問1
点 を通り、 に平行な直線を、媒介変数 を使って表しなさい。
目次 / ベクトル / 数学C
—— 動く点がえがく直線・円・領域を、ベクトルの式で表す ——
これまでの章では、決まった点をベクトルで表してきました。この章では、条件を満たしながら動く点 P を考え、P がえがく図形を $\vec{p}$ の式(ベクトル方程式)で表します。直線は「通る 1 点と向き」または「通る 1 点と垂直な向き」で決まり、そこから $x$,$y$ の方程式や点と直線の距離の公式が導けます。後半では、円を「中心からの距離が一定」「直径に立つ角が直角」という 2 つの見方で表し、最後に $\vec{p} = s\vec{a} + t\vec{b}$ の係数の範囲から、点が動ける領域を読み取ります。
第5章までは、交点や垂線の足のように、位置が 1 つに決まった点をベクトルで表してきました。この章では見方を変えて、ある条件を満たしながら動く点 P を考えます。P の位置ベクトル が満たす式をベクトル方程式といい、その式を満たす点をすべて集めると、直線や円といった図形ができあがります。
基準点 O を 1 つ決め、点は第4章と同じく , のように書きます。座標平面で考えるときは O を原点にとり、位置ベクトルの成分と点の座標を同じものとして扱います。
直線は「通る 1 点」と「延びる向き」が決まれば 1 本に決まります。点 を通り、 でないベクトル に平行な直線を考えましょう。P がこの直線上にあることは、 が と平行か であること、つまり実数 を使って と書けることと同じです(第1章の平行条件)。 ですから、次の式が得られます。
点 を通り、 に平行な直線のベクトル方程式は
をこの直線の方向ベクトル、 を媒介変数(パラメーター)という。
,, とすると、成分で
これを直線の媒介変数表示という。 を消去すると
を消去した式は、 が「 と平行(または )」という意味なので、第2章の平行条件「たすき掛けの差が 」をそのまま書いたものです。 を から まで動かすと、P は A を出発点に の向きへも逆向きへも、どこまでも進みます。
空港の動く歩道に乗った人を思い浮かべてください。乗った地点が A、1 秒ごとに進む向きと距離が です。 秒後の位置は で、 なら 3 秒後、 なら「2 秒前にいた場所」を表します。媒介変数 は、この「時刻」のような役目をしています。
直線は「通る 1 点 と向き 」で と表され、 を 1 つ決めるごとに直線上の点が 1 つ決まるということです。
点 を通り、 に平行な直線を とします。
(1) を媒介変数 を使って表しなさい。
(2) を消去して、 を , の方程式で表しなさい。
(3) 2 点 , がそれぞれ 上にあるかどうかを調べなさい。
【解答】
(1) 公式1から
(2) , です。 を消すために 1 つ目を 2 倍、2 つ目を 3 倍すると、どちらも になるので
(3) について、 となるのは のときで、このとき です。よって は 上にあります。
について、 となるのは のときですが、このとき です。よって は 上にありません。
(2) の方程式に代入しても、, で、同じ結論になります。
2 点 , を通る直線は、方向ベクトルを にとれば公式1で表せます。
これは第4章の公式6「係数の和が 」と同じ式です。ただ、媒介変数 の値に注目すると、点の位置がよく分かります。 のとき P は A、 のとき P は B に重なります。
2 点 , を通る直線のベクトル方程式は
の範囲によって、P のいる場所は次のようになる。
| の範囲 | P のいる場所 |
|---|---|
| 線分 AB 上 | |
| A の外側(B と反対側)の延長上 | |
| B の外側(A と反対側)の延長上 |
とくに、線分 AB は で表される。
のとき、P は線分 AB を に内分する点です(第4章の で とおいたもの)。
山のロープウェイで考えましょう。ふもとの駅が A、山頂の駅が B で、 は「全体のうちどれだけ進んだか」の割合です。 で出発、 で到着、 ならちょうど真ん中です。ゴンドラが実際にいられるのは の間だけで、 はケーブルを山の向こうまで延ばした架空の位置にあたります。
2 点を通る直線は で表され、媒介変数 を 以上 以下に制限すると線分になるということです。
2 点 , があります。
(1) 直線 AB を、 のとき A、 のとき B となる媒介変数 で表しなさい。
