問1
等式 を数学的帰納法で示すとき、[1] で確かめる のときの左辺と右辺の値を求めなさい。
答えを見る答えを閉じる
左辺 、右辺 ( で等しい)
目次 / 数列 / 数学B
—— 「最初の 1 つ」と「1 つ進めること」の 2 段で、無限に続くすべての場合を一度に示す ——
第7章の最後に、$a_1 = 0,\ a_{n+1} = \dfrac{1}{2 - a_n}$ という漸化式を考え、項を並べて $a_n = \dfrac{n - 1}{n}$ という見当をつけました。けれども、何項確かめても、確かめたのはその項までです。自然数は限りなく続くので、1 つずつ調べていたのでは終わりません。この章で学ぶ数学的帰納法は、「$n = 1$ で成り立つ」と「$n = k$ で成り立つと仮定すると $n = k + 1$ でも成り立つ」の 2 段を示すだけで、すべての自然数について成り立つと結論する証明の方法です。漸化式の見当の確認、和の等式、不等式、倍数の証明と、使い方を順に練習し、2 つ前まで仮定する形にも広げます。答案では、必ず 2 段に分けて書くことを目標にしましょう。
第7章の最後に予告した漸化式から始めましょう。
項を順に計算すると となり、 ではないかと見当がつきます。この形は分母に が引き算で入っていて、第7章のように逆数をとってもすぐには等差・等比になりません。そこで、一般項を「導く」代わりに、見当が正しいことを「示す」ことにします。
ここで、次のことに気がつきます。ある番号 で が正しいとしてみると、漸化式から
となり、次の番号 でも同じ形 が出てきます。つまり「ある番号で正しければ、次の番号でも正しい」ことが、 がいくつであっても言えるのです。
一方、 では で、見当は正しいと確かめられます。すると、 で正しいから でも正しい、 で正しいから でも正しい……と、どこまでもたどっていけます。こうして、すべての自然数 について だと言い切れます。これが 数学的帰納法 の考え方です。
自然数 についての主張を とする。次の 2 つを示せば、 はすべての自然数 について成り立つ。
[1] のとき、 が成り立つ。
[2] のとき が成り立つと仮定すると、 のときも が成り立つ。
答案は次の形で書く。
[2] で「仮定する」のは、 が正しいと決めつけることではありません。「もし が正しければ、 も正しい」というつながりを示しているだけです。この仮定を 帰納法の仮定 といいます。仮定を使わずに を示せてしまったら、それは帰納法ではなく、直接の証明です。
たくさん並べたドミノを思い浮かべてください。全部倒れることを確かめるのに、1 枚ずつ見て回る必要はありません。確かめることは 2 つだけです。1 つは「最初の 1 枚を倒す」こと。もう 1 つは「どの 1 枚も、倒れたら必ず次の 1 枚を倒す間隔で並んでいる」ことです。最初の 1 枚を倒さなければ、間隔がどれだけ正しくても 1 枚も倒れません。逆に、どこか 1 か所でも間隔が広すぎれば、そこで止まってしまいます。[1] が最初の 1 枚を倒すこと、[2] が並べ方の点検にあたります。
第7章で分数型の漸化式を解くとき、「 で、 なら なので、すべての項が正」と一言書きました。これは [1]・[2] の 2 段そのもので、実はすでに帰納法を使っていたのです。第6章の小話で紹介したプログラムの再帰で「終わりの条件を忘れると止まらない」と書いたのも、[1] がないと話が始まらないことと対応しています。
数学的帰納法とは、[1] で成り立つことと、[2] で成り立つと仮定すれば でも成り立つことの 2 つを示して、すべての自然数 で成り立つと結論する方法だということです。
(1) で定まる数列 について、 であることを数学的帰納法で示しなさい。
(2) で定まる数列 について、 を求めて一般項を推測し、それが正しいことを数学的帰納法で示しなさい。
【解答】
(1) …① とする。
[1] のとき、, なので、① は成り立つ。
[2] のとき ① が成り立つ、つまり と仮定すると
よって、 のときも ① は成り立つ。
[1],[2] より、すべての自然数 について である。(証明終)
(2) ,, なので、 …① と推測できる。
[1] のとき、 なので、① は成り立つ。
[2] のとき ① が成り立つ、つまり と仮定すると
よって、 のときも ① は成り立つ。
[1],[2] より、すべての自然数 について である。(証明終)
(2) の漸化式には があり、第6章・第7章のどの型にも当てはまりません。項を計算して見当をつけ、帰納法で確かめる。この「推測して証明する」流れは、形の決まっていない漸化式に対する強力な手段です。
