問1
関数 の定義域を求めなさい。
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目次 / いろいろな関数 / 数学III
—— 放物線の半分を、端点から描く ——
第1・2章では分数関数を扱いました。この章では、$y = \sqrt{x}$ や $y = \sqrt{2x + 6} - 1$ のように根号の中に $x$ を含む**無理関数**のグラフを学びます。無理関数のグラフは、横向きの放物線を半分に切った形をしていて、漸近線はありません。その代わりに、グラフの出発点である**端点**が目じるしになります。「基本形 $y = \sqrt{ax}$ の向きを決める → 端点を平行移動する」の順で描き、定義域・値域・式の決め方までを扱います。
, のように、根号の中に文字を含む式を無理式といいます。 の無理式で表される関数が、 の無理関数です。根号の中が負の数では値が決まらないので、とくに断りがなければ、無理関数の定義域は根号の中を 以上にする実数全体とします。
いちばん基本の に、いくつか値を入れてみます。
が から まで 増える間に は 増えますが、 から まで 増えても、 はやはり しか増えません。 は増え続けるものの、その増え方はだんだんゆるやかになります。
グラフの形は、式を 2 乗すると見えてきます。 は「2 乗すると になる数のうち、 以上のほう」でした。したがって
です。 は、 の と の役割を入れかえた式で、そのグラフは横に寝かせた放物線になります。 のグラフは、この横向きの放物線のうち の部分です。
グラフは原点から右へ伸びるだけで、原点より左には点がありません。また、増え方がゆるやかになっていくのに、 はどこまでも大きくなります( なら )。分数関数のように、限りなく近づく横の直線(漸近線)はありません。放物線 の残りの半分、 の部分は のグラフです。横向きの放物線は、複素数平面と二次曲線の分野(第5章)で の形として詳しく扱います。
を 2 乗の答えにもつ数を探すと、 と の 2 つが見つかります。この 2 つを双子の兄弟だと思ってください。 と呼ばれたときに返事をするのは、いつも 以上の兄の だけ、と決めてあるのが根号の約束です。放物線 の上でも、 のところに と の双子が縦に並んでいます。兄だけを集めたものが の上半分、弟だけを集めたものが の下半分です。
のグラフは、横向きの放物線 のうち の半分で、原点を端点として右上がりにゆるやかに伸びていくということです。
(1) 関数 で、,, に対応する の値を求めなさい。
(2) 関数 のグラフ上にあり、 座標が である点の座標を求めなさい。
(3) 放物線 のうち、 の部分を表す関数を求めなさい。また、その関数の値域を求めなさい。
【解答】
(1) ,, なので
(2) となるのは、 が 以上で なので のときです。
(3) を について解くと 。このうち となるのは
で、値域は です。
(2) で となる点を探しても見つかりません。 は負の値をとらないからです。
根号の中の に係数 ()がつくと、 となります。 なら、根号の中が 以上になるのは のとき。 なら、 のときです。 が負だと、グラフは原点から左へ伸びます。
をもとにすると、残りの 3 つの向きは、二次関数の分野 第2章 公式4 の置きかえ(対称移動)で説明できます。
| 式 | からの置きかえ | 位置関係 |
|---|---|---|
| を に | 軸について対称 | |
| を に | 軸について対称 | |
| を , を に | 原点について対称 |
とする。, のグラフは、どちらも放物線 の半分で、原点が端点である。
(3) は表にしておくと確かめやすくなります。( と )は右上がり、( と )は右下がり、( と )は右下がり、( と )は右上がりです。図の緑のグラフ は、左上から原点へ下りてくるので、たしかに右下がりになっています。
洋服を作るときの型紙を思い浮かべてください。袖の型紙を 1 枚だけ用意しておけば、表向きに置く、裏返して置く、上下を逆にして置く、裏返したうえで上下も逆にする、の 4 通りで布を切り分けられます。形はどれも同じで、向きだけが違います。 という型紙 1 枚から、置き方を変えて 4 本のグラフができる、というのが公式2 の中身です。
のグラフは原点を端点とする放物線の半分で、 の符号で左右、根号の前の符号で上下の向きが決まるということです。
次の関数のグラフは、 のグラフとどのような位置関係にあるかを求めなさい。また、それぞれの定義域と値域を求めなさい。
(1)
(2)
(3)
【解答】
