第1章・第2章では、等差数列と等比数列の和を求めました。けれども $1^2 + 2^2 + 3^2 + \cdots + n^2$ のように、差も比も一定でない数列の和は、どちらの方法でも求まりません。この章では、まず長い和を短く書く記号 **Σ**(シグマ)を導入し、その性質を使って「一般項を $k$ の式で表し、分けて足す」という計算の型を身につけます。自然数の 2 乗の和・3 乗の和の公式、分数を差に分けて打ち消し合わせる和、そして第2章で 1 問だけ扱った(等差)×(等比)の和を、Σ を使って順に整理します。
和を短く書く記号 Σ
第2章の最後に、こんな問いを残しました。
12+22+32+⋯+n2 はいくつか
1, 4, 9, 16, … は、となりどうしの差が 3, 5, 7, …、比が 4, 49, … で、等差数列でも等比数列でもありません。答えを出す前に、まず道具を 1 つ用意します。こうした長い和を、毎回「+⋯+」で書くのは手間がかかるうえ、どこから始まってどこで終わるのかが読み取りにくいからです。
そこで、和を短く書く記号 Σ(シグマ)を使います。ギリシャ文字の大文字で、アルファベットの S にあたる文字です。英語の Sum(和)の頭文字だと覚えてください。
たとえば
k=1∑4k2=12+22+32+42=30,k=3∑6(2k+1)=7+9+11+13=40
です。2 つ目のように、始まりの番号は 1 でなくてもかまいません。このとき足す項の数は、6−3+1=4 個です(第1章の植木算と同じで、「終わり − 始まり + 1」)。
k は「番号を入れる箱」にすぎないので、ほかの文字に変えても和は変わりません。k=1∑4k2 と i=1∑4i2 はどちらも 30 です。足し終わった結果に k は残らず、残るのは上端の n だけです。
表計算ソフトで、B 列の 1 行目から 10 行目までを合計するときは=SUM(B1:B10) と書きます。何を足すか(B 列)と、何行目から何行目までか(1 から 10)だけを指定して、あとの足し算はソフトにまかせる書き方です。Σ もまったく同じで、「足すものの式」と「番号の範囲」だけを書いておく、和の命令文なのです。
第1章・第2章の結果も、Σ を使うと 1 行で書けます。
k=1∑nk=2n(n+1),k=1∑nark−1=r−1a(rn−1)(r=1)
k=1∑nak は、k に 1 から n までを順に入れた ak をすべて足した和を短く書いたものだということです。
例題1:Σ の読み書き
(1) k=1∑4(3k−1) の値を、項を書き並べて求めなさい。
(2) 和 1+3+9+⋯+3n−1 を Σ を用いて表し、その値を求めなさい。
【解答】
(1) k=1, 2, 3, 4 を順に代入して足します。
k=1∑4(3k−1)=2+5+8+11=26(2) 第 k 項は 3k−1 で、最後の項は k=n のときです。よって
1+3+9+⋯+3n−1=k=1∑n3k−1これは初項 1、公比 3、項数 n の等比数列の和なので、値は 23n−1 です。
(2) の表し方は 1 通りではありません。k=0∑n−13k と書いても同じ和です。どちらも「始まりの番号で最初の項、終わりの番号で最後の項になるか」を代入して確かめれば安心です。
Σ の性質
Σ を使う計算の中心は、次の 3 つの性質です。
1 つ目は、和の中身が「足し算」や「定数倍」でできていれば、Σ を分けたり定数を外に出したりしてよい、という性質です。k=1∑n(ak+bk) を書き並べて、a どうし・b どうしを集め直せば確かめられます。2 つ目の k=1∑nc は、c を n 個足すという意味なので nc です(k を含まない数を足すときに、c が 1 個だけになるわけではない点に注意)。
買い物のレシートで考えてみましょう。商品ごとに「本体価格 + 送料」がかかるとき、全部の合計は「本体価格の合計 + 送料の合計」と分けて計算できます。消費税で全商品が 1.1 倍になるなら、税込の合計は税抜の合計の 1.1 倍。送料がどれも 500 円なら、n 個分の送料は 500n 円です。公式2は、この当たり前の計算を Σ で書いたものにすぎません。
ただし、積は分けられません。ak=bk=k,n=2 とすると