第3章では、 を、 を足し並べる工夫で導きました。帰納法を使えば、公式の形が分かっているとき、それが正しいことをもっと機械的に確かめられます。
鍵になるのは、 のときの左辺が、 のときの左辺に 1 項足しただけだということです。
下線の部分に帰納法の仮定を使うと
で、これは右辺の に を入れた そのものです。
…① を数学的帰納法で示すときは
[1] のとき、左辺 と右辺 が等しいことを確かめる。
[2] のとき ① が成り立つと仮定して、 のときの左辺を
と変形し、これが に等しいことを示す。
は、ゴールとして先に書き出しておくと変形の目標が見やすい。
家計簿の「前月からの繰越」を考えてみましょう。今月末の残高を知りたいとき、1 月から全部を足し直す必要はありません。先月末の残高を繰り越して、今月の収支を足せば済みます。帰納法の仮定は「先月までの帳簿は合っている」ということで、[2] の計算は「繰越 + 今月分」が今月末の正しい残高になっていると確かめる作業です。
和の等式を帰納法で示すときは、 の左辺を「 の和 + 第 項」に分け、前半に仮定を使って、右辺の に を入れた式になることを確かめるということです。
すべての自然数 について、次の等式が成り立つことを数学的帰納法で示しなさい。
(1)
(2)
【解答】
(1) 等式を ① とする。
[1] のとき、左辺 ,右辺 なので、① は成り立つ。
[2] のとき ① が成り立つ、つまり と仮定する。 のときの左辺は
となり、右辺に等しい。よって、 のときも ① は成り立つ。
[1],[2] より、すべての自然数 について ① は成り立つ。(証明終)
(2) 等式を ① とする。
[1] のとき、左辺 ,右辺 なので、① は成り立つ。
[2] のとき ① が成り立つと仮定する。 のときの左辺は
となり( でくくると )、右辺の に を入れた式に等しい。よって、 のときも ① は成り立つ。
[1],[2] より、すべての自然数 について ① は成り立つ。(証明終)
(1) の の左辺で、最後の項を としないように注意しましょう。第 項は です。「 のとき最後の項は何か」を一般項に代入して確かめる習慣をつけると、ここでの取り違えが防げます。
と の大きさを比べてみます。
では のほうが大きいのに、 からは が引き離していきます。「 のとき 」を示したいのですが、 から始めると で成り立たないので、[1] を に置きかえます。
を自然数とする。次の 2 つを示せば、 は のすべての自然数 について成り立つ。
[1] のとき、 が成り立つ。
[2] として、 のとき が成り立つと仮定すると、 のときも が成り立つ。
途中の駅から各駅停車に乗る場面にたとえられます。始発駅から乗らなくても、5 番目の駅で乗りさえすれば、その先はすべての駅に止まります。乗る駅が [1]、「各駅に止まる」ことが [2] です。ただし、[2] で使ってよいのは「乗ったあとの駅」についての性質、つまり という条件です。
不等式の証明では、[2] で仮定を使ったあとに「もう一押し」が必要になることがよくあります。 を仮定すると までは言えますが、ゴールは です。そこで、 かどうかを、差をとって別に調べます。
ならこれは 以上で正です。こうして とつながります。
ある番号 から先で成り立つ主張は、[1] を に置きかえ、[2] で を使えばよく、不等式では仮定を使ったあとに差をとって「もう一押し」の比較をするということです。
次の不等式を数学的帰納法で示しなさい。
(1) のすべての自然数 について
(2) のすべての自然数 について
【解答】
(1) 不等式を ① とする。
[1] のとき、左辺 ,右辺 なので、① は成り立つ。
[2] として、 のとき ① が成り立つ、つまり と仮定すると
ここで なので、。よって、 のときも ① は成り立つ。
[1],[2] より、 のすべての自然数 について ① は成り立つ。(証明終)
(2) 不等式を ① とする。
[1] のとき、左辺 ,右辺 なので、① は成り立つ。
[2] として、 のとき ① が成り立つ、つまり と仮定すると、。ここで
なので、。よって、 のときも ① は成り立つ。
[1],[2] より、 のすべての自然数 について ① は成り立つ。(証明終)
「 は の倍数」のような、整数の性質も帰納法で示せます。,, と、確かに の倍数が並びます。
「 の倍数である」ことは、そのままでは計算に使えません。「整数 を用いて と表せる」と式に直すのがコツです。仮定 を と書きかえて に代入すると
となり、 は整数なので も の倍数です。 の多項式の場合は、 の式を展開して「 の式 + (整数)」の形を探します。
