問1
点 と、 平面, 軸,原点に関してそれぞれ対称な点の座標を求めなさい。
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平面:, 軸:,原点:
目次 / ベクトル / 数学C
—— 軸を 1 本ふやして、平面のベクトルの考え方を空間へ広げる ——
この章から舞台を空間に移します。まず、$x$ 軸・$y$ 軸に $z$ 軸を加えた座標空間を用意し、点の座標と 2 点間の距離を求めます。空間のベクトルの計算や位置ベクトルの公式は、平面とほとんど同じ形で使えます。違うのは、ベクトルを分解するのに 1次独立なベクトルが 3 本必要になることと、「4 点が同じ平面の上にあるか」という、平面では起きなかった問題が出てくることです。最後に、四面体の中で直線と平面の交点を、係数を比べる方法で求めます。
第1章から第6章までは、紙の上、つまり平面の中でベクトルを考えてきました。この章からは、私たちが暮らしている縦・横・高さのある空間に舞台を移します。
先に見通しを述べておくと、空間のベクトルでも、和・差・実数倍の計算、位置ベクトル、内分点や重心の公式は、平面とまったく同じ形で使えます。そこで、この章では同じ部分を手短に確かめ、空間ならではの 2 つの違いに時間を使います。
空間に点 O をとり、O で互いに垂直に交わる 3 本の数直線を引きます。これを 軸, 軸, 軸といい、まとめて座標軸と呼びます。O は原点です。この章の図では、 軸を手前(左下)向き、 軸を右向き、 軸を上向きにかきます。右手の親指を 軸、人差し指を 軸に向けたとき、中指の向きが 軸になる置き方で、これを右手系といいます。
2 本の座標軸を含む平面を座標平面といいます。 軸と 軸を含む平面が 平面で、同じように 平面, 平面 があります。
空間の点 P を通り、3 つの座標平面にそれぞれ平行な平面をつくると、それらは 軸, 軸, 軸と 1 点ずつで交わります。その 3 点の目盛りが ,, のとき、組 を P の座標といい、 と書きます。座標の定められた空間を座標空間といいます。
2 点間の距離は、三平方の定理を 2 回使えば求められます。 から 平面に下ろした垂線の足を とすると、 平面の中で です。さらに三角形 OHP は の直角三角形で、 なので
となります。2 点 A,B の場合も、A を原点に平行移動したと考えれば同じ形です。
座標平面の方程式: 平面は , 平面は , 平面は 。点 を通り、 平面に平行な平面は ( 平面・ 平面に平行な平面も同様に ,)。
対称な点:点 と対称な点は
| 対称の基準 | 対称な点 |
|---|---|
| 平面 | |
| 軸 | |
| 原点 |
( 平面・ 平面, 軸・ 軸についても同様。平面なら 1 つ、軸なら 2 つ、原点なら 3 つの座標の符号が変わる)
2 点間の距離:, の距離 AB は、次の右辺の正の平方根
とくに 。
対称な点の表は、「基準の平面や軸に含まれる座標はそのまま、それ以外の座標の符号を変える」と覚えられます。たとえば 軸は 座標だけを持つ直線なので、 軸に関して対称に移すと , の符号が変わります。
大きな倉庫では、商品の置き場所を「3 番通路の、入口から 5 番目の棚の、下から 2 段目」のように 3 つの数で伝えます。通路・奥行き・段のどれか 1 つでも欠けると、商品にはたどり着けません。空間の点に 3 つの座標が要るのも同じ理由です。また、長さ 1 m の箱に 1.5 m の釣り竿が入るかどうかは、床の対角線ではなく、隅から反対側の上の隅へ向かう「立体の対角線」で決まります。縦・横・高さが m, m, m なら、その長さは m で、釣り竿は斜めに入ります。
空間の点は 3 つの座標で表され、2 点間の距離は「3 つの座標の差の 2 乗の和」の平方根になるということです。
2 点 , があります。
(1) 点 A と、 平面, 軸,原点に関してそれぞれ対称な点の座標を求めなさい。
(2) 線分 AB の長さを求めなさい。
(3) 軸上の点 P で、 となるものの座標を求めなさい。
【解答】
(1) 平面に関しては 座標の符号だけが変わり 。 軸に関しては , 座標の符号が変わり 。原点に関しては 3 つとも変わり です。
(2) 座標の差は ,, なので、公式1から
(3) 軸上の点は 座標と 座標が なので、 とおきます。
から で、。よって です。長さは正なので、2 乗が等しいことと長さが等しいことは同じです。
空間でも、向きと大きさをもつ量をベクトルといい、有向線分で表します。等しいベクトル、零ベクトル、逆ベクトル、和・差・実数倍、平行、単位ベクトルの意味と計算法則は、第1章とまったく同じです。「つぎたす(しりとり)」「始点をそろえる」「終点 − 始点」の合言葉も、そのまま使えます。
平面との違いが出るのは、ベクトルの分解です。平面では、1次独立な 2 本のベクトル , があれば、どんなベクトルも と表せました(第1章 公式6)。ところが空間では、 の形のベクトルは、始点を O にそろえると、O,A,B を通る平面の中にしか届きません。平面の外にある点へ向かうには、もう 1 本の向きが必要です。
4 点 O,A,B,C が同一平面上にないとき、,, は 1次独立 であるという。
このとき、空間のどんなベクトル も
の形に、ただ 1 通り に表せる。したがって
とくに 。
分解のしかたは、図で確かめられます。 とし、P を通り に平行な直線が平面 OAB と交わる点を Q とします。Q は平面 OAB 上にあるので、平面の分解で と書けます。 は に平行なので です。合わせて となります。ただ 1 通りであることは、厳密定義ページで証明します。