(1) を に置きかえた式なので、。
定義域は ,値域は
(2) を に置きかえた式なので、。
より、定義域は ,値域は
(3) を , を に置きかえた式なので、。
定義域は ,値域は
定義域は根号の中だけで、値域は根号の前の符号だけで決まっています。
分数関数では漸近線の十字を動かしました。無理関数では、グラフの出発点である端点を動かします。 のグラフを 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動すると、 を に、 を に置きかえて
となります。端点は原点から点 に移ります。
根号の中が の形のときは、 の係数 をくくり出してから読みます。
なので、 は を 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動したグラフです。「 だから 軸方向に 」と読むのは、よくある誤りです。
のグラフは、 のグラフを 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動したもので
は、 と直すと、端点が と分かる。
描くときは、まず端点を打ち、公式2 で向きを決め、座標軸との交点などをもう 1〜2 点求めてつなぎます。
公園にすべり台を組み立てる場面を考えます。すべり台の形は工場で決まっていて、変えられるのは「すべり始める台のてっぺんをどこに置くか」と「どちらの向きにすべらせるか」だけです。てっぺんの位置を決めれば、すべる面の位置は自動的に決まります。無理関数のグラフでは、端点がすべり台のてっぺん、 と根号の前の符号が向きにあたります。
のグラフは、 の端点を原点から点 に移したもので、 は をくくり出してから端点を読むということです。
次の関数について、グラフの端点、定義域、値域と、グラフと 軸, 軸との交点の座標を求めなさい。また、グラフが右上がりか右下がりかを求めなさい。
(1)
(2)
【解答】
(1) なので、端点は 。 より定義域は ,値域は
のとき 。 は 以上なので、2 乗して ,。 のとき 。
も根号の前も正なので です。
(2) なので で、端点は 。 より定義域は ,根号の前が負なので値域は
のとき より ,。 のとき 。
も根号の前も負で符号が同じなので です。端点 から左へ進むほど下がっていくグラフで、, と順に通ります。
公式2・3 のとおり、無理関数 のグラフは、定義域全体で右上がりか右下がりのどちらか一方です。分数関数のように、漸近線をはさんで上下に離れることはありません。
の定義域を、もとの定義域に含まれる区間 に限ると
(3) は、公式1 の「 はどこまでも大きくなる」を使っています。増え方がゆるやかでも、上限はありません。
火をつけたろうそくは、短くなる一方で、途中で長くなることはありません。火をつけたときに cm、吹き消したときに cm だったなら、燃えている間の長さは、 cm から cm までのどれかだったと言い切れます。最初と最後の 2 回だけ測れば、途中の様子が分かるのです。一方向にしか動かない関数では、区間の両端がこの 2 回の測定にあたります。
無理関数は定義域全体で右上がりか右下がりなので、区間に限った値域は両端の値を求めれば決まるということです。
(1) 関数 ()の値域を求めなさい。また、最大値と最小値を求めなさい。
(2) 関数 ()の値域を求めなさい。また、最大値・最小値があれば求めなさい。
(3) 関数 の値域が となるような定義域を求めなさい。
【解答】
(1) 例題3(1) より右上がりです。 のとき , のとき 。値域は
(2) 例題3(2) より右上がりです。 のとき で、 を小さくすると はいくらでも小さくなります。値域は で
(3) 右上がりなので、 となる から となる までが定義域です。
のとき、例題3(2) より 。 のとき より ,。どちらも を満たすので
無理関数の式を条件から決めるときは、端点に注目します。端点が分かれば , が決まり、残りは だけです。
また、無理関数の式を 2 乗すると、もとの放物線の式に戻ります。ただし、2 乗すると「上半分か下半分か」の情報が消えるので、条件を書き添える必要があります。
(1) で と のどちらをとるかは、通る点が端点より上か下かで決まります。(2)(3) の は、放物線 を 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動した放物線で、頂点が ,軸が直線 です。
