が直線より下にあるか、共有点になる範囲なので
(1) と (2) の解を合わせると、定義域 全体になります。 はどちらの不等式でも考えられない値です。
グラフで見通しが立ったら、式で解きます。ここでも、先にやってはいけない解き方を見ておきます。
の両辺をいきなり 2 乗すると ,すなわち となり、例題3 の答え より範囲が狭くなってしまいます。たとえば では、 は正しいのに、2 乗した は正しくありません。両辺を 2 乗して大小が保たれるのは、両辺が 以上のときだけだからです(第3章 厳密定義 定理2)。
そこで、右辺 の符号で場合を分けます。
のほうは、左辺が 以上なので、右辺は正でなければなりません。
等号つき(,)のときは、 を に、 を に、 を に変える。
の「 かつ 」の側に「」を書かないのは、 から自動的に成り立つからです。一方、 の側では から は出てこないので、定義域の条件をはっきり書きます。
身長が「マイナス cm 以上」の人なら乗れる、というアトラクションがあったとします。身長はだれでも 以上なので、この条件なら全員が乗れて、測る必要がありません。身長計の出番が来るのは、制限が「 cm 以上」のように 以上のときだけです。 で の場合が「全員乗れる」、 の場合が「身長計で測る」にあたります。
無理不等式を式で解くときは、右辺が負か 以上かで場合を分け、両辺が 以上と分かっている場合だけ 2 乗すればよいということです。
次の不等式の解を求めなさい。
(1)
(2)
【解答】
(1) 公式4 で、, です。
2 つの範囲を合わせて
例題3(1) の、グラフで読んだ答えと一致します。
(2) 公式4 の 3 つの条件を順に書きます。
3 つを同時に満たすのは
では両辺とも で等しいので含まず、 では左辺 ,右辺 で成り立つので含みます。
最後に、文字 を含む方程式 の実数解の個数を調べます。これは、曲線 と、傾き の直線 の共有点の個数です。
直線を上から下へずらしていくと、共有点は 0 個 → 1 個(接する)→ 2 個 → 端点を通る(2 個)→ 1 個と変わります。第2章 公式5 では判別式だけで個数が決まりましたが、無理関数のグラフは放物線の半分なので、直線が端点を通るときも境目になります。直線が端点より右下を通るようになると、放物線との 2 つの交点のうち片方が下半分へ移ってしまうからです。
のグラフと直線 の共有点の個数は、2 乗した 2 次方程式 の実数解のうち、 を満たすものの個数に等しい。直線を平行移動しながら数えるときの境目は
の 2 つである。
判別式だけで数えると、下半分との交点まで数えてしまいます。グラフを描いて、接点と端点の 2 か所で直線の位置を確かめるのが確実です。
庭の植え込みが、地面の途中から始まる坂の形に並んでいるとします。斜めに張った洗濯ロープを、同じ傾きのまま上から少しずつ下げていくと、ロープはまず植え込みの肩にかすめるように触れ、次に 2 か所で植え込みを横切ります。さらに下げて植え込みの始まりの株を越えると、横切るのは 1 か所だけになります。かすめる瞬間と、始まりの株を越える瞬間の 2 つが、数が変わる境目です。
無理関数のグラフと直線の共有点の個数は、接する位置()と端点を通る位置の 2 つを境目にして、直線を動かしながら数えればよいということです。
を定数とします。方程式 の異なる実数解の個数を、 の値によって場合分けして求めなさい。
【解答】
実数解の個数は、 のグラフと直線 の共有点の個数です(図2)。
接するとき 両辺を 2 乗すると ,すなわち
判別式を とすると
より 。このとき の重解は で、 なので、たしかに上半分と接しています(接点 )。
端点を通るとき 直線が端点 を通るのは、 より のときです。このとき は で、 はどちらも を満たすので、共有点は 2 個です。
直線を上から下へ動かすと、図2のように個数が変わります。
のとき、たとえば では は で、 は を満たしますが、 は なので無縁解です。判別式は正でも、共有点は 1 個しかありません。
| 段 | やること | 気をつけること |
|---|---|---|
| 見通し | グラフを描き、共有点と端点を見る | 定義域の外は考えない。上下が入れかわるのは共有点だけ |
| 式で解く | 方程式は「反対側 」を書いて 2 乗。不等式は右辺の符号で場合分け | 両辺が 以上と分かるまで 2 乗しない |
| 確認 | 条件で解を選ぶ。代入して確かめる | 無縁解は下半分の方程式の解。端点の は解に入ることがある |
第1〜4章で、分数関数と無理関数のグラフ、それを使った方程式・不等式がそろいました。次の第5章では、 と ()のように「 と の役割を入れかえた関数」の関係を、逆関数として正面から扱います。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
方程式 の解を求めなさい。
(右辺 なので 2 乗して )