「4 点が同一平面上にない」という条件は、「3 本のうちどの 1 本も、残り 2 本の実数倍の和では表せない」と言いかえられます。たとえば なら、C は平面 OAB の上にあり、,, を何倍して足しても、その平面から出られません。
スケートリンクを滑る選手を思い浮かべてください。前後と左右の 2 つの向きをどう組み合わせても、氷の上を動くだけで、高さは のままです。ジャンプという 3 本目の向きが加わって、初めて空中の点に届きます。ただし、そのジャンプが真上でなくても、氷の面から外れた向きでさえあれば、どの高さにも届きます。
空間では、同じ平面に乗らない 3 本のベクトル ,, を用意すれば、どんなベクトルも とただ 1 通りに表せて、係数を比べてよいということです。
平行六面体 OADB-CEGF があります(面 OADB と面 CEGF が向かい合い、OC,AE,DG,BF が残りの 4 本の辺です)。,, とします。
(1) ,, をそれぞれ ,, で表しなさい。
(2) 辺 EG の中点を M とするとき、 を ,, で表しなさい。
(3) 4 本の対角線 OG,AF,BE,CD の中点が一致することを示しなさい。
【解答】
平行六面体の向かい合う辺は平行で長さが等しいので、,,, です。
(1) 。
「終点 − 始点」を使って
(2) 辺 EG は と平行で、 です。M はその中点なので
(3) 4 本の対角線の中点の位置ベクトルを、それぞれ両端の和の半分で求めます(中点の公式は平面と同じです。公式4で確認します)。
どれも に等しいので、4 本の対角線の中点は一致します。(証明終)
座標空間で、 軸, 軸, 軸の正の向きの単位ベクトルを ,, とします。これが空間の基本ベクトルです。3 本は同じ平面に乗らないので、公式2により、どんなベクトル も とただ 1 通りに表せます。この 3 つの係数が、空間のベクトルの成分です。
のとき、 と書く( を 成分 という)。
大きさの式は、 を原点から始めたときの終点 と原点の距離なので、公式1そのものです。平面の公式に 成分の項を 1 つ付け加えた形、と覚えておけば十分です。
平行の判定にも注意が 1 つあります。平面では「たすき掛けの差が 」という 1 本の式で判定できましたが、空間では、成分が 3 つあるので とおいて 3 つの成分の式を立てるのが確実です。
財布の中身を「100 円玉・10 円玉・1 円玉の枚数」で と記録することを考えてみましょう。 の財布と中身をまとめれば で、硬貨の種類ごとに足すだけです。3 人に同じ中身を配るなら、それぞれの枚数を 3 倍します。種類をまたいで足すことはしない、というのが成分の計算の考え方です。
空間のベクトルは 3 つの数の組 で表され、計算は成分ごとに、大きさは成分の 2 乗の和の平方根で求めるということです。
,, とします。
(1) , と、 の成分および大きさを求めなさい。
(2) と平行で、大きさが のベクトルを求めなさい。
(3) を の形で表しなさい。
【解答】
(1)
(2) と同じ向きの単位ベクトルは です。大きさ で平行なものは、その 倍と 倍なので
(3) 成分で書くと
これが に等しいので
で ,つまり 。これと から で ,。 から 。
確かめると です。
基準点 O を 1 つ決め、点 P の位置を で表すのも、平面と同じです。第4章で導いた内分点・外分点・重心の公式は、証明のどこにも「平面であること」を使っていなかったので、空間でもそのまま成り立ちます(第4章の厳密定義 定理1 も、次元によらない証明でした)。空間で新しく加わるのは、4 つの頂点をもつ四面体の重心です。
,,, とする。
成分で書けば、それぞれの座標は成分ごとの同じ式になる。たとえば , を に内分する点の座標 は
四面体の重心は、「頂点と、向かい合う面の三角形の重心を結ぶ線分を に内分する点」になっています。A と、三角形 BCD の重心 を結ぶ線分を に内分すると
となり、4 つの頂点について同じ式になるので、4 本の線分は 1 点で交わります。三角形の重心が中線を に分けたのと、よく似た関係です。
平面の三目並べを、盤を何段も重ねた立体版にしても、「縦・横・斜めに一列にそろえる」というルールはそのまま通用します。変わるのは、そろえ方の種類が「段をまたぐ列」の分だけ増えることです。位置ベクトルの公式も同じで、式の形はそのまま、成分が 1 つ増えるだけです。
内分点・外分点・重心の公式は空間でも同じ形で使え、四面体の重心は 4 つの頂点の位置ベクトルの平均になるということです。
4 点 ,,, を頂点とする四面体 ABCD があります。
(1) 線分 AB を に内分する点と、 に外分する点の座標を求めなさい。
(2) 三角形 BCD の重心 G と、四面体 ABCD の重心 K の座標を求めなさい。
(3) K が線分 AG を に内分する点であることを、座標で確かめなさい。
【解答】
(1) 内分点の座標は
で、 です。外分点は、内分点の を に置きかえて
で、 です。
(2) G の座標は
で、 です。K の座標は
で、 です。
(3) 線分 AG を に内分する点の座標は
で、 となり K と一致します。
3 点が一直線上にある条件は、平面と同じく「 となる実数 がある」です(第4章 公式5)。空間で新しく考えるのは、4 点が同一平面上にある条件です。