一枚の集合写真から、前の列の人だけを切り抜いたとします。切り抜きを見せて「これはあの集合写真だよ」と説明するだけでは、どの部分を切り抜いたのかが伝わりません。「前の列だけ」とひと言添えて、初めて切り抜きを正しく説明できます。放物線の式 が集合写真、無理関数のグラフが切り抜き、「かつ 」が添えるひと言です。
無理関数の式は端点から , を決めて残りの を通る点で決めればよく、2 乗して放物線の式に直すときは、上半分か下半分かを表す条件を必ず添えるということです。
(1) グラフの端点が点 で、点 を通る無理関数を の形で求めなさい。
(2) (1) の関数のグラフは、ある放物線の一部である。その放物線の方程式と、グラフが放物線のどの部分かを求めなさい。
(3) 関数 のグラフが 2 点 , を通るとき、定数 , の値を定めなさい。
【解答】
(1) 通る点 は端点より上にあるので、 とおけます。 を通るので
よって ,すなわち
(2) 公式5 より、 かつ です。
放物線 のうち、 の部分です。
この放物線は、頂点が ,軸が直線 で、グラフはその軸より上の半分です。
(3) 2 点を通るので ,。どちらも右辺が 以上なので、2 乗して
辺々引いて ,,。
このとき の定義域は で、, はどちらも定義域に入っています。
| 式の形 | 端点 | 値域 |
|---|---|---|
| 原点 | ||
| 原点 | ||
| なら , なら |
分数関数では「漸近線の十字」、無理関数では「端点」が描き始めの目じるしです。次の第4章では、このグラフを使って や のような無理方程式・無理不等式を解きます。両辺を 2 乗すると、第2章とは別の理由で無縁解が出てくるので、その見分け方が中心になります。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
関数 の定義域を求めなさい。
()
問2
関数 で、 に対応する の値を求めなさい。
()
問3
関数 の値域を求めなさい。
( に を掛ける)
問4
関数 のグラフの端点の座標を求めなさい。
( を 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動)
問5
関数 ()の値域を求めなさい。
(右上がりで、 のとき , のとき )
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
関数 の定義域と値域を求めなさい。また、そのグラフは のグラフを 軸方向にどれだけ平行移動したものかを求めなさい。
定義域 ,値域 , 軸方向に
根号の中が 以上になる条件は なので、定義域は 。根号の前は正なので、値域は です。
の係数 をくくり出すと
なので、 を だけ平行移動したグラフです。端点は で、「 だから 動かす」のではない点に注意します。
問2 ★
関数 の定義域と値域を求めなさい。また、そのグラフが右上がりか右下がりかを求めなさい。
定義域 ,値域 ,右下がり
より、定義域は 。根号の前は正なので、値域は です。
で、 は負、根号の前は正です。符号が異なるので です(公式2)。
実際、 のとき , のとき , のとき で、 が大きくなるほど は小さくなり、端点 で終わります。
問3 ★
2 つの関数 (1) ,(2) を、それぞれ または の形に表し、グラフの端点の座標を求めなさい。
(1) ,端点 (2) ,端点
の係数をくくり出します。
(1) なので 。, で、端点は
(2) なので 。, で、端点は
(2) は なので定義域は 、根号の前が負なので値域は です。
問4 ★
関数 のグラフと 軸, 軸との交点の座標を求めなさい。
軸との交点 , 軸との交点
とすると 。右辺の は 以上なので、2 乗して
とすると 。
端点は で、グラフは右上がりに , を通ります。
問5 ★
関数 のグラフを 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動したグラフを表す関数を求めなさい。また、その関数の定義域と値域を求めなさい。
,定義域 ,値域
を に、 を に置きかえて
端点は原点から に移ります。 なので定義域は ,根号の前が正なので値域は です。
問6 ★
関数 のグラフを、(1) 軸,(2) 軸,(3) 原点 について、それぞれ対称移動したグラフを表す関数を求めなさい。
(1) (2) (3)
(1) を に置きかえて ,すなわち
(2) を に置きかえて
(3) を , を に置きかえて ,すなわち
定義域は (1) ,(2)(3) 、値域は (2) ,(1)(3) です。
問7 ★
関数 ()の値域を求めなさい。また、最大値と最小値を求めなさい。
値域 , で最大値 , で最小値
