問1
数列 の階差数列の初めの 4 項を求めなさい。
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(後ろの項 − 前の項)
目次 / 数列 / 数学B
—— となりどうしの差を足し戻す方法と、和 S_n から第 n 項を取り出す方法 ——
第3章の最後に、$1,\ 2,\ 4,\ 7,\ 11,\ 16,\ \ldots$ の第 $n$ 項はどう表せるか、という問いを残しました。もとの数列には等差・等比のような規則が見えなくても、となりどうしの差を並べると簡単な数列になることがあります。この章では、その「差の数列」=**階差数列**を Σ で足し戻して、もとの数列の一般項を求めます。後半では逆向きに、初項から第 $n$ 項までの和 $S_n$ が分かっているときに、第 $n$ 項 $a_n$ を取り出す方法を学びます。どちらの公式も $n \geqq 2$ のときだけ使える、という共通の注意点があります。
第3章の最後に、こんな問いを残しました。
となりどうしの比は で一定ではなく、差も一定ではないので、等差数列でも等比数列でもありません。ところが、差を順に並べてみると
で、 というおなじみの数列が現れます。もとの数列には規則が見えなくても、差の並びには規則が見える。この章は、その差の並びを手がかりにする方法から始めます。
数列 に対し、となり合う 2 項の差
を第 項とする数列 を、 の階差数列という。
第1章で名前だけ紹介した言葉が、ここで本格的に登場しました。引く順番は「後ろの項 − 前の項」です。 は と のあいだ、 は と のあいだ……というように、階差数列の項は、もとの数列の項と項の「すき間」に 1 つずつ入っています。
登山道を思い浮かべてください。地図には、地点ごとに標高が書いてあります。1200 m、1235 m、1275 m……と数字だけ見ても、規則はつかみにくいものです。けれども「次の地点まで何 m 登るか」を区間ごとに書き出すと、35 m、40 m、45 m……のように、ずっと分かりやすい並びになることがあります。標高の表がもとの数列 、区間ごとの登りが階差数列 です。下り坂の区間では、登りがマイナスになります。
第2章で並べた対比表を思い出すと、等差数列は階差数列が一定(公差 がずっと続く)の数列、ということもできます。
となり合う項の差「後ろ − 前」を順に並べた数列が階差数列で、もとの数列に規則が見えないときの手がかりになるということです。
(1) 数列
(2) 数列
上の各数列の階差数列 の一般項を求めなさい。
【解答】
(1) 差をとると で、初項 、公差 の等差数列です。
(2) 差をとると で、初項 、公比 の等比数列です。
(2) のように、等比数列の階差数列は、もとと同じ公比の等比数列になります。 なら だからです。
今度は逆に、階差数列が分かっているとき、もとの数列を求めます。 から始めて、 を 1 つずつ足していくと
となり、第 項は
です。足す は から までの 個。 から までのあいだに「すき間」は か所しかないので、足す差も 個です(第1章の植木算と同じ数え方です)。
子どものころ、誕生日ごとに柱へ背の高さの印を付けた人もいるでしょう。今の背の高さは「最初の印の高さ + 毎年伸びた分の合計」です。 回目の印までに、伸びは 回。そして 1 回目の印を付けた時点では、伸びはまだ 1 回も足していません。この「1 回目だけは足すものがない」という事情が、次の公式の という条件になります。
数列 の階差数列を とすると、 のとき
の断りは必ず書きます。 を入れると Σ の上端が になり、「 番から 番まで足す」という意味の分からない式になってしまうからです。そこで答案では、
という 3 段で書きます。Σ の中の和の公式は、 のように、第3章の公式の を に置きかえて使います。
実はこの公式、第3章ですでに見たしくみです。 を から まで足すと
と途中がすべて打ち消し合います。これは第3章の公式4(差に分けて打ち消し合う和)そのものです。第3章で を足し並べて 2 乗の和を求めたのも、「数列 の階差数列 を足し戻した」と言いかえられます。
もとの数列の第 項は、初項に階差数列を から まで足したもので、 で求めた式が でも合うかを最後に確かめるということです。
数列 の一般項 を求めなさい。
【解答】
階差数列は で、 です。 のとき
を代入すると で、 と一致します。よって、これは のときも成り立ち
( で となり、第 6 項と合っています。)
数列 の一般項 を求めなさい。
【解答】
階差数列は で、初項 、公比 の等比数列なので です。 のとき、 は項数 の等比数列の和なので
を代入すると で、 と一致します。よって
