問1
の内部の点 に対し、直線 ,, と辺 ,, の交点を ,, とします。, のとき、 を求めなさい。
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(チェバの定理 より )
目次 / 図形の性質 / 数学A
—— 辺の比を一周する順に掛けると 1——3 本の線が集まるとき、1 本の線が横切るとき ——
三角形の 3 辺(またはその延長)の上に 1 つずつ点をとり、「頂点 → 点 → 頂点 → …」と一周する順に辺の比を掛けていくと、答えがぴったり 1 になる場面が 2 つあります。3 本の線が 1 点に集まるとき(チェバの定理)と、1 本の直線が 3 辺を横切るとき(メネラウスの定理)です。この章では、この 2 つの定理と、その逆を学びます。第1章の面積の比・平行線と線分の比が証明の道具になり、第2章の重心・内心が 1 点で交わる理由も、ここでまとめて説明できます。
この章では、 の辺 ,,(またはその延長)の上に、それぞれ点 ,, をとります。辺やその延長の上にとったこれらの点を、ここでは分点と呼びます。
チェバの定理もメネラウスの定理も、主役は次の 3 つの比の積です。
頂点 から出発して、 と、頂点と分点を交互にたどりながら三角形を一周します。「頂点から分点まで」の長さを分子に、「分点から次の頂点まで」の長さを分母に置いていくと、この式ができます。どの頂点から始めても、どちら回りでも、たどる順を崩さなければ同じ式になります(逆回りなら 3 つとも逆数になるだけで、積が であることは変わりません)。
ここで使う , などは、どれも長さ(正の数)です。分点が辺の延長上にあっても、長さはそのまま測ります。
の内部に点 をとり、直線 ,, が向かいの辺と交わる点を ,, とします。 をどこにとっても、3 つの比の積は必ず になります。
理由は面積の比です。 と は、辺 を共通の底辺とする 2 つの三角形です。, から直線 に垂線 , を下ろすと、 と は直角と対頂角が等しいので相似になり、。底辺が共通なら面積の比は高さの比なので
同じように , です。3 つを掛けると、分子と分母に同じ面積が 1 回ずつ現れて、すべて消えます。
の 3 つの頂点と、辺上にない点 を結ぶ直線 ,, が、向かいの辺またはその延長と、それぞれ点 ,, で交わるとき
旅行で、手数料のかからない公正なレートで両替をするとします。円をドルに、ドルをユーロに、ユーロを円に戻すと、1 周して元の金額に戻ります。3 つのレートを掛けると になるわけです。チェバの定理の 3 つの比も、正体は「面積の両替レート」でした。 を に、 を に……と換えていくと、三角形を 1 周したところで元の面積に戻ってきます。
3 本の線が 1 点で交わるとき、頂点と分点を交互にたどって一周する順に辺の比を掛けると になる、ということです。
の内部の点 に対し、直線 ,, と辺 ,, の交点を ,, とします。,, のとき、 と の長さを求めなさい。
【解答】
チェバの定理(公式1)より
よって 。。
比を分数にするときは、図で「頂点 → 分点」が分子、「分点 → 頂点」が分母になっているかを指でなぞって確かめましょう。 と逆にしてしまうのが、いちばん多い間違いです。
チェバの定理は「1 点で交わる → 積が 1」でした。逆に「積が 1 → 1 点で交わる」も成り立ちます。
辺 ,, 上の点 ,, について積が だとします。 と の交点を 、直線 と辺 の交点を とすると、チェバの定理から
仮定の式と比べると 。辺 をこの比に内分する点はただ 1 つ(第1章の厳密定義ページ 定理1)なので 。つまり も を通ります。
の辺 ,, 上に、それぞれ点 ,, があって
が成り立つならば、3 直線 ,, は 1 点で交わる。
第2章では、重心と内心が 1 点で交わることを別々の方法で示しました。チェバの定理の逆を使うと、どちらも「比の積が 1」を確かめるだけで済みます。垂心や内接円の接点についても、実践問題で同じように示します。
2 人の友だちが、ある交差点で落ち合ったとします。3 人目も同じ交差点に来るでしょうか。実際に歩いてもらわなくても、3 人目の出発点と道の向きが分かれば、地図の上の計算で判定できます。チェバの定理の逆は、その判定の計算が「比の積が 1 かどうか」になる、ということを言っています。