k=1∑2akbk=1+4=5,(k=1∑2ak)(k=1∑2bk)=3×3=9
で、等しくありません。積 k(k+1) などは、まず展開して「足し算と定数倍」の形にしてから、公式2を使います。
Σ の中身が足し算と定数倍でできていれば、項ごとに分けたり定数を外に出したりでき、定数 c の和は nc になる(ただし積は分けられない)ということです。
例題2:Σ の性質を使う
k=1∑n(6k−5) を求めなさい。
【解答】
公式2で分けて、第1章の自然数の和 k=1∑nk=2n(n+1) を使います。
k=1∑n(6k−5)=6k=1∑nk−k=1∑n5=6⋅2n(n+1)−5n=3n2−2n=n(3n−2)(n=1 で 1,n=2 で 1+7=8 となり、どちらも合っています。)
6k−5 は初項 1、公差 6 の等差数列なので、第1章の公式でも 2n{2⋅1+(n−1)⋅6}=n(3n−2) と同じ答えになります。等差数列の和は、Σ の性質と ∑k だけで出せるということです。
2 乗の和と 3 乗の和
いよいよ 12+22+⋯+n2 です。果物屋の店先で、オレンジを四角錐の形に積んだところを思い浮かべてください。いちばん上が 1 個、その下の段が 2×2=4 個、次が 3×3=9 個……。n 段積んだときの個数の合計が、ちょうど 12+22+⋯+n2 です。
これを求めるのに、少し遠回りに見える式を使います。
(k+1)3−k3=3k2+3k+1
この式の k に 1, 2, …, n を入れて並べ、上下に全部足します。
23−13=3⋅12+3⋅1+133−23=3⋅22+3⋅2+1 ⋮(n+1)3−n3=3⋅n2+3⋅n+1
左辺では、23 が 1 行目に +、2 行目に − で現れて消え、33 も同じように消え……と、途中の項がすべて打ち消し合います。残るのは (n+1)3−13 だけです。右辺は Σ でまとめて
(n+1)3−1=3k=1∑nk2+3⋅2n(n+1)+n
これを k=1∑nk2 について解きます。(n+1)3−1−n=(n+1)3−(n+1)=(n+1)n(n+2) なので
3k=1∑nk2=n(n+1)(n+2)−23n(n+1)=2n(n+1)(2n+1)
両辺を 3 で割ると、6n(n+1)(2n+1) が得られます。
3 乗の和には、図で見える美しい関係があります。
Tk=1+2+⋯+k=2k(k+1) とおくと、一辺 Tk の正方形から一辺 Tk−1 の正方形を取り除いたかぎ形の面積は
Tk2−Tk−12=(Tk−Tk−1)(Tk+Tk−1)=k×k2=k3
です(Tk−Tk−1=k,Tk+Tk−1=2k(k+1)+(k−1)k=k2)。かぎ形を k=1 から n まで並べると一辺 Tn の正方形になるので、13+23+⋯+n3=Tn2 です。
3 乗の和は「自然数の和の 2 乗」です。∑k を覚えていれば、∑k3 はそれを 2 乗するだけで済みます。
2 乗の和は (k+1)3−k3 を足し並べて途中を打ち消すと求まり、3 乗の和は自然数の和をそのまま 2 乗したものになるということです。
例題3:累乗の和の公式を使う
(1) k=1∑n(k−1)(k+2)
(2) k=1∑n(k3+k)
上の各和を求めなさい。
【解答】
(1) 積のままでは分けられないので、展開して (k−1)(k+2)=k2+k−2。公式2・公式3より
k=1∑n(k2+k−2)=6n(n+1)(2n+1)+2n(n+1)−2n分母を 6 にそろえ、共通因数 n でくくると
6n{(n+1)(2n+1)+3(n+1)−12}=6n(2n2+6n−8)=3n(n−1)(n+4)(2) 共通因数 4n(n+1) でくくります。
k=1∑n(k3+k)=4n2(n+1)2+2n(n+1)=4n(n+1){n(n+1)+2}=4n(n+1)(n2+n+2)
公式を足し合わせたあとは、すぐに展開せず、n や n(n+1) などの共通因数でくくるのがこつです。答えが因数分解された形で出てくるので、n=1, 2 を代入した確かめも楽になります((1) は n=2 で 0+4=4、式でも 32⋅1⋅6=4)。
一般項を k の式で表してから足す
ここまでの例題は、Σ の中身の式が最初から与えられていました。和が「+⋯+」で与えられたときは、次の段取りで進めます。
- 第 k 項を k の式で表す
