問1
2 点 A,B について、線分 AB を に内分する点 P の位置ベクトルを求めなさい。
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(係数がたすきに入れかわる)
目次 / ベクトル / 数学C
—— 基準点を 1 つ決めて、点そのものをベクトルで表す ——
これまでのベクトルは平行移動しても同じものでしたが、この章では基準点を 1 つに固定して、点の「居場所」をベクトルで表します。これを位置ベクトルといいます。線分を分ける点(内分点・外分点)や三角形の重心が短い式で書けるようになり、「3 点が一直線上にある」といった図形の条件も、ベクトルの計算で調べられるようになります。
第1章から第3章までのベクトルは、平行移動しても同じものでした。 と は、向きと大きさが同じなら「等しい」と決めたので、どこに置かれているかは問いません。おかげで計算が自由にできたのですが、そのままでは「点 P はどこにあるか」を言い表せません。
そこで、基準になる点 O を 1 つ決めて動かさないことにします。すると、点 P に対してベクトル がただ 1 つ決まり、逆にベクトル が決まれば点 P もただ 1 つに決まります。点とベクトルが 1 対 1 に対応するので、点そのものをベクトルで表せるようになります。
基準点 O を 1 つ定めるとき、点 P に対して定まるベクトル を、点 P の位置ベクトルといい、 と書きます。
2 点 A,B について
(第1章の「終点 − 始点」を、基準点 O からの位置ベクトルで書いたものです。)
ゲームのマップを思い浮かべてください。キャラクターの居場所は、マップ全体の左下の角を基準にして「右へ 120、上へ 80」と表すこともできますし、いま居る部屋の入口を基準にして「右へ 20、上へ 5」と表すこともできます。基準をどこに置くかで数は変わります。けれども「宝箱から扉まで」のずれは、どちらの基準で計算しても同じです。基準の分が引き算で消えてしまうからで、これが の意味です。
基準点はどこに取ってもかまいません。問題に原点 O が出てくればそこを、三角形 OAB なら頂点 O を、三角形 ABC で , を使いたければ頂点 A を基準点にします。頂点 A を基準点にすると になって、式がぐっと短くなります。
位置ベクトルとは、基準点を 1 つ決めたときに「点の居場所」を表すベクトルのことで、2 点を結ぶベクトルは位置ベクトルの差で書けるということです。
平行四辺形 ABCD の頂点の位置ベクトルを、,,, とします。
(1) を ,, で表しなさい。
(2) 対角線 AC の中点と対角線 BD の中点の位置ベクトルが、どちらも になることを示しなさい。
【解答】
(1) 平行四辺形なので です。両辺を位置ベクトルで書くと
(2) 2 点 , を結ぶ線分の中点は、第1章で見たとおり です。
対角線 AC の中点は 。対角線 BD の中点は、(1) の を使って
2 つの中点の位置ベクトルが等しいので、同じ点です。平行四辺形の対角線がたがいの中点で交わることが、計算だけで示せました。
図形の性質 第1章で、線分 AB 上にあって となる点 P を、線分 AB を に内分する点と呼びました。このとき でしたから、ベクトルでは
です( と は同じ向きなので、実数倍の係数は正です)。あとは A を経由して P へ行く道を位置ベクトルで書き直すだけです。
2 点 A,B を結ぶ線分 AB を に内分する点 P の位置ベクトルは
とくに のとき、線分 AB の中点 M の位置ベクトルは
係数がたすきに掛かるところが、この公式の山場です。 なら、P は B のすぐそばにあるので、 の係数が大きくなって です。「 が に付く」と覚えると必ず間違えます。近いほうの係数が大きい、と図で確かめてください。
画像編集ソフトのグラデーションが、ちょうどこの計算をしています。左端を青、右端を黄色に指定すると、あいだの色は「左端からの距離 : 右端からの距離」の比で 2 色を混ぜた色になります。左端に近い場所ほど青が濃く出ますが、そこは「左端からの距離」が小さい場所です。つまり、混ぜる割合は距離の比とは逆向きに効いてきます。位置ベクトルの係数がたすきに掛かるのも、まったく同じ事情です。
線分 AB を に内分する点は で表され、係数は比とたすきに入れかわる(近い端点の係数が大きい)ということです。