問2
方程式 の解を求めなさい。
( のもとで より 。 は無縁解)
問3
方程式 の解を求めなさい。
( なので、負の数と等しくならない)
問4
不等式 の解を求めなさい。
(定義域 と、両辺が 以上なので 2 乗した )
問5
方程式 の解を求めなさい。
(2 乗して 。 で根号の中はどちらも )
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
方程式 の解を求めなさい。
右辺が 以上なので 。両辺を 2 乗すると
のうち、 を満たすのは です。よって
確かめ:左辺 ,右辺 。 は左辺 ,右辺 で無縁解です。
問2 ★
方程式 の解を求めなさい。
右辺が 以上なので 。両辺を 2 乗すると
のうち、 を満たすのは です。
確かめ:左辺 ,右辺 。
問3 ★
方程式 の解を求めなさい。
右辺が 以上なので 。両辺を 2 乗すると
のうち、 を満たすのは です。
確かめ:左辺 ,右辺 。
問4 ★
方程式 の解を求めなさい。
根号だけを左辺に残すと 。右辺が 以上なので 。両辺を 2 乗すると
のうち、 を満たすのは です。
のまま 2 乗すると根号が残ってしまいます。先に根号を片側に集めるのがコツです。
問5 ★
関数 のグラフと直線 の共有点の座標を求めなさい。
を解きます。右辺が 以上なので 。両辺を 2 乗すると
を満たすのは で、このとき 。共有点は です。
は、直線と放物線 の下半分との交点 にあたります。
問6 ★
不等式 の解を求めなさい。
根号の中が 以上なので 。両辺は 以上なので、2 乗して
合わせて です。定義域の条件 を忘れると、 という誤った答えになります。
問7 ★
不等式 の解を求めなさい。
右辺 は 以上なので、公式4 より 2 乗して
なら根号の中は自動的に正なので、定義域の条件 はこれに含まれています。答えは です。
問8 ★
2 つの方程式 (1) ,(2) の解を、それぞれ求めなさい。
(1) (2)
どちらも 2 乗すると ,すなわち になり、候補は です。
(1) 右辺が 以上なので 。
(2) 左辺が 以下なので 。(確かめ:)
(1) の無縁解 が (2) の解になっています(公式2)。
問9 ★★
不等式 の解を求めなさい。
公式4 で、右辺 の符号で場合を分けます。
2 つを合わせて
グラフでは、端点 から共有点 (j05)の手前まで、曲線が直線より上にあります。
問10 ★★
不等式 の解を求めなさい。
公式4 の 3 つの条件を書きます。
3 つを同時に満たすのは です( は を満たさない)。
では両辺とも で等しくなり、そこから右では直線が上になります。
問11 ★★
不等式 の解を求めなさい。
公式4(等号つき)で、右辺 の符号で場合を分けます。
2 つを合わせて
では両辺とも で等号が成り立つので含みます。
問12 ★★
方程式 の解を求めなさい。
根号の中が 以上なので 。根号を 1 つずつ左右に分けて
右辺は正なので、両辺を 2 乗できます。
確かめ:左辺 で成り立ちます。よって
のまま 2 乗すると という扱いにくい項が出てきます。分けてから 2 乗すると根号が 1 つずつ減ります。
問13 ★★
方程式 の解を求めなさい。
根号の中が 以上なので 。根号を分けて (右辺は正)とし、2 乗すると
とおくと , より 。
のとき , のとき より 。
確かめ: のとき , のとき で、どちらも成り立ちます。
の両辺を で割ると を落とします。 かもしれない式では割らないことが大切です。
問14 ★★
方程式 が を解にもつように、定数 の値を定めなさい。また、そのときの方程式の解をすべて求めなさい。
,解は のみ
を代入すると 。右辺が 以上なので 2 乗して ,。
このとき方程式は 。 のもとで 2 乗すると ,。 は を満たさないので、解は です。
2 乗した方程式の解が 2 つあっても、もとの方程式の解が 2 つとは限りません。
問15 ★★
方程式 の解を求めなさい。
とおくと で、 です。方程式は
より ( は の値になれない)。 より
確かめ:。置きかえた文字の範囲 が、無縁解を除く役目をしています。
問16 ★★
関数 のグラフが、直線 より上にある の範囲を求めなさい。
不等式 を解きます。右辺の符号で場合を分けます。
よって
端点 は直線 の上にもあり、ここは共有点です(もう 1 つの共有点は )。端点で等号が成り立つので、 は含みません。
問17 ★★★
を定数とします。方程式 の異なる実数解の個数を、 の値によって場合分けして求めなさい。
のとき 0 個、 のとき 1 個、 のとき 2 個
のグラフと、点 を通る傾き の直線 の共有点の個数を考えます。定義域は で、そこでは です。
のとき 右辺は負、左辺は 以上なので、解はありません。
のとき より の 1 個。
のとき 右辺は正なので、2 乗した の解がそのまま解になります。
判別式は 。