(2) 直線 AB を , の方程式で表しなさい。
(3) 線分 AB と 軸の交点を求めなさい。また、直線 AB と 軸の交点を求め、それが線分 AB 上にあるかどうかを調べなさい。
【解答】
(1) なので、公式2から
(2) 公式1の消去の式に ,,, を入れて
両辺を で割って 。B を代入すると で、確かに通っています。
(3) 軸上では なので、 より 。 を満たすので、交点は線分 AB 上にあります。
より、交点は です(AB を に内分する点です)。
軸上では なので、 より 。このとき で、交点は です。 なので、この点は線分 AB 上にはなく、A の外側の延長上にあります。
直線は「延びる向き」の代わりに、「直線と垂直な向き」で決めることもできます。点 を通り、 でないベクトル に垂直な直線を考えます。P がこの直線上にあることは、 が と垂直か であること、つまり内積が であることと同じです(第3章の垂直条件)。
点 を通り、 に垂直な直線のベクトル方程式は
をこの直線の法線ベクトルという。, とすると
逆に、 のとき、方程式 は を法線ベクトルとする直線を表す。方向ベクトルには がとれる。
2 直線のなす角:2 直線の法線ベクトルを , とすると、2 直線のなす角 は
2 直線 , について
ここでの係数 , は、位置ベクトルの , とは別物です。 を展開して と見比べると、 にあたります。直線の方程式の形については、図形と方程式の分野でも改めて扱います。
方向ベクトルが になるのは、第3章で紹介した「成分を入れかえて一方の符号を変えると垂直になる」からです。また、2 直線のなす角を法線ベクトルで測ってよいのは、2 本の直線をそれぞれ 回すと法線になり、回しても 2 本の間の角は変わらないからです。法線ベクトルどうしのなす角が鈍角になったときは、直線どうしの角はその補角( から引いた角)なので、分子に絶対値を付けています。
「南向きの部屋」という言い方を思い出してください。窓のある壁そのものは東西に延びていますが、私たちは壁の延びる向きではなく、壁に垂直な「窓の正面の向き」で部屋の向きを言い表します。平面の直線も同じで、延びる向き(方向ベクトル)の代わりに、正面の向き(法線ベクトル)で伝えることができます。
直線は「通る 1 点と、直線に垂直な向き 」でも決まり、 なら方程式は の形になって、, の係数がそのまま法線ベクトルの成分になるということです。
(1) 点 を通り、 に垂直な直線の方程式を求めなさい。
(2) 2 直線 , のなす角 を求めなさい。
(3) 直線 が直線 と垂直になるときと、平行になるときの定数 の値をそれぞれ求めなさい。
【解答】
(1) 公式3から
(2) 法線ベクトルは , です。
よって です。
(3) 法線ベクトルは と です。
垂直になるのは のときで、。
平行になるのは のときで、。このとき直線は で、 を 2 倍した とは定数項が違うので、一致はしていません。
点 P から直線 までの距離とは、P から に下ろした垂線の足を H としたときの線分 PH の長さのことです。第5章の厳密定義で示したとおり、H は 上で P にいちばん近い点です。
この距離を、第3章の正射影を使って求めます。 上に点 を 1 つとり、 とします。 は法線ベクトル と平行なので、PH の長さは を の向きに正射影した長さ に等しくなります( は と のなす角)。
A は 上にあるので 。分子は になり、A の選び方によらない式が得られます。
点 と直線 の距離 は
P から直線に下ろした垂線の足 H は、 として
垂線の足の式は、「H は P から の向きに戻った点なので とおけ、H を直線の方程式に代入すると 」から出てきます。分子の は、P の座標を直線の方程式の左辺に代入した値で、P が直線上にあれば になります。直線から離れるほど、その絶対値が大きくなるわけです。
部屋の壁から机までの距離を巻尺で測るとき、巻尺は壁に垂直に当てます。斜めに当てると長めの数字が出ますが、その数字に「巻尺と壁の垂直方向とのずれの角」の をかければ、正しい距離に直せます。公式4は、壁の上の好きな点 A から斜めに測った を、法線の向きに直す計算をしています。
点と直線の距離は、直線上の 1 点から点へのベクトルを法線ベクトルの向きに正射影した長さで、分子は点の座標を直線の式に代入した値の絶対値になるということです。
点 と直線 があります。
(1) 点 P と直線 の距離を求めなさい。
