問1
の辺 , 上にそれぞれ点 , があり、 です。,, のとき、 の長さを求めなさい。
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( より )
目次 / 図形の性質 / 数学A
—— 平行線が比を運ぶ——角の二等分線は向かいの辺を「2 辺の比」に分ける ——
この章から「図形の性質」が始まります。出発点は中学で学んだ相似です。平行線があると相似な三角形ができ、線分の比が別の場所へそのまま運ばれます。そこから線分の内分・外分、角の二等分線が向かいの辺を分ける比、面積の比へと進み、最後に三角形の辺と角の大小関係(三角不等式)を学びます。どれも次の章の「五心」、第3章の「チェバの定理・メネラウスの定理」を支える道具です。
この分野では、図形を次の記号で書きます。
中学では、2 つの三角形が相似になる条件を 3 つ学びました。
相似な図形では、対応する辺の比がすべて等しくなります。この章の道具のほとんどは、この事実から出てきます。
の辺 , 上に点 , をとり、 となるようにします。平行線の同位角は等しいので 、しかも は共通です。2 組の角が等しいので 。この相似の比を書き出すと、次の公式になります。
の辺 ,(またはその延長)上にそれぞれ点 , があり、 ならば
紙テープを 5 等分したいのに、長さが定規の目盛りで割り切れない——そんなときは罫線ノートを使う手があります。テープの一方の端を 1 本目の罫線に、もう一方の端を 6 本目の罫線に合わせて斜めに置くと、間の 4 本の罫線がテープをちょうど 5 等分する位置を教えてくれます。罫線は等しい間隔の平行線なので、斜めに置いたテープにも同じ比が写されるのです。平行線は、比をある直線から別の直線へそのまま運ぶ道具だと言えます。
平行線があると相似な三角形ができ、線分の比がそのまま運ばれるということです。ただし と比べる相手は で、 ではありません。
の辺 , 上にそれぞれ点 , があり、 です。,,, のとき、 と の長さを求めなさい。
【解答】
公式1 (2) より なので
は公式1 (1) を使い、 と比べます。 なので
もし としてしまうと となり、 が より長いという、図とかけ離れた答えになります。最後に図と見比べる習慣をつけておくと、この種の誤りに気づけます。
公式1の は、線分 を の比に分ける点でした。「線分をある比に分ける点」には名前がついています。
, を正の数とします。
鉄道の路線で考えてみましょう。A 駅から B 駅まで線路が伸びているとき、内分点は 2 つの駅のあいだにある駅です。外分点は、B 駅を通り過ぎた先(または A 駅の手前)にある駅です。どちらも「A 駅からの距離 : B 駅からの距離」が になる場所として決まります。ただし外分点では片方の駅を通り越しているので、2 つの距離の差が になります。内分点では 2 つの距離の和が でした。違いはそこだけです。
内分点は線分の内側で「2 つの距離の和が 」、外分点は延長上で「2 つの距離の差が 」になる点で、どちらも からの距離と からの距離の比で決まるということです。
長さ の線分 について、次の点と との距離を求めなさい。
(1) を に内分する点 (2) を に外分する点 (3) を に外分する点
【解答】
(1) , とおくと、和が なので 、。よって 。
(2) なので は の外側です。, とおくと、差が なので 、。よって 。
(3) なので は の外側です。, とおくと 、。よって ( から と反対の向きに の位置)。
と は、同じ外分でもまったく別の点です。比の順番は「 側 : 側」と決まっていることを忘れないでください。
三角形の 1 つの角を二等分する直線を引くと、向かいの辺はどんな比に分かれるでしょうか。答えはとても簡単で、「その角をはさむ 2 辺の比」です。
を通り に平行な直線を引き、辺 を の先へ延ばした直線との交点を とします。平行線の錯角・同位角から
は の二等分線なので 。よって となり、 は の二等辺三角形です。あとは で公式1を使えば、 より が出ます。
の の二等分線と辺 との交点を とすると
廊下の真ん中を歩く人は、左右の壁までの距離がいつも同じです。角の二等分線も同じで、その上の点は角をはさむ 2 辺 , から等しい距離にあります。すると と は、それぞれ , を底辺と見たときの高さが等しいので、面積の比は です。一方、同じ 2 つの三角形を , を底辺と見ると、高さはどちらも から までの距離で共通なので、面積の比は です。同じ面積の比を 2 通りに表したので 。長い辺の側が、底辺の大きな取り分をもらうわけです。