で、 と根号の前の符号が異なるので右下がりです。区間 は定義域 に含まれています。
のとき , のとき 。値域は で
問8 ★
関数 のグラフが点 を通るとき、定数 の値を定めなさい。また、この関数の定義域を求めなさい。
,定義域
, を代入すると 。右辺は 以上で左辺も正なので、2 乗して
なので、 より定義域は です。グラフは原点から左上へ伸び、たしかに の点 を通ります。
問9 ★★
関数 について、グラフの端点、定義域、値域と、グラフと 軸, 軸との交点の座標を求めなさい。
端点 ,定義域 ,値域 , 軸との交点 , 軸との交点
なので、端点は 。 より定義域は ,根号の前が負なので値域は です。 と根号の前の符号が異なるので、グラフは右下がりです。
のとき 。2 乗して ,。
のとき 。
端点 から右へ進むにつれて、, と下がっていきます。
問10 ★★
関数 の値域が となるような定義域を求めなさい。
と根号の前の符号が異なるので、グラフは右下がりです。したがって、 となる が区間の左端、 となる が右端になります。
のとき より ,。
のとき より ,。
どちらも定義域 に入っているので
右下がりであることを確かめずに「 の が左端」としてしまうと、区間が逆になります。
問11 ★★
関数 ()の定義域が のとき、値域が となった。定数 , の値を定めなさい。
,
で根号の前は正なので、グラフは右上がりです(公式2)。よって のとき , のとき となります。
2 乗して ,。辺々引いて より ,。
を満たします。 の定義域は なので、区間 はその中に入っています。
問12 ★★
グラフの端点が点 で、点 を通る無理関数を の形で求めなさい。
端点が なので、 とおけます(通る点 は端点より上にあるので、根号の前は )。 を通るので
よって ,すなわち
で、定義域 に が入っていることとも合っています。
問13 ★★
関数 のグラフは、ある放物線の一部である。その放物線の方程式を の形で求め、グラフがその放物線のどの部分かを求めなさい。
放物線 のうち、 の部分
なので です。公式5 より
よって、放物線 のうち、 の部分
この放物線は頂点 ,軸が直線 で、左向きに開いています。グラフは端点 から左上へ伸びる上半分です。
問14 ★★
放物線 のうち、 の部分を表す関数を または の形で求めなさい。また、その関数の定義域を求めなさい。
,定義域
より 。,すなわち となるのは負の符号のほうなので
より、定義域は です。値域は で、はじめの条件と一致しています。
問15 ★★
関数 のグラフを 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動し、さらに 軸について対称移動したところ、関数 のグラフになった。定数 , の値を定めなさい。
,
平行移動したグラフは です。これを 軸について対称移動すると、 を に置きかえて
これが と一致するので、,。よって
別解:端点で考えます。 の端点は 。これを 軸について対称移動する前の端点は で、これが原点を平行移動した先なので , です。
問16 ★★
関数 のグラフが通らない象限を求めなさい。
第4象限
で、端点は ,定義域は です。 と根号の前がどちらも負なので、グラフは右上がりです。つまり、端点 から左へ進むほど下がっていきます。
のとき , となるのは より のときです。
で となる点はないので、通らないのは です。
問17 ★★★
を定数とします。関数 のグラフ上の点 P と、点 との距離 の最小値を求めなさい。
のとき , のとき
()とおくと
これを の範囲で最小にします。 なので、 が最小のとき も最小です。軸 が定義域 に入るかどうかで分けます。
ではどちらの式も になり、つながっています。 の定義域 が、二次関数の最小値の場合分けを生んでいます。
問18 ★★★
関数 の定義域と値域を求めなさい。また、そのグラフがどのような図形かを求めなさい。
定義域 ,値域 ,中心 ,半径 の円の の部分(上半分)
根号の中が 以上となる条件は
よって定義域は です。
根号の中は で、定義域の中では のとき最大値 , のとき最小値 をとります。 は大小の順を変えないので(厳密定義 定理2)、 の最大値は ,最小値は で、その間の値もすべてとります。値域は
のもとで 2 乗すると ,すなわち
グラフは中心 ,半径 の円の です。根号の中が 2 次式になると、放物線ではなく円の一部が現れることもあります。
問19 ★★★
関数 の定義域が で、グラフが 2 点 , を通るとき、定数 ,, の値を定めなさい。
,,