(2) P から に下ろした垂線の足 H の座標を求めなさい。
【解答】
(1) 公式4から
(2) として なので
よって です。
確かめます。 で H は 上にあり、 で (1) と一致します。
次は円です。点 を中心とする半径 の円は、「C からの距離が の点の集まり」なので、 と書けます。
円には、もう 1 つの見方があります。図形の性質 第4章で学んだとおり、線分 AB を直径とする円の上の点 P(A,B 以外)では で、逆に となる点 P は AB を直径とする円の上にあります。直角は内積 で表せるので、これもベクトル方程式になります。
(1) 点 を中心とする半径 の円
中心 の場合は、成分で になる。
(2) 2 点 , を直径の両端とする円
(3) 円 上の点 における接線
中心 , の場合は 。とくに中心が原点なら 。
(2) の式は、P が A,B と異なるときは 、つまり を表しています。P が A や B と重なるときも左辺は になるので、式は両端の 2 点も含めて円全体をちょうど表します。
(3) は、図形の性質 第5章の「接線は接点を通る半径に垂直」から出てきます。接線上の点 P について です。 と分けて展開すると
となり、 から (3) の式になります。 を に置きかえると円の式 (1) に戻る、という形で覚えておくと便利です。
牧場で、杭にロープでつながれたヤギを想像してください。ロープの長さが なら、ヤギがロープをぴんと張ったまま歩ける道すじは、杭を中心とする半径 の円です。「杭からの距離がいつも 」という条件だけで道すじが決まる、それを式にしたのが です。
円は「中心からの距離が 」なら 、「直径に立つ角が直角」なら と表せ、接線は「半径と垂直」から になるということです。
(1) 中心 ,半径 の円の方程式を求めなさい。
(2) 2 点 , を直径の両端とする円の方程式を求め、その中心と半径を求めなさい。
(3) 円 上の点 における接線の方程式を求めなさい。
【解答】
(1) 公式5 (1) から です。
(2) , なので、公式5 (2) から
展開すると 。, それぞれ平方完成して
中心は ,半径は です。中心は AB の中点 、半径は で、確かに合っています。
(3) 中心 ,,接点 を公式5 (3) に入れて
よって です。接点 を代入すると で、確かに通っています。
最後に、三角形 OAB で と表したとき、係数 , の条件から点 P の動ける範囲を読み取る方法を学びます。, は 1次独立なので、 の組と点 P は 1 対 1 に対応します。
三角形 OAB で ,, とする。
| , の条件 | 点 P の存在範囲 |
|---|---|
| 直線 AB | |
| 線分 AB | |
| 三角形 OAB の周と内部 | |
| となる平行四辺形 OACB の周と内部 |
右辺を 1 にする:,, のときは
と書きかえると、P は , となる線分 AB(AB と平行)の上にあると分かる。
の範囲が三角形になるのは、 とおいて を から まで動かすと考えれば分かります。 のとき P は O の 1 点、 が増えると線分 AB が AB と平行なまま O から遠ざかり、 で辺 AB に重なります。この線分が通った跡が三角形 OAB の周と内部です。
平行四辺形のほうは、 と を別々に動かします。 を固定して を から まで動かすと、P は と平行な長さ の線分をえがき、その線分を で の向きにずらしていくと、平行四辺形がぬりつぶされます。
1 万円の予算で、2 つの商品 A,B に使うお金を決める場面を考えてください。A に予算の 割、B に 割を使うとします。使い切るなら で、選べる組み合わせは「線」の上に並びます。使い残してもよいなら になり、選べる組み合わせは「面」に広がります。さらに「それぞれ予算 1 万円まで」なら , です。条件の形で、選べる範囲の形が決まります。
の点の範囲は、係数の和を にそろえる書きかえをすると、直線・線分・三角形・平行四辺形のどれになるかが読み取れるということです。
三角形 OAB の面積を とし、, とします。 で表される点 P について、次の条件のもとで P が動く範囲を求めなさい。(2)(3) では、その範囲の面積も で表しなさい。
(1)
(2)
(3)
【解答】
(1) と書きかえ、 とします。, となる点 A,B をとると、P の範囲は 線分 AB です。
(2) 両辺を で割って 。, とおくと
