問1
自然数の列を と、第 群が 個の数を含むように区切るとき、第 群の最初の数を求めなさい。
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(第 4 群までに 個)
目次 / 数列 / 数学B
—— 数列を区切って「第何群の何番目」と読みかえる方法と、表や組を使って和を求める工夫 ——
第4章の最後に、自然数を $1 \mid 2,\ 3 \mid 4,\ 5,\ 6 \mid \cdots$ と 1 個、2 個、3 個……ずつ区切ると、各まとまりの最初の数が $1,\ 2,\ 4,\ 7,\ \ldots$ になる、という話をしました。この章では、このように区切った数列=**群数列**を扱います。1 つの項を「初めから何番目か」と「第何群の何番目か」の 2 通りで呼べるようにすることが、すべての出発点です。後半では、数を表に並べて縦と横を入れかえる工夫と、符号が交互に変わる和を 2 項ずつ組にする工夫を学び、第3章の Σ の計算の幅を広げます。
第4章の最後に、自然数をこう区切ってみました。
このように、数列をある決まりでいくつかのまとまりに区切ったものを群数列といい、1 つ 1 つのまとまりを群と呼びます。左から順に第 1 群、第 2 群、第 3 群……です。上の例では、第 群にちょうど 個の項が入っています。
群数列では、1 つの項に 2 通りの番号が付きます。たとえば は「初めから数えて第 8 項」であり、同時に「第 4 群の 2 番目」でもあります。群数列の問題のほとんどは、この 2 つの番号を読みかえる作業です。
第 群の項数を とすると、第 群の最後の項は、初めから数えて
であり、第 群の最初の項は、初めから数えて
である。
最初の項の番号は「前の群までに並んだ個数 + 1」です。Σ の上端が になるので、第4章と同じく の断りが付きます。
少し変わったマンションを考えてみましょう。1 階に 1 部屋、2 階に 2 部屋、3 階に 3 部屋……と、上の階ほど部屋が増えていきます。1 階から順に、部屋に通し番号を付けていくと、4 階のいちばん手前の部屋は何番でしょうか。3 階までの部屋は 室なので、答えは 番です。階が群、階の中の部屋の並びが「群の中の何番目」、通し番号が「初めから何番目」にあたります。
群数列では「初めから何番目」と「第何群の何番目」を読みかえることが基本で、第 群の最初の項は、第 群までの項数に を足した番号になるということです。
自然数の列を、第 群が 個の数を含むように、次のように区切ります。
(1) 第 群の最初の数を求めなさい。
(2) 第 群に含まれる数の和を求めなさい。
【解答】
(1) のとき、第 群までに含まれる数の個数は
なので、第 群の最初の数は、初めから数えて第 項です。この数列は自然数そのもので、第 項は なので、最初の数は
を代入すると で、第 1 群の最初の数と一致します。よって 。
(2) 第 群の最後の数は、第 群までの個数 そのものです。第 群は、最初の数 から最後の数 まで、公差 で 個並んだ等差数列なので、第1章の公式5()より
( で となり、 と合っています。)
(1) の答えは、第4章の例題2で求めた数列 の一般項と同じ式です。第4章では「差が 」という手がかりから求め、ここでは「前の群までの個数 + 1」から求めました。同じ数列を、別の入り口から見たことになります。
今度は逆向きに、「初めから第 項」が第何群の何番目にあたるかを求めます。第 項が第 群にあるのは、第 群の最後の番号より後ろで、第 群の最後の番号までのところにあるときです。
第 項が第 群に入っているための条件は
である。このとき第 項は、第 群の 番目である。
章ごとにページ数が違う本で、「通しの 100 ページ目は第何章の何ページ目か」を調べる場面を思い浮かべてください。目次を見て、各章が何ページ目で終わるかを順に追い、100 ページ目を「前の章の終わり」と「その章の終わり」ではさめば、章が決まります。あとは、前の章の終わりのページ数を 100 から引けば、その章の中での何ページ目かが分かります。
実際に を探すときは、不等式をまともに解くより、見当をつけて代入するほうが早く済みます。第 群に 個入る群数列なら、第 群までの項数は で、およそ です。 なら が 前後、つまり は あたりだと見当がつきます。
第 項の場所は、群の終わりの番号で を両側からはさんで群を決め、前の群までの項数を引いて群の中の番号を出すということです。