一直線上にない 3 点 A,B,C を通る平面は、ただ 1 つに決まります。これを平面 ABC といいます。, はこの平面の中の 1次独立な 2 本のベクトルなので、点 P が平面 ABC 上にあることは、平面の分解(第1章 公式6)により、 が , で表せることと同じです。
(1) 異なる 2 点 A,B と点 C について、C が直線 AB 上にあるのは
となる実数 があるとき、またそのときに限る。
(2) 一直線上にない 3 点 A,B,C と点 P について、次の 3 つは同値である。
2 つ目から 3 つ目へは、「終点 − 始点」で書きかえるだけです。
,, とおけば、係数の和は です。第4章の「直線 AB 上 ⇔ 係数の和が 1」が、1 つ次元の上がった形で現れました。基準点 O はどこにとってもかまいません。
下じきを指先で下から支えるところを想像してください。指が 3 本なら、指先の高さがばらばらでも、下じきは 3 つの指先に同時に乗ります。ところが 4 本目の指を加えると、その指先がちょうど 3 本で決まった面の高さになければ、浮くか、下じきを押し上げてしまいます。3 点は必ず 1 つの平面に乗り、4 点目は条件を満たしたときだけ乗る、というのが公式5の中身です。
点 P が平面 ABC 上にあるのは、 が と で表せるとき、言いかえると を ,, で表した係数の和が のときだということです。
(1) 4 点 ,,, が同一平面上にあるように、 の値を定めなさい。
(2) 四面体 OABC で ,, とします。 で表される点 P が平面 ABC 上にあるように、実数 の値を定めなさい。
【解答】
(1) ,, です。 と は平行でないので、A,B,C は一直線上にありません。D が平面 ABC 上にあるための条件は、 となる , があることです。
成分と 成分から
1 つ目を 2 倍して 2 つ目と足すと で ,。 成分から なので です。
(2) O,A,B,C は同一平面上にない(四面体の頂点)ので、公式5の係数の和が という条件を使えます。
最後に、四面体の中で、直線と平面の交点を求めます。考え方は第5章の「2 通りに表して係数を比べる」と同じで、1次独立なベクトルが 3 本になるだけです。
四面体 OABC で ,, とすると、この 3 本は 1次独立です。点 がどの平面上にあるかは、係数 ,, だけで判定できます。
四面体 OABC で とするとき
| 点 Q の位置 | 係数の条件 |
|---|---|
| 平面 ABC 上 | |
| 平面 OAB 上 | (平面 OBC,OCA も同様) |
| 直線 OA 上 |
直線と平面の交点の求め方
平面 ABC 上の点を ()ともおき、2 通りの表し方の係数を比べてもよい(公式2の一意性)。
表の 1 行目は公式5 (2) で O を基準点にしたもので、係数が 1 通りに決まるので、逆向きにも使えます。2 行目は、平面 OAB の点が , だけで表せることからきています。
暗い部屋で、レーザーポインターの光をスクリーンに当てる場面を考えましょう。赤い点が映る場所は、「ポインターから伸びる光の道すじの上」にあり、同時に「スクリーンの上」にもあります。この 2 つの条件を両方満たす点は 1 つだけです。交点の計算も、「直線の上」という条件で文字を 1 つに減らし、「平面の上」という条件でその文字を決めています。
直線と平面の交点は、直線上の点として媒介変数で表し、平面上にある条件(四面体 OABC なら係数の和が など)を当てはめて求めるということです。
四面体 OABC で ,, とします。辺 OA の中点を M,辺 BC を に内分する点を N,線分 MN の中点を P とし、直線 OP と平面 ABC の交点を Q とします。
(1) を ,, で表しなさい。
(2) を ,, で表しなさい。
(3) を求めなさい。
【解答】
(1) , なので
(2) Q は直線 OP 上にあるので、実数 を使って
と表せます。Q は平面 ABC 上にあり、,, は 1次独立なので、係数の和が です。
よって
(3) なので 。したがって です。
この章では、空間でもベクトルの計算と位置ベクトルの公式がそのまま使えること、そして分解に 3 本のベクトルが要ることを確かめました。まだ使っていない道具が 1 つあります。内積です。次の第8章では、空間のベクトルの内積を使って、長さ・角・垂直を調べ、四面体の体積なども求めていきます。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
点 と、 平面, 軸,原点に関してそれぞれ対称な点の座標を求めなさい。
平面:, 軸:,原点:
問2
2 点 , の距離を求めなさい。
問3
, のとき、 の成分と を求めなさい。
,
問4
四面体 OABC で ,, とします。辺 BC の中点を M とするとき、 を ,, で表しなさい。
問5
2 点 , を結ぶ線分 AB を に内分する点の座標を求めなさい。
,, より
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
点 があります。(1) A から 平面に下ろした垂線の足の座標、(2) A から 軸に下ろした垂線の足の座標と、A と 軸の距離、(3) 線分 OA の長さを、それぞれ求めなさい。
(1) (2) ,距離 (3)
(1) 平面に垂直な向きは 軸の向きなので、垂線の足は 座標だけを にした点です。。
(2) A を通り 平面に平行な平面 は、 軸と で垂直に交わります。よって垂線の足は で、距離は A と の距離です。座標の差は ,, なので