倍数であることを帰納法で示すときは、仮定を「整数 を用いて と表せる」と式に直し、 の式を「(整数)」の形に変形するということです。
すべての自然数 について、次のことが成り立つことを数学的帰納法で示しなさい。
(1) は の倍数である。
(2) は の倍数である。
【解答】
(1) [1] のとき、 は の倍数である。
[2] のとき成り立つ、つまり整数 を用いて と表せると仮定すると
は整数なので、 のときも成り立つ。
[1],[2] より、すべての自然数 について は の倍数である。(証明終)
(2) [1] のとき、 は の倍数である。
[2] のとき成り立つ、つまり整数 を用いて と表せると仮定すると
は整数なので、 のときも成り立つ。
[1],[2] より、すべての自然数 について は の倍数である。(証明終)
(2) は として、 を で割った余りで場合分けしても示せます。帰納法は、場合分けの方法が思いつかないときにも使える、手堅い道具です。
3 項間漸化式で見当を示そうとすると、困ったことが起こります。
項は で、 と見当がつきます。ところが、 を作るには と の 2 つが必要なので、「 で成り立つ」という仮定 1 つだけでは、次の項を計算できません。
そこで、仮定を 2 つに増やします。「 と の両方で成り立つ」と仮定して を示すのです。このとき、出発点も 2 つ確かめておく必要があります。
次の 2 つを示せば、 はすべての自然数 について成り立つ。
[1] のとき、 が成り立つ。
[2] のとき が成り立つと仮定すると、 のときも が成り立つ。
綱登りを思い浮かべてください。綱を登るとき、両手で 2 か所をつかんでいれば、下の手を離して上へ伸ばすことができます。1 か所しかつかんでいないと、手を離した瞬間に落ちてしまいます。3 項間漸化式の帰納法で「2 つ仮定する」のは、両手でつかんでいる状態にあたり、[1] で を確かめるのは、最初に両手で綱を握ることにあたります。
[1] で 1 つしか確かめないのは、よくある失敗です。 だけでは、[2] の に必要な「 と の両方」がそろわず、最初の一手が出せません。
次の項を作るのに 2 つ前の項まで要るときは、[1] で の 2 つを確かめ、[2] で の 2 つを仮定して を示すということです。
(1) で定まる数列 について、 であることを数学的帰納法で示しなさい。
(2) で定まる数列 について、すべての自然数 で であることを数学的帰納法で示しなさい。
【解答】
(1) …① とする。
[1] のとき , のとき なので、① は成り立つ。
[2] のとき ① が成り立つ、つまり , と仮定すると
よって、 のときも ① は成り立つ。
[1],[2] より、すべての自然数 について である。(証明終)
(2) 不等式を ① とする。
[1] のとき , のとき なので、① は成り立つ。
[2] のとき ① が成り立つ、つまり , と仮定すると
よって、 のときも ① は成り立つ。
[1],[2] より、すべての自然数 について である。(証明終)
(1) は第7章の公式4でも解けます(特性方程式 の解が )。一般項を「導く」なら第7章の方法、答えが分かっていて「確かめる」なら帰納法、と使い分けられます。
「すべての自然数 について、 は偶数である」という主張を考えます。[2] だけを確かめてみましょう。 が偶数だと仮定すると
で、偶数に偶数を足したものなので、偶数です。[2] は立派に成り立っています。ところが、 を代入すると で奇数です。実は は連続する 2 数の積でいつも偶数なので、 はいつも奇数です。主張は正しくありません。
ドミノで言えば、並べ方は完璧でも、最初の 1 枚を誰も倒していない状態です。[2] は「つながり」を保証するだけで、どこかに出発点がなければ何も示せません。
逆に、[1] をいくつ確かめても [2] がなければ証明になりません。第4章の小話で、円周上の点を結んで円を分けると と続くのに、次は ではなく になる例を紹介しました。数項がそろって見えても、それは見当にすぎません。見当を定理に変えるのが、[1] と [2] の 2 段なのです。
[2] だけでは出発点がなく、[1] だけでは先へ進めないので、帰納法の証明では [1] と [2] の両方を必ず書くということです。
| 形 | [1] で確かめること | [2] で仮定して示すこと |
|---|---|---|
| 基本形 | → | |
| 出発点が | ()→ | |
| 2 つ前まで使う | → |
| 主張の種類 | [2] での工夫 |
|---|---|