次の群数列について、下の問いに答えなさい。
(1) 初めから数えて第 項を求めなさい。
(2) 初項から第 項までの和を求めなさい。
【解答】
第 群は の 個なので、第 群までの項数は です。
(1) , なので
よって第 項は第 群にあり、その 番目です。第 群は なので、第 項は 。
(2) 第 群の和は です。第 群から第 群までの和は、第3章の公式3を使って
これに第 群の から までの和 を足して、。
(2) は「完全に入っている群の和」と「最後の群の途中までの和」の 2 つに分けました。群数列の和では、この分け方がいつも使えます。
群の区切り方は、いつも数の大小で決まるとは限りません。次の例題では、区切りの決まりを見抜くことが決め手になります。
分数を、約分しないで次のように並べます。
(1) は初めから数えて第何項かを求めなさい。
(2) 初めから数えて第 項を求めなさい。
【解答】
各群を見ると、分子と分母の和が一定で、第 群では和が です。分子は と ずつ増えるので、第 群の 番目は で、第 群には 個の分数が入ります。
(1) は分子と分母の和が なので第 群にあり、分子が なのでその 番目です。第 群までの項数は なので、 より第 項。
(2) , で なので、第 項は第 群の 番目です。第 群は分子と分母の和が なので、分子 、分母 で 。
この並べ方をどこまでも続けると、正の分数はすべて、どこかの群のどこかに必ず現れます。 に「71 番」という番号が付いたように、どの分数にも番号が付くのです。この事実が数学の歴史で果たした役割は、小話で紹介します。
ここからは群数列を離れて、和の求め方の工夫を 2 つ学びます。1 つ目は、数を表(縦と横に並べたもの)に並べて足す方法です。
行 列に数が入った表のすべての数を足すとき、「行ごとに合計してから、行の合計を足す」ことも、「列ごとに合計してから、列の合計を足す」こともできます。行ごとに足すのを Σ で書くと、 のように Σ が 2 重になります。これを二重の Σ といい、かっこを省いて書くのがふつうです。計算は内側の Σ から行い、内側の Σ を計算しているあいだは、外側の文字 を定数として扱います(第3章 実践 j15 で、Σ の中の を定数として扱ったのと同じです)。
表の 行 列の数が (行の数と列の数の積)であるとき
また、有限個の数の和なので、行と列の足す順番を入れかえても値は変わらない。
内側の Σ では は定数なので、Σ の外に出せます(第3章の公式2)。 で、残った は によらない定数なので、今度はそれを外側の Σ の外に出せば公式3になります。
クラスの定期テストの点数表を考えてみてください。縦に生徒、横に科目が並んでいます。クラス全員の全科目の総得点は、生徒 1 人 1 人の合計点を出してから足しても、科目ごとのクラス合計を出してから足しても、同じ値になります。どちらの順で足すかは、計算しやすいほうを選べばよいのです。
表に並べると、もう 1 つ見えることがあります。かけ算の表では 行 列と 行 列に同じ数が入るので、対角線をはさんで右上と左下が鏡に映したようにそろいます。右上だけの和がほしいときは、「全体 − 対角線」を で割ればよいのです。
2 つの番号をもつ数の和は表に並べて考え、行と列のどちらから足してもよいことと、対角線をはさんだ対称性とを使って、計算しやすい形にするということです。
行 列の表の 行 列に、積 を書きます()。
(1) 表に書いたすべての数の和を求めなさい。
(2) を満たすマス(対角線より右上)に書いた数の和を求めなさい。
【解答】
(1) 公式3で , とすると
(2) 対角線のマスの数は なので、その和は です。右上と左下は同じ数の組なので、右上の和は
( で となり、 と合っています。)
(2) は、「 から までの異なる 2 つの数の積をすべて足したもの」でもあります。 と同じしくみで、 を展開すると、2 乗の項が対角線に、異なる 2 数の積が右上と左下に 1 回ずつ現れるのです。
2 つ目の工夫は、 と が交互に現れる和です。
1 項ずつ追いかけると、 と行ったり来たりして規則がつかみにくくなります。そこで、 と 2 項ずつ組にします。どの組も なので、 項までなら 組で です。
ただし、項の個数が奇数だと、最後に組になれない項が 1 つ余ります。そのため、答えは項数の偶奇で場合分けすることになります。