, となる点 A,B をとると、P の範囲は 三角形 OAB の周と内部 です。
三角形 OAB は、三角形 OAB と が共通で、それをはさむ 2 辺が 倍と 倍なので、面積は です。
(3) とおくと、P は , を結ぶ線分上にあります。 を から まで動かすと、この線分は AB から AB まで平行に動くので、P の範囲は 台形 ABBA の周と内部 です(A,B は (1) の点)。
面積は、三角形 OAB(面積 )から三角形 OAB を除いて です。
この章では、直線・円・領域を、動く点のベクトル の式で表しました。ここまでで平面のベクトルは一区切りです。第7章からは舞台を空間に移し、成分が 3 つになったベクトルで、同じ考え方がどこまで通用するかを確かめていきます。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
点 を通り、 に平行な直線を、媒介変数 を使って表しなさい。
問2
媒介変数表示 , で表される直線を、 を消去して , の方程式で表しなさい。
を代入して より
問3
直線 の法線ベクトルと方向ベクトルを、それぞれ 1 つ求めなさい。
法線ベクトル ,方向ベクトル (それぞれ でない実数倍でもよい)
問4
点 と直線 の距離を求めなさい。
問5
中心 ,半径 の円の方程式を求めなさい。
を成分で書いて
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
点 を通り、 に平行な直線について、(1) 媒介変数 を使った表示、(2) , の方程式を求めなさい。
(1) (2)
(1) 公式1から です。
(2) , です。1 つ目を 3 倍、2 つ目を 4 倍すると , となるので、2 式を足して を消します。
よって です。A を代入すると で、確かに通っています。
問2 ★
2 点 , があります。(1) 直線 AB を、 のとき A、 のとき B となる媒介変数 で表しなさい。(2) 直線 AB の方程式を求めなさい。(3) 線分 AB を に内分する点に対応する の値と、その点の座標を求めなさい。
(1) (2) (3) ,
(1) なので、公式2から です。
(2) 公式1の消去の式に , を入れて
両辺を で割って です(B を代入すると )。
(3) のとき P は AB を に内分します。 より 。
よって です。内分点の公式で , と計算しても同じ点になります。
問3 ★
点 を通り、 に垂直な直線の方程式を求めなさい。
公式3から
よって です。A を代入すると で、確かに通っています。
問4 ★
点 を通り、直線 に (1) 平行な直線、(2) 垂直な直線の方程式をそれぞれ求めなさい。
(1) (2)
直線 の法線ベクトルは 、方向ベクトルは です。
(1) 平行な直線は法線ベクトルが同じ なので、公式3から
(2) 垂直な直線は、もとの直線の方向ベクトル を法線ベクトルにもつので
法線ベクトルどうしの内積が で、確かに垂直です。
問5 ★
2 直線 , のなす角 を求めなさい。
法線ベクトルは , です。
内積が負なので、法線ベクトルどうしのなす角は鈍角()です。直線どうしの角はその補角なので、公式3のとおり絶対値を付けて
よって です。
問6 ★
点 と直線 の距離を求めなさい。
公式4から
問7 ★
(1) 中心が で、点 を通る円、(2) 2 点 , を直径の両端とする円、それぞれの方程式を求めなさい。
(1) (2)
(1) 半径は中心と通る点の距離なので
よって です。
(2) 公式5 (2) から
展開すると 。平方完成して
中心 は 2 点の中点、半径 は 2 点の距離 の半分で、合っています。
問8 ★
円 上の点 における接線の方程式を求めなさい。
なので、点 は円の上にあります。中心が原点なので、公式5 (3) の から
接点を代入すると で通っており、法線ベクトル は半径の向き(原点から接点へのベクトル)と一致しています。
問9 ★★
2 直線 と (, は実数)の交点の座標と、2 直線のなす角を求めなさい。
交点 ,なす角
交点では , がそれぞれ一致するので
1 つ目から 。2 つ目に代入すると より ,, です。
を に入れて 。 を に入れても で一致します。交点は です。
方向ベクトルは と で、内積は 。よって 2 直線は垂直で、なす角は です。
媒介変数は直線ごとに別の文字( と )にしておくことが大切です。同じ文字にすると「同じ時刻に同じ場所」という余計な条件が加わり、交点を見落とします。