辺上の 3 点で比の積が になれば、3 本の線は 1 点で交わる、ということです。「1 点で交わること」を示すときの道具になります。
の辺 , 上に、 となる点 , をとり、辺 の中点を とします。3 直線 ,, が 1 点で交わることを示しなさい。
【解答】
,, はそれぞれ辺 ,, 上の点で
よって、チェバの定理の逆(公式2)より、3 直線 ,, は 1 点で交わる。(証明終)
なので、第1章 公式1 より です。一般に、 なら なので、積が になるのは のときだけ。つまり、「台形 の対角線の交点と頂点 を結ぶ直線は、底辺 の中点を通る」ことが分かります。
今度は点 のかわりに、1 本の直線 を考えます。 が のどの頂点も通らず、直線 ,, とそれぞれ点 ,, で交わるとします。すると、チェバの定理とまったく同じ形の式が成り立ちます。
証明には、第1章の「平行線と線分の比」を使います。 を通り に平行な直線を引き、辺 との交点を とします。
から出る 2 直線 , を平行な 2 直線 , が切るので、。 から出る 2 直線 , を平行な 2 直線 , が切るので、。これを代入すると
第1章では、こうした比の問題を面積の比で解きました。メネラウスの定理は、その計算を「平行線を 1 本引く」ことで一度に済ませた形です。
の頂点を通らない直線 が、直線 ,, とそれぞれ点 ,, で交わるとき
三角形の形をした散歩道を、まっすぐな川が横切っているとします。川には橋が 3 つ架かっていて、そのうち 1 つは、道を延ばした先にあります。 を出発して橋 を渡り へ。 からは を通り過ぎて延長上の橋 まで行き、引き返して へ。 から橋 を渡って に戻ります。「頂点 → 橋 → 頂点」の区間を交互に分子・分母に置く、というたどり方は、延長上の橋でも変わりません。行き過ぎて引き返す区間があるだけです。
1 本の直線が三角形の 3 辺(または延長)を横切るとき、頂点と交点を交互にたどって一周する順に比を掛けると になる、ということです。
の辺 を に内分する点を 、辺 上の となる点を とし、線分 と の交点を とします。 と を求めなさい。
【解答】
() と直線 にメネラウスの定理を使います。直線 は、辺 と で、辺 と で、辺 の延長と で交わるので、 とたどって
なので 。
() と直線 に使います。 とたどって
なので 。
求めたい比()の両端 , を頂点にもつ三角形を選び、残りの点を通る直線を探す——これがメネラウスの定理の使い方の基本です。 や のように延長をまたぐ長さは、 から , と数えます。
メネラウスの定理にも逆があります。「3 点が一直線上にある」ことを示したいとき、直線を実際に引かなくても、比の計算だけで済ませられます。
辺 , 上に , があり、辺 の延長上に があって、積が だとします。直線 と直線 の交点を とすると( にならないことは厳密定義ページで確かめます)、メネラウスの定理から 。 も も辺 の延長上にあり、同じ比に外分する点はただ 1 つなので、 です。
の直線 ,, 上に、それぞれ頂点と異なる点 ,, があり、そのうち 1 個または 3 個が辺の延長上にあって
が成り立つならば、3 点 ,, は一直線上にある。
広い原っぱに、3 本の杭が打ってあるとします。一直線に並んでいるかを確かめるには、ふつうは糸を張ってみます。けれども、杭どうしの位置関係が地図の上で比として分かっていれば、糸を張らなくても計算だけで判定できます。メネラウスの定理の逆は、そういう「計算による測量」の道具です。
延長上の分点が 1 個か 3 個で、一周する順の比の積が なら、3 つの分点は一直線上に並ぶ、ということです。
の で、, の二等分線が辺 , と交わる点をそれぞれ , とし、 の外角の二等分線が直線 と交わる点を とします。3 点 ,, が一直線上にあることを示しなさい。
【解答】
,, とします。第1章 公式3(内角の二等分線と比)より
第1章 公式4(外角の二等分線と比)より、 は辺 を に外分するので
よって
, は辺の上、 は辺 の延長上にある(延長上は 1 個)ので、メネラウスの定理の逆(公式4)より、3 点 ,, は一直線上にある。(証明終)