| 漸化式の見当 | 漸化式に仮定を代入して を計算する |
| 和の等式 | 「 の和 + 第 項」に分ける |
| 不等式 | 仮定を使ったあと、差をとって「もう一押し」 |
| 倍数 | 仮定を「( は整数)」と式に直す |
これで、数列の基本的な道具がそろいました。最後の第9章では、これまでの道具を、確率や図形などの場面で使います。たとえば、さいころを 回投げて の目が出た回数が偶数である確率を とすると、 回目に が出るかどうかで場合分けして
という漸化式が立ちます。これは第6章の 型です。場面から漸化式を立てて解く、数列の総仕上げに進みましょう。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
等式 を数学的帰納法で示すとき、[1] で確かめる のときの左辺と右辺の値を求めなさい。
左辺 、右辺 ( で等しい)
問2
等式 が のとき成り立つと仮定します。 のときの左辺 を、 の式で因数分解した形に表しなさい。
( を でくくる)
問3
で定まる数列 で、 と仮定するとき、 を の式で表しなさい。
(分母 )
問4
のすべての自然数 について が成り立つような、最小の自然数 を求めなさい。
( で 、 から 。例題3(2))
問5
整数 を用いて と表せるとき、 を の式で表しなさい。
( で の倍数)
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
すべての自然数 について、 が成り立つことを数学的帰納法で示しなさい。
[1] で両辺 。[2] で成り立つと仮定すると、 の左辺 で成り立つ。
等式を ① とします。
[1] のとき、左辺 ,右辺 なので、① は成り立ちます。
[2] のとき ① が成り立つ、つまり と仮定します。 のときの左辺は
となり、右辺の に を入れた式に等しいので、 のときも ① は成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について ① は成り立ちます。(証明終)
問2 ★
すべての自然数 について、 が成り立つことを数学的帰納法で示しなさい。
[1] で両辺 。[2] を仮定すると、 の左辺 で成り立つ。
等式を ① とします。
[1] のとき、左辺 ,右辺 なので、① は成り立ちます。
[2] のとき ① が成り立つ、つまり と仮定します。 のとき、最後の項は なので、左辺は
となり、右辺に等しいので、 のときも ① は成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について ① は成り立ちます。(証明終)
問3 ★
すべての自然数 について、 が成り立つことを数学的帰納法で示しなさい。
[1] で両辺 。[2] を仮定すると、 の左辺 で成り立つ。
等式を ① とします。
[1] のとき、左辺 ,右辺 なので、① は成り立ちます。
[2] のとき ① が成り立つと仮定します。 のときの左辺は
となり、右辺の に を入れた式に等しいので、 のときも ① は成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について ① は成り立ちます。(証明終)
でくくると、残りが ときれいにまとまります。
問4 ★
で定まる数列 について、 であることを数学的帰納法で示しなさい。
[1] 。[2] と仮定すると 。
…① とします。
[1] のとき、, なので、① は成り立ちます。
[2] のとき ① が成り立つ、つまり と仮定すると
なので、 のときも ① は成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について です。(証明終)
第6章の 型として解いても同じ答えになります。
問5 ★
すべての自然数 について、 は の倍数であることを数学的帰納法で示しなさい。
[1] 。[2] ( は整数)と仮定すると 。
[1] のとき、 は の倍数です。
[2] のとき成り立つ、つまり整数 を用いて と表せると仮定します。 なので
は整数なので、 のときも成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について は の倍数です。(証明終)
問6 ★
すべての自然数 について、 が成り立つことを数学的帰納法で示しなさい。
[1] で 。[2] と仮定すると 。
不等式を ① とします。
[1] のとき、左辺 ,右辺 なので、① は成り立ちます(等号)。
[2] のとき ① が成り立つ、つまり と仮定すると