(1) 2 点 A,B について、線分 AB を に内分する点 P と、線分 AB の中点 M の位置ベクトルを求めなさい。
(2) 座標平面上の 2 点 A,B について、線分 AB を に内分する点 P の座標を求めなさい。
【解答】
(1) なので、係数を入れかえて
(2) 第2章の公式4のとおり、点の座標はそのまま原点を基準点にした位置ベクトルの成分です。, として公式2に入れます。
よって です。成分ごとに計算すれば、座標の内分点の公式そのものになっています。
同じ第1章で、線分 AB の延長上にあって ()となる点 Q を、線分 AB を に外分する点と呼びました。内分点は A と B のあいだにありますが、外分点は線分の外側、 なら B の先、 なら A の手前にあります。
の場合で確かめます。 は と同じ向きで、 から でした。内分点の計算で だったところが に変わるだけなので、 を に置きかえた式になります。
2 点 A,B を結ぶ線分 AB を ()に外分する点 Q の位置ベクトルは
内分点の公式で を に置きかえたものになっています。
のときも同じ式でよいことを、 に外分する点で確かめてみましょう。公式3は を与えます。このとき , なので、 で、Q は A の手前にあります。たしかに条件を満たしています。
売上の予測に似ています。先月と今月の数字が分かっているとき、そのあいだの「月の半ば」の見当をつけるのが内分で、両端のあいだを埋める作業です。これに対して、2 つの数字の傾きをそのまま先へ延ばして来月を見積もるのが外分で、データの外側へはみ出します。内分はあいだを埋める、外分は外へ延ばす。式の上では符号が 1 つ変わるだけですが、点の居場所はまるで違います。
線分 AB を に外分する点は、内分点の公式の を に変えた で表されるということです。
(1) 2 点 A,B について、線分 AB を に外分する点 Q と、 に外分する点 R の位置ベクトルを求めなさい。
(2) 座標平面上の 2 点 A,B について、線分 AB を に外分する点の座標を求めなさい。
【解答】
(1) 公式3にあてはめます。
の R は分母が負になるので、約分して符号を整えます。 と係数の和が になっている点にも注目してください(公式6で意味が分かります)。
(2)
よって です。 なので、B の先にあります。
三角形の頂点と、向かい合う辺の中点を結んだ線分を中線といいます。図形の性質 第2章で学んだとおり、3 本の中線は 1 点で交わり、その点を重心といいます。重心が中線を に内分することも、そこで確かめました。位置ベクトルを使うと、この事実がほとんど計算なしで出てきます。
三角形 ABC で、辺 BC の中点を M とすると です。中線 AM を に内分する点を G とすると、公式2から
答えに ,, が対等に並びました。同じ計算を中線 BN,CL で行っても、,, の役目が入れかわるだけで答えは同じ式です。つまり 3 本の中線を に内分する点はすべて同じ 1 点で、だから 3 本の中線は 1 点で交わるのです。
三角形 ABC の重心 G の位置ベクトルは
3 本の中線は 1 点 G で交わり、G は各中線を頂点の側から に内分します。
3 人で待ち合わせをするとき、それぞれの家の「真ん中」で会おう、と決めることがあります。地図の上で 3 軒の位置を平均した場所、つまり東西方向の平均と南北方向の平均を取った点が、まさに重心です。誰か 1 人の都合に寄らない、3 人に対等な点だということが、 という対称な式に表れています。
三角形の重心は 3 頂点の位置ベクトルの平均 で、この式が対称であることから、3 本の中線が 1 点で交わることまで分かるということです。
(1) 3 点 A,B,C を頂点とする三角形 ABC の重心 G の座標を求めなさい。
(2) 三角形 ABC の 3 頂点の位置ベクトルを ,, とします。辺 AB の中点を L、辺 AC を に内分する点を E とするとき、三角形 ALE の重心の位置ベクトルを ,, で表しなさい。
【解答】
(1) 成分ごとに平均します。
よって です。
(2) , なので
3 つの係数の和は です。内分点や重心の式では、係数の和がいつも になります。
第1章の公式5のあとで、「始点が同じ 2 つのベクトルが平行なら、3 つの点は一直線上にある」と一言だけ述べました。位置ベクトルがそろったので、ここで正式にまとめます。