「3 歩進んで 2 歩下がる」歩き方を思い浮かべてください。1 歩ずつ位置を数えると前後に揺れて分かりにくいのですが、「進む+下がる」を 1 組にすれば、1 組で 1 歩ずつ前へ進む、とすっきり分かります。ただし、ちょうど「進んだ直後」に立ち止まったときは、最後の「進む」の分だけ別に足さなければなりません。
符号が交互に変わる和は 2 項ずつ組にして 1 つの数列の和に直し、項数が奇数のときは組にならない最後の項を別に足すということです。
を求めなさい。
【解答】
は、 が奇数なら 、偶数なら になるので、奇数の 2 乗は足し、偶数の 2 乗は引く、という意味です。
が偶数のとき ( は自然数)とおくと、 の組が 個なので
を代入して 。
が奇数のとき ( は自然数)とおくと、 から最後の を取り除いたものなので
を代入して 。
以上をまとめて
( で 、式でも 。 で 、式でも 。)
偶数の場合と奇数の場合で符号だけが違う、きれいな結果になりました。場合分けした 2 つの答えが 1 つの式にまとめられるときは、 や を使って書くと見通しがよくなります。
| 場面 | 工夫 | 注意 |
|---|---|---|
| 第 群の最初の項 | 第 群までの項数 + 1 番目 | 。 を確かめる |
| 第 項の場所 | 群の終わりの番号で をはさむ | 見当をつけて代入すると早い |
| 群数列の途中までの和 | 完全な群の和 + 最後の群の途中まで | 最後の群の個数を数え間違えない |
| 2 つの番号をもつ数の和 | 表に並べ、行と列を入れかえる・対称性を使う | 内側の Σ では外側の文字は定数 |
| 符号が交互の和 | 2 項ずつ組にする | 項数の偶奇で場合分け |
この章で何度も出てきた は、「前の項にその番号を足すと次の項になる」という決まり
でも作れます。このように、前の項から次の項を決める式を漸化式といいます。第4章 実践 j18 の も漸化式の一種です。次の第6章では、漸化式から一般項を求める方法を、等差・等比・階差数列に帰着させる形で学びます。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
自然数の列を と、第 群が 個の数を含むように区切るとき、第 群の最初の数を求めなさい。
(第 4 群までに 個)
問2
第 群が 個の項を含む群数列で、第 群から第 群までに含まれる項の個数を求めなさい。
()
問3
群数列 の、初めから数えて第 項を求めなさい。
(第 5 群までに 15 項、第 6 群までに 21 項なので、第 6 群の 5 番目)
問4
を求めなさい。
()
問5
を求めなさい。
( で が 組)
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
自然数の列を と、第 群が 個の数を含むように区切ります。第 群の最初の数と最後の数を求めなさい。
最初の数 ,最後の数
第 群までに含まれる数の個数は なので、第 群の最初の数は第 項で、 です。 第 群までの個数は なので、最後の数は です。 (第 群は から までの 個で、個数も合っています。)
問2 ★
自然数の列を と、第 群が 個の数を含むように区切るとき、第 群に含まれる数の和を求めなさい。
第 群は から までの 個(j01)で、公差 の等差数列です。第1章の公式5より
本文の例題1(2) の式 に を代入しても です。
問3 ★
自然数の列を と、第 群が 個の数を含むように区切るとき、 は第何群の何番目にあるかを求めなさい。
第 群の 番目
この数列の第 項は なので、 は第 項です。第 群までの個数は で
よって第 群にあり、 より 。
問4 ★
正の偶数の列を と、第 群が 個の数を含むように区切るとき、第 群の最初の数を求めなさい。
のとき、第 群までの個数は なので、第 群の最初の数は第 項です。正の偶数の列の第 項は なので
を代入すると で、第 1 群の最初の数と一致するので 。 ( で 。)
問5 ★
群数列 の、初項から第 項までの和を求めなさい。
第 群までの項数は で、第 群までが 項、第 群までが 項です。よって第 項は第 群の 番目です。 第 群の和は なので、第 群から第 群までの和は
これに第 群の を足して 。
問6 ★
自然数の列を と、第 群が 個の数を含むように区切るとき、第 群の最初の数を求めなさい。
のとき、第 群までの個数は、初項 、公比 、項数 の等比数列の和で
なので、第 群の最初の数は です。 のときも で一致するので 。 各群の最初の数が と の累乗になっています。