まとめると
直線は点 を中心に回転します。( 軸)では端点の原点だけを通り、傾きを大きくすると 2 点で交わり、 で接してから離れます。
問18 ★★★
方程式 が異なる 2 つの実数解をもつような、定数 の値の範囲を求めなさい。
公式1 より、 かつ です。よって、2 次方程式
が 以上の異なる 2 つの解をもつ条件を求めます。 の判別式を とすると
和が正で積が 以上なら、2 解はどちらも 以上です。よって
のとき の解は で、たしかに 2 個です( は端点)。 にすると、 の負の解が無縁解になって 1 個に減ります。
問19 ★★★
不等式 の解を求めなさい。
根号の中が 以上なので、定義域は です。
と はどちらも右上がりなので、左辺 も で右上がり( が大きいほど大きい)です。 となる を求めると、 の両辺を 2 乗して(右辺 のもとで)
このとき右辺 で、 を満たします。
は右上がりなので、 となるのは のときで、定義域と合わせて
では なので含みます。
問20 ★★★
を定数とします。方程式 の異なる実数解の個数を、 の値によって場合分けして求めなさい。
のとき 0 個、 のとき 1 個、 のとき 2 個
とおくと , で、 の値 1 つに の値がちょうど 1 つ対応します。方程式は
となるので、 の範囲にある解 の個数を数えれば、それが の個数です。
放物線 ()は、頂点 ,端 です。これと横線 の共有点を数えます。
は の端()を横線が通るときで、例題5 の「端点を通る」境目にあたります。
古い井戸をのぞきこんでも、暗くて底は見えません。そこで小石を 1 つ落とし、「ポチャン」と音が聞こえるまでの時間を数えます。この時間から、水面までの深さを求めてみましょう。
空気の抵抗を無視すると、石が m 落ちるのにかかる時間は 秒です( を について解いた式)。水面で生まれた音は、秒速約 m で井戸を上ってくるので、 秒かかります。音が聞こえるまでの時間を 秒とすると
という無理方程式ができます。
として解いてみます。()とおくと なので、 の 2 次方程式
になります。解は と 。 は負になれないので、後者は捨てます。 m です。
| 聞こえるまでの時間 | 音の時間も考えた深さ | 音の時間を無視した深さ |
|---|---|---|
| 秒 | 約 m | m |
| 秒 | 約 m | m |
| 秒 | 約 m | m |
浅い井戸なら、音の時間を無視してもほとんど差がありません。ところが深くなるほど、音が上ってくる時間が効いてきて、 秒では m 以上の差になります。実際には、手で時間を数えるときの誤差や空気の抵抗もあるので、この計算はあくまで目安です。
豆知識
捨てた解 にも意味を読みとれます。2 乗する前の式に戻すと、 を に取りかえた式、つまり「落ちる時間がマイナス」という、物理的にはありえない状況の答えです。この章の公式2 で見た「下半分の方程式の解」が、ここでも顔を出しています。
抗がん剤などの一部の薬は、体重ではなく体表面積(体の表面の広さ)をもとに量を決めることがあります。体表面積を身長と体重から見積もる式はいくつもありますが、その中で覚えやすいのが、1987 年にアメリカの医師モステラーが医学雑誌に発表した式です。
身長 cm,体重 kg の人なら m²、身長 cm,体重 kg の人なら約 m² です。電卓の平方根のキーが 1 回押せればすぐに計算できる、というのがモステラーの売りでした。
この式は、体重の無理関数になっています。体重が 2 倍になっても、体表面積は 倍にしかなりません。体が大きくなると、体積(体重)ほどには表面積が増えないという、形の性質が式に表れています。
逆向きの問いも、無理方程式として解けます。腎臓の働きを比べるときには、体表面積 m² が基準の体格としてよく使われます。身長 cm の人の体表面積が m² になる体重 は
右辺は正なので、両辺を 2 乗して kg です。
豆知識
体表面積の式には、1916 年のデュボアの式のように、身長と体重を半端な指数で累乗して掛け合わせる形のものもあり、日本ではこうした式や日本人向けに作られた式も使われています(※どの式を使うかは、薬や病院によって違います)。どの式も「身長と体重から、測りにくい面積を見積もる」ための道具で、実際の投与量は医師や薬剤師が総合的に判断します。
第3章の小話で、フルードが船の模型を使って実験したことを紹介しました。その続きの話です。
水の上を進む船は、船首で波を立てます。この波は、深い海では波長 m に対して秒速 m()で進むことが知られています。船が速くなると、船首の波の波長も長くなり、やがて船の水線の長さ(水面に接している部分の長さ) と同じになります。そこから先は、船が自分の立てた波の坂を上り続けるような状態になり、エンジンの力を大きくしても、なかなか速くなりません。この目安の速さをハルスピード(船体速度)といいます。
とおき、時速に直すと
