問1
とします。 の値を求めなさい。
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()
目次 / 指数関数・対数関数 / 数学II
—— 指数関数のグラフを、直線 y = x で折り返す ——
第4章の最後に、$y = \log_2 x$ のグラフが $y = 2^x$ のグラフとどういう関係にあるかを調べる、と予告しました。答えは「直線 $y = x$ で折り返した形」です。$\log_2$ は $2^x$ の働きを逆にたどる関数(**逆関数**)なので、$x$ と $y$ の役割がそっくり入れかわるのです。この章では、そこから対数関数のグラフの性質を読みとり、対数の大小比較、グラフの平行移動、最大値・最小値へと進みます。第2章で指数関数について学んだことが、折り返した形でそのまま使えます。
第4章の最後の予告から始めます。 に、いくつか の値を入れてみましょう。
第2章で作った の表と見比べてください。あちらは「 なら 」、こちらは「 なら 」。上の段と下の段が、そっくり入れかわっています。 のグラフ上の点 に対して、 のグラフ上には、座標を入れかえた点 があるわけです。
座標を入れかえた 2 点 と を方眼紙にとると、2 点を結ぶ線分は直線 と直角に交わり、その中点 は の上にあります。つまり 2 点は、直線 について対称です。グラフ全体でこれが起きるので、 のグラフは、 のグラフを直線 で折り返した形になります。
このように、 で の値から がただ 1 つ決まるとき、「 から を求める関数」を作り、文字 , を入れかえたものを、もとの関数の逆関数といいます。 なら、対数の定義から 。文字を入れかえて です。
, とする。 を、 を底とする の対数関数という。
定義域が なのは、真数条件そのものです。値域が実数全体なのは、 の定義域が実数全体だったからで、逆関数では定義域と値域も入れかわります。
和英辞典と英和辞典の関係を思い浮かべてください。和英辞典は「犬 → dog」、英和辞典は「dog → 犬」。載っている単語の組は同じで、引く向きだけが逆です。 が「指数 → 値 」を引く辞典なら、 は「値 → 指数 」を引く辞典です。どちらか一方を作れば、もう一方は見出しと訳を入れかえるだけで手に入ります。
対数関数 は指数関数 の と を入れかえた逆関数で、グラフは のグラフを直線 で折り返したものだということです。
(1) のグラフ上で、 座標が ,, である点の座標を求めなさい。
(2) (1) の 3 点を直線 について対称移動した点が、どれも のグラフ上にあることを確かめなさい。
(3) の逆関数を求めなさい。
(4) の逆関数を求めなさい。
【解答】
(1) ,, なので
(2) 直線 について対称移動すると、座標が入れかわって ,,。 に代入すると
となり、3 点とも ことが確かめられました。
(3) を について解くと 。 と を入れかえて
(4) を について解くと 。 と を入れかえて
逆関数を求める手順は、いつも「 について解く → と を入れかえる」の 2 段です。
のグラフの性質(第2章 公式2)を、直線 で折り返して読みかえてみます。点 は点 に、点 は点 に移ります。漸近線だった 軸は、折り返すと 軸になります。右上がり・右下がりの向きは、折り返しても変わりません。
のグラフについて
また、 と のグラフは 軸について対称である。
点 を通るのは、どんな底でも だからです。 軸について対称になる理由は、底の変換公式で見えます。
座標の符号がちょうど逆になっているので、 軸で折り返した形です。
のグラフは、右上がりといっても上がり方がとてもゆるやかです。 が になるのは 、 になるのは が約 万のときです。レベルを 1 つ上げるのに必要な経験値が、レベルごとに倍になっていくゲームを想像してください。経験値を ためてもレベルは 止まりで、経験値の伸びに比べてレベルはなかなか上がりません。それでもためれば必ず上がり、上限はありません。対数関数のグラフも同じで、上がり方はどんどん鈍るのに、どこまでも高くなります。反対に を に近づけると、 は ,,,……と下がり続け、グラフは 軸に限りなく近づきます。
底の大きさによる違いも、第2章の折り返しです。 の側では、底が大きいほどグラフはゆるやか( は より下)になります。