ここで なので、。よって、 のときも ① は成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について ① は成り立ちます。(証明終)
問7 ★
すべての自然数 について、 が成り立つことを数学的帰納法で示しなさい。
[1] で両辺 。[2] を仮定すると、 の左辺 で成り立つ。
等式を ① とします。
[1] のとき、左辺 ,右辺 なので、① は成り立ちます。
[2] のとき ① が成り立つと仮定します。 のときの左辺は
となり、右辺の に を入れた式に等しいので、 のときも ① は成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について ① は成り立ちます。(証明終)
第3章 公式4 の「差に分けて打ち消す」でも同じ結果が得られます。
問8 ★
すべての自然数 について、 が成り立つことを数学的帰納法で示しなさい。
[1] で両辺 。[2] を仮定すると、 の左辺 で成り立つ。
等式を ① とします。
[1] のとき、左辺 ,右辺 なので、① は成り立ちます。
[2] のとき ① が成り立つと仮定します。 のとき最後の項は なので、左辺は
これは右辺の に を入れた に等しいので、 のときも ① は成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について ① は成り立ちます。(証明終)
第3章 例題6 で「ずらして引く」方法で求めた和です。
問9 ★★
で定まる数列 について、 を求めて一般項を推測し、それが正しいことを数学的帰納法で示しなさい。
、
,, なので、 …① と推測できます。
[1] のとき、 なので、① は成り立ちます。
[2] のとき ① が成り立つ、つまり と仮定すると( なので漸化式が使えます)
これは なので、 のときも ① は成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について です。(証明終)
問10 ★★
で定まる数列 について、 を求めて一般項を推測し、それが正しいことを数学的帰納法で示しなさい。
、
,, なので、 …① と推測できます。
[1] のとき、 なので、① は成り立ちます。
[2] のとき ① が成り立つ、つまり と仮定すると
( なので根号がそのまま外れます)。よって、 のときも ① は成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について です。(証明終)
問11 ★★
のすべての自然数 について、 が成り立つことを数学的帰納法で示しなさい。
[1] で 。[2] で と仮定すると 。
不等式を ① とします。
[1] のとき、左辺 ,右辺 なので、① は成り立ちます。
[2] として、 のとき ① が成り立つ、つまり と仮定すると
ここで なので、。よって、 のときも ① は成り立ちます。
[1],[2] より、 のすべての自然数 について ① は成り立ちます。(証明終)
では なので、出発点は にする必要があります。
問12 ★★
すべての自然数 について、 が成り立つことを数学的帰納法で示しなさい。
[1] で 。[2] 仮定から左辺 、これと の差は 。
不等式を ① とします。
[1] のとき、左辺 ,右辺 なので、① は成り立ちます(等号)。
[2] のとき ① が成り立つと仮定すると、 のときの左辺は
ここで、ゴールの右辺 との差をとると
なので、左辺 。よって、 のときも ① は成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について ① は成り立ちます。(証明終)
この結果から、 はいくら足しても を超えないことが分かります。
問13 ★★
すべての自然数 について、 は の倍数であることを数学的帰納法で示しなさい。
[1] 。[2] と仮定すると 。
[1] のとき、 は の倍数です。
[2] のとき成り立つ、つまり整数 を用いて と表せると仮定します。 から を引いて足す形に変形すると
は整数なので、 のときも成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について は の倍数です。(証明終)
底が 2 つあるときは、「仮定の式が現れるように、同じものを引いて足す」のがコツです。
問14 ★★
すべての自然数 について、 は の倍数であることを数学的帰納法で示しなさい。
[1] は の倍数。[2] で、 は偶数なので は の倍数。
[1] のとき、 は の倍数です。
[2] のとき成り立つ、つまり整数 を用いて と表せると仮定すると