- 展開して、足し算と定数倍の形にする
- 公式2・公式3(必要なら等比数列の和)を使う
第1章で、一般項を「n 番の箱の中身のレシピ」にたとえました。Σ の計算でも、まず第 k 項のレシピを書き出せば、あとは公式が全部足してくれます。
もう 1 つ大事な注意があります。Σ の中に n が入っていても、n は k とは無関係な定数です。たとえば k=1∑nn は「n を n 個足す」なので n2 です。動くのは k だけ、と意識しておきましょう。
和が「+⋯+」で与えられたら、第 k 項を k の式で表し、展開してから公式で足すということです。
例題4:第 k 項を求めてから足す
数列 1, 1+2, 1+2+3, 1+2+3+4, … の初項から第 n 項までの和を求めなさい。
【解答】
第 k 項は 1 から k までの自然数の和なので、2k(k+1)=21(k2+k) です。よって求める和は
k=1∑n21(k2+k)=21{6n(n+1)(2n+1)+2n(n+1)}=12n(n+1){(2n+1)+3}=12n(n+1)(2n+4)=6n(n+1)(n+2)(n=3 で 1+3+6=10、式でも 63⋅4⋅5=10。)
この数列 1, 3, 6, 10, … は、第1章の豆知識に出てきた三角数です。ボウリングのピンのように三角形に並べた数を、さらに積み重ねると三角錐になります。その個数が 6n(n+1)(n+2) です。
差に分けて打ち消し合う和
次は分数の和です。
1⋅21+2⋅31+3⋅41+⋯+n(n+1)1
分母が積なので、公式3は使えません。そこで、各項を 2 つの分数の差に分けます。
k(k+1)1=k1−k+11
右辺を通分すると k(k+1)(k+1)−k で、確かに左辺になります。これを並べると
(11−21)+(21−31)+(31−41)+⋯+(n1−n+11)
となり、−21 と +21、−31 と +31……と、となりのかっこどうしで次々に消えていきます。残るのは最初の 1 と最後の −n+11 だけです。
リレーを思い浮かべてください。第 2 走者はバトンを受け取り、すぐに第 3 走者へ渡します。途中の走者の手には、受け取った分と渡した分が同じだけ出入りして、何も残りません。記録に残るのは、第 1 走者のスタートと最終走者のゴールだけ。k1 を受け取って k+11 を渡す、この和も同じつくりです。2 乗の和で (k+1)3−k3 を足し並べたときに途中が消えたのも、実は同じしくみでした。
分母の 2 つの因数の差が 1 でないときは、係数で調整します。たとえば差が 2 なら k(k+2)1=21(k1−k+21) です。この場合は 2 つ先の項と消し合うので、最初に 2 個、最後に 2 個の項が残ります。
各項を「となりどうしで消し合う差」に分けておくと、足したときに途中がすべて消えて、最初と最後だけが残るということです。
例題5:分数の和
和 1⋅41+4⋅71+7⋅101+⋯+(3n−2)(3n+1)1 を求めなさい。
【解答】
分母の 2 つの因数の差は (3k+1)−(3k−2)=3 なので
(3k−2)(3k+1)1=31(3k−21−3k+11)k=1, 2, …, n を並べると、41, 71, … がとなりどうしで消え
k=1∑n(3k−2)(3k+1)1=31(1−3n+11)=31⋅3n+13n=3n+1n(n=1 で 41 となり、第 1 項と合っています。)
差に分けたら、必ず通分して元に戻るかを確かめましょう。係数 31 を付け忘れるのが、いちばん多い失敗です。
(等差)×(等比)の和
第2章の実践 j18 で、1+2⋅3+3⋅32+⋯+n⋅3n−1 を「公比を掛けてずらして引く」方法で求めました。各項が「等差数列 × 等比数列」の形の和です。Σ で書くと k=1∑nk⋅3k−1 で、k と 3k−1 の積なので、公式2で分けることはできません。
この形には、公式2・公式3ではなく、第2章の「ずらして引く」を使います。Σ で書くと、何が起きているかがはっきりします。S=k=1∑nkrk−1 に r を掛けると
rS=k=1∑nkrk=k=2∑n+1(k−1)rk−1
2 つ目の等号は、番号を 1 ずらして書き直しただけです(k を k−1 に置きかえると、範囲も 2 から n+1 に変わる)。こうすると S と rS で「rk−1 の係数」を同じ番号どうしで比べられ、k−(k−1)=1 となって、差が等比数列の和になります。