異なる 2 点 A,B と点 C について、3 点が一直線上にあるということは、C が直線 AB の上にあるということです。 と は始点が同じ A なので、この 2 本が同じ直線に乗るのは、一方が他方の実数倍になっているときです。
異なる 2 点 A,B と点 C について、3 点 A,B,C が一直線上にあるのは
となる実数 があるとき、またそのときに限る。
位置ベクトルで書けば です。 は C の居場所を表していて、 なら C は線分 AB の内部、 なら B の先、 なら A の手前にあります。
測量では、何本もの杭を一直線に打つときに「見通し」を使います。手前の杭に目を当てて、いちばん奥の杭をのぞいたとき、あいだの杭が手前の杭にすっかり隠れて見えなければ、並びはまっすぐです。目から見て向きがぴったり同じかどうかを確かめているわけで、 が の実数倍かどうかを調べるのと同じことをしています。
成分が与えられている場合は、第2章の平行条件(たすき掛けの差が )で調べるのが早道です。第2章の j13 では、この考え方を先取りして使いました。
3 点が一直線上にあることは、1 つの点を始点にそろえた 2 本のベクトルが実数倍の関係にあること、と言いかえられるということです。
三角形 OAB で、, とします。辺 OA を に内分する点を C、辺 OB を に内分する点を D、線分 AB の中点を M、線分 CD の中点を N とするとき、3 点 O,N,M が一直線上にあることを示しなさい。
【解答】
基準点を O にとります。, なので
一方、 です。したがって
が の実数倍なので、公式5より 3 点 O,N,M は一直線上にあります。(証明終)
で ですから、N は線分 OM を に内分する点です。
例題4や例題3で、係数の和が になることに触れました。これには理由があります。公式5の を について解くと
となり、2 つの係数の和は です。逆に、係数の和が の形で書けていれば、 とおいて同じ変形を逆にたどれば、点は直線 AB 上にあると分かります。
異なる 2 点 A,B と点 P について
さらに かつ ならば、P は線分 AB 上にあって
です(比と係数がたすきに入れかわることに注意)。
内分点の公式 を と書き直せば、たしかに係数の和は で、 です。外分点の も同じです。重心の も仲間で、こちらは 3 点の場合にあたります。
音楽のクロスフェードを思い出してください。曲 A の音量を 、曲 B の音量を として、 を保ったまま を から へ、 を から へ動かすと、全体の音量は変わらないまま、曲 A から曲 B へなめらかに移っていきます。 という縛りがあるおかげで、混ざり具合が「A と B のあいだ」に収まるのです。もし が より大きければ音は大きくなりすぎ、点でいえば直線 AB からはみ出してしまいます。
この形は使い勝手がよく、「P が直線 AB 上にある」という条件を、係数についての 1 本の方程式に翻訳してくれます。第5章で 2 直線の交点を求めるときの中心的な道具になります。
点が直線 AB 上にあることは、位置ベクトルを の形に書いたときに が成り立つことと同じで、線分の上ならその係数がそのまま内分比(たすきに入れかわった形)を表すということです。
三角形 OAB で、, とします。
(1) 点 P が を満たすとき、点 P は線分 AB をどのように分ける点か求めなさい。
(2) 点 Q が を満たし、かつ直線 AB 上にあるとき、 の値を求めなさい。またそのとき、Q が線分 AB を に外分する点であるとして、 を求めなさい。
【解答】
(1) 係数の和は なので、P は直線 AB 上にあります。どちらの係数も正なので線分 AB 上にあり、公式6から
つまり P は線分 AB を に内分する点です。 の係数が大きいので B 寄り、という見当とも合います。
(2) 直線 AB 上にある条件は「係数の和が 」なので
このとき です。位置をつかむために を計算します。
なので、Q は A の手前にあります。 で、 ですから
確かめます。 に外分する点は で、 と一致しました。係数に負の数が現れたら外分、と覚えておくと見通しがよくなります。