( で 。)
等比数列の和の公式を使うときは、項数が ではなく になる点に気をつけましょう。 の指数は、この「項数 」から来ています。
1 回差をとっても規則が見えないときは、階差数列の階差数列をとってみます。登山道の例なら、「区間ごとの登りが、区間ごとにどれだけ増えるか」を見るということです。規則が見えたら、足し戻しを 2 回行います。まず階差数列 を求め、それを使って を求めます。
1 回の差で規則が見えなければもう 1 回差をとり、分かった数列から順に公式2で足し戻すということです。
数列 の一般項 を求めなさい。
【解答】
差をとると (これを とする)、さらに差をとると で、 です。
まず を求めます。 のとき
これは のとき で、 と一致するので、すべての で です。
次に です。 のとき
2 項目以降を でくくると
なので
を代入すると で、 と一致します。よって
( で 、 で 。)
この数列は、差をとるたびに「番号の式」の次数が 1 つずつ下がっていきます。 は の 3 次式、 は 2 次式、その差 は 1 次式、もう 1 回差をとると で一定になります。「何回差をとると一定になるか」と「何次式か」の関係は、厳密定義のページで確かめます。
ここまでは「差」から数列を求めました。今度は「和」から求めます。第3章の厳密定義の最後で予告した内容です。
初項から第 項までの和を とします。
上から下を引くと、 から までが消えて、 だけが残ります。ただし が意味を持つのは 、つまり のときです。 だけは、 から別に求めます。
スマートフォンの歩数計には、旅行の 1 日目からの累計歩数を表示するものがあります。5 日目に歩いた歩数は、「5 日目までの累計 − 4 日目までの累計」で分かります。けれども 1 日目には「前日までの累計」がありません。1 日目の歩数は、1 日目の累計そのものです。
数列 の初項から第 項までの和を とすると
公式2と同じく、 で求めた式が でも使えるとは限りません。 と比べて、一致すれば 1 つの式にまとめ、一致しなければ と の式を分けて答えます。
なので、 は「和の数列 の階差数列」を 1 つずらしたものです。Σ で足すことと、差をとることは、互いに元へ戻す操作になっているのです。
第 項は「 項までの和 − 項までの和」で求まり、それが使えるのは だけなので、 は から別に求めて比べるということです。
数列 の初項から第 項までの和 が、次の式で表されます。
(1)
(2)
それぞれの場合について、一般項 を求めなさい。
【解答】
(1) 。 のとき
を代入すると で、 と一致します。よって 。
(2) 。 のときは、定数項の が引き算で消えるので、(1) と同じく です。ところが を代入すると で、 と一致しません。よって
(2) の数列は で、第 2 項からは公差 の等差数列ですが、全体では等差数列ではありません。第1章の厳密定義で「等差数列の和は定数項 の 2 次式」と書きました。 に定数項があると、初項だけが仲間はずれになるのです。和の式を見たら、まず定数項に目を向けると、答えを 1 つの式にまとめられるかどうかの見当がつきます。
一般項を求める手がかりと道具をまとめておきます。
| 手がかり | 道具 | 注意 |
|---|---|---|
| となりどうしの差に規則がある | 公式2 | 。最後に を確かめる |
| 1 回の差では規則が見えない | 階差数列の階差数列をとり、2 回足し戻す | Σ の上端は |
| 和 が分かっている | 公式3 | 。 と比べる |
次の第5章では、数列をいくつかのまとまりに区切って考える群数列を学びます。たとえば
と、 個、 個、 個……ずつ区切ったとき、各まとまりの最初の数を並べると 。この章の例題2の数列が、ここにもう一度現れます。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
数列 の階差数列の初めの 4 項を求めなさい。
(後ろの項 − 前の項)
問2
で、階差数列が である数列 の第 5 項 を求めなさい。
()
問3
数列 の階差数列を とすると、 のとき が成り立ちます。 に入る式を求めなさい。
(足す差は から までの 個)
問4
数列 の初項から第 項までの和が のとき、 を求めなさい。
()
問5
数列 の初項から第 項までの和が のとき、初項 を求めなさい。
()
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
数列 の階差数列 の一般項を求めなさい。
後ろの項から前の項を引いて並べます。
初項 、公差 の等差数列なので
問2 ★
数列 の一般項 を求めなさい。
階差数列は で、 です。 のとき