問10 ★★
点 と直線 があります。P から に下ろした垂線の足 H の座標と、直線 に関して P と対称な点 の座標を求めなさい。
,
とします。公式4から
よって です( で 上にあります)。
は、P から の向きに H までの 2 倍戻った点、つまり H が線分 の中点になる点です。
よって です。なお、P と の距離は で、 と一致します。
問11 ★★
三角形 OAB で , とし、 とします。(1) 、(2) のそれぞれの条件のもとで、点 P が動く範囲を求めなさい。
(1) 辺 OA,OB の中点 M,N を結ぶ線分 MN (2) , となる点 C,D を結ぶ線分 CD
公式6の「右辺を 1 にする」書きかえを使います。
(1) 両辺を 2 倍して 。, とおくと
, はそれぞれ辺 OA,OB の中点 M,N の位置ベクトルなので、P の範囲は です。
(2) 両辺を で割って 。, とおくと
よって P の範囲は、, となる点 C,D を結ぶ です。
問12 ★★
,, とします。 で、, を満たしながら点 P が動くとき、P の動く範囲の面積を求めなさい。
とおくと ,, です。公式6から、P の範囲は と を 2 辺とする平行四辺形の周と内部です。
と のなす角を とすると
平行四辺形の面積は「となり合う 2 辺の長さ 」なので
(第3章の公式6で三角形の面積 を出し、平行四辺形 , はその 2 倍、さらに辺を 2 倍にして 倍、と考えても同じです。)
問13 ★★
平面上に O と異なる定点 A があり、 とします。(1) 、(2) のそれぞれを満たす点 全体が、どのような図形になるかを求めなさい。
(1) 中心 A,半径 の円 (2) 中心 O,半径 OA の円
(1) 左辺を の形にするため、両辺に を足します(平方完成と同じ考え方です)。
なので、P 全体は です。
(2) 展開すると 、つまり です。よって です。
となる点 をとると、(2) の式は で、公式5 (2) の「 を直径とする円」とも読めます。中点が O、直径が なので、同じ円です。
問14 ★★
点 を通り、円 に接する直線の方程式と、そのときの接点の座標をすべて求めなさい。
接点 で ,接点 で
接点を とすると、公式5 (3) から接線は です。これが点 を通り、接点は円上にあるので
1 つ目から 。2 つ目に代入して
のとき 、 のとき です。よって
どちらも を代入すると , で成り立ちます。
問15 ★★
3 点 ,, を頂点とする三角形 ABC について、直線 BC の方程式と、点 A と直線 BC の距離を求め、それを使って三角形 ABC の面積を求めなさい。
直線 BC:,距離 ,面積
なので、法線ベクトルに がとれます(成分を入れかえて一方の符号を変える)。公式3から
(C を代入すると 。)A との距離は公式4から
底辺 なので、面積は
第3章の公式6で確かめると、, から で一致します。
問16 ★★
2 直線 , から等しい距離にある点全体は 2 本の直線になります。その 2 本の直線(2 直線のなす角の二等分線)の方程式を求めなさい。
,
点 から 2 直線までの距離が等しい条件は、公式4から
のとき:、つまり 。
のとき:、つまり 。
2 本の法線ベクトル , の内積は で、2 本の二等分線は垂直に交わっています(となり合う 2 つの角の二等分線だからです)。また、もとの 2 直線の交点 は、どちらの式も満たします。
問17 ★★★
三角形 OAB で ,, とし、, とします。 が ,, を満たしながら点 P が動くとき、P の動く範囲の面積を求めなさい。
三角形 OAB の面積は です。
とおき、両辺を で割ります。
よって P は、 と を位置ベクトルとする 2 点を結ぶ線分上にあります。この線分の向きは で、 によらず平行です。
を から まで動かすと、線分は平行なまま動くので、P の範囲は
の周と内部です。 をはさむ 2 辺が 倍と 倍の三角形の面積は なので
問18 ★★★
点 を通り に平行な直線 と、円 があります。 の媒介変数表示を円の方程式に代入することで、 がこの円に接することを示し、接点の座標を求めなさい。
接点 ( の二次方程式が重解 をもつ)
は , です。円の方程式に代入すると
と円の共有点は、この の方程式の実数解と 1 対 1 に対応します。解は重解 のただ 1 つなので、共有点はただ 1 つで、 は円に接します。(証明終)