この章では、点を位置ベクトルで表し、内分点・外分点・重心を短い式で書けるようになりました。第5章では、ここに第3章の内積を組み合わせて、線分の長さや垂直、2 直線の交点といった図形の問題をベクトルで解いていきます。「係数の和が 」の形が、そこで大活躍します。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
2 点 A,B について、線分 AB を に内分する点 P の位置ベクトルを求めなさい。
(係数がたすきに入れかわる)
問2
座標平面上の 2 点 A,B について、線分 AB の中点 M の座標を求めなさい。
問3
2 点 A,B について、線分 AB を に外分する点 Q の位置ベクトルを求めなさい。
問4
三角形 ABC の 3 頂点の位置ベクトルを ,, とするとき、重心 G の位置ベクトルを求めなさい。
問5
座標平面上の 2 点 A,B について、線分 AB を に内分する点の座標を求めなさい。
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
3 点 A,B,C について、(1) 線分 AB を に内分する点 P、(2) 線分 BC を に内分する点 Q、(3) 線分 AC の中点 M の位置ベクトルを ,, で表しなさい。
(1) (2) (3)
内分点の公式 にあてはめます。比の , が係数にたすきに入ることに注意します。
(1) なので
(2) 線分 BC なので、両端は B と C です。 より
(3) 中点は の内分点です。
問2 ★
座標平面上の 2 点 A,B について、(1) 線分 AB を に内分する点 P、(2) 線分 AB の中点 M、(3) 線分 AB を に外分する点 Q の座標を求めなさい。
(1) (2) (3)
点の座標は、原点を基準点にした位置ベクトルの成分です。成分ごとに公式を使います。
(1)
(2)
(3)
なので、Q は B の先にあります。
問3 ★
2 点 A,B について、(1) 線分 AB を に外分する点 R、(2) 線分 AB を に外分する点 S の位置ベクトルを , で表しなさい。
(1) (2)
外分点の公式 にあてはめます。どちらも なので、分母が負になります。
(1)
(2)
どちらも係数の和が , になっています。外分点も直線 AB 上の点なので、公式6のとおりです。 の係数が大きく、 の係数が負なので、2 点とも A の手前側にあります。
問4 ★
三角形 ABC で , とします。辺 BC の中点を M、三角形 ABC の重心を G とするとき、 と を , で表しなさい。
基準点を頂点 A にとります。すると A の位置ベクトルは で、B,C の位置ベクトルがそれぞれ , です。
M は辺 BC の中点なので
重心は 3 頂点の平均で、A の分が なので
となっていて、G が中線 AM を に内分することが確かめられます。
問5 ★
3 点 A,B,C が一直線上にあるように、定数 の値を定めなさい。
点 A を始点にそろえます。
3 点が一直線上にあるのは、この 2 本が平行のときです。第2章の平行条件(たすき掛けの差が )より
このとき なので、C は B の先(線分 AB の延長上)にあります。
問6 ★
3 点 A,B,C について、 が成り立つことを、位置ベクトルを使って示しなさい。
3 つを位置ベクトルの差に直して足すと、すべて打ち消し合って になる。
それぞれを「終点 − 始点」で書き直します。
3 つを足すと
(証明終)
第1章では「しりとりでつなぐと出発点に戻る」と説明した事実です。位置ベクトルで書くと、,, が 1 回ずつ足され 1 回ずつ引かれることが一目で分かります。基準点 O をどこに取っても成り立つことも、式から読み取れます。
問7 ★
4 点 A,B,C,D のどの 3 点も一直線上にないとします。 が成り立つとき、四角形 ABCD が平行四辺形であることを示しなさい。
式を変形すると 、すなわち となるから。
与えられた式を移項します。
左辺は 、右辺は なので
2 つのベクトルが等しいので、線分 AB と線分 DC は平行で長さも等しく、向きもそろっています。1 組の対辺が平行で長さが等しい四角形は平行四辺形なので、四角形 ABCD は平行四辺形です。(証明終)
与えられた式を と書き直せば、「対角線 AC の中点と対角線 BD の中点が一致する」とも読めます。例題1 (2) の逆にあたる主張です。
問8 ★