を代入すると で、 と一致するので、 のときも成り立ちます。
( で 。)
問3 ★
数列 の一般項 を求めなさい。
階差数列は で、 です。 のとき
を代入すると で、 と一致するので
( で 。)
問4 ★
数列 の一般項 を求めなさい。
階差数列は で、初項 、公比 の等比数列なので です。 のとき、項数 の等比数列の和を使って
を代入すると で、 と一致するので
問5 ★
数列 の一般項 を求めなさい。
階差数列は で、 です。減っていく数列では、差がマイナスになります。 のとき
を代入すると で、 と一致するので
( で 。)
問6 ★
数列 の初項から第 項までの和 が で表されるとき、一般項 を求めなさい。
。 のとき
を代入すると で、 と一致するので 。
問7 ★
数列 の初項から第 項までの和 が で表されるとき、一般項 を求めなさい。
。 のとき
を代入すると で、 と一致しません。よって
に定数項 があるので、初項だけが式からはずれます。
問8 ★
数列 の初項から第 項までの和 が で表されるとき、一般項 を求めなさい。
。 のとき
を代入すると で、 と一致するので 。 初項 、公比 の等比数列です。第2章の和の公式で となり、確かに に戻ります。
問9 ★★
数列 の一般項 を求めなさい。
階差数列は で、三角数 です(さらに差をとると となることからも確かめられます)。 のとき
を代入すると で、 と一致するので
( で 。)第3章 例題4の結果 で を に置きかえても、同じ Σ が求まります。
問10 ★★
数列 の一般項 を求めなさい。
階差数列は で、 です。 のとき、2 乗の和の公式の を に置きかえて
を代入すると で、 と一致するので
( で 。)
問11 ★★
数列 の初項から第 項までの和 が で表されるとき、一般項 を求めなさい。
。 のとき、 として でくくると
を代入すると で、 と一致するので 。 ( で、 と合っています。)
問12 ★★
数列 の初項から第 項までの和 が で表されるとき、一般項 と、和 を求めなさい。
,
。 のとき、共通因数 でくくって
を代入すると で、 と一致するので 。 次に、第3章の公式4(差に分けて打ち消し合う和)を使います。
( で となり、 と合っています。)
問13 ★★
数列 の一般項 を求めなさい。
階差数列は です。どれも の累乗より 小さいので、 です(さらに差をとると の等比数列)。 のとき、 は初項 、公比 、項数 の等比数列の和なので
を代入すると で、 と一致するので
( で 。) は を 個足すので です。 にしないよう注意します。
問14 ★★
で、階差数列の第 項が である数列 の一般項を求めなさい。
のとき、 と差に分けて
途中が打ち消し合い、最初の と最後の だけが残ります(上端が なので、最後は )。 を代入すると で、 と一致するので
問15 ★★
数列 の初項から第 項までの和 が ( は定数)で表されます。 が等差数列となるような の値を求めなさい。
。 のとき
なので、第 2 項以降は と公差 の等差数列です。全体が等差数列になるには、 も であればよく
は引き算で消えてしまうので、 の式だけ見ていても求まりません。初項 を比べるのが決め手です。
問16 ★★
数列 の初項から第 項までの和を求めなさい。
まず一般項を求めます(本文の例題2)。階差数列は なので、 のとき で、これは のときも成り立ちます。 よって求める和は
( で 、式でも 。)
問17 ★★★
数列 が、すべての自然数 について を満たすとき、一般項 を求めなさい。
左辺を とおくと、 は数列 の初項から第 項までの和です。公式3を に使います。 のとき 。 のとき
なので両辺を で割って 。 を代入すると で、 と一致するので 。 引き算で出てくるのは ではなく です。最後に で割るのを忘れないようにします。
問18 ★★★
数列 の初項から第 項までの和 が、すべての自然数 について を満たすとき、一般項 を求めなさい。
のとき なので、 より 。 のとき、 と を引くと、左辺は なので
よって ()です。どの項も前の項の 倍なので、 は初項 、公比 の等比数列です(第2章の公式1)。
(確かめ:、 で一致します。)
問19 ★★★
数列 の階差数列 は公差 の等差数列で、, です。一般項 を求めなさい。
とおくと、, です。 より
よって 。 のとき
を代入すると で、 と一致するので 。 平方数 の階差数列が奇数 になる、という第1章の「奇数の和は 」の裏返しです。
問20 ★★★
平面上に 本の直線を、どの 2 本も平行でなく、どの 3 本も 1 点で交わらないように引きます。これらの直線によって平面が分けられる部分の個数を とするとき、 を の式で表したものを求めなさい。