接点は として です。
確かめると、 で円上にあり、半径の向き と方向ベクトル の内積は で、接線が半径と垂直になっています。また公式5 (3) の接線 に A を代入すると で、 と一致します。
問19 ★★★
座標平面上を 2 つの点が動き、時刻 における位置は , です。2 点の距離 PQ が最小になる時刻 と、そのときの距離を求めなさい。
のとき最小値
P から見た Q の位置は
で、これは点 を通り方向ベクトル の直線のベクトル方程式です(P から見ると、Q は直線上を一定の速さで動いて見えます)。
は を満たすので、 のとき は最小値 をとり、距離の最小値は です。
このとき で、。原点から直線に下ろした垂線の足にあたり、第5章の「最小になるのは垂直のとき」と同じことが起きています。原点と直線 ( を通り法線ベクトル )の距離 とも一致します。
問20 ★★★
直線 と 2 点 , があります。点 Q が 上を動くとき、 の最小値と、そのときの Q の座標を求めなさい。
最小値 ,
A,B を直線の式の左辺に代入すると , で、符号が同じなので A,B は に関して同じ側にあります。そこで、 に関して A と対称な点 をとります。
として (公式4)。A から への垂線の足は で、 はその先へ同じだけ進んだ点なので
は線分 の垂直二等分線なので、 上のどの点 Q でも です。したがって
等号は Q が線分 上にあるときに成り立ちます。 と B は の反対側にあるので、線分 は と交わり、その交点で最小になります。
より最小値は です。
線分 は , と表せます。 に代入して
を満たし、 です。
確かめると , で、和は です。
広い海の上で 2 隻の船が近づいてくるとき、航海士がまず知りたいのは「このまま進むと、いちばん近づいたときに何 m まで寄るのか」「それは何分後か」です。前者を最接近距離(CPA)、後者を最接近までの時間(TCPA)といい、大きな船のレーダーには、これを自動で計算して表示する装置が付いています。
計算の中身は、この章の直線のベクトル方程式です。向きも速さも変えずに進む船の位置は、時刻 を媒介変数として「今の位置 速度ベクトル」と書けます。自分の船から相手の船を見た位置も、2 つの式の差をとれば
という直線の式になります( は相手の速度から自分の速度を引いた相対速度)。自分は原点に止まっていて、相手がこの直線の上を滑ってくるように見えるわけです。最接近の瞬間は、原点からこの直線に下ろした垂線の足で、 から
と求まります。実践問題の j19 は、この計算を小さな数で行ったものです。
豆知識
海上衝突予防法には、「近づいてくる船のコンパス方位(自分から見た向き)がはっきり変わらないときは、衝突のおそれがあると判断しなければならない」という趣旨の決まりがあります。ベクトルで考えると理由が分かります。相手の向きが変わらないまま距離だけが縮むのは、 がずっと同じ直線(原点を通る直線)の上を原点に向かって進んでいるときです。その直線は原点を通るので、最接近距離は 、つまり衝突コースです。向きが少しずつ変わって見えるなら、相手の直線は原点を外れています。
1844 年、ドイツのシュテッティン(現在はポーランドのシュチェチン)で高校の数学教師をしていたヘルマン・グラスマンは、『線形広延論』という本を出版しました。点や線分に数をかけて足し合わせる計算の規則を組み立て、直線や平面、さらには 4 次元以上の広がりまで、同じ計算で扱おうとする本でした。この章の のように、「ベクトルの実数倍の和」で図形を生み出す考え方の、早い時期の、そして徹底した形です。
ところが、この本はほとんど読まれませんでした。哲学風の言葉づかいで書かれていて、当時の数学者にも難解だったといわれます(※評価の経緯には諸説あります)。グラスマンは大学の職を得ることができず、生涯を高校の教師として過ごしました。1862 年には書き直した版も出しましたが、やはり大きな反響はありませんでした。
評価が変わったのは、晩年から死後にかけてです。1888 年、イタリアのペアノがグラスマンの仕事を下敷きにした本を書き、その中で、今日のベクトル空間の定義にあたる公理を示しました(第1章の厳密定義ページで紹介した 8 つの法則の原型です)。1 次独立や次元といった、この分野で使っている考え方の多くは、グラスマンの本にすでに姿を見せていました。
豆知識