問7 ★
を求めなさい。
内側の Σ では を定数として扱います。 を 個足すと なので
次に外側の Σ を計算します。 は によらない定数なので、 個足して
( で 、式でも 。)
問8 ★
を求めなさい。
から までの奇数は 個です。2 項ずつ組にすると
で、どの組も 、組は 個なので 。
問9 ★★
分数を と、第 群が分母 、分子 の 個になるように約分しないで並べます。初めから数えて第 項と、初項から第 項までの和を求めなさい。
第 項 ,和
第 群までの項数は で、 なので、第 項は第 群の 番目、つまり です。 第 群の和は なので、第 群から第 群までの和は
第 群の 番目までの和は なので、合わせて
問10 ★★
分数を約分しないで と並べるとき、 は初めから数えて第何項かを求めなさい。
第 項
第 群は分子と分母の和が で、分子が と ずつ減っていきます(本文の例題3とは並びが逆です)。 は分子と分母の和が なので第 群にあります。第 群の分子は なので、分子 は 番目です。 第 群までの項数は なので、 より第 項。 群の中の番号は、分子 に対して 番目(ここでは )と求めることもできます。
問11 ★★
自然数の列を と、第 群が 個の数を含むように区切るとき、第 群に含まれる数の和を求めなさい。
第 群の最初の数は (j06)、最後の数は第 群までの個数 です。第 群は公差 、項数 の等差数列なので
( で 、。 でも と合っています。)
問12 ★★
自然数の列を と、第 群が 個の数を含むように区切るとき、 は第何群の何番目にあるかを求めなさい。
第 群の 番目
第 群は から まで(j06・j11)なので、 となる を探します。 , なので で、 です。 第 群の最初の数は なので、 は 番目。よって 。 で止めると になり、 つずれます。最初の数 自身が 番目なので を足します。
問13 ★★
群数列 (第 群は が 個)の、初項から第 項までの和を求めなさい。
第 群までの項数は で、 なので、第 項は第 群の 番目です。 第 群の和は なので、第 群から第 群までの和は
第 群は が並ぶので、 番目までの和は 。合わせて 。
問14 ★★
の中から異なる 2 つの数を選んで掛けた積を、すべての選び方について足した和を求めなさい。
行 列の表の 行 列に を書くと、求める和は のマス(対角線より右上)の和です。 表全体の和は 、対角線の和は です。右上と左下は同じなので
本文の例題4(2) の式 に を入れても です。
問15 ★★
を求めなさい。
項は全部で 個なので、2 項ずつ組にすると 組です。 番目の組は、共通因数 でくくって
よって求める和は
( で 、式でも 。)
問16 ★★
自然数の列を と、第 群が 個の数を含むように区切るとき、第 群に含まれる数の和を求めなさい。
第 群までの個数は (第1章の奇数の和)なので、第 群の最後の数は です。 のとき最初の数は で、これは でも となり成り立ちます。 第 群は公差 、項数 の等差数列なので
( で 、 で 。)各群の最後の数が平方数 になっています。
問17 ★★★
群数列 で、初項から第 項までの和が初めて を超えるような を求めなさい。
第 群の和は なので、第 群から第 群までの和は
で , で なので、和が を超えるのは第 群の途中です。 第 群の初めから 番目までの和は で、、つまり となる最小の を探します。 で 、 で なので 。 第 群までの項数は なので、。 (第 項までの和は 、第 項までは です。)
問18 ★★★
分数を約分しないで と並べます。分子と分母が等しい項()のうち、初めから数えて 番目に現れるものは、第何項かを求めなさい。
第 項
第 群は分子と分母の和が 、分子が です(本文の例題3)。分子と分母が等しい項 は、和が なので第 群にあり、分子が なのでその 番目です。 は奇数番目の群にだけ 1 つずつ現れ、 が小さい順に並びます。よって 番目は で、第 群の 番目です。 第 群までの項数は なので、 より第 項。 (確かめ: は第 群の 番目で第 項。式 に を入れても です。)
問19 ★★★
行 列の表の 行 列に、 と のうち大きくないほう(等しいときはその値)を書きます。これを と表すとき、表に書いたすべての数の和 を求めなさい。
行ごとに足す代わりに、「同じ値が書かれたマス」ごとにまとめて数えます。 値が ()になるのは、 の マス、 で の マス、 で の マスで、合わせて マスです。よって