三角形 ABC で , とします。辺 AB を に内分する点を D、辺 AC を に内分する点を E とするとき、 を , で表しなさい。
基準点を A にとります。D は辺 AB を に内分するので、 は の 倍です。同じように、E は辺 AC を に内分するので 倍です。
「終点 − 始点」より
比が のとき係数が 、 のとき です。片方の端が始点 A なので、たすきの入れかわりは起きず、 がそのまま係数になります。
問9 ★★
三角形 ABC と点 P について が成り立つとき、点 P は三角形 ABC の重心であることを示しなさい。
位置ベクトルで書くと となり、重心の位置ベクトルと一致する。
基準点 O をとり、各点の位置ベクトルを ,,, とします。「終点 − 始点」で書き直すと
についてまとめます。
これは公式4の重心の位置ベクトルと同じです。よって P は三角形 ABC の重心です。(証明終)
逆に、重心 G は を満たします。3 本のベクトルがつり合う点、というのが重心のもう 1 つの姿です。
問10 ★★
どの 3 点も一直線上にない 4 点 A,B,C,D を頂点とする四角形 ABCD で、辺 AB,BC,CD,DA の中点をそれぞれ P,Q,R,S とします。四角形 PQRS が平行四辺形であることを示しなさい。
となるから。
4 つの中点の位置ベクトルを書き出します。
向かい合う 2 辺のベクトルを計算します。
よって で、1 組の対辺が平行で長さが等しいので、四角形 PQRS は平行四辺形です。(証明終)
どちらも で、もとの四角形の対角線 AC の半分です。四角形がどんな形でも(へこんでいても)成り立つのが、この結果の面白いところです。
問11 ★★
三角形 OAB で , とします。辺 OA を に内分する点を C、辺 OB を に内分する点を D、線分 CD の中点を M とするとき、 を , で表しなさい。
基準点を O にとります。C は辺 OA を に内分するので 倍、D は辺 OB を に内分するので 倍です。
M は線分 CD の中点なので
係数の和は で ではありません。M は直線 AB 上にはない、ということです(公式6)。
問12 ★★
三角形 ABC の重心が G で、2 頂点が A,B であるとき、頂点 C の座標を求めなさい。
C とおきます。重心の座標は 3 頂点の平均なので
それぞれ解くと
よって です。
ベクトルで書けば で、成分に直すと と一息で求められます。
問13 ★★
三角形 OAB で , とします。点 P が を満たすとき、点 P は線分 AB を何対何に内分する点か求めなさい。
係数の和を確かめます。
和が で、どちらの係数も正なので、公式6より P は線分 AB 上にあります。, として
確かめます。 に内分する点は で、たしかに と一致します。 の係数のほうが大きいので P は A 寄り、つまり AP のほうが短い、という見当とも合っています。
問14 ★★
三角形 OAB で , とします。点 P が を満たし、かつ直線 AB 上にあるとき、 の値と、P が線分 AB を分ける比 を求めなさい。
,
直線 AB 上にある条件は「, の係数の和が 」です。
このとき , でどちらも正なので、P は線分 AB 上にあり
と確かめてもかまいません。 倍の点なので の内分です。
問15 ★★
2 点 A,B について、線分 AB を に内分する点を P、 に外分する点を Q とするとき、 を , で表しなさい。
まず 2 点の位置ベクトルを求めます。
「終点 − 始点」で引き算します。分母を にそろえると
これは です。内分点は A から の位置、外分点は A から 倍の位置にあるので、そのへだたりが 倍になる、と考えても同じ答えになります。
問16 ★★
三角形 ABC で、辺 AB を に内分する点を D、辺 BC を に内分する点を E、辺 CA を に内分する点を F とします。三角形 DEF の重心が三角形 ABC の重心と一致することを示しなさい。
3 点の位置ベクトルの和が になるから。
基準点 O をとり、3 頂点の位置ベクトルを ,, とします。それぞれの内分点は
3 つを足すと、,, がそれぞれ 倍ずつ現れます。
よって三角形 DEF の重心は
となり、三角形 ABC の重心と一致します。(証明終)
という比は答えに残りませんでした。3 辺を同じ比で内分すれば、比がいくつでも重心は動きません。
問17 ★★★