数学で報われなかったグラスマンは、後半生、古代インドの言語サンスクリットの研究に打ちこみ、聖典『リグ・ヴェーダ』の辞書と翻訳を仕上げました。言語学には今も「グラスマンの法則」という名前が残っています。サンスクリットや古代ギリシャ語で、息をともなう子音( の音がまざる子音)が続く音節に 2 回出てくると、前のほうの息が消えるという規則です。ギリシャ語で「髪の毛」が thrix なのに、その変化形が trichos(前の th が t になる)なのは、この規則で説明されます。晩年のグラスマンに名誉博士号をもたらしたのは、数学ではなく、この言語学の業績だったといわれています。
ゲームや映画の 3DCG に出てくるキャラクターの体は、細かな三角形を何万枚、何十万枚とつなぎ合わせて作られています。この三角形を画面に映すとき、コンピューターは、画面を作る小さな点(ピクセル)の 1 つ 1 つについて、「この点は三角形の内側か」を判定し、内側の点だけを塗ります。
判定のやり方の 1 つが、この章の公式6そのものです。画面に映った三角形 ABC と調べたい点 P について
となる , を求め、,, がすべて成り立てば内側です。実際の画像処理の装置(GPU)では、同じことを「各辺に対して点がどちら側にあるか」という符号の計算に組みかえて、何百万ものピクセルを同時に調べています。
求めた , は、判定のあとも無駄になりません。頂点 A,B,C に付けた色や、表面に貼る模様の位置を、,, の割合でまぜ合わせれば、三角形の内側の各点の色が決まります。第4章の厳密定義ページで扱った「重心座標」が、1 秒間に何十回も使われているのです。
豆知識
CG が四角形や五角形ではなく三角形を基本の部品にするのには、理由があります。空間の 3 点は(一直線上になければ)必ず 1 つの平面の上にありますが、4 点になると同じ平面に乗るとは限らず、「ねじれた四角形」ができてしまいます。また、三角形はいつもへこみのない形なので、上のような単純な判定で内側と外側を分けられます。空間の点と平面の関係は、第7章以降で詳しく扱います。
※ここは発展ページです。高校の範囲では、本文の公式を使って直線・円・存在範囲を式で表し、距離や接線を計算できれば十分です。本文では「方向ベクトルの形」「法線ベクトルの形」「」を同じ直線の別の書き方として使いましたが、それが本当に同じ図形を表すことや、円と直線の共有点の個数が距離で決まる理由を、ここで証明しておきます。
同じ直線でも、通る点や方向ベクトルの選び方で、ベクトル方程式の見た目は変わります。まず「直線」を点の集合として定義し、2 つの表し方が同じ直線を表す条件を調べます。
位置ベクトル と でないベクトル に対して、点の集合
を、点 を通り方向ベクトルが の直線という。
, とする。 であるための必要十分条件は、次の 2 つがともに成り立つことである。
(i) となる実数 がある。
(ii) となる実数 がある(B が 上にある)。
証明 (十分性)(i)(ii) を仮定する。 の点は
と書けるので に属する。逆に の点 は、 とおけば に等しいので に属する。よって 2 つの集合は等しい。
(必要性)2 つの集合が等しいとする。( の点)は に属するので、 となる がある。これが (ii)。また ( の点)も属するので、 となる がある。2 式を引いて 。 だから で、(i) が成り立つ。(証明終)
証明の中の は、媒介変数の「目盛りの付けかえ」です。出発点を だけずらし、目盛りの間隔を 倍にしても、えがかれる直線は変わりません。例題2 で使った「 のとき A、 のとき B」は、数ある目盛りの付け方のうち、線分 AB が にちょうど収まる便利なものを選んだ、ということです。
この定理から、「異なる 2 点を通る直線はただ 1 つ」も分かります。異なる 2 点 A,B が 上にあれば、,()なので です。定理1 から となり、A,B を通る直線はどれも同じ集合になります。
座標平面で、, とし、点 の位置ベクトルを 、 とする。点 (位置ベクトル )について、次の 3 つは同値である。
(i) となる実数 がある
(ii)
(iii)
さらに、 である任意の方程式 は、ある直線を表す。
証明 (ii) の左辺を成分で書くと なので、(ii) と (iii) は同値。
(i) ⇒ (ii): なので、。
(ii) ⇒ (i): とおくと、仮定は 。一方、 と の「たすき掛けの差」は
なので、第2章の厳密定義ページの平行条件から、 となる実数 がある。これが (i)。