( で 、式でも 。)答えは と同じ値になります。
問20 ★★★
第 群が の 個の数からなる群数列 について、 が初めて現れるのは初めから数えて第何項か、また は全部で何回現れるかを求めなさい。
第 項, 回
が第 群に含まれるのは、 のときです。 より なので、 の つの群に 回ずつ現れ、全部で 回です。 初めて現れるのは第 群 の 番目です。第 群までの項数は なので、 より第 項。 第 群は から始まるので、それより後ろの群に は現れません。
自然数 と、正の分数。どちらのほうが「たくさん」あるでしょうか。分数は と のあいだだけでも と隙間なく詰まっていて、自然数よりずっと多そうに見えます。
19 世紀の後半、ドイツの数学者ゲオルク・カントールは、無限にあるものどうしの「多さ」を比べる方法を考えました。2 つの集まりのあいだで、1 つずつ漏れも重なりもなく組にできれば、同じ多さだとみなす、というものです。
分数に当てはめてみましょう。分子を縦に、分母を横にとった表を作り、分子と分母の和が同じ分数を斜めにたどっていきます。
これは本文の例題3の群数列そのものです。この列には、どんな正の分数も必ずどこかに現れます。 が第 71 項だったように、すべての分数に「背番号」が付くのです。 のように約分できるものは飛ばして番号を詰めれば、正の分数と自然数とが 1 つずつ組になります。つまり、隙間なく詰まって見える分数も、自然数と同じ多さしかありません。表を斜めにジグザグとたどるこの方法は、カントールの名前とともに紹介されることが多いものです(※誰がどの形で最初に示したかには諸説あり)。
ところがカントールは、実数( や まで含めた数)には、どう工夫しても背番号を付けきれないことも証明しました。無限にも「大きさの違い」がある。この発見は当時の数学者たちを驚かせ、強い反発も受けましたが、今では集合論として数学の土台になっています。
豆知識
「ヒルベルトのホテル」という話があります。部屋が無限にあり、しかも満室のホテルに、新しい客が 1 人やってきました。支配人は、1 号室の客を 2 号室へ、2 号室の客を 3 号室へ……と全員を 1 つずつ隣へ移し、空いた 1 号室に新しい客を泊めます。無限の世界では「満室なのに泊まれる」のです。ドイツの数学者ダフィット・ヒルベルトが 1920 年代の講義で話したとされています(※時期や細部には諸説あり)。
本文の例題5では、符号が交互に変わる和を 2 項ずつ組にして求めました。では、この和をどこまでも無限に続けたらどうなるでしょうか。
2 項ずつ組にすると です。ところが、最初の を残して組を 1 つずらすと になります。組の作り方を変えただけで、答えが変わってしまいました。
18 世紀のはじめ、イタリアの修道士で数学者のグイド・グランディは、この和を論じ、答えは だと考えました(※1703 年ごろとされる)。和を とおくと なので 、というわけです。グランディは、 を並べた和から が生まれることを、無からの創造にたとえたとも伝えられています(※解釈には諸説あり)。ライプニッツやオイラーといった大数学者もこの問題に意見を述べ、議論は長く続きました。
今では、次のように考えます。初めから 項までの和(部分和)を並べると で、例題5と同じく の偶奇で値が変わり、1 つの値に落ち着きません。そのため、この無限の和は「値を持たない」とするのです。有限個の和なら、どう組にしても、どう並べかえても値は変わりません。例題5で安心して組にできたのは、項が有限個だったからです。
豆知識
部分和 の「平均」をとると、 となり、 に近づいていきます。19 世紀の終わりにイタリアの数学者エルネスト・チェザロが整えたこの考え方(チェザロ和)では、グランディの級数の値は確かに になります。無限に続く和の意味は、微分積分の第10章でくわしく学びます。
小学校で覚えた九九の表には、 から まで 81 個の数が並んでいます。これを全部足すといくつになるでしょうか。
1 つずつ足すと大変ですが、本文の例題4(1) を使えば一瞬です。 として
2025 年は、ちょうど平方数の年でした。前の平方数の年は 年、次は 年です。平方数の年は 90 年前後に 1 度しか来ません。
しかも は、第3章で学んだ 3 乗の和の公式により
でもあります。九九の表の総和、 の 2 乗、 から までの 3 乗の和。3 つの顔をもつ数なのです。ついでに例題4(2) の式で対角線より右上を足すと 、対角線()は で、 ときちんと合います。