三角形 ABC と点 P について が成り立つとします。, とするとき、 を , で表しなさい。また、辺 BC を に内分する点を D とするとき、点 P が線分 AD を何対何に内分する点か求めなさい。
,
基準点を A にとります。 とすると
条件式に代入します。
次に D の位置です。辺 BC を に内分するので、係数はたすきに入れかわって
と見比べると、分子が同じで分母だけが違います。
が の 倍なので、P は線分 AD 上にあって
条件式の係数 ,, がそのまま答えに現れています。B,C の係数 , が入れかわって になり、A の係数 と残り 2 つの和 が になる、という仕組みです。
問18 ★★★
三角形 ABC で、辺 AB を に内分する点を D、辺 AC を に内分する点を E とします。線分 DE 上の点 P について と表すとき、 と が満たす関係式を求めなさい。
(ただし ,)
基準点を A にとり、, とします。
P は線分 DE 上の点なので、公式6より実数 ()を使って
と書けます。, は 1 次独立なので、係数を比べて
2 つ目の式から 。これを 1 つ目に代入します。
よって求める関係式は です( の範囲から ,)。
のとき で D、 のとき で E になり、どちらも を満たします。, を基準に見れば「係数の和が 」の式そのもので、それを , の言葉に翻訳した形です。
問19 ★★★
三角形 ABC で辺 BC の中点を M とするとき、 が成り立つことを、位置ベクトルを使って示しなさい。
A を基準点にとり、, として両辺を 2 乗すると、内積の項が打ち消し合う。
基準点を A にとり、, とします。M は辺 BC の中点なので
長さの 2 乗は大きさの 2 乗なので、第3章の公式5()を使います。
足すと内積の項が打ち消し合います。
(証明終)
これは中線定理(パップスの定理)と呼ばれる図形の性質です。第3章の厳密定義で扱った平行四辺形の法則 を、 倍して図形の言葉に直したものになっています。
問20 ★★★
三角形 ABC と点 P について とします。実数 , が ,, を満たしながら動くとき、点 P がえがく図形を求めなさい。
辺 AB を に内分する点 D と、辺 AC を に内分する点 E を結ぶ線分 DE
が ではないので、このままでは公式6が使えません。和が になるように係数をくくり出します。, として
ここで , とおくと
を中に入れて書き直します。
, は、辺 AB,AC をそれぞれ に内分する点 D,E の(A を基準点とした)位置ベクトルです。つまり
公式6より、点 P は線分 DE 上をくまなく動きます。よって P がえがく図形は、辺 AB を に内分する点 D と、辺 AC を に内分する点 E を結ぶ線分 DE です。
係数の和が より小さいと、線分 BC が A のほうへ縮んだ位置に移ります。和が なら線分 BC そのもの、 なら中点どうしを結ぶ線分です。「係数の和」が、線分 BC を A を中心にどれだけ縮めるかを決めているわけです。
位置ベクトルの話は、まず基準点 O を決めるところから始まりました。現実の地図でも事情は同じで、緯度・経度という数は「どこを基準にするか」を決めて初めて意味をもちます。
日本では長いあいだ、東京都港区麻布台にある日本経緯度原点を基準にした「日本測地系」が使われてきました。明治時代に、旧東京天文台の望遠鏡の中心を原点と定めたのが始まりです。国内をていねいに測って作られた仕組みでしたが、日本の中だけで完結しているため、人工衛星で地球全体を測る時代になると、世界の基準とのずれが目立つようになりました。
そこで 2002 年 4 月 1 日、改正測量法の施行にあわせて、日本は「世界測地系」へ切りかえます。同じ場所を指す緯度・経度の数値がいっせいに変わり、古い数値をそのまま新しい地図に当てはめると、東京付近でおよそ ほどずれてしまうことになりました(ずれの大きさと向きは地域によって違います)。土地も建物も 1 ミリも動いていないのに、住所の「座標」だけが動いたのです。
まさに、基準点 O を O′ に取りかえたときの話です。 も も値が変わりますが、、つまり 2 地点のあいだの距離や向きは変わりません。だから、土地の境界や道路の設計図が作り直しになることはありませんでした。
豆知識