角の二等分線は、向かいの辺を「その角をはさむ 2 辺の比」に内分するということです。
で ,, です。 の二等分線と辺 の交点を とするとき、 と の長さを求めなさい。
【解答】
公式3より 。 なので
は、短いほうの辺 の側( 寄り)にずれます。「角の真ん中を通るのだから の中点を通る」と思いこまないようにしましょう。中点を通るのは の二等辺三角形のときだけです。
の辺 を の先へ延ばすと、 のところに外角( のとなりの角で、大きさは )ができます。この外角を二等分する直線も直線 と交わり( のとき)、同じ比が現れます。
証明は内角のときと同じ手順です。 の延長上に点 をとり、外角 の二等分線を とします。 を通り に平行な直線を引き、辺 との交点を とすると、平行線の同位角・錯角から
なので 、よって です。 で なので、公式1より となります。
である の の外角の二等分線と、直線 との交点を とすると
鏡に当たった光は、入ってきたときと同じ角度ではね返ります。点 から出た光が、点 に置いた鏡ではね返って に届くとしましょう。このとき鏡の面は、 と のどちらに対しても同じ角度で傾いています。実はこの鏡の面こそが の外角の二等分線で、鏡に垂直な線(法線)が内角の二等分線です。内角と外角の二等分線が直交するのは、「鏡の面と、その法線」の関係だったのです。
外角の二等分線は、向かいの辺を内角のときと同じ 2 辺の比に「外分」し、内角の二等分線とは直交するということです。
例題3の (,,)で、 の外角の二等分線と直線 の交点を とします。 の長さと、例題3の点 との距離 を求めなさい。
【解答】
公式4より 。 なので は の外側にあります。, とおくと、差が なので
例題3より なので、。
は を に内分し、 は に外分しています。さらに なので、 は を直径とする円の上にあります。この円の話は、小話「アポロニウスの円」で続きを紹介します。
角の二等分線の説明で、面積の比を使いました。面積の比は、線分の比を調べるもう 1 つの道具です。
(1) 高さが等しい 2 つの三角形の面積の比は、底辺の比に等しい。特に、点 が の辺 上にあれば
(2) の辺 , 上にそれぞれ点 , があるとき( を共有する 2 つの三角形)
三角比を学んだ人は、面積の公式 からも (2) が見えるはずです。 と は が共通なので、面積の比は「 をはさむ 2 辺の積」の比になります。
三角形のケーキを、てっぺんの頂点から底辺に向かってまっすぐ切り分けると、どのピースも高さは同じです。だからピースの大きさは、底辺をどこで切ったかだけで決まります。底辺を に切れば、ケーキも に分かれます。(2) のように角を共有する場合は、この切り方を向きを変えて 2 回くり返したことになります。
面積の比は、高さがそろっていれば底辺の比に、1 つの角を共有していればその角をはさむ 2 辺の比の積になるということです。
の面積は です。
(1) 辺 を に内分する点を とするとき、 の面積を求めなさい。
(2) 辺 を に内分する点を 、辺 を に内分する点を とするとき、 の面積を求めなさい。
【解答】
(1) 公式5 (1) より なので
(2) , なので、公式5 (2) より
(2) で使うのは「 からの距離 ÷ 辺全体」です。 から を掛けないように注意してください。
最後に、比ではなく「大小」の関係を見ておきます。ここからは、,, の向かいの辺の長さをそれぞれ ,, と書きます(,,)。
の三角形で、辺 上に となる点 をとります。 は二等辺三角形なので 。 は の外角なので より大きく、 は の一部なので より小さい。こうして 、つまり「長い辺 の向かいの角 のほうが大きい」ことが分かります。
で
家から駅に向かうとき、途中でコンビニに寄り道すると、まっすぐ行くより必ず遠回りになります。これが (2) の右半分 で、三角不等式とも呼ばれます。左半分の は、同じことを別の辺について書いたものです( と の 2 つをまとめると になります)。
三角形では大きい辺の向かいに大きい角があり、どの辺も「残り 2 辺の差より長く、和より短い」ということです。
(1) で ,, のとき、,, の大小を不等号を使って表しなさい。
(2) 3 辺の長さが ,, である三角形が存在するような の値の範囲を求めなさい。
【解答】
(1) 辺の大小は です。公式6 (1) より、向かいの角も同じ順になるので 。
(2) 長さ の辺に公式6 (2) を使うと
左の不等式は で、つねに成り立ちます。右の不等式から 、よって 。このとき 3 辺はすべて正です。