という無理関数になります。ヨットの世界では、ノットとフィートを使った という形で知られています。
| 水線の長さ | ハルスピードの目安 |
|---|---|
| m(小さな手こぎボート) | 時速約 km |
| m(中型のヨット) | 時速約 km |
| m(大型の貨物船) | 時速約 km |
「時速 km で走れるヨットにしたい」なら、 を解きます。両辺は正なので 2 乗して ,水線の長さが約 m 必要です。速さを 2 倍にするには、船の長さを 4 倍にしなければなりません。
豆知識
この壁は、水をかき分けて進む船(排水量型の船)の目安です。モーターボートのように、速度が上がると船体が水面に乗り上げて滑るように走る船や、競技用のボートのように極端に細長い船は、ハルスピードを超えて走ることができます(※細長さや船の形によって、目安の当てはまり方は変わります)。
※ここは発展ページです。本文では「 は のもとで 2 乗してよい」「無縁解は下半分の方程式の解」「不等式は右辺の符号で場合分け」「共有点の個数は接点と端点で変わる」を、グラフを見ながら使いました。ここでは解の意味を定め、これらを証明します。第3章の厳密定義( の定義、定理1〜3)を前提にします。
, を の整式とする。 を満たす実数 全体を とする。 であって を満たす を、方程式 の解という。不等式の解も同様に、 に属し不等式を満たす とする。
2 つの条件 , が、どの実数 についても同時に成り立つか同時に成り立たないとき、 と は同値であるといい、 と書く。
定義1 で、 に属さない は、そもそも の値が決まらないので、解の候補になりません。以下では、, の値を単に , と書きます。
実数 , について
証明 () で とする。 なので 。また 。
(), とする。 である。 は「 以上で、2 乗すると になる数」なので、第3章 定理1(そのような数はただ 1 つ)より 。(証明終)
右辺の条件に が現れないのは、 から自動的に出るからです。本文 公式1 で「根号の中の条件は書かなくてよい」と言ったのは、この証明の()の 1 行目のことです。
実数 , について
とくに、 の解のうち を満たさないもの(無縁解)は、すべて の解であり、 を満たす。
証明 () とすると で、第3章 定理1 より 。 なら , なら 。
()どちらの場合も、2 乗すると 。
後半: で なら、前半より なので で、 である。(証明終)
2 乗した方程式の解集合は、 の解集合( の部分)と、 の解集合( の部分)の和集合です。両方に属しうるのは となる解だけで、そのときは なので、どちらの方程式も満たします。
実数 , について
証明 第3章 定理2 より、, のとき である。 のときは と書けることを使う。
1 つ目。左辺を仮定する。 なら右辺の前半が成り立つ。 なら なので、定理2(第3章)より 。逆に、 かつ なら 。 かつ なら、 で、。
2 つ目。左辺を仮定すると なので で、 から 。逆に、右辺の 3 条件がそろえば 。(証明終)
不等式を 2 乗してよいのは、両辺が 以上のときだけです。たとえば は正しいのに は正しくありません。定理3 は、この落とし穴を「右辺の符号で分ける」ことで避けています。等号つきの形も、第3章 定理2 を として同じように証明できます。
とする。無理関数 のグラフと直線 の共有点は、2 個以下である。また、 が ()の形で、 だけを変えて平行移動させるとき、共有点の個数が変わりうるのは、 がグラフに接するとき(2 乗した方程式が重解をもつとき)と、 がグラフの端点を通るときに限る。
証明 (前半)第3章 定理3 より、グラフは放物線 の一部である。直線 が なら、 との共有点の 座標は の実数解で、これは なら 2 次方程式、 なら 1 次方程式なので、実数解は 2 個以下である。 が の形なら、グラフ上で となる点は高々 1 個である(関数のグラフだから)。
(後半) と の共有点は、 の上半分 にあるものと、下半分 にあるものに分かれる。グラフとの共有点はこのうち上半分のものである。 を連続的に動かすとき、上半分にある共有点の個数が変わるのは、(i) との共有点そのものが生まれたり消えたりするとき(2 次方程式の判別式が になるとき)か、(ii) 共有点が上半分と下半分の境目 をまたぐときである。 上で となる点は頂点 ,すなわちグラフの端点だけなので、(ii) は が端点を通るときに限る。(証明終)
後半の証明では「連続的に動かすと、解も連続的に動く」ことを直観的に使いました。これをきちんと示すには、2 次方程式の解の公式が係数について連続であることが必要で、その厳密な扱いは微分積分の分野(第10章の関数の極限と連続性)で学びます。本文の例題5 では、境目の を求めたあと、各範囲で個数を式でも確かめています。
この章の学習が終わったら
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