だと、 の外角の二等分線は に平行になり、 ができません。問題文の「」はそのための条件です。3 つの外角の二等分線と向かいの辺の延長の交点も、同じ計算(延長上が 3 個)で一直線に並ぶことが示せます。
チェバの定理とメネラウスの定理は式の形が同じなので、どちらを使うかは「図の中に何を見つけるか」で決まります。
| 知りたいこと | 使う定理 | 図の中の目印 |
|---|---|---|
| 3 辺の分点の比 | チェバの定理 | 頂点から出る 3 本の線が 1 点に集まっている |
| 1 本の線分の上の比( など) | メネラウスの定理 | その線分の両端を頂点にもつ三角形と、それを横切る直線 |
| 3 本の線が 1 点で交わること | チェバの定理の逆 | 分点がすべて辺の上 |
| 3 点が一直線に並ぶこと | メネラウスの定理の逆 | 延長上の分点が 1 個か 3 個 |
線分の比が分かれば、第1章 公式5 で面積の比に進めます。「チェバで辺の比 → メネラウスで線分の比 → 高さの比で面積」が、この分野の典型的な流れです。
3 本の線の集まりにはチェバ、1 本の線分の比にはメネラウスを使い、得られた比を面積の比につなげる、ということです。
面積 の で、辺 の中点を 、辺 を に内分する点を とし、線分 と の交点を とします。, と、 の面積を求めなさい。
【解答】
() と直線 にメネラウスの定理を使います。 とたどって
よって 。
() と直線 に使います。 とたどって
なので 。
(面積) より 。 と は からの高さが共通で、底辺の比は なので
確かめ: で、 から 。2 通りで一致します。
この章では、三角形と直線が作る「比」を扱いました。次の第4章「円周角と円に内接する四角形」からは、円が主役です。第2章で予告した「中心角は円周角の 2 倍」や、「4 点が 1 つの円の上にある」ための条件を学びます。第5章の方べきの定理では、この章と同じように、円と直線が作る線分の長さの関係が再び登場します。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
の内部の点 に対し、直線 ,, と辺 ,, の交点を ,, とします。, のとき、 を求めなさい。
(チェバの定理 より )
問2
の辺 ,, 上の点 ,, が ,, を満たしています。 の値を求めなさい。
(。チェバの定理の逆より ,, は 1 点で交わる)
問3
の辺 , 上に , となる点 , をとり、直線 と辺 の延長の交点を とします。 を求めなさい。
(メネラウスの定理 。 は の側の延長上)
問4
の辺 を の先へ延長し、 となる点 をとります。辺 の中点を 、直線 と辺 の交点を とするとき、 を求めなさい。
( なので )
問5
の内部の点 について、直線 と辺 の交点を とします。 のとき、 を求めなさい。
(底辺 が共通なので、面積の比は , から直線 までの高さの比で、それは に等しい)
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
の内部の点 に対し、直線 ,, と辺 ,, の交点を ,, とします。,, のとき、 の長さを求めなさい。
チェバの定理より
なので 。
問2 ★
の辺 , 上に , となる点 , をとり、直線 と直線 の交点を とします。 のとき、 が辺 の の側と の側のどちらの延長上にあるかを答え、 の長さを求めなさい。
の側の延長上,
と直線 にメネラウスの定理を使うと
なので、 は に近い側、つまり にあります。
, とおくと、外分なので 、。よって 。
「外分は差が全体」(第1章 公式2)で立式します。
問3 ★
の辺 上に となる点 、辺 上に となる点 をとり、 と の交点を とします。直線 と辺 の交点を とするとき、 を求めなさい。
3 直線 ,, は で交わるので、チェバの定理より
よって 。
問4 ★
の辺 を に内分する点を 、辺 の中点を とし、 と の交点を とします。 と を求めなさい。
,
() と直線 にメネラウスの定理を使います。 は辺 の延長上で、 なので
() と直線 に使います。 は辺 の延長上で、 なので
は の中点になっています。
問5 ★
の重心を 、辺 , の中点をそれぞれ , とします。 と直線 にメネラウスの定理を使って、 を求めなさい。