(2) の条件は、どの辺を に選んでも同じ結論になります。計算が楽になる辺を選んでください。
三角形の 3 つの角の二等分線は、実は 1 点で交わります。その点は内接円の中心(内心)です。次の第2章「三角形の五心」では、この章の公式3を使ってそのことを確かめ、外心・重心へと進みます。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
の辺 , 上にそれぞれ点 , があり、 です。,, のとき、 の長さを求めなさい。
( より )
問2
長さ の線分 を に内分する点を 、 に外分する点を とするとき、 と の長さを求めなさい。
,(内分は で 。外分は が の外側で より )
問3
で ,, です。 の二等分線と辺 の交点を とするとき、 の長さを求めなさい。
( より )
問4
で ,, です。 の外角の二等分線と直線 の交点を とするとき、 の長さを求めなさい。
(、 は の外側で より )
問5
3 辺の長さが ,, である三角形が存在するような の値の範囲を求めなさい。
()
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
の辺 , 上にそれぞれ点 , があり、 です。,,, のとき、 と の長さを求めなさい。
,
公式1 (1) より なので
は と比べます。
と比べる相手は (全体)で、使う比は です。 ではありません。
問2 ★
平行な 3 直線 ,, に、直線 が点 ,, で、直線 が点 ,, で交わっています(, は 上、, は 上、, は 上)。,, のとき、 の長さを求めなさい。
平行な 3 直線が 2 本の直線から切り取る線分の比は等しいので
理由: を通り に平行な直線を引き、, との交点を , とすると、平行四辺形ができるので , です。 で なので、公式1 (2) より となります。
問3 ★
長さ の線分 について、 を に内分する点 、 に外分する点 、 に外分する点 を考えます。,, の長さを求めなさい。
,,
(内分) , とおくと 、。よって 。
(5 : 3 の外分) なので は の外側です。, とおくと、差が なので 、。よって 。
(3 : 5 の外分) なので は の外側です。, とおくと 、。よって 。
と は、線分 をはさんで反対側にあります。 と が違うのは、 から見て は の向こう、 は手前側に出ているからです。
問4 ★
で ,, です。 の二等分線と辺 の交点を とするとき、 と の長さを求めなさい。
,
公式3より 。 なので
は短いほうの辺 の側( 寄り)にあります。
問5 ★
で ,, です。 の外角の二等分線と直線 の交点を とするとき、 の長さを求めなさい。
公式4より 。 なので は の外側にあります。, とおくと、差が なので
外分点は「近いほうの端点の外側」に出ます。 なら は に近く、 の外側です。
問6 ★
面積が の で、辺 を に内分する点を 、線分 の中点を とします。 と の面積を求めなさい。
,
公式5 (1) より なので
は の中点なので、 は の半分( からの高さが共通で、底辺 が の半分)、 は の半分です。
別解: から までの高さは、 から までの高さの半分です。底辺 が共通なので、 とすぐに出ます。
問7 ★
で ,, のとき、,, の大小を不等号を使って表しなさい。
,, なので、辺の大小は です。
公式6 (1) より、大きい辺の向かいに大きい角があるので
「 の向かいの辺」は を含まない辺 です。辺と角の対応を取り違えないようにしましょう。
問8 ★
3 辺の長さが ,, である三角形が存在するような の値の範囲を求めなさい。
長さ の辺に公式6 (2) を使うと
左は でつねに成り立ちます。右から 、よって 。このとき 3 辺はすべて正です。
だと 3 辺は ,, で、 となり三角形がぺしゃんこにつぶれます。等号は含みません。
問9 ★★
で ,, です。 の二等分線と辺 の交点を 、 の外角の二等分線と直線 の交点を とするとき、線分 の長さと の長さを求めなさい。
,
公式3より なので 。
公式4より 。 なので は の外側で、 より 、。よって
なので です(三平方の定理の逆)。直角三角形 で
確かめ: で、。内角と外角の二等分線が直交する()ことと合っています。
問10 ★★
の台形 で , です。対角線 , の交点を とし、 を通り に平行な直線が辺 , と交わる点をそれぞれ , とするとき、 の長さを求めなさい。
より錯角が等しいので で、相似比は 。よって
で なので、公式1 (1) より 、。
で なので 、。