(3) 公式1から
(2) の距離 と 座標 から、三平方の定理で と求めることもできます。
問2 ★
3 点 ,, を頂点とする三角形 ABC について、3 辺の長さを求め、どのような三角形かを示しなさい。
, で、 の直角二等辺三角形
3 辺の長さの 2 乗を求めます。
, で、さらに なので、三平方の定理の逆により です。
よって三角形 ABC は です。
問3 ★
点 を通り、(1) 平面に平行な平面、(2) 軸に垂直な平面、(3) 平面に平行な平面の方程式を、それぞれ求めなさい。
(1) (2) (3)
(1) 平面は で、それに平行な平面上の点は 座標がすべて等しくなります。点 を通るので です。
(2) 軸に垂直な平面は、 平面()に平行な平面です。 座標がすべて等しく、 です。
(3) 平面()に平行なので、 座標がすべて等しく です。
「どの座標が一定か」を考えると、式は 1 文字だけの形になります。
問4 ★
, のとき、(1) の成分、(2) 、(3) を満たすベクトル の成分を、それぞれ求めなさい。
(1) (2) (3)
(1)
(2) なので
(3) 数の方程式と同じように について解きます。 から ,つまり
確かめると、左辺 ,右辺 で一致します。
問5 ★
について、(1) と同じ向きの単位ベクトル、(2) と平行で大きさが のベクトルを、それぞれ求めなさい。
(1) (2) ,
です。
(1) 大きさで割って
(2) 平行なベクトルは同じ向きと逆向きの 2 通りあります。(1) の単位ベクトルを 倍・ 倍して
問6 ★
, が平行になるように、, の値を定めなさい。
,
, はどちらも ではないので、平行であることは となる実数 があることと同じです。成分で書くと
3 つ目から 。1 つ目から ,2 つ目から 。
よって です。このとき , で、確かに平行です。
空間では、平面の「たすき掛けの差」のような 1 本の式で済ませず、このように を置いて 3 つの成分の式を立てるのが確実です。
問7 ★
3 点 ,, があります。四角形 ABCD が平行四辺形となるような点 D の座標と、その平行四辺形の対角線の交点の座標を求めなさい。
,対角線の交点
四角形 ABCD が平行四辺形になるのは のときです。 なので
よって です。
平行四辺形の対角線は互いの中点で交わるので、交点は AC の中点です。
BD の中点も で、同じ点になります。
問8 ★
四面体 OABC で ,, とし、辺 OA の中点を M,辺 BC の中点を N,三角形 ABC の重心を G とします。(1) を ,, で表しなさい。(2) 線分 MN の中点が、四面体 OABC の重心と一致することを示しなさい。
(1) (2) 中点の位置ベクトルが になることを示す
(1) , なので
(2) なので、線分 MN の中点を L とすると
四面体 OABC の重心は、4 頂点の位置ベクトル ,,, の平均 なので、L と一致します。(証明終)
同じ計算で、向かい合う辺 OB と CA、OC と AB の中点を結ぶ線分の中点も重心になります。四面体の「向かい合う辺の中点を結ぶ 3 本の線分」は、重心で互いに 2 等分し合っています。
問9 ★★
,, のとき、 を の形で表しなさい。
なので
3 式をすべて足すと で、。ここから各式を引くと
よって です。
確かめると です。3 つの式が「2 つずつの和」になっているときは、全部足してから引くと早く解けます。
問10 ★★
4 点 ,,, が同一平面上にあるように、 の値を定めなさい。
, は平行でないので、O,A,B は一直線上にありません。C が平面 OAB 上にあるための条件は、 となる実数 , があることです(公式5 (2) で A を O に読みかえたもの)。
成分・ 成分から
引き算して で ,。 成分から です。
このとき で、,, は 1次独立ではありません。 なら 3 本は 1次独立で、O,A,B,C は四面体の頂点になります。
問11 ★★
4 点 ,,, が同一平面上にあるように、 の値を定めなさい。
, は平行でないので、A,B,C は一直線上にありません。P が平面 ABC 上にある条件は、 となる , があることです。 なので
2 つ目と 3 つ目を足すと で ,。1 つ目から
未知数 を含まない 2 つの成分で先に , を決め、残りの成分で を決めるのがコツです。
問12 ★★
四面体 OABC で ,, とし、辺 OA の中点を M,三角形 ABC の重心を G とします。直線 MG と平面 OBC の交点を R とするとき、 を , で表し、 を求めなさい。
,
R は直線 MG 上にあるので、実数 を使って と表せます( で M, で G)。
R は平面 OBC 上にあり、,, は 1次独立なので、 の係数が です(公式6)。
よって です。R は、OB,OC を 2 辺とする平行四辺形の 4 つ目の頂点です。
が M, が G, が R なので、 です。したがって です。
問13 ★★
四面体 OABC で ,, とします。辺 OA の中点を D,辺 OB を に内分する点を E,辺 OC を に内分する点を F,三角形 ABC の重心を G とします。直線 OG と平面 DEF の交点を Q とするとき、 を ,, で表し、 を求めなさい。
,
,, です。
Q は直線 OG 上にあるので、実数 を使って
平面 DEF 上の点かどうかを調べるには、,, で表し直して係数の和が かを見ます。,, なので