直線 は、辺 と で、辺 の延長と で、辺 と で交わります。 とたどると、 なので
よって 。第2章 公式4 の「重心は中線を に分ける」が、メネラウスの定理から一行で出ました。
問6 ★
,, の で、辺 上に となる点 をとり、辺 の中点を とします。辺 上の点 を、3 直線 ,, が 1 点で交わるように定めるとき、 の長さを求めなさい。
3 直線が 1 点で交わるための条件は、チェバの定理とその逆より
, なので 。 を に分けて
問7 ★
の辺 を に内分する点を 、辺 の中点を とし、直線 と直線 の交点を とします。 のとき、 の長さを求めなさい。
メネラウスの定理より
なので は の側の延長上です。, とおくと 。よって ( は の中点)。
問8 ★
面積 の の内部の点 に対し、直線 ,, と辺 ,, の交点を ,, とします。, のとき、 と の面積を求めなさい。
,
チェバの定理より
と は からの高さが共通なので、面積の比は (第1章 公式5)。
問9 ★★
の内部の点 に対し、直線 ,, と辺 ,, の交点を ,, とします。, のとき、 と、面積の比 を求めなさい。
,
チェバの定理より 、。
面積を ,, とおきます。公式1 の証明と同じく、底辺 が共通な 2 つの三角形の面積の比は なので
とすると , なので、。
確かめ: で、チェバの定理の答えと一致します。
問10 ★★
の辺 を の先へ延長して となる点 を、辺 を の先へ延長して となる点 をとり、直線 と の交点を とします。直線 と直線 の交点を とするとき、 を求めなさい。
( は辺 上)
, が辺の延長上にあるので、 は三角形の外にあります。チェバの定理は が外にあっても長さの比で成り立つ(公式1)ので
が外にあるとき、延長上に来る分点はちょうど 2 つです(厳密定義ページ 定理3 の符号)。, がその 2 つなので、 は辺 上にあり、。
問11 ★★
の辺 上に となる点 、辺 上に となる点 、辺 を の先へ延長して となる点 をとります。3 点 ,, が一直線上にあることを示しなさい。
で、延長上の点は の 1 個なので、メネラウスの定理の逆より一直線上にある。
の順に比を掛けると
, は辺の上、 は辺 の延長上にあり、延長上の点は 1 個である。よって、メネラウスの定理の逆(公式4)より、3 点 ,, は一直線上にある。
(証明終)同じ比でも、 を辺 上( の内分点)にとると積は同じ ですが、今度はチェバの定理の逆の状況になり、,, が 1 点で交わります。
問12 ★★
の辺 の中点を 、線分 を に内分する点を とし、直線 と辺 の交点を とします。 を求めなさい。
求めたい比は辺 上にあり、分かっている比は 上と 上にあるので、 と直線 を使います。直線 は、辺 と で、辺 の延長と で、辺 と で交わります。 なので
よって 。
問13 ★★
の辺 を に内分する点を 、辺 を に内分する点を とし、 と の交点を とします。直線 と辺 の交点を とするとき、 と を求めなさい。
,
()チェバの定理より
() と直線 にメネラウスの定理を使います。 とたどり、 なので
「辺の比はチェバ、線分 の上の比はメネラウス」と使い分けます。
問14 ★★
面積 の で、辺 の中点を 、辺 を に内分する点を とし、 と の交点を とします。 の面積と、四角形 の面積を求めなさい。
,四角形
と直線 にメネラウスの定理を使います。 とたどり、 なので
より ,。
で、 は の中点なので 。四角形 。
確かめ: で、。
問15 ★★
の内接円が、辺 ,, とそれぞれ点 ,, で接しています。3 直線 ,, が 1 点で交わることを示しなさい。
接線の長さから ,, なので 。チェバの定理の逆より 1 点で交わる。
円の外の点から引いた 2 本の接線の長さは等しいので(第2章 公式2 (3))
とおける。,, はそれぞれ辺 ,, 上の点で
よって、チェバの定理の逆(公式2)より、3 直線 ,, は 1 点で交わる。
(証明終)この点はジェルゴンヌ点と呼ばれます。内心とは別の点で、一般には内接円の中心とは一致しません。
問16 ★★
の重心 を通る直線が、辺 , とそれぞれ点 , で交わり、 です。 を求めなさい。