直線が 1 本なら平面は つに分かれるので です。 本引いたところへ 本目を引くと、この直線はほかの 本と 個の点で交わり(平行な直線も、3 本が集まる点もないので、交点はちょうど 個で重ならない)、 本の線分・半直線に分けられます。その 1 本 1 本が、通り道にある部分を 2 つに分けるので、部分は 個増えます。つまり
で、階差数列は です。 のとき
を代入すると で、 と一致するので
( で 、 で 。 とすると で、直線がないとき平面は つ、とも合っています。)
19 世紀のはじめ、船の航海や天文の計算には、対数表や星の位置の表など、数字がびっしり並んだ「数表」が欠かせませんでした。数表は、計算を仕事にする人たちが手で計算して作り、それを活字に組んで印刷します。どこかで 1 けたでも間違えれば、その表を使った船が進路を誤るかもしれません。
イギリスの数学者チャールズ・バベッジは、こうした誤りの多い数表に頭を悩ませ、1822 年ごろ、計算を歯車に任せる機械を提案しました。これが階差機関です。
しくみの中心は、この章の階差数列です。たとえば の表を作るとします。
2 回目の差はずっと です。そこで「2 回目の差 を 1 回目の差に足す」「1 回目の差を表の値に足す」という 2 つの足し算をくり返せば、、……と、掛け算を 1 度も使わずに次々と の値が出てきます。多項式なら、何回か差をとると必ず一定になります(厳密定義のページで確かめます)。だから、足し算の歯車を何段か重ねれば、多項式の表をいくらでも作れるのです。
ところが、当時の技術で精密な歯車を大量に作るのは難しく、資金も途切れて、階差機関は完成しませんでした。バベッジはのちに改良版の「階差機関 2 号」を設計しましたが、これも生前には作られていません。
それから 100 年以上たった 1991 年、バベッジの生誕 200 年を記念して、ロンドンの科学博物館が設計図どおりに階差機関 2 号の計算部分を組み立てました。約 8000 個の部品からなる重さ約 5 トンの機械は、設計どおりに計算をこなしたといいます。バベッジの設計は正しかったのです。
豆知識
英語の computer(コンピュータ)は、もともと機械ではなく「計算する人」を指す言葉でした。数表づくりや天文台の計算は、大勢の計算手が分担して手で進めていたのです。今では computer と聞いて人を思い浮かべる人はほとんどいません。
円の周の上に点をいくつかとり、どの 2 点も弦(まっすぐな線分)で結びます。ただし、円の内側で 3 本以上の弦が 1 点に集まらないように、点の位置を選びます。このとき、円の内側はいくつの部分に分かれるでしょうか。
点が 個なら、線は引けないので つのまま。 個なら弦が 1 本で つ。 個なら三角形ができて つ。 個なら つ、 個なら に分かれます。
ここまで来れば、だれでも「次は 」と言いたくなります。ところが、点を 個にして数えると、どう点を置いても(3 本の弦が 1 点に集まらないかぎり) にしかなりません。倍々の予想は、6 個目であっさり外れるのです。
この章の方法で、差をとってみましょう。点が 個のときは です。
2 回目の差に、この章の冒頭の数列 が現れました。そして 4 回目の差で一定になるので、部分の個数は点の個数 の 4 次式で表されます。実際に
です。 で と倍々に見えたのは、たまたまだったのです。この問題は、数学者レオ・モーザーの名前をとって「モーザーの円分割問題」と呼ばれることがあります(※名前の由来には諸説あり)。
豆知識
第1章の例題で「最初の数項だけでは、規則は 1 通りに決まらない」と書きました。円を分ける問題は、その見本のような例です。数項を見て立てた予想が本当に正しいかを確かめるには、証明が要ります。そのための道具が、第8章で学ぶ数学的帰納法です。
数列を調べていて、 のような並びが出てきたとします。「この数列、どこかで見たことがあるような……」。そんなときに引ける、数列の辞書があります。オンライン整数列大辞典(OEIS)です。
始まりは 1964 年。アメリカの大学院生だったニール・スローンが、研究中に出会った数列をカードに書きためたことでした。1973 年にはそれを本にまとめ、1996 年にはウェブで公開します。今では、世界中の数学者や愛好家が数列を登録し、数十万件の数列が集まっています。検索窓に数を並べて入れると、その並びを含む数列と、一般項・由来・関連する論文までが表示されます。
この章の冒頭の を引いてみると、A000124 という番号とともに、少し変わった名前が出てきます。英語で lazy caterer's sequence、訳すと「怠け者の仕出し屋の数列」です。