定義域が なので で、端点の 座標は ,すなわち です。よって 。
なので、()とおくと
辺々引いて ,。 を満たし、,。
確かめ: は で , で です。 と見抜いて 1 つの文字 にまとめると、2 乗せずに連立 1 次方程式で解けます。
問20 ★★★
関数 の最大値と、そのときの の値を求めなさい。
のとき最大値
定義域は です。 とおくと、 のとりうる値の範囲は (公式3。 の範囲で は 以上のすべての値をとる)で、 より 。
の範囲で、 は のとき最大値 をとります。このとき より 。
をいくらでも大きくすると はいくらでも小さくなるので、最小値はありません。置きかえた文字 の範囲(ここでは )を必ず確かめるのは、第2章 j18 と同じです。
海辺に立って沖を眺めると、空と海の境目に水平線が見えます。あの線までは、いったい何 km あるのでしょうか。
地球を半径 の球とし、海面から高さ の位置に目があるとします。目から水平線までの視線は、地球の表面にちょうど接する直線です。接線は、接点を通る半径と垂直に交わるので、地球の中心・接点・目の 3 点は直角三角形をつくります。三平方の定理から、水平線までの距離 は
です。 は (約 km)に比べてずっと小さいので を無視すると、 となります。 km とし、 をメートルで測ると
という、 の無理関数になります。
| 見る場所 | 目の高さ | 水平線までの距離 |
|---|---|---|
| 砂浜に立つ | m | 約 km |
| 東京スカイツリーの天望回廊 | m | 約 km |
| 富士山の山頂 | m | 約 km |
砂浜では、水平線はわずか km 先です。砂浜からスカイツリーの天望回廊へ、目の高さを約 倍にしても、見える距離は 倍にしかなりません。 のグラフの「増え方がゆるやかになる」性質が、そのまま景色の広がり方に表れています。見える距離を 2 倍にしたければ、目の高さは 4 倍にしなければなりません。
豆知識
見る側と見られる側の両方に高さがあれば、2 人の「水平線までの距離」を足した距離まで届きます。富士山が見える最も遠い場所は、和歌山県那智勝浦町の色川富士見峠で、距離はおよそ km とされています(※計算と現地での撮影による調査の結果。距離や峠の標高は資料によって少し違います。空気による光の屈折で、実際には計算より少し遠くまで見えます)。山頂の m で約 km、峠の標高約 m で km。合わせて約 km となり、たしかに届く計算です。
津波は、海底の地震などで海水全体が持ち上げられて起こる波です。風で立つふつうの波が海面近くの水だけを揺らすのに対し、津波は海底から海面までの水をまるごと動かします。このような、波長が水深よりずっと長い波の速さ (m/s)は、水深を (m)、重力加速度を m/s² として
で表されます。速さは水深の無理関数で、波の高さには関係しません。
太平洋の平均的な深さに近い水深 m では、 m/s。時速に直すと約 km で、ジェット旅客機とほぼ同じ速さです。1960 年 5 月、南米チリの沖で起きた巨大地震の津波は、太平洋をおよそ km 渡り、約 時間後に日本の太平洋岸に到達しました。三陸海岸などで大きな被害が出て、死者・行方不明者は 140 人を超えました(※数は資料によって少し違います)。 km/時は、深い外洋を進む津波の速さとよく合っています。遠い国の地震でも、1 日足らずで海の向こうからやって来るのです。
岸に近づくと、事情が変わります。水深 m では m/s、時速約 km。遅くなったとはいえ、陸上の短距離選手が全力で走る速さと同じくらいで、波を見てから走って逃げ切るのは困難です。
豆知識
水深が浅くなると、先を行く波は遅くなり、後ろから来る波が追いついて水が積み重なります。そのため、沖では高さ数十 cm だった津波が、海岸では何 m にも盛り上がることがあります。深さが になると速さは 。 のグラフは原点の近くで急に立ち上がるので、浅い海岸の近くほど、少しの水深の差で速さが大きく変わります。
ゆっくり歩いていた人が、急いでいるうちに自然と走り出す——その切りかわりの速さは、人によって違います。背の高い大人と小さな子どもでは、子どものほうが遅い速さで走り出します。
この違いを説明するのに使われるのが、フルード数です。名前は、19 世紀イギリスの技術者ウィリアム・フルードに由来します。フルードは 1870 年代、船の模型を水槽で引っぱる実験を重ね、「長さ の船と速さ の組み合わせは、 が等しければ、大きさが違っても同じように波を立てる」ことを使って、模型の結果から本物の船の抵抗を予測しました。