辺 の中点を とすると、 は中線 上にあり 。直線 と直線 の交点を とします。
と直線 にメネラウスの定理を使うと()
なので、 は線分 の の先にあります。 とすると、 と から 。よって は の先にあり 。
次に と直線 に使うと()
よって 。
一般に、重心を通る直線では が成り立ちます(ここでは )。
問17 ★★★
の内部の点 に対し、直線 ,, と辺 ,, の交点を ,, とします。等式 が成り立つことを示しなさい。
,, とおくと ,,。
,, とおく。公式1 の証明と同じく、底辺 が共通な , の面積の比は に等しく、底辺 が共通な , の面積の比は に等しいので
次に、 と は からの高さが共通なので 。同様に 。2 つの分数が等しいとき、分子どうし・分母どうしを足した分数も同じ値になる( なら )ので
(1)(2) より 。
(証明終)この等式はファン・オーベルの定理と呼ばれます。問4(, は中点)では , で、和の は と一致します。
問18 ★★★
鋭角三角形 の頂点 ,, から向かいの辺に下ろした垂線の足を、それぞれ ,, とします。,, として , などを三角比で表し、3 直線 ,, が 1 点で交わることをチェバの定理の逆を使って示しなさい。
,,,,, で、比の積が 。
鋭角三角形なので、垂線の足 ,, はそれぞれ辺 ,, の上にある。
直角三角形 , で
同様に、直角三角形 , で ,。直角三角形 , で ,。よって
チェバの定理の逆(公式2)より、3 直線 ,, は 1 点で交わる。
(証明終)第2章の厳密定義ページでは、垂心の存在を「2 倍の三角形の外心」に帰着させて示しました。ここでは、比の計算だけで同じ結論が出ています。
問19 ★★★
面積 の で、辺 ,, をそれぞれ に内分する点を ,, とします()。線分 ,, で囲まれてできる三角形の面積を求めなさい。
と の交点を , と の交点を , と の交点を とします。
と直線 にメネラウスの定理を使うと(、)
と直線 に使うと(、)
よって 上に ,,, がこの順に並び、 です。3 本の線と条件は の入れかえで同じ形なので、 上でも ,,,、 上でも ,,, が同じ比で並びます。すると は、,, と、中央の にちょうど分かれます。
()で、 は からの高さが共通で底辺が なので
同様に 。よって
第1章 問20 では、同じ 3 点 ,, を結んだ三角形の面積が でした。頂点と結ぶ 3 本の線が作る三角形は、それよりずっと小さくなります(小話を参照)。
問20 ★★★
の内部の点 に対し、直線 ,, と辺 ,, の交点を ,, とします。直線 が直線 と点 で交わるとき、 が成り立つことを示しなさい。
チェバの定理 と、 と直線 のメネラウスの定理 を比べる。
3 直線 ,, は で交わるので、チェバの定理より
直線 は、直線 ,, とそれぞれ ,, で交わり、どの頂点も通らないので、 と直線 にメネラウスの定理を使うと
(1)(2) の左辺を比べると、 と が共通なので 、すなわち 。
(証明終) は を内分し、 は同じ比で外分します。このような 2 点は、, を調和に分けるといいます。第1章で学んだ内角と外角の二等分線の足も、 を同じ比 に内分・外分するので、調和に分ける 2 点の例です。
この章の 2 つの定理は、名前こそ並んでいますが、生まれた時代はまるで違います。
メネラウスは 1 世紀ごろ、エジプトのアレクサンドリアで活躍した天文学者・数学者です。のちのプトレマイオスの天文書『アルマゲスト』には、メネラウスが西暦 98 年にローマで行った星の観測が引用されています(※年代はこの記録によるもので、生没年は分かっていません)。代表作『球面論』はギリシャ語の原本が失われ、アラビア語の翻訳を通して伝わりました。メネラウスの定理はもともと、球面の上に大円で作った三角形についての定理として書かれていて、星の位置を計算する天文学の道具でした。平面版は、それより前から知られていたと考えられています(※諸説あり)。
一方、チェバの定理の名前の由来であるジョヴァンニ・チェバは、17 世紀イタリアの数学者です。1678 年の著書『たがいに交わる直線について』でこの定理を発表し、同じ本の中でメネラウスの定理も改めて証明しました。メネラウスからおよそ 1600 年後のことです。