は連続する 2 つの整数の積なので偶数で、整数 を用いて と表せます。よって
は整数なので、 のときも成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について は の倍数です。(証明終)
は連続する 3 つの整数の積なので、帰納法を使わずに「 の倍数と の倍数を必ず含む」と示すこともできます。
問15 ★★
とします。すべての自然数 について、 が成り立つことを数学的帰納法で示しなさい。
[1] で等号。[2] 仮定の両辺に を掛けて 。
不等式を ① とします。
[1] のとき、両辺とも なので、① は成り立ちます(等号)。
[2] のとき ① が成り立つ、つまり と仮定します。両辺に正の数 を掛けると
()。よって、 のときも ① は成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について ① は成り立ちます。(証明終)
この不等式は ベルヌーイの不等式 と呼ばれ、「 は を大きくするといくらでも大きくなる」ことを示すのに使われます(微分積分 第10章)。
問16 ★★
で定まる数列 について、 であることを数学的帰納法で示しなさい。
[1] ,。[2] を仮定すると 。
…① とします。
[1] のとき , のとき なので、① は成り立ちます。
[2] のとき ① が成り立つ、つまり , と仮定すると
よって、 のときも ① は成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について です。(証明終)
次の項を作るのに 2 つの項が要るので、[1] で の両方を確かめる必要があります。
問17 ★★★
とし、 とします。 が の解であることを用いて、すべての自然数 について は偶数であることを数学的帰納法で示しなさい。
、,。[2] が偶数と仮定すると も偶数。
の両辺に を掛けると 。 も同様なので、辺々足して
が成り立ちます。また , より
[1] のとき、, はどちらも偶数です。
[2] のとき がどちらも偶数であると仮定すると、 は偶数の和なので偶数です。よって、 のときも成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について は偶数です。(証明終)
を含む 2 つの数の 乗の和が、いつも整数(しかも偶数)になるのは、 が整数係数の 3 項間漸化式を満たすからです。
問18 ★★★
すべての自然数 について、 が成り立つことを数学的帰納法で示しなさい。
[1] 。[2] 仮定から左辺 、 より 。
不等式を ① とします。
[1] のとき、左辺 ,右辺 なので、① は成り立ちます。
[2] のとき ① が成り立つと仮定すると、 のときの左辺は
あとは 、つまり を示せばよいです。分子を有理化すると
なので、左辺 。よって、 のときも ① は成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について ① は成り立ちます。(証明終)
「もう一押し」の比較で、根号の差は分子の有理化で扱いやすい形に直すのが定石です。
問19 ★★★
すべての自然数 について、 個の整数の積 は の倍数であることを数学的帰納法で示しなさい。
[1] は の倍数。[2] の積 は の積の 倍。
とおきます。
[1] のとき、 は の倍数です。
[2] のとき成り立つ、つまり整数 を用いて と表せると仮定します。 のときの積は
で、 から最初の因数 を除き、 を掛けたものなので
は整数なので、 のときも成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について は の倍数です。(証明終)
( で , で 。)
問20 ★★★
で定まる数列 について、すべての自然数 で であることを数学的帰納法で示し、さらに であることを示しなさい。
[1] 。[2] なら は より大きく より小さい。 より 。
…① とします。
[1] のとき、 なので、① は成り立ちます。
[2] のとき ① が成り立つ、つまり と仮定すると、 なので
特に で、 のときも ① は成り立ちます。
[1],[2] より、すべての自然数 について です。
次に、① を使うと
, なので、 から です。(証明終)
項は と増えながら、 を超えません。こうした数列が に近づくことは、微分積分 第10章(数列の極限)で扱います。
数学的帰納法を使うと、とんでもないことが「証明」できてしまいます。
主張:どんな 頭の馬の群れでも、全部の馬は同じ色である。