O,D,E,F は同一平面上にない(D,E,F は四面体の 3 辺上の O 以外の点)ので、公式5 (2) により、Q が平面 DEF 上にある条件は係数の和が です。
よって
第6章の「右辺を 1 にする書きかえ」の空間版です。平面 ABC のときと違い、,, の係数の和をそのまま 1 とおくと誤りになります。
問14 ★★
平行六面体 ABCD-EFGH(面 ABCD と面 EFGH が向かい合い、AE,BF,CG,DH が残りの辺)で、,, とします。対角線 AG と平面 BDE の交点を P とするとき、 を ,, で表しなさい。また、P は三角形 BDE の重心であることを示しなさい。
()。三角形 BDE の重心の位置ベクトルと一致することを示す
平行六面体なので です。P は直線 AG 上にあるので
,, で、A,B,D,E は同一平面上にないので、P が平面 BDE 上にある条件は係数の和が です(公式5 (2) で A を基準点にしたもの)。
よって で、 です。
一方、A を基準点としたとき、三角形 BDE の重心の位置ベクトルは
で、 と一致します。よって P は三角形 BDE の重心です。(証明終)
同じように、対角線 AG は平面 CFH とも交わり、その点は三角形 CFH の重心で、A から の位置にあります。対角線は 2 つの平面で 3 等分されます。
問15 ★★
3 点 ,, があります。(1) 三角形 ABC が正三角形であることを示しなさい。(2) 点 について、四面体 ABCD が正四面体になるような の値を求めなさい。
(1) を示す (2)
(1)
3 辺が等しいので、三角形 ABC は正三角形です。(証明終)
(2) 正四面体になるのは、 のときです。D の座標は 3 つとも なので、A,B,C のどれに対しても距離の 2 乗は同じ式になります。
より ,。
のとき , のとき です。D は平面 ABC の両側に 1 つずつあり、どちらも正四面体になります。
問16 ★★
四面体 ABCD で、頂点 A と三角形 BCD の重心 を結ぶ線分を考えます。同じように、B と三角形 CDA の重心 ,C と三角形 DAB の重心 ,D と三角形 ABC の重心 を結ぶ線分を考えます。この 4 本の線分が 1 点で交わり、その点がどの線分も頂点の側から に内分することを示しなさい。
各線分を に内分する点が、どれも になることを示す
基準点 O をとり、,,, とします。 なので、線分 を に内分する点の位置ベクトルは
この式は ,,, について対称(どの 2 つを入れかえても同じ式)です。B と ,C と ,D と の場合も、文字の役割を入れかえた同じ計算で、 に内分する点はすべて になります。
よって、4 本の線分はこの点(四面体の重心)を共有し、それぞれを頂点の側から に内分します。(証明終)
三角形では「中線を 」でした。 個の頂点の平均で考えると、 となり、比が になる理由が見えます。
問17 ★★★
四面体 OABC で ,, とします。辺 OA の中点を P,辺 OB を に内分する点を Q,辺 AC を に内分する点を R とします。平面 PQR が直線 BC と交わる点を S とするとき、 を求めなさい。
,, です。
直線 BC 上の点として:実数 を使って
平面 PQR 上の点として:P,Q,R は一直線上にない( と は平行でない)ので、公式5 (2) により
と表せます。,, で書くと
係数を比べる:,, は 1次独立なので
これから ,,。 に代入して
なので S は線分 BC 上にあり、 から です。
検算(メネラウスの定理):平面 PQR と平面 OAC の交わりは直線 PR、平面 OBC との交わりは直線 QS です。直線 PR と直線 OC の交点を T とすると、T は平面 PQR 上にも平面 OBC 上にもあるので、直線 QS も T を通ります。三角形 OAC と直線 PRT でメネラウスの定理から , で (T は OC の C の外側で )。次に三角形 OBC と直線 QST で となり、 で一致します。
問18 ★★★
4 点 ,,, があります。(1) 直線 AB と直線 CD が交わるような の値と、そのときの交点の座標を求めなさい。(2) が (1) の値以外のとき、2 直線 AB,CD は平行でもなく、交わりもしないことを示しなさい。
(1) ,交点 (2) 方向ベクトルが平行でなく、(1) より交点をもたないことを示す
, です。第6章の直線のベクトル方程式は空間でもそのまま使えるので、実数 , を使って、直線 AB 上の点は 、直線 CD 上の点は と表せます。
(1) 2 直線が交わるのは、次の 3 つを同時に満たす , があるときです。
, から で ,。これを に代入すると
交点は を直線 AB の式に入れて です(, を直線 CD に入れても )。
(2) と は、 成分の比が 、 成分の比が で異なるので、 の値によらず平行ではありません。したがって 2 直線は平行でも一致でもありません。
また (1) より、, を満たす , は , だけで、これが を満たすのは のときだけです。 なら 3 式を同時に満たす , はなく、2 直線は交わりません。(証明終)
平面上の 2 直線は「平行でなければ必ず交わる」のに対し、空間では平行でも交わりもしない位置関係があります。これをねじれの位置といいます。
問19 ★★★