豆知識
を真ん中で と に分けて足すと 。もとの に戻ります。2 乗して、できた数を前後に分けて足すと元の数に戻る数を、インドの数学者 D. R. カプレカルにちなんでカプレカー数と呼びます。 もその 1 つで、、。 なので、 は 10 の段までのかけ算の表の総和でもあります。
※ここは発展ページです。本文では、群数列を「前の群までの項数」で読みかえ、和を群ごと・表の行ごとにまとめて計算しました。ここでは、群の区切りを式で定義し直し、「どの項もただ 1 つの群に入る」ことを証明します。さらに、和を群ごとに分けてよいこと、二重の Σ の順番を入れかえてよいことを、第3章の厳密定義(Σ の帰納的な定義)をもとに整理します。最後に、無限に続く和ではこれらが成り立たないことがある、という注意で締めくくります。
自然数の列 (すべて )に対し
とおく。数列 の第 項から第 項までを第 群と呼び、このように数列を区切ったものを群数列という。 は第 群の項数、 は第 群までの項数である。
は第3章の空和の約束です。これのおかげで、第 1 群も「第 項から第 項まで」と、ほかの群と同じ形で書けます。本文の公式1で と断ったのは、この約束を使わなかったからです。
定義1の群分けで、どの自然数 に対しても
を満たす自然数 がただ 1 つ存在する。
証明 (存在) より なので、 である。よって を満たす自然数 は少なくとも 1 つあり、そのうち最小のものを とする。 なら 。 なら、 の最小性から 。いずれにしても である。
(ただ 1 つ) である 2 つがともに条件を満たすとすると、 より は増加するので 。すると となり矛盾する。(証明終)
証明の中で「条件を満たす自然数があれば、その中に最小のものがある」という性質を使いました。当たり前に見えますが、自然数の大切な性質の 1 つで、第8章の数学的帰納法と深く結びついています。
第 群が 個の項を含む場合は、 なので、群の番号を式で書き表すこともできます。
のとき、第 項が入っている群の番号 は
である。ここで は 以上の最小の整数を表す。第 項は第 群の 番目である。
証明 条件 を 2 つに分ける。 は で、 より ,ただし 。同様に は で、 より 。よって で、この範囲にある整数は ただ 1 つである。(証明終)
本文の例題2では でした。 なので , です。本文で「 が 前後」と見当をつけたのは、 がほぼ であることを使っていたわけです。答案では、この式よりも、見当をつけて を確かめる本文の方法のほうが確実です。
定義1の群分けで、すべての自然数 について
証明 右辺のかっこの中は第 群の和である。第 群から第 群までを順に並べると、定理1より第 項から第 項までの各項がちょうど 1 回ずつ現れる。第3章の定義1( と 1 項ずつ足していく定義)により、第 群の項を足し終えた時点の和は なので、 が成り立つ。これを から まで順に使うと、 から出発して は右辺に等しい。(厳密には第8章の数学的帰納法で示す。)(証明終)
本文の例題2(2) の「完全に入っている群の和 + 最後の群の途中までの和」は、この定理に最後の半端な群を加えたものです。
有限個の数 について、次が成り立つ。
証明 どちらの式も、両辺は同じ有限個の数(1 つ目は長方形の表のすべてのマス、2 つ目は を満たすマス)を、それぞれ 1 回ずつ足したものである。有限個の数の和は、交換法則と結合法則をくり返し使えば、足す順番や組み方によらない。(証明終)
2 つ目の式は、三角形に並んだマスを「行ごと」に足すか「列ごと」に足すかの違いです。これを使うと、第2章の実践 j18 や第3章の例題6で扱った(等差)×(等比)の和が、ずらして引く方法とは別の道筋で求まります。
1 つ目の等号は「 を が 個」と見たもの、3 つ目は です。( で 、式でも 。)
最後に注意です。定理3と定理4は、どれも有限個の和についての定理でした。項が無限に続く和では、組の作り方や足す順番を変えると値が変わってしまうことがあります。小話2のグランディの級数 がその例です。さらに 19 世紀の半ば、ドイツの数学者ベルンハルト・リーマンは、ある種の無限の和では、項の順番を並べかえるだけで、和をどんな値にでもできることを示しました(リーマンの再配列定理)。無限に続く和をいつ安心して扱えるかは、微分積分の第10章で学びます。
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