ところが話はここで終わりません。20 世紀になって、11 世紀のイベリア半島にあったサラゴサ王国の王、ユースフ・アル=ムータマン・イブン・フードの数学書の写本が見つかり、そこにチェバの定理にあたる内容がすでに証明されていたことが分かりました(※発見の経緯には諸説あり)。定理の名前は、必ずしも最初に見つけた人の名前ではないのです。
豆知識
チェバは幾何学だけの人ではありませんでした。北イタリアのマントヴァで川の治水にかかわり、1711 年には『貨幣について』という本で、お金の問題に数学を持ちこもうとしています。経済学に数式を使った、ごく早い試みの一つとされています(※評価は研究者によって異なります)。
シーソーは、支点からの距離と重さを掛けたものが左右で等しいときにつり合います。アルキメデスが『平面のつり合いについて』で示したてこの原理です。重いほうが支点の近くに座る、というのが大事なところです。
これを使うと、この章の問題がおもりの計算で解けます。例題5(,)で試してみましょう。
こうして ,, に ,, のおもりが乗りました。三角形全体がつり合う点が です。線分 で見ると、 に 、 に と の合計 が集まっているので、。線分 で見ると、 に 、 に と の合計 なので、。メネラウスの定理を 2 回使って出した答えと、ぴったり同じです。
この考え方を数学として整えたのが、ドイツのメビウス(メビウスの帯のメビウス)です。1827 年の著書『重心の計算』で、平面の点を「3 頂点に乗せるおもりの比」で表す重心座標を導入しました。実は、このおもりの比は、実践問題9 で求めた面積の比 と一致します。問9 の は、,, に乗せるおもりそのものです。
豆知識
天井からつるして、腕がゆらゆら揺れながらつり合う飾りモビールは、アメリカの彫刻家アレクサンダー・カルダーが 1930 年代に作品として広めました。「モビール」という名前をつけたのは画家のマルセル・デュシャンだと伝えられています(※伝承による)。どの腕も、支点をはさんで「距離 × 重さ」が等しくなるように作られた、小さなてこの集まりです。
実践問題19 で、各辺を に分ける点と頂点を結ぶと、3 本の線に囲まれた三角形の面積がもとの になりました。「7」という中途半端な数が出てくるのは意外です。
この結果を一般にしたのがラウスの定理です。,, のとき
とおくと、3 本の線 ,, が囲む三角形の面積は、もとの三角形の
倍になります。 を入れると です。
注目したいのは分子の です。 のとき面積は 、つまり 3 本の線が 1 点に集まって三角形がつぶれます。 は、並べかえると ——チェバの定理の条件そのものです。チェバの定理は、ラウスの定理の「面積 の場合」だったのです。
エドワード・ラウスは 19 世紀イギリスの数学者で、ケンブリッジ大学の伝説的な受験指導者でした。数学優等試験(トライポス)の首席合格者「シニア・ラングラー」を 27 人も育てたといわれます(※人数は数え方による)。ラウス自身も 1854 年の首席で、そのとき 2 位だったのは、のちに電磁気学を完成させるマクスウェルでした。この定理は、1896 年ごろのラウスの力学の教科書に載っています(※版により異なります)。
豆知識
各辺を に分けた場合は、面積は 倍になります。 で 、 で 、(中線)で (重心で 1 点に集まる)です。英語圏では、 の三角形を物理学者の名前から「ファインマンの三角形」と呼ぶことがあります(※ファインマンが話題にしたという逸話によるもので、確かな出典は見つかっていません)。
※ここは発展ページです。高校の範囲では「公式1〜4を使えること」で十分ですが、「分点が延長上にあるときも本当に同じ式でよいのか」「逆はいつでも成り立つのか」が気になる人のために、符号をつけた比を使って 2 つの定理を整理します。第1章の厳密定義ページの定理(内分点・外分点はただ 1 つ、平行線と線分の比)を使います。
1 本の直線 に向きを 1 つ決める。 上の 2 点 , について、 から への向きが決めた向きと同じなら 、反対なら と定め、これを符号つきの長さという。 である。
直線 上の点 ()について、 を が を分ける符号つきの比という。この値は向きの決め方によらず、 が線分 の内部にあれば正、外部にあれば負である。