四面体 OABC の重心を K とします。K を通る平面が、辺 OA,OB,OC(O は除く)とそれぞれ点 P,Q,R で交わり、,,()とします。(1) を示しなさい。(2) , のとき、 の値を求めなさい。また、このとき四面体 OPQR の体積は四面体 OABC の体積の何倍か求めなさい。
(1) K を ,, で表した係数の和が 1 になることから示す (2) , 倍
(1) ,, とすると、 です。 などを代入すると
,, はそれぞれ ,, の でない実数倍なので 1次独立で、この表し方はただ 1 通りです。K は平面 PQR 上にあるので、公式5 (2) より係数の和は です。
(証明終)
(2) , を代入すると で、 です( を満たします)。
体積を比べます。三角形 OPQ と三角形 OAB は が共通なので、面積の比は をはさむ 2 辺の比の積で です(第6章 例題6 と同じ考え方)。また、R と C から平面 OAB までの距離の比は、OR : OC に等しく です(R から平面に下ろした垂線と、C から下ろした垂線は平行で、O を中心とする相似の関係になるため)。四面体の体積は なので
より 倍です。
問20 ★★★
四面体 OABC の体積を とし、,, とします。(,,)で表される点 P について、(1) のときの P の存在範囲、(2) のときの P の存在範囲とその体積、(3) のときの P の存在範囲の体積を、それぞれ求めなさい。
(1) 三角形 ABC の周と内部 (2) ,, となる四面体 OABC の表面と内部,体積 (3)
(1) 公式5 (2) より、 なら P は平面 ABC 上にあります。さらに なので、P は三角形 ABC の周と内部にあります。(第6章 公式6 で「 は三角形」だったのと同じく、,, と書きかえられるからです。)答えは 。
(2) とおきます。 なら P は O です。 のときは
と書きかえると、(1) と同じ理由で、P は ,, を頂点とする三角形の周と内部にあります。この三角形は、 が から まで増えるにつれて平面 ABC と平行なまま O から遠ざかり、 で三角形 ABC になります。通った跡は です。
四面体 OABC は、四面体 OABC を O を中心に 倍に拡大したもの(相似比 )なので、体積は 倍で です。j19 の「」で としても同じです。
(3) の部分は、(2) の四面体 OABC から、 の部分(四面体 OABC から三角形 ABC を除いた部分)を取り除いたものです。三角形 1 枚の体積は なので、体積は
この立体は、三角形 ABC と三角形 ABC を上下の面とする「三角錐台」です。
解説では、 軸・ 軸・ 軸を「右手の親指・人差し指・中指」の向きに置きました。これが右手系です。同じことを左手でやると、 軸だけが反対を向いた左手系ができます。右手系と左手系は、どう回転させても重ね合わせることができません。右手の手のひらと左手の手のひらを、向きをそろえて重ねられないのと同じです。
数学や物理の教科書は、ほぼ右手系で統一されています。ところが、3DCG やゲーム作りの道具の世界では、事情が違います。よく知られた例を挙げると、次のようになっています(※ソフトの版や設定によって変えられる場合もあります)。
| ソフト | 座標系 | 上向きの軸 |
|---|---|---|
| Blender(3DCG 制作) | 右手系 | 軸 |
| Unity(ゲームエンジン) | 左手系 | 軸 |
| Unreal Engine(ゲームエンジン) | 左手系 | 軸 |
Blender で作ったキャラクターを Unity に持ちこむと、軸の向きを変換する必要があります。変換を忘れると、寝そべったり、鏡に映したように左右が入れかわったりします。3D の仕事をする人が最初につまずく場所の 1 つです。
この章の成分の計算そのものは、右手系でも左手系でも同じ式で済みます。違いが表に出るのは、「右ねじの向き」が意味をもつ計算、たとえば第3章の小話で触れた外積です。左手系で外積を計算すると、答えのベクトルが右手系の場合とは逆を向きます。
豆知識
右手と左手のように、鏡に映すと重ならない形の性質をキラリティ(「手」を意味するギリシャ語から)といいます。分子にもこの性質をもつものがあり、私たちの体のタンパク質をつくるアミノ酸は、グリシンという 1 種類をのぞいて、ほぼすべてが「L 型」と呼ばれる一方の形にそろっています。なぜ一方にそろったのかは、生命の起源にかかわる謎として、今も研究が続いています。
喫茶店の 4 本脚のテーブルが、ことことと揺れることがあります。空間の 3 点はいつも 1 つの平面に乗りますが、4 点が同じ平面に乗るとは限りません(公式5)。床にわずかな凹凸があると、4 本の脚の先が同じ平面に並ばず、どれか 1 本が浮いてしまうのです。
ここで、紙を折って脚の下にはさむ前に、テーブルをその場で少し回してみてください。脚の先が正方形に並んだテーブルなら、多くの場合、 以内の回転で 4 本とも床につく位置が見つかります。数学者のあいだでは「がたつくテーブルの定理」として知られ、床の凹凸がなめらかで、傾きがきつすぎないといった条件のもとで、2000 年代に入ってからきちんとした証明が発表されました(※条件のつけ方や証明の歴史には諸説あります)。
理由のあらすじは、微分積分 第6章の中間値の定理です。3 本の脚を床につけたまま、テーブルを回していくとします。残る 1 本の脚の先が床より上にあるか下にあるか(床にめり込もうとしているか)を、符号つきの「ずれ」で表しましょう。最初はずれが正(浮いている)だったとします。正方形の対称性を使うと、 回したときには脚の役割が入れかわって、ずれが負になることが示せます。回転は連続的で、ずれは途中の値を飛ばさずに変わるので、どこかでちょうど になる角度があります。そこでは 4 本の脚が同時に床についています。