高さのほうにも基準があります。日本の標高は「東京湾の平均海面」を とし、その高さを地上に写し取った日本水準原点(東京都千代田区永田町)を出発点にして測られます。この原点の標高は長く と定められていましたが、2011 年の東日本大震災で関東の地盤が沈んだため、 に改められました。 の改定です。基準そのものが動いてしまうと、基準を測り直すしかありません。
「月が地球のまわりを回っている」とよく言いますが、正確ではありません。2 つの天体は、たがいの共通重心(バリセンター)のまわりを回っています。共通重心は、2 つの中心を結ぶ線分を、質量の比と逆の比で分けた点です。この章の内分点そのものです。
月の質量は地球のおよそ 、2 つの中心の距離は平均で約 です。重い地球のほうに大きく寄るので、共通重心は地球の中心から
の位置にあります。地球の半径は約 ですから、共通重心は地球の内部、地表から ほど下です。そのため地球は、月に引っぱられて 1 か月かけて小さく揺れているだけで、外から見れば「月が地球を回っている」ように見えます。
ところが冥王星と衛星カロンでは事情が違います。カロンの質量は冥王星のおよそ もあり、2 つの距離は約 。共通重心は冥王星の中心から あまりのところで、冥王星の半径(約 )より外に出てしまいます。共通重心が何もない空間にあるので、2 つの星がたがいのまわりをぐるぐる回っているように見えます。
豆知識
太陽系の共通重心も、太陽のまんなかにはありません。いちばん重い木星のせいで、太陽の表面のすぐ外側に出たり中に入ったりしています。つまり太陽自身も少しふらついています。このふらつきを光の色のわずかな変化としてとらえ、遠い星のまわりの惑星を見つける方法が、系外惑星さがしで使われています。見えない惑星の存在を、共通重心の位置から逆算しているわけです。
手描きのアニメーションでは、動きの節目になる絵を原画、そのあいだを埋める絵を動画(中割り)と呼びます。原画で「手を上げた絵」と「手を下ろした絵」が描かれ、そのあいだの中途半端な姿勢を何枚も描き足していくのが中割りの仕事です。
この「あいだを埋める」作業を、コンピューターは内分点の計算で行います。始まりの点 と終わりの点 を決めておき、進み具合を ( から )として
を計算するだけです。係数の和は で、本文の公式6の形になっています。動かせるのは位置だけではありません。色も、大きさも、透明度も、数の組として同じ式に入れてしまえば、なめらかに変わっていきます。この処理は「トゥイーン」(in-between から)と呼ばれ、 なら中点、 なら の内分点です。
ちなみに日本のテレビアニメでは、 秒 コマのうち同じ絵を コマ続けて映す「 コマ打ち」がよく使われ、 秒あたり 枚で動きを作ります(場面や作品によって変わります)。少ない枚数でも動きに見えるのは、人の目が中割りを補ってくれるからです。
豆知識
を等しい間隔で動かすと、動きは一定の速さになり、かえって機械っぽく見えてしまいます。そこで実際には、 の進み方そのものを曲げて、動き始めをゆっくり、止まる直前もゆっくりにします。これをイージング(イーズイン・イーズアウト)といい、Web ページのアニメーションでも設定できます。二次関数 第2章の小話で紹介したベジェ曲線も、実は「 点の内分を 回くり返す」だけで描けます。内分は、なめらかさを作るいちばん基本の道具なのです。
※ここは発展ページです。高校の範囲では、内分点・外分点・重心の公式を使いこなせれば十分ですが、本文でくり返し現れた「係数の和が 」がなぜ特別なのか、係数を 3 つに増やすと何が見えてくるのかが気になる人のために、少し厳密な見方を紹介します。
本文では「基準点はどこに取ってもよい」と書きました。ところが、基準点を変えれば , の値は変わります。にもかかわらず、 が表す点は変わりませんでした。どんな式なら、この性質をもつのでしょうか。
平面上の点 と実数 を固定する。基準点 O をとり、点 P を
で定める。この点 P が基準点 O の選び方によらずつねに同じ点になるための必要十分条件は
である。
証明 別の基準点 O′ をとり、同じ式で定まる点を P′ とする。すなわち である。 を代入すると
よって、O を基準にした P′ の位置ベクトルは
となる。 ならば第 2 項は で、どんな O′ に対しても P′ P である。逆に ならば、 となる O′(つまり O 以外の点)をとれば となり、P′ は P と異なる点になる。(証明終)