は の中点になっています。一般に で、これは と の調和平均です。
問11 ★★
の辺 を に内分する点を 、辺 を に内分する点を とします。 と四角形 の面積の比を求めなさい。
とします。, なので、公式5 (2) より
四角形 。よって 。
線分 はちょうど の面積を二等分しています。 と はどちらも中点ではないのに半分になるところが面白い点です。
問12 ★★
で ,, です。 の二等分線と辺 の交点を 、 の二等分線と線分 の交点を とするとき、 の長さと を求めなさい。
,
公式3より なので
次に に注目します。 は ()の二等分線なので、公式3を で使うと
は 3 つの角の二等分線の交点(内心)で、第2章で扱います。 という関係になっていることも確かめられます。
問13 ★★
の辺 を に内分する点を 、線分 を に内分する点を とします。 を求めなさい。
とします。公式5 (1) より
と は からの高さが共通で、底辺の比は なので
。よって 。
確かめ: から までの高さは からの高さの なので、 と直接も出ます。
問14 ★★
の内部に点 があるとき、 が成り立つことを示しなさい。
を延ばして辺 との交点を とし、 と で三角不等式を使って辺ごとに足す。
線分 を の先へ延ばし、辺 との交点を とします( が内部にあるので、 は と の間にあります)。
で三角不等式より
で三角不等式より
(1) と (2) を辺ごとに足すと 。両辺から を引き、 を使うと
(証明終)「寄り道すると遠回り」を 2 回使っています。 から まで、 経由の道は 経由の道より短い、という意味です。
問15 ★★
の辺 の中点を とするとき、 が成り立つことを示しなさい。
を延長して となる点 をとると 。 で から 。
線分 を の先へ延ばし、 となる点 をとります。
と で、,、対頂角で なので、2 辺とその間の角がそれぞれ等しく 。よって です。
,, は一直線上にないので、 で三角不等式より
なので 、すなわち
(証明終)中線を 2 倍に延ばして平行四辺形 を作るのは、中線の問題の定番の補助線です。
問16 ★★
で ,, です。 の二等分線と辺 の交点を とし、 を通り辺 に平行な直線と辺 の交点を とするとき、 と の長さを求めなさい。
,
公式3より なので 。
で なので、公式1 (1) より
になったのは偶然ではありません。 の錯角から 、二等分線なので 。よって となり、 は二等辺三角形です。実は の長さは使っておらず、一般に となります。
問17 ★★★
で ,, です。 の二等分線と辺 の交点を とするとき、 の長さを求めなさい。
公式3の証明と同じ補助線を引きます。 を通り に平行な直線と、辺 を の先へ延ばした直線との交点を とします。
です。平行線の同位角・錯角から
よって は正三角形で、。 です。
で なので、公式1 (1) より
一般に のとき が成り立ちます()。三角比を使うなら、面積を に分けて からも が出ます。
問18 ★★★
2 点 , は を満たします。直線 上にない点 が を満たすとき、 の二等分線と直線 の交点を 、 の外角の二等分線と直線 の交点を とします。線分 の長さと、 の中点 と との距離 を求めなさい。
,
で、公式3より なので ,。
公式4より は を に外分します。 なので は の外側で、, とおくと 、。よって
内角と外角の二等分線は直交するので 。直角三角形 は斜辺 を直径とする円に内接するので、斜辺の中点 は 3 頂点から等しい距離にあり
,, の位置は によらず決まっています(,)。つまり を満たす点 は、すべて を中心とする半径 の円の上にあります。これが小話で紹介する「アポロニウスの円」です。
問19 ★★★
の内部に点 があるとき、不等式 が成り立つことを示しなさい。
左側は ,, の三角不等式を足す。右側は j14 の不等式を 3 通り足す。
(左側の不等式) は内部にあるので ,, はどれも三角形です。三角不等式より
3 つを足すと なので、。
(右側の不等式)j14 より 。頂点の役割を入れかえた同じ議論で
3 つを足すと なので、。
(証明終)内部の点から 3 頂点までの距離の和は、周の長さの半分より大きく、周の長さより小さい、という評価です。
問20 ★★★
の面積を とします。辺 ,, をそれぞれ に内分する点を ,, とするとき()、 の面積を求めなさい。
は、 から角のところの 3 つの三角形 ,, を取り除いたものです。
は を共有し、,( より は の )なので、公式5 (2) より
同様に ,。