対数関数のグラフは、点 を通り 軸を漸近線にもつ曲線で、底が 1 より大きければ右上がり、1 より小さければ右下がり、底を逆数にすると 軸について折り返した形になるということです。
(1) のグラフ上で、 座標が ,, である点の座標を求めなさい。
(2) (1) の 3 点を 軸について対称移動した点が、どれも のグラフ上にあることを確かめなさい。
(3) のグラフが点 を通るとき、 の値を定めなさい。
【解答】
(1) ,, なので
(2) 対称移動した点は ,, です。 に代入すると
となり、3 点とも ことが確かめられました。
(3) なので 。両辺を 乗して
(3) で得た は、底の条件 , を満たしています。
のグラフは右上がりの一本道なので、真数が大きいほど対数も大きくなります。 なら逆です。指数関数の単調性(第2章 公式3)を、折り返して言いかえたものです。
したがって、底をそろえれば、対数の大小は真数の大小で判定できる。底が 1 より小さいときは、不等号の向きが逆になる。
底がそろわない と はどうでしょう。底の変換公式でそろえると のような分数になり、かえって比べにくくなります。こういうときは、間に目安の数をはさむのが近道です。、 なので、 をはさんで と決着します。
別々の教室にいる 2 人の背比べを考えてみてください。2 人を並ばせることはできなくても、柱に 150 cm の印をつけておき、A さんは印より高く、B さんは印より低いと分かれば、A さんのほうが高いと言えます。目安の数 は、 と書けば、どの底の対数とも同じ底で比べられる「柱の印」になります。, のように、底ごとに印を付け直せばよいのです。
対数の大小は、底をそろえられるなら真数で比べ(底が 1 より小さければ向きを逆に)、そろえにくいなら や のような目安の数をはさんで比べればよいということです。
(1) ,, を小さい順に並べた結果を求めなさい。
(2) と の大小を比べた結果を求めなさい。
(3) と の大小を比べた結果を求めなさい。
【解答】
(1) と、同じ底の対数で書きます。真数は で、底 なので大小は逆になります。
(2) 底を にそろえると
で、底 なので
(3) をはさみます。 より 、 より 。
(2) のように底が同じ数の累乗ならそろえ、(3) のように と でそろわなければ目安の数を探す、と使い分けます。
指数関数のときと同じく、 のグラフを 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動したグラフの式は です。
のグラフを
平行移動では、目印の点 が点 に、漸近線の 軸()が直線 に移ります。この 2 つを押さえれば、グラフの置き場所が決まります。
地図アプリで地図を指でドラッグすると、駅も道も川も、全部がいっしょに同じだけずれます。駅の位置が 2 cm 左へ動いたなら、川も 2 cm 左です。グラフの平行移動も、曲線だけでなく目印の点や漸近線がまとめて同じだけ動きます。だから目印の点がどこへ行ったか、漸近線がどこへ行ったかを見れば、全体の動きが分かります。
式が のように、真数に定数が掛かった形で与えられることもあります。このときは積の対数で定数を外へ出します。
真数の定数倍は、 軸方向の平行移動になるわけです。第2章で、指数関数の定数倍 が 軸方向の平行移動になったことと、ちょうど向きが入れかわっています。
のグラフは を平行移動したもので、点 の行き先 と漸近線 を押さえれば描け、真数の定数倍は対数の和に分けて 軸方向の移動として読めばよいということです。
関数 について
(1) グラフは のグラフをどのように平行移動したものかを求めなさい。
(2) グラフの漸近線の方程式と、関数の定義域を求めなさい。
(3) グラフと 軸, 軸との交点の座標を求めなさい。
【解答】
(1) と変形できるので、 と見て、
(2) 漸近線は 軸が だけずれて 。定義域は真数条件 から
(3) のとき なので、,。 のとき 。
は定義域 に入っています。図と見比べてください。
で の範囲が に限られていれば、グラフは右下がりの一本道なので、左端で最大、右端で最小です。ここまでは第2章と同じ考え方です。
のような式はどうでしょう。 なので と書けて、 を 1 つの文字 で表すと
という 2 次関数になります。
第2章の置きかえ では、いつでも という制限がつきました。 は値域が実数全体なので、 は負にもなれます。そのかわり、 の範囲から の範囲をきちんと出す作業は同じように必要です。 なら、 は右上がりなので です。