[1] のとき、1 頭しかいないので、全部同じ色である。
[2] のとき成り立つと仮定する。 頭の群れから 1 頭目を除くと、残りは 頭なので、仮定により全部同じ色。今度は最後の 1 頭を除くと、やはり残りの 頭は同じ色。2 つのグループには共通の馬がいるので、 頭全部が同じ色になる。
世の中には茶色の馬も白い馬もいるので、どこかが間違っています。答えは [2] の「共通の馬がいる」ところです。 のとき、1 頭目を除いたグループは「2 頭目」だけ、最後を除いたグループは「1 頭目」だけで、共通の馬が 1 頭もいません。 ならこの議論は正しいのですが、肝心の 頭から 頭へのつながりが切れているのです。
ドミノで言えば、1 枚目は倒したし、3 枚目から先の間隔も正しいのに、1 枚目と 2 枚目の間だけが離れている状態です。[2] は「 がいくつでも」成り立つ必要があり、小さい でこっそり崩れていないかを確かめることが大切です。
このなぞなぞは、ハンガリー出身の数学者ジョージ・ポリアが紹介したものとして知られています(※最初に言い出した人や時期には諸説あり)。
豆知識
似た形の議論に「砂山のパラドックス」があります。砂山から砂粒を 1 粒取っても、砂山は砂山のままです。これを何度もくり返すと、最後は 1 粒、さらには 0 粒でも「砂山」になってしまいます。こちらは、「砂山」という言葉の境目がはっきりしないことが原因です。数学的帰納法で扱う主張は、どの についても正しいか正しくないかがはっきり決まっていなければなりません。
数学的帰納法の考え方は、少しずつ形になってきました。10〜11 世紀のペルシャの数学者アル=カラジーは、二項係数や の和を扱うとき、小さい場合から順に 1 つずつ次の場合を導く議論を使っていたとされます(※これを帰納法と呼べるかは研究者の間でも意見が分かれる)。
16 世紀のイタリアでは、フランチェスコ・マウロリコが 1575 年の著書で、奇数の和が平方数になること(本文の例題2(1))を、「前の場合から次の場合へ」の形で示しています。
はっきりとした 2 段の形で書いたのは、フランスのブレーズ・パスカルです。1654 年ごろに書かれ、1665 年に出版された『数三角形論』で、いわゆるパスカルの三角形の性質を示すとき、「第一に、最初の場合に成り立つ。第二に、ある場合に成り立てば、その次の場合にも成り立つ」と述べ、これで無限に多くの場合が示されたと結論しています(※「最初の人」については諸説あり)。本文の [1]・[2] そのものです。
「数学的帰納法」という名前は、19 世紀のイギリスの数学者オーガスタス・ド・モルガンが 1838 年に広めたとされます(※名前の由来には諸説あり)。
豆知識
「帰納」とは本来、いくつかの例から一般的な法則を推し量ることです。「毎朝太陽が昇ったから、明日も昇るだろう」という推理がそれにあたります。けれども数学的帰納法は、例をいくつ集めても結論を出さず、[1] と [2] から論理だけで結論を導きます。名前に「帰納」とありますが、中身は例から推し量る推理ではなく、正真正銘の証明なのです。
という形の数をフェルマー数といいます。 から計算すると
で、どれも素数です。17 世紀のフランスの数学者ピエール・ド・フェルマーは、1640 年ごろ、この形の数はすべて素数だろうと手紙に書きました(※フェルマー自身は「証明はできていない」とも述べていたとされる)。
5 つ続けて素数なら、ずっと素数でもおかしくない気がします。ところが 1732 年、スイスのレオンハルト・オイラーが、次の の数を割り切る数を見つけました。
素数ではなかったのです。その後の研究でも、 より先で素数になるフェルマー数は 1 つも見つかっていません。「すべて素数」どころか、素数だったのは最初の 5 つだけかもしれないのです。
数例がそろって見えることと、すべての場合に成り立つことの間には、大きな隔たりがあります。本文の最後で「見当は証明するまで見当」と書いたのは、こういう例があるからです。
豆知識
オイラーは、 という式も調べました。 を代入すると と素数が続き、 の まで 40 回続けて素数になります。ところが では で、素数ではありません。40 回続いても、証明にはならないのです。
※ここは発展ページです。本文では、[1]・[2] の 2 段で「すべての自然数について成り立つ」と結論しました。けれども、なぜこの 2 段で結論してよいのでしょうか。ここでは、その根拠を自然数の性質にさかのぼって整理し、出発点を変える形や 2 つ前まで仮定する形が、基本の形から導けることを示します。最後に、第1章・第6章・第7章で「厳密には第8章で」と予告しておいた証明を完成させます。