比を (中点)にすると となり、中点を結んだ三角形の面積がもとの という中学の結果に戻ります。
鬼ごっこで、鬼の足があなたのちょうど 2 倍速いとします。広場のどこかに「そこまで走れば鬼より先に着ける」場所はあるでしょうか。
鬼のいる点を 、あなたのいる点を とします。ある地点 に 2 人が同時に着くのは、鬼の走る距離 があなたの走る距離 のちょうど 2 倍、つまり のときです。この章の j18 で見たとおり、そうした点 はすべて、 を に内分する点と外分する点を直径の両端とする 1 つの円の上にあります。この円の内側(あなたのいる側)なら、あなたが先に着く「安全地帯」です。鬼が速いほど、この円は小さく縮んでいきます。
「2 点からの距離の比が一定の点は円をえがく」ことを示したのは、紀元前 3 世紀ごろのギリシャの数学者アポロニウスとされ、この円はアポロニウスの円と呼ばれています。アポロニウスの著書『平面の軌跡』は失われていて、内容は 4 世紀の数学者パップスが残した紹介から推測されています(※どこまでがアポロニウス自身の結果かは諸説あり)。
豆知識
比が 、つまり鬼とあなたが同じ速さのときはどうなるでしょう。 を満たす点は、線分 の垂直二等分線という直線になります。 の外分点はない(公式2)ので、直径の片方の端が遠くへ行ってしまい、円が直線に開いてしまうのです。比が に近づくほどアポロニウスの円はどんどん大きくなり、最後は直線になる——直線を「半径が限りなく大きい円」と見る考え方の入口です。
パンタグラフは、4 本の棒を平行四辺形の形につないだ製図道具です。1 点をピンで固定し、針で元の絵をなぞると、別の位置につけたペンが同じ絵を一定の倍率で拡大(または縮小)して描きます。
仕組みは、この章の公式1そのものです。固定点 、なぞる針 、ペン はいつも一直線上に並び、棒どうしが平行を保つので、 はいつも同じ比になります。すると針がたどった線とペンが描く線は相似になり、倍率はこの比で決まります。「平行線が比を運ぶ」という性質を、そのまま機械にしたものです。
発明者とされるのは、ドイツのイエズス会士で天文学者のクリストフ・シャイナーです。1603 年ごろに考案し、1631 年の著書でくわしく紹介しました(※考案の年は諸説あり)。
豆知識
電車の屋根にのっている、架線から電気を取る装置も「パンタグラフ」と呼ばれます。菱形に組んだ骨組みが製図道具に似ていたことからついた名前です。最近は「く」の字形の片腕だけのもの(シングルアーム)が増えましたが、名前はそのまま残っています。ちなみにシャイナーは太陽の黒点を観察した人でもあり、黒点の発見をめぐってガリレオと激しく争いました。
ユークリッドの『原論』第1巻の命題5は、「二等辺三角形の 2 つの底角は等しい」という定理です。中世ヨーロッパの大学では、この命題は「ロバの橋(pons asinorum)」と呼ばれました。証明の図が橋のように見えること、そして飲みこみの遅い学生(ロバ)はここを渡れずにつまずく、というからかいが込められていたと言われます(※名前の由来には諸説あり)。
同じ第1巻の命題20は「三角形の 2 辺の和は、残りの 1 辺より大きい」——この章の公式6 (2)、三角不等式です。5 世紀の哲学者プロクロスが書いた『原論』の注釈によると、エピクロス派の人々はこの命題を「ロバでも知っている」と笑ったそうです。ロバは干し草のところへ、2 辺をたどるような回り道はせず、まっすぐ歩いていくのだから、というわけです(※伝承による)。
それでもユークリッドは、この「当たり前」をきちんと証明しました。しかも順番が面白いのです。命題5(二等辺三角形の底角)を使って命題18・19(大きい辺の向かいに大きい角)を示し、それを使って命題20(三角不等式)を示す。この章の公式6とまったく同じ道筋です(証明は厳密定義ページ)。
豆知識
「当たり前」を証明する意味は、それが何に支えられているかをはっきりさせることにあります。三角不等式は、のちに「距離とは何か」を定めるときの条件の 1 つになりました。地図の上の距離でも、2 つの単語のつづりの違いを数える距離でも、「寄り道すると遠くなる」ことが距離らしさの条件なのです。
※ここは発展ページです。高校の範囲では「公式1〜6を使えること」で十分ですが、「内分点はなぜ 1 つに決まるのか」「平行線と比は相似を使わずに示せるか」「当たり前に見える三角不等式はどう証明するのか」が気になる人のために、証明を紹介します。
, を正の数とする。線分 上の点 が を満たすとき、 は線分 を に内分するという。直線 上で線分 の外にある点 が を満たすとき、 は線分 を に外分するという。