(等差)×(等比)の和は Σ の性質では分けられないので、公比を掛けて番号を 1 つずらし、引き算で等比数列の和に変えるということです。
例題6:(等差)×(等比)の和
S=k=1∑nk⋅2k−1 を求めなさい。
【解答】
S と 2S を、同じ累乗が上下にそろうように書きます。
S=1+2⋅2+3⋅22+⋯+n⋅2n−12S=1+1⋅2+2⋅22+⋯+(n−1)⋅2n−1+n⋅2n上から下を引くと、同じ累乗の係数の差はどれも 1 なので
S−2S=1+2+22+⋯+2n−1−n⋅2n=(2n−1)−n⋅2n−S=(1−n)⋅2n−1 より
S=(n−1)⋅2n+1(n=3 で 1+4+12=17、式でも 2⋅8+1=17。)
「−S=」で終わらせず、符号をひっくり返すところまで気を抜かないようにしましょう。最後に n=1, 2, 3 のどれかを代入して、項を書き並べた値と比べれば、符号や係数の誤りはほぼ見つかります。
この章のまとめと次の章
Σ は長い和を短く書く記号で、中身が足し算と定数倍なら分けて計算できました。和の形ごとに、使う道具をまとめておきます。
では、1, 2, 4, 7, 11, 16, … という数列の第 n 項はどう表せるでしょうか。となりどうしの差を並べると 1, 2, 3, 4, 5, … で、差のほうは簡単な数列です。次の第4章では、この「差の数列」——階差数列——を Σ で足し戻して、もとの数列の一般項を求めます。
※ここは発展ページです。本文では Σ を「a1+a2+⋯+an の略記」として導入し、性質は項を書き並べて確かめました。ここでは「⋯」に頼らずに Σ を定義し直し、本文で使った性質・番号の付け替え・打ち消し合う和を証明します。最後に、p 乗の和がどんな形の式になるかを調べます。
定義1:Σ(帰納的な定義)
数列 {an} に対し、k=1∑nak を次の 2 つの式で定める。
k=1∑1ak=a1,k=1∑n+1ak=(k=1∑nak)+an+1(n=1, 2, 3, …)また、自然数 m≦n に対し、k=m∑nak=k=1∑nak−k=1∑m−1ak と定める(m=1 のときは、何も足さない和を k=1∑0ak=0 と約束する)。
「a1+a2+⋯+an」の「⋯」は、読む人の想像にまかせた書き方です。定義1は、「1 項だけの和は a1」「n+1 項の和は、n 項の和に次の項を 1 つ足したもの」という 2 つのルールだけで、どんな n の和も決まるようにしています。第1章で「数列は自然数を定義域とする関数」と定義したのと同じく、和も「n を入れると値が 1 つ決まる関数」として扱えるようになります。
「何も足さない和は 0」という約束は、足し算の出発点を 0 にしておくということです。この約束のおかげで、k=m∑n の定義が m=1 でもそのまま使えます。
定理1:Σ の線形性
p, q を k に無関係な定数とすると、すべての自然数 n について
k=1∑n(pak+qbk)=pk=1∑nak+qk=1∑nbk特に、ak=1,q=0 とすれば k=1∑np=np である。
証明 n=1 のとき、両辺はともに pa1+qb1 で等しい。ある n で成り立つとすると、定義1より
k=1∑n+1(pak+qbk)={pk=1∑nak+qk=1∑nbk}+(pan+1+qbn+1)=pk=1∑n+1ak+qk=1∑n+1bkとなり、n+1 でも成り立つ。これをくり返せば、すべての n で成り立つ。(証明終)
「n で成り立てば n+1 でも成り立つ、これをくり返す」という論法は、第8章で数学的帰納法として正式に学びます。定義1が「前の和に 1 項足す」という形なので、Σ についての証明は、ほとんどがこの論法になります。
一方、積については同じ証明ができません。k=1∑n+1akbk を前の和に分けると an+1bn+1 が 1 つ増えるだけですが、(k=1∑n+1ak)(k=1∑n+1bk) を展開すると an+1k=1∑nbk などの「交差する項」まで増えるからです。実践 j19 は、この交差する項の和を求める問題でした。
定理2:番号の付け替え
すべての自然数 n について、次が成り立つ。