料理を届ける仕出し屋が、大きな丸いパイをできるだけ少ない回数で、できるだけ多くの切れに分けたい。包丁をまっすぐ 回入れると、最大で何切れになるか。 回なら 切れ、 回で 切れ、 回で 切れ、 回で 切れ……。切れの大きさがそろわなくても気にしない、という「怠け者」ぶりが名前の由来です。これは実践 j20 の「直線で平面を分ける」問題とほぼ同じで、 回切ったときの最大の切れ数は になります。
豆知識
OEIS に と入れると、倍々の数列( の累乗)だけでなく、小話2の円を分ける数列をはじめ、この 5 つの数で始まる数列が数多く出てきます。「最初の数項だけでは規則は決まらない」ことが、検索結果の多さで実感できます。
※ここは発展ページです。本文では、公式2・公式3に「」の断りを付け、 を別に確かめました。ここでは、その断りがなぜ必要で、どんなときに外せるのかを、第3章の厳密定義(Σ の帰納的な定義と空和の約束)を使って整理します。最後に、「何回差をとると一定になるか」と「何次式か」の関係を証明し、差と和の関係が微分と積分の関係に対応していることを見ます。
数列 に対し、数列 を
で定め、 の差分(階差数列)という。差分の差分を と書き、同様に を定める。
(デルタ)はギリシャ文字の大文字 D で、Difference(差)の頭文字にあたります。本文の は 、例題4の「差の差」は です。 は「数列を受け取って、新しい数列を返す操作」と考えることができます。
第3章の空和の約束 のもとで、すべての自然数 について
証明 のとき、右辺は空和の約束により で、左辺と等しい。 のとき、第3章の定理3(打ち消し合う和)で とし、 を に置きかえると
となり、移項すれば結論を得る。(証明終)
厳密には、空和の約束を使えば の場合も含めて 1 つの式で書けます。本文で と断ったのは、本文の Σ が「 の略記」で、上端が のときの意味を決めていないからです。答案では、読む人がどちらの約束で読んでも誤解しないよう、本文のとおり「 のとき」と断り、 を別に確かめるのが安全です。
とし、(空和)と約束すると、すべての自然数 について
証明 のとき、右辺は 。 のとき、第3章の定義1より なので、移項すれば結論を得る。(証明終)
それなら、なぜ本文の例題5(2) では だけが式に合わなかったのでしょうか。問題で与えられたのは そのものではなく、「 のとき に等しい式」だからです。その式に を入れた値が、約束の になっているとは限りません。
を の式とし、自然数 について であるとする。 で成り立つ式 が でも成り立つための必要十分条件は、 である。
証明 である。式 に を代入した値は なので、両者が等しい 。(証明終)
例題5(2) は で なので、 は式の値 より だけ大きい でした。一般に、ずれはちょうど です。
この定理から、第1章の厳密定義の予告「等差数列の和は定数項 の 2 次式」の逆も言えます。( は定数)とすると、 で です。 なら定理3よりこれは でも成り立ち、 は の 1 次以下の式なので、第1章の「等差数列 の形」により は等差数列です。 なら初項だけがずれるので、 の値にかかわらず等差数列ではありません(実践 j15)。
を自然数とし、 が の 次式で、最高次の係数が ()であるとする。このとき は の 次式で、最高次の係数は である( のときは定数 )。したがって は定数 で、 である。
証明 二項定理より
とすると、 のうち から来る部分は 、残りの部分の差は同様に 次以下である。よって は最高次の係数 の 次式。これを 回くり返すと、係数は の 次式、つまり定数になる。(証明終)
は の階乗です。例題4の は , なので、3 回目の差は で一定になるはずです。実際、 の差はすべて でした。小話2の円を分ける問題は , で、4 回目の差は です。バベッジの階差機関が多項式の表を作れたのは、この定理のおかげです。
逆に、ある回数 で差分が でない定数になれば、 は 次式です。定理1で足し戻すたびに、第3章の定理4( は 次式)により次数が 1 つずつ上がるからです。ただし、これは「すべての で差分が一定」と分かっているときの話で、数項の差が一定に見えるだけでは結論できません(小話2)。
最後に、差と和の関係を眺めておきます。定理1と定理2は、
という 2 つの事実です。微分積分の分野では、差分 に対応するのが微分、和 Σ に対応するのが積分で、定理1にあたるのが微分積分学の基本定理 です。「変化の量を全部足すと、始まりと終わりの差になる」という同じ考え方が、なめらかに変化する量の世界でも成り立つのです。
この章の学習が終わったら
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