とする。線分 を に内分する点はただ 1 つ存在する。 ならば に外分する点もただ 1 つ存在し、 ならば外分する点は存在しない。
証明 (内分)線分 上の点 を ()で表すと、条件は である。 より となり、これは を満たす。解はこの 1 つだけである。
(外分) が の外側にあるとき、()とおくと なので、比 は より大きい。 の外側にあるときは同様に で、比は より小さい。したがって となる外分点はない。
のとき、 は の外側にあり、 を解くと でただ 1 つ。 のときは の外側にあり、 として から でただ 1 つ。(証明終)
「ただ 1 つ」を示しておくと、あとで「逆」の定理を証明するときに役立ちます。同じ条件を満たす点が 2 つ見つかれば、それは同じ点だと言えるからです(同一法と呼ばれる証明法です)。
点 が直線 上になく、点 が直線 上の , と異なる点であるとき
証明 から直線 に下ろした垂線の長さを とすると、,。比をとると が消える。(証明終)
は線分 の外にあってもかまいません。この形にしておくと、外角の二等分線(定理4)にもそのまま使えます。
の辺 , 上にそれぞれ点 , があるとき(頂点とは異なる)
証明 () と は底辺 が共通で、 より と から直線 までの距離が等しい。よって 。
から直線 への垂線を共通の高さと見ると、定理2より 。 から直線 への垂線を共通の高さと見ると、。 なので、この 2 つの比は等しく、。
() を通り に平行な直線と辺 との交点を とすると、()より 。仮定と合わせて なので、 と はどちらも線分 を同じ比に内分する点である。定理1より 、すなわち 。(証明終)
中学では相似を使ってこの定理を示しました。しかし相似の理論を突きつめると、「比が分数で表せない(無理数の)ときにどう扱うか」という難しい問題に行き当たります。ユークリッドは『原論』第6巻の最初でこの面積による証明を与え、比そのものの扱いは第5巻の比例論(エウドクソスの理論とされる)に任せました。面積を使うと、難しさを「三角形の面積 = 底辺 × 高さ ÷ 2」の 1 か所に閉じこめられるのです(※『原論』の証明の細部は、ここでの書き方とは異なります)。
の の二等分線と辺 の交点を とする。また のとき、 の外角の二等分線と直線 の交点を とする。このとき
証明 角の二等分線上の点は、角をはさむ 2 直線から等しい距離にある(その点から 2 直線に垂線を下ろしてできる 2 つの直角三角形は、斜辺が共通で 1 つの鋭角が等しいので合同)。 から直線 , までの距離を とすると
一方、定理2より 。よって 。
外角の二等分線上の点 も、直線 , から等しい距離にある。同じ計算で 。 は直線 上にあるので、定理2より 。(証明終)
本文の公式3・4では平行線を引いて示しましたが、ここでは面積を使いました。本文の「廊下の真ん中を歩く」例えは、この証明をことばにしたものです。
の辺 上の点 が を満たすならば、 は の二等分線である。
証明 の二等分線と辺 の交点を とすると、定理4より 。 と はどちらも線分 を に内分する点なので、定理1より 。よって は の二等分線である。(証明終)
同一法を使うと、逆の証明はこのように一瞬で終わります。
において
証明 () より、辺 上に となる点 が と の間にとれる。 は二等辺三角形なので 。 は の外角なので 。また は の内部にあるので 。以上より
() とする。もし なら二等辺三角形なので 。もし なら、()で と の役割を入れかえて 。どちらも仮定に反するので 。(証明終)
において
証明 辺 を の先へ延ばし、 となる点 をとる。 は二等辺三角形なので 。 は線分 上にあるので
に定理6を使うと、大きい角 の向かいの辺 は、 の向かいの辺 より長い。 なので 。(証明終)
定理7を 3 つの辺それぞれについて書くと ,, となり、後ろの 2 つをまとめると です。こうして公式6 (2) の が得られます。
逆に、正の数 ,, が を満たせば三角形が作れることは、次のように分かります。2 点 , を距離 だけ離して置き、 を中心とする半径 の円と、 を中心とする半径 の円をかきます。2 つの円が 2 点で交わる条件が、ちょうど です。その交点を とすれば、3 辺が ,, の三角形 ができます。
小話で紹介したとおり、『原論』も「二等辺三角形の底角(命題5)→ 辺と角の大小(命題18・19)→ 三角不等式(命題20)」の順に進みます。定理6・7は、その順番をそのままたどったものです。
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