符号つきの比の値が同じ点は 1 つしかありません(第1章 定理1)。また、値が になる点はありません。 とすると となり、 になってしまうからです(「 の外分点はない」)。この「 にならない」ことが、あとで効いてきます。
以下、 の直線 ,, 上の、頂点と異なる点を ,, とし
と書きます。絶対値は本文の「長さの比の積」で、符号は延長上の分点の個数で決まります(延長上が 0 個か 2 個なら 、1 個か 3 個なら )。
の頂点を通らない直線 は、3 辺 ,, のうち、ちょうど 0 本または 2 本の辺の内部と交わる。
証明 は平面を 2 つの側に分け、,, はどれも 上にないので、どちらかの側にある。線分 が と交わるのは、 と が反対側にあるときに限る。
,, がすべて同じ側なら、どの辺も と交わらない(0 本)。そうでなければ、1 つの頂点だけが他の 2 つと反対側にあり、その頂点を端にもつ 2 辺だけが と交わる(2 本)。(証明終)
「直線は平面を 2 つの側に分ける」ことは、ユークリッドの『原論』では当たり前として黙って使われていました。1882 年にドイツのパッシュが、これを公理(証明なしに認める約束)として書き出す必要があると指摘しました。今日「パッシュの公理」と呼ばれるものです。
の頂点を通らない直線 が、直線 ,, とそれぞれ点 ,, で交わるとき、 である。
証明 (絶対値),, から までの距離を ,, とする(どれも正)。, から に下ろした垂線の足を , とすると、直角三角形 と は の角が等しい(対頂角、または共通の角)ので相似で、。同様に , なので
(符号)定理1 より、 が内部で交わる辺は 0 本か 2 本なので、延長上にある分点は 3 個か 1 個。どちらの場合も負の比が奇数個なので、積は 。(証明終)
本文では平行線を 1 本引いて証明しました。ここでは 3 頂点から までの距離を使いました。こちらの証明は、分点がどこにあっても場合分けがいりません。
点 が直線 ,, のどれの上にもなく、直線 ,, が直線 ,, とそれぞれ点 ,, で交わるとき、 である。
証明 と直線 (,, を通り、,, を通らない)に定理2 を使うと
と直線 (,, を通る)に使うと
(1)(2) を掛けると、, なので
(証明終)
積が なので、負の比は 0 個か 2 個です。 が内部なら 3 つとも辺の上、外部なら 2 つが延長上、という本文の説明は、この符号から出てきます。
で、直線 と が 1 点 で交わり、直線 が直線 と交わるならば、3 直線 ,, は で交わる。
証明 直線 と直線 の交点を とする。定理3 より で、仮定と比べると 。符号つきの比が等しい点はただ 1 つなので 。(証明終)
,, がすべて辺の上にあるとき(本文の公式2)は、 と は三角形の内部で交わり、 も辺 と交わるので、仮定は自動的に満たされます。一方、延長上に分点があると例外が起こります。たとえば , の直角二等辺三角形で、 を辺 の中点、 を辺 を の先へ となるよう延ばした点、 を辺 を の先へ となるよう延ばした点とすると
ですが、3 直線 ,, はどれも に垂直で、たがいに平行です。3 本の線の「交点」が限りなく遠くへ行ってしまった場合だと考えられます。
ならば、3 点 ,, は一直線上にある。
証明 まず、直線 は直線 と平行でないことを示す。 とすると、平行線と線分の比(第1章 定理3。符号も含めて成り立つ)より なので
これが になるが、符号つきの比が になる点はないので矛盾する。
よって直線 は直線 と 1 点 で交わる(, は頂点でないので、直線 は頂点を通らない)。定理2 より で、仮定と比べると 。よって で、 は直線 上にある。(証明終)
※直線 が頂点を通らないことは、次のように確かめられます。直線 が を通るとすると、 なので直線 は直線 と一致し、 は直線 と直線 の交点 になってしまいます。 を通るとすると、 なので直線 は直線 と一致し、 が になってしまいます。 を通る場合も同様です。
本文の公式4 の条件「延長上の分点が 1 個か 3 個」は、符号つきの積が であることの言いかえです。符号を使うと、チェバの定理は「」、メネラウスの定理は「」と、2 つの定理の違いが符号 1 つにまとまります。
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