のちにイギリスの動物学者ロバート・マクニール・アレクサンダーは、この考え方を動物の歩き方に当てはめました。 を脚の長さとすると、人も動物も、フルード数 がおよそ に達したところで歩きから走りへ切りかえる傾向がある、というのです(※ は多くの観察から得られた目安で、個人差があります)。 を について解くと
となり、切りかえの速さは脚の長さの無理関数です。
脚の長さが 倍を超えても、切りかえの速さは 倍にとどまります。大人がふつうに歩く速さで、小さな子どもはもう小走りになっている、というのは多くの親が経験することでしょう。
豆知識
月面の重力は地球の約 です。 m/s² として大人の切りかえの速さを計算すると、 m/s、時速約 km にまで下がります。アポロ計画の宇宙飛行士たちが、月面をふつうに歩かず、ぴょんぴょん跳ねるように移動したのは、この計算と合っていると考えられています。
※ここは発展ページです。本文では「 は 以上」「 は右上がり」「2 乗すると放物線に戻る(条件つきで)」「増え方はゆるやかになるが、上限はない」を、グラフを見ながら使いました。ここでは平方根を言葉で定め、これらの性質を証明します。
実数 に対し、 を満たす実数 を の平方根という。
のとき、 の平方根のうち 以上であるものを と書く。すなわち は
を満たす実数である。
なら、どんな実数も 2 乗すると 以上なので、 の平方根(実数)はありません。無理関数の定義域が「根号の中が 以上」になるのはこのためです。一方、 のとき「2 乗して になる 以上の実数」が存在することは、数と式の分野 第3章の厳密定義で紹介した実数の連続性(数直線にすき間がないこと)によって保証されます。ここでは存在を認め、それがただ 1 つであることを確かめます。これが言えて初めて、定義1 の「」という書き方に意味が生まれます。
とする。, がどちらも , を満たすなら である。とくに、すべての実数 について
が成り立つ。
証明 より 。 なら、, より 。 なら 。どちらの場合も である。
後半について、 かつ なので、 は「2 乗して になる 以上の数」である。前半より、そのような数は ただ 1 つなので、。(証明終)
としてしまうのは、よくある誤りです。 なら で、 にはなりません。
ならば である。逆に、, で ならば である。
証明 とする。 なので であり( なら となってしまう)、。定義1 より
左辺は正、 も正なので、。
逆に なら、同じ式で右辺の 2 つの因数がどちらも正なので 。(証明終)
これが本文の「 は右上がり」の中身です。 の右上がり・右下がりも、 が増えるとき根号の中 が増えるか減るか( の符号)と、定理2 と、根号の前の符号の組み合わせで決まります。本文 j18 で根号の中の最大・最小から の最大・最小を求めたのも、この定理によります。
とし、, を定数とする。実数 , について
が成り立つ(左辺は である について考える)。とくに の値域は 全体である。
証明 () は、定義1 より 以上で、2 乗すると になる。
() より なので、 は左辺の定義域に入っている。 で、2 乗すると になるので、定理1 より 。
値域について、 を任意にとる。,, とすると、 かつ なので、()より 。つまり のとき となり、 は 以上のすべての値をとる。(証明終)
2 乗する変形 は、それだけでは逆向きに戻れません。「かつ 」を付けて初めて同値になります。第4章で無理方程式の両辺を 2 乗するときに無縁解が出るのは、この条件を落としているからです。
最後に、本文の公式1 の「増え方はゆるやかになる」「それでも上限はない」を、極限を使わずに示します。
証明 1. 定理2 の証明と同じ変形で
なら、定理2 より分母は のときのほうが大きいので、この値は のときのほうが小さい。
等号は ,すなわち(定理2 より) のときに限る。
は、 を同じ幅 だけ増やしたときの の増え方が、右へ行くほど小さくなることを表しています。2. は、グラフ上の 2 点 , を結ぶ線分の中点が、グラフより下にある( 以外)ということです。このような曲線を上に凸といいます。二次関数の分野で を「上に凸」とよんだのと同じ形の性質です。
は、 のグラフが、どんな横の直線 も最後には超えていくことを表しています。増え方が に近づいていっても、合計はいくらでも大きくなれるのです。分数関数 が横の直線 に近づくだけで超えないのとは、ここが違います。極限の記号を使った正確な言い方は、微分積分の分野 第10章で扱います。
この章の学習が終わったら
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