最後の主張: なら点 、(このとき )なら点 を Q にとると、 が成り立つ。前半から、方程式 は を表す。(証明終)
(ii) ⇒ (i) で使ったのは、「平面では、 に垂直なベクトルはすべて の実数倍」という事実です。空間ではこれが成り立ちません。1 本のベクトルに垂直な向きは、空間では平面いっぱいに広がっているからです。そのため空間では、 は直線ではなく平面を表します(第9章で扱います)。
直線 ()と点 に対し
とおく。点 は 上にあり、 上のすべての点 について
が成り立つ。したがって で、等号は X = H のときに限る。最小値は
証明 なので H は 上にある。
X も 上にあるので、。 だから で
で、 になるのは X = H のときだけ。最後に 。(証明終)
第5章の定理1 は同じことを方向ベクトルの側から示しましたが、ここでは法線ベクトルの側から示しました。成分で書けば、本文の公式4そのものです。「点と直線の距離」を「直線上の点までの距離の最小値」と定義すれば、この定理がその値を与え、最小になる点が垂線の足であることも同時に保証されます。
本文の j20 では、「直線の式に代入した値の符号が同じなら、2 点は同じ側」と判断しました。その根拠が次の定理です。
()とし、直線 を考える。2 点 P, に対し、, で座標を代入した値を表す。このとき
証明 線分 の点は、 として (位置ベクトルの式)と書ける。係数の和が なので、定数項 も と分けられ
となる。 のとき、 は一定値 なので、共有点をもつ ⇔ ⇔ 。
のとき、 の解はただ 1 つで
である。ここで
と は和が なので、「両方とも 以上」と「積が 以上」は同値である(積が 以上なら 2 数は同符号かどちらかが で、和が正だから両方 以上)。よって
(証明終)
この定理により、平面から を取り除いた残りは の部分と の部分の 2 つに分かれ、同じ部分の 2 点を結ぶ線分は を横切らない、と言えます。これが「直線の両側」の正確な意味です。 の代わりに のような不等式で平面の一部を表す考え方は、図形と方程式の分野の「領域」につながります。
円 と、直線 ()を考え、中心 と の距離を とする。
(1) と の共有点は、 なら 2 個、 なら 1 個、 なら 0 個である。
(2) のとき、共有点 T について である。逆に、 上の点 T を通り、CT に垂直な直線は とただ 1 点を共有する(接する)。
(3) のとき、共有点に対応する媒介変数の値を ,(接するときは )とすると
証明 を の式の 2 乗に代入し、 とおくと
なので、 の値と 上の点は 1 対 1 に対応する。よって共有点の個数は、この 2 次方程式の異なる実数解の個数に等しい。
次に を求める。 に対応する点を H とすると で、。H は C から への垂線の足なので、定理3 から で
判別式を とすると
(1) の符号は の符号と一致するので、(1) が成り立つ。
(2) のとき、ただ 1 つの解は重解 なので、共有点 T は H に等しく、 は と垂直。逆に、T が 上にあり、T を通る直線 が CT に垂直なら、T は C から への垂線の足なので 。(1) から共有点は 1 個である。
(3) 解と係数の関係(数と式 第11章)から 。(証明終)
なので、, は点 から 2 つの共有点 A,B までの距離です。さらに , が同符号であることは、A,B が Q から見て同じ向きにあること、つまり Q が円の外にあることを表します。したがって (3) は、向きを込めた長さで
と読め、右辺に が入っていないので、Q を通るどの直線でも同じ値になります。これが図形の性質 第5章で学んだ方べきの定理で、同じ章の厳密定義ページ(定理5)の「向きつきの長さ」の形を、ベクトルと 2 次方程式で示したことになります。接するときは から です。
定義1 と定理1 は、成分をいくつ持つベクトルでも、証明の一字一句を変えずに成り立ちます。空間の直線も で表せる(第7〜9章)のはこのためです。一方、定理2 は平面だけの話で、空間では法線形 が平面を、 次元では「1 次元だけ低い広がり」(超平面)を表します。定理4 の「 の側と の側に分かれる」という性質も、超平面についてそのまま成り立ち、条件を満たす範囲を不等式で切り取る線形計画法などの土台になっています。
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