(i) k=1∑nak+1=k=2∑n+1ak(番号を 1 ずらす)
(ii) k=1∑nan+1−k=k=1∑nak(逆順に並べる)
証明 (i) 左辺を Ln、右辺を Rn とおく。定義1より Rn=k=1∑n+1ak−a1 である。n=1 のとき L1=a2,R1=(a1+a2)−a1=a2。ある n で Ln=Rn なら
Ln+1=Ln+an+2=Rn+an+2=k=1∑n+2ak−a1=Rn+1(ii) bk=an+1−k とおくと、b1=an, b2=an−1, …, bn=a1 で、{bk} は a1, …, an を逆順に並べたものである。足し算は順番を入れかえても値が変わらない(交換法則・結合法則)ので、両辺は等しい。(証明終)
(i) は例題6で「rS を、番号を 1 ずらして書き直した」操作そのものです。(ii) を使うと、第1章の「逆順に並べて足す」も Σ で書けます。
2k=1∑nk=k=1∑nk+k=1∑n(n+1−k)=k=1∑n(n+1)=n(n+1)
1 つ目の等号で (ii)、2 つ目で定理1を使いました。ガウス少年の工夫は、「番号を逆順に付け替えても和は変わらない」という性質だったのです。
定理3:打ち消し合う和
自然数を定義域とする関数 f について、すべての自然数 n で
k=1∑n{f(k+1)−f(k)}=f(n+1)−f(1)証明 n=1 のとき両辺は f(2)−f(1) で等しい。ある n で成り立つとすると
k=1∑n+1{f(k+1)−f(k)}={f(n+1)−f(1)}+{f(n+2)−f(n+1)}=f(n+2)−f(1)で、n+1 でも成り立つ。(証明終)
本文の公式4は、この定理の符号を入れかえた形です({f(k)−f(k+1)} を足すと f(1)−f(n+1))。証明の中で f(n+1) が + と − で消えているところが、リレーのバトンの受け渡しにあたります。
2 乗の和の公式も、定理3から出てきます。f(k)=k3 とすると f(k+1)−f(k)=3k2+3k+1 なので、定理1・定理3より
3k=1∑nk2+3k=1∑nk+n=(n+1)3−1
となり、本文と同じ計算で k=1∑nk2=6n(n+1)(2n+1) が得られます。f(k)=k2 とすれば ∑k が、f(k)=k4 とすれば ∑k3 が(実践 j20)、同じように求まります。
定理4:累乗の和の形
p を 0 以上の整数とすると、k=1∑nkp は n の p+1 次の多項式で表され、その最高次の係数は p+11、定数項は 0 である。
証明の方針 p=0 のときは k=1∑n1=n で成り立つ。0, 1, …, p−1 乗の和について成り立つとする。二項定理より、k の p−1 次以下の多項式 g(k) を用いて
(k+1)p+1−kp+1=(p+1)kp+g(k)と表せる。この両辺を k=1 から n まで足すと、定理3より左辺は (n+1)p+1−1。右辺は定理1より、(p+1)k=1∑nkp と、h(n)=k=1∑ng(k) の和になる。h(n) は、仮定により n の p 次以下で定数項 0 の多項式である。よって
k=1∑nkp=p+1(n+1)p+1−1−h(n)(n+1)p+1−1 は最高次の項が np+1 で定数項が 0 の多項式なので、結論を得る。(「仮定により」の部分は、第8章の数学的帰納法で厳密になる。)
公式3で確かめると、∑k=21n2+21n,∑k2=31n3+21n2+61n,∑k3=41n4+21n3+41n2 で、確かに最高次の係数は 21, 31, 41 です。小話で紹介した関孝和とベルヌーイは、残りの係数まで一般の p について求めたのです。
n が大きいとき、k=1∑nkp はおよそ p+1np+1 になります。この「p+11」は、微分積分の分野で学ぶ積分の公式 ∫01xpdx=p+11 と同じ数です。細い長方形の面積を Σ で足し合わせ、その極限として面積を求める——和と積分のつながりは、微分積分の分野で改めて扱います。
第1章の厳密定義で「等差数列の和は定数項 0 の 2 次式」と予告しました。定理1・定理4を使えば、一般項が k の d 次式の数列の和は n の d+1 次式で、定数項は 0 だと分かります。逆に、和 Sn から一般項 an を取り出す方法は、次の第4章で学びます。