方眼紙のふつうの目盛りを、,,,,…… が等間隔に並ぶ目盛りに取り替える、と考えてもよいでしょう。新しい目盛りで測った値が です。ふつうの目盛りでは見慣れない形だった式も、目盛りを取り替えると、おなじみの放物線として見えてきます。最後に目盛りを元に戻して、 を に直すのを忘れないようにします。
対数関数の最大・最小は、単調なら定義域の両端を見ればよく、 の 2 次式は とおいて、 の範囲から出した の範囲で 2 次関数として扱えばよいということです。
(1) ()の最大値と最小値を求めなさい。
(2) ()の最大値と最小値を求めなさい。
【解答】
(1) 底 で右下がりなので、左端で最大、右端で最小です。, より
(2) なので 。 とおくと、 より 。
(範囲内)で最小値 。最大値は、軸 から遠い端 でとり、(もう一方の端 では )。 は 、 は にあたります。
から に戻すときは、 より と、対数の定義を使います。
| 見るところ | ||
|---|---|---|
| 定義域 | 実数全体 | |
| 値域 | 実数全体 | |
| 必ず通る点 | , | , |
| 漸近線 | 軸 | 軸 |
| 向き | で右上がり、 で右下がり | 同じ |
右の列は、左の列の と を入れかえたものです。忘れたときは、第2章の性質を直線 で折り返して思い出せば十分です。次の第6章では、この単調性と真数条件を使って、 や のような対数の方程式・不等式を解きます。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
とします。 の値を求めなさい。
()
問2
の逆関数を求めなさい。
( の と を入れかえる)
問3
関数 の定義域を求めなさい。
(真数条件 )
問4
と の大小を比べた結果を求めなさい。
(底 で )
問5
のグラフ上で、 座標が である点の座標を求めなさい。
()
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
, とします。
(1)
(2)
(3)
(4)
上の各式の値を求めなさい。
(1) (2) (3) (4)
真数を底の累乗で書き、その指数を読みとります。
(1) なので
(2) なので
(3) なので
(4) なので
問2 ★
(1)
(2)
(3)
(4)
上の各関数の逆関数を求めなさい。
(1) (2) (3) (4)
「 について解く → と を入れかえる」の 2 段で求めます。
(1) なので
(2) なので
(3) より なので
(4) より なので
(3) と (4) では、もとの関数の定義域と値域も入れかわります。たとえば (3) の は値域が なので、逆関数 の定義域は です。
問3 ★
(1) 点
(2) 点
(3) 点
のグラフが上の各点を通るとき、 の値をそれぞれ求めなさい。
(1) (2) (3)
点 を通るなら 、すなわち です。底は , です。
(1) 。 なので
(2) より 。両辺を 乗して
(3) なので
(2),(3) のように、グラフが右下がり( 座標が負なのに真数が より大きい、または 座標が正なのに真数が より小さい)なら、底は より小さくなります。
問4 ★
(1) ,,
(2) ,,
上の各組の数を小さい順に並べた結果を求めなさい。
(1) (2)
数も同じ底の対数で書き、真数を比べます。
(1) 。 なので、真数は 。底 なので同じ順です。
(2) 。真数は で、底 なので大小は逆になります。
問5 ★
関数 について
(1) グラフは のグラフをどのように平行移動したものかを求めなさい。
(2) グラフの漸近線の方程式と、関数の定義域を求めなさい。
(3) グラフと 軸, 軸との交点の座標を求めなさい。
(1) 軸方向に , 軸方向に (2) 漸近線 ,定義域 (3) 軸との交点 , 軸との交点 ( でもよい)
(1) と見て、
(2) 漸近線は 軸()が だけずれて 。定義域は真数条件 から
(3) のとき なので ,。 のとき 。
とも書けます。目印の点 は に移っています。
問6 ★
のグラフを
(1) 軸について対称移動
(2) 軸について対称移動
(3) 原点について対称移動
(4) 直線 について対称移動
した各場合について、移動後のグラフの式を求めなさい。
(1) ( でもよい) (2) (3) (