ただし、床そのものが大きく傾いていると、テーブルの天板も傾いたまま止まることになります。この定理が約束するのは「がたつかない」ことで、「水平になる」ことではありません。
豆知識
でこぼこの土間や牧場で使う乳しぼり用の腰かけは、昔から 3 本脚のものが多かったといわれます(※地域や時代によります)。3 本の脚の先は必ず 1 つの平面に乗るので、どんな地面でもがたつきません。写真の撮影でも、ぐらつかないように支えるときは脚を 3 本にします。4 本脚の家具は、床が平らでないと安定しないかわりに、1 本に体重がかかっても倒れにくいという長所があります。
この章の成分は 3 つでした。では、成分を 4 つにしたら何が起きるでしょうか。 という数の組を 4 次元のベクトルと考えると、和・差・実数倍は成分ごとに、大きさは と、この章とまったく同じ規則で計算できます。目に見えなくても、計算はできるのです。
1 辺の長さが の「立方体」の仲間を、次元ごとに並べてみましょう。頂点の座標は、各成分が か の点です。
| 次元 | 形 | 頂点の数 | 対角線の長さ |
|---|---|---|---|
| 1 | 線分 | ||
| 2 | 正方形 | ||
| 3 | 立方体 | ||
| 4 | 超立方体 |
対角線は、原点から までの距離なので です。4 次元の超立方体では、対角線の長さがちょうど 1 辺の 2 倍になります。4 次元の超立方体はテッセラクトとも呼ばれ、この名前は 19 世紀の終わりごろ、イギリスのチャールズ・ハワード・ヒントンが使い始めたといわれています。
次元が上がると、直感に反することも起こります。1 辺 の箱を、1 辺 の小部屋に区切ります( 次元なら 部屋)。各部屋にぴったり収まる半径 の球を 1 つずつ入れ、箱の中心に、それらの球に接する球を置きます。中央の球の半径は、箱の中心から各部屋の球の中心までの距離 から を引いた です。2 次元では約 、3 次元では約 で、周りの球に囲まれた小さな球です。ところが で半径は になって箱の壁に届き、 では約 と、箱の半分の幅 を越えて、箱の外へはみ出してしまいます。周りの球に囲まれているはずの球が、箱の壁を突き抜けてしまうのです。
豆知識
3 次元の立方体は、6 枚の正方形の展開図に開けます。同じように、4 次元の超立方体は、8 個の立方体をつないだ「展開図」に開けます。画家のサルバドール・ダリは、1954 年の作品『磔刑(超立方体的人体)』で、この 8 個の立方体でできた十字形の展開図を描いています。作品はニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵されています。
※ここは発展ページです。高校の範囲では、本文の公式を使って空間のベクトルを分解し、4 点が同一平面上にあるかを調べ、交点を係数の比較で求められれば十分です。本文では「4 点 O,A,B,C が同一平面上にない」ことを 1次独立と呼び、分解が「ただ 1 通り」であることを認めて使いました。ここでは 1次独立を式で定義し直し、分解の一意性、空間が「3 次元」である理由、ねじれの位置の判定を証明します。
以下、空間の点の存在や、平面・直線の基本的な性質(「一直線上にない 3 点を含む平面はただ 1 つ」「平面に平行でない直線は、その平面とただ 1 点で交わる」など)は認めて使います。
空間のベクトル ,, が
を満たすとき、,, は 1次独立 であるという。1次独立でないとき、すなわち、少なくとも 1 つは でない ,, で となるとき、1次従属 であるという。
2 本のベクトル , についても、 のとき 1次独立という。
2 本の場合、1次独立であることは「どちらも でなく、平行でない」ことと同じです(第1章で使った意味)。, なら で、 は の実数倍( を含む)になるからです。
空間のベクトル ,, について、次の 2 つは同値である。
(i) ,, は 1次独立
(ii) 3 本のうちどの 1 本も、残りの 2 本の実数倍の和として表せない
証明 (i) でない ⇔ (ii) でない、を示す。
(ii) でないとする。たとえば と表せれば、 で、 の係数 は でない。よって 1次従属である( や が表せる場合も同様)。
(i) でないとする。 で、たとえば なら
となり、 が残りの 2 本で表せる( や の場合も同様)。(証明終)
(ii) は、始点を O にそろえて などとしたとき、「4 点 O,A,B,C が同一平面上にない」という本文の条件の言いかえになっています。たとえば なら、C は O,A,B を含む平面の上にあります。本文の定義と定義1 は、同じものを図と式の 2 つの言葉で述べたものです。
,, が 1次独立ならば、空間の任意のベクトル に対して
を満たす実数の組 が 存在し、しかも ただ 1 つ である。
証明 (一意性) とすると、移項して
1次独立の定義から 。よって組はただ 1 つである。
(存在)基準点 O をとり、,,, とする。定理1 より , は平行でなく でもないので、O,A,B は一直線上になく、これらを含む平面 がただ 1 つ定まる。 は , で表せないので、C は 上になく、直線 OC は に平行でない。