自然数全体の集合を とする。 は次の性質をもつ。
の部分集合 が、(a) 、(b) ならば 、の 2 つを満たすならば、 である。
主張 に対して とおくと、(a) は本文の [1]、(b) は [2] にあたる。
自然数を「 から始めて ずつ足してできる数」と考えると、この性質は当たり前に見えます。実際、19 世紀のイタリアの数学者ジュゼッペ・ペアノは、自然数を定める基本の約束(ペアノの公理)の 1 つとして、この性質をそのまま採用しました。つまり、帰納法は何か別のことから証明するものというより、自然数とは何かを決める約束の一部なのです。
ただし、別の性質を出発点にして、帰納法を証明することもできます。第5章の厳密定義で使った 整列性(自然数の空でない集合には、必ず最小の数がある)です。
自然数の空でない集合には必ず最小の数がある、と認める。このとき、[1] が成り立ち、[2] 任意の自然数 について ならば が成り立つならば、すべての自然数 について が成り立つ。
証明 が成り立たない自然数 があると仮定して矛盾を導く(背理法)。そのような 全体の集合は空でないので、最小の数 がある。[1] より なので、 も自然数である。 が最小だから は成り立ち、[2] で とすると が成り立つ。これは の選び方に反する。(証明終)
逆に、帰納法から整列性を導くこともできます。2 つは同じ内容を別の角度から述べたもので、どちらを出発点にしてもかまいません。定理1の証明は「反例があるなら、いちばん小さい反例を考える」という形をしていて、それ自体がよく使われる証明の技法です。
本文の公式3(出発点が )と公式4(2 つ前まで仮定)は、新しい原理ではなく、基本の形から導けます。
[1] が成り立ち、[2] を満たす任意の について ならば が成り立つならば、 のすべての自然数 について が成り立つ。
証明 を「 が成り立つ」とおく。[1] より が成り立つ。 が成り立つとき、 なので [2] より 、つまり が成り立つ。基本の帰納法より、すべての自然数 で が成り立つ。 は のすべての自然数を動くので、結論が得られる。(証明終)
[1] が成り立ち、[2] 任意の自然数 について「 がすべて成り立つならば が成り立つ」ならば、すべての自然数 について が成り立つ。
証明 を「 がすべて成り立つ」とおく。[1] より が成り立つ。 が成り立つとき、[2] より も成り立つので、 が成り立つ。基本の帰納法より、すべての で 、特に が成り立つ。(証明終)
本文の公式4は、定理3の特別な場合です。[2] で のときに だけを使い、 のときは [1] で確かめた を使えばよいからです。第7章の小話のカタラン数 のように、それまでのすべての項を使う漸化式について何かを示すときは、定理3の形が役に立ちます。
第6章の厳密定義で、「漸化式を満たす数列はただ 1 つ定まる(厳密には第8章で)」と書きました。存在のほうは、帰納的に項を定めていくことそのものなので、ここでは「ただ 1 つ」のほうを示します。
(1) 数列 が、同じ初項 と同じ漸化式 , を満たすならば、すべての で である。
(2) 数列 が、同じ初期条件 , と同じ 3 項間漸化式 , を満たすならば、すべての で である。
証明 (1) [1] 。[2] と仮定すると、。よって、すべての で 。
(2) [1] ,。[2] , と仮定すると、。公式4(定理3)より、すべての で 。(証明終)
この定理があるので、「見当をつけた一般項が漸化式と初期条件を満たす」ことを確かめれば、それが答えだと言い切れます。第6章の厳密定義で述べた「見当をつけた一般項の確かめ」や、第7章の定理3・定理4で最後に使った「同じ漸化式と同じ初期条件を満たすので一致する」という議論は、ここで完成しました。本文の例題1は、この確かめを帰納法の答案の形で書いたものです。
最後に、第1章の厳密定義で「厳密には帰納法で」と予告した、等差数列の一般項も示しておきます。
すべての で を満たす数列 は、 を満たす。
証明 [1] のとき、右辺は で成り立つ。[2] と仮定すると、。よって、すべての で成り立つ。(証明終)
第1章では「辺々足すと途中が打ち消し合う」と説明し、第3章では「…」を使わずに Σ を帰納的に定義しました。「…」や「以下同様に」と書いていた部分を、[1]・[2] の 2 段にきちんと置きかえる。これが、数学的帰納法が数列の分野全体の土台になっている理由です。等比数列の一般項 も、第3章の Σ の性質も、同じように帰納法で示せます。
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