内分点の 、外分点の 、重心の 。本文でくり返し確かめた「係数の和が 」は、たまたまではなく、式が点を表すための条件だったのです。逆に、 のような和が でない式は、基準点を変えると別の場所を指してしまうので、点の名前としては使えません(ベクトルとしては意味があります)。
点 と、和が である実数 に対して定まる点
を のアフィン結合という。とくに、すべての が 以上であるものを凸結合という。
定理1のおかげで、この書き方(基準点を明示しない書き方)が許されます。2 点 A,B の場合、アフィン結合の全体は直線 AB、凸結合の全体は線分 AB です。本文の公式6は、この言いかえにほかなりません。3 点 A,B,C が三角形をなすとき、凸結合の全体は三角形 ABC の周と内部になります。
係数を 3 つに増やすと、平面上のすべての点に「名前」が付きます。
三角形 ABC( と は 1 次独立)が与えられているとする。このとき、平面上の任意の点 P は
の形にただ 1 通りに表される。この を、点 P の重心座標という。さらに ,, であることと P が三角形 ABC の内部にあることは同値で、そのとき
が成り立つ。
証明 (存在と一意性) 基準点を A にとる。, は 1 次独立なので、第1章の公式6より は
とただ 1 通りに表される。これを位置ベクトルに直すと
なので、 とおけば求める形になり、係数の和は である。一意性を見るために、2 通りの表し方があったとして差をとると
となる。 を代入すれば 、すなわち である。1 次独立より 、したがって となり、表し方は 1 通りに限る。
(面積比) 第2章の厳密定義で導入した「たすき掛けの差」を と書く。 はそれぞれの変数について , を満たし、, である。第3章の公式6より、2 辺が , の三角形の面積は である。
A を基準点にとり ,、 とおく。 だから
ここで、三角形 ABC の内部とは、 かつ かつ となる点の全体のことである( が直線 AB、 が直線 AC、 が直線 BC にあたり、内部はその 3 本に囲まれた側である)。このとき である。3 つの三角形 PBC,PCA,PAB は三角形 ABC を重なりなく埋めるので
よって である。逆に がすべて正なら、,, から P は三角形の内部にある。(証明終)
重心 は、3 つの三角形の面積が等しくなる点だということです。頂点 A は 、辺 BC の中点は で、 が直線 BC を表します。図形の性質 第3章の小話で紹介した「おもりの比=面積比」は、この定理の言いかえです。頂点 A,B,C に の重さのおもりを置いたときのつり合いの点が P だ、と読めるので重心座標と呼ばれます。チェバの定理やメネラウスの定理を、この座標で計算に直すこともできます。
なお、重心座標は座標軸を必要としません。 は三角形との位置関係だけで決まるので、座標軸をどんなに斜めに取りかえても同じ値です。第3章で「成分による内積の式は直交座標が前提」と注意したのと、ちょうど裏返しの性質です。長さや角を測らなくても、「内分」「重心」「一直線上」といった話はそのまま通用する——この立場で図形を調べる分野をアフィン幾何といいます。
最後に、重心が 3 点にとって特別な点であることを、別の角度から確かめます。
三角形 ABC の重心を G とすると、平面上の任意の点 P について
が成り立つ。したがって を最小にする点は重心 G ただ 1 つである。
証明 基準点を G にとる。このとき本文の公式4から である(j09 で見た のこと)。 とおき、第3章の公式5で展開すると
B,C についても同じ式を作って 3 つを足すと、内積の項は
となって消える。よって
第 1 項は 、第 2 項は である。 で、等号は 、すなわち P G のときに限る。(証明終)
本文で「3 人の家の平均の場所」と言いましたが、それは「3 軒からの距離の 2 乗の和がいちばん小さい場所」でもあったわけです。この計算は点の個数によらないので、 個の点 についても、重心を と定めれば同じ主張が成り立ちます。物理で、質量の等しい 個の質点のつり合う点が位置の平均になるのも、同じ式です(質量が違う場合は、質量を重みにした重心座標になります)。データの分析でいう平均も「各データとの差の 2 乗の和を最小にする値」で、重心はその平面版だといえます。
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