P を通り に平行な直線は、 とただ 1 点 Q で交わる。Q は平面 上の点なので、平面のベクトルの分解(第1章 公式6)により となる実数 , がある。また は に平行か なので、 となる実数 がある。よって
(証明終)
一意性の証明は、式の計算だけで済みました。定義1 のように 1次独立を「 の表し方が しかない」と定めておくと、「どんなベクトルの表し方も 1 通り」がすぐに出てきます。 という 1 つのベクトルだけを調べれば、すべてのベクトルについて分かる、というのがこの定義の便利なところです。
平面では 1次独立なベクトルが 2 本までしかとれず、空間では 3 本とれました。空間で 4 本目を加えるとどうなるでしょうか。
空間の任意の 4 本のベクトル ,,, に対して、少なくとも 1 つは でない実数 ,,, で
となるものがある。
証明 ,, が 1次従属なら、0 でない係数を含む があるので、 とすればよい。
1次独立なら、定理2 により と表せる。このとき で、 の係数 は でない。(証明終)
一方、空間には 1次独立な 3 本の組が存在します(基本ベクトル ,,)。また、2 本の , だけでは、それらを含む平面の外の点に届かないので、空間のすべてのベクトルを表すことはできません。
このように、「すべてのベクトルを表すのにちょうど必要で、しかも 1次独立な組」の本数が、どの組を選んでも同じ数(空間では )になります。この数を次元といい、平面が 2 次元、空間が 3 次元と呼ばれる理由です。第1章の厳密定義で紹介したベクトル空間の 8 つの法則を満たす集合では、一般に同じ議論ができて、小話の 4 次元のベクトル の集まりは 4 次元になります。
第6章では、直線を点の集合 として定義しました。平面も同じように定義でき、本文の公式5 (2) はその言いかえとして証明できます。
一直線上にない 3 点 ,, に対して、点の集合
を、3 点 A,B,C を通る平面(平面 ABC)という。
一直線上にない 3 点 A,B,C と点 P について、次の (i)(ii) は同値である。
(i) P は平面 ABC 上にある
(ii) , となる実数 ,, がある
さらに、(ii) の点 P は基準点 O の選び方によらない。また、O が平面 ABC 上にないとき、(ii) の ,, はただ 1 通りに定まる。
証明 (i) ⇒ (ii): なので、,, とおけば和は である。
(ii) ⇒ (i): を代入すると となり、, として定義2 の形である。
(基準点によらないこと)基準点を O から に変え、 とすると、各点の位置ベクトルは だけ減る。
これは を基準にした P の位置ベクトルであり、同じ点を表す。
(一意性)O が平面 ABC 上にないとき、4 点 O,A,B,C は同一平面上にないので、,, は 1次独立である(定理1 のあとの注)。定理2 により、 を ,, で表す係数はただ 1 通りである。(証明終)
基準点によらないことの計算は、第4章の厳密定義 定理1(係数の和が のアフィン結合)と同じです。第4章ではその証明を点の個数や次元によらない形で書いておいたので、空間の 3 点でもそのまま成り立つ、ということを確かめたことになります。
一意性に「O が平面 ABC 上にない」という条件が要るのは、たとえば O を A に重ねると になり、 を変えても が変わらなくなるからです。本文の公式6 で四面体 OABC を使ったのは、この条件を確実に満たすためでした。
なお、定義2 の , を消去すると、平面を ,, の 1 次方程式で表せます。これは第9章で、法線ベクトルを使って扱います。
平面上の 2 直線は、平行でなければ必ず交わります。空間ではそうとは限らず、平行でも交わりもしない 2 直線があります。この 2 直線はねじれの位置にあるといいます。空間の直線も、第6章の定義1 と同じく で表します。
2 直線 , の方向ベクトル , が平行でないとする。このとき
したがって、2 直線がねじれの位置にある ,, が 1次独立。
証明 2 直線が交わるのは、,つまり
となる実数 , があるときである。
(⇒)このとき で、 の係数 は でないから 1次従属である。
(⇐)1次従属なので、少なくとも 1 つは でない ,, で となる。もし なら で、, の一方は でない。これは , が平行でない(2 本として 1次独立)ことに反する。よって で
, とおけば上の式が成り立ち、2 直線は交わる。
方向ベクトルが平行でない 2 直線は、平行でも一致でもないので、交わらないことがねじれの位置であることと同じである。(証明終)
,, が 1次従属であることは、定理1 のあとの注と同じ理由で、「2 本の直線が 1 つの平面に乗る」ことを表しています。つまり、ねじれの位置とは「どんな平面にも 2 本いっしょには乗らない」位置関係です。実践問題 j18 では、 のとき、この 3 本が 1次独立になっていました。
第2章の厳密定義では、平面の 2 本のベクトルが 1次独立であることを、 で判定しました。空間の 3 本にも、同じ役目をする数があります。
,, に対して
を、3 本のベクトルの行列式という。
証明は大学の線形代数にゆずりますが、次のことが知られています。
たとえば実践問題 j10 の ,, では
となり、 となるのは のときだけで、本文の答えと一致します。例題3 の ,, では で、これらを 3 辺とする平行六面体の体積は です。基本ベクトルでは で、1 辺 の立方体の体積に一致します。平行六面体や四面体の体積は、第8章で内積を使って別の方法で求めます。
この章の学習が終わったら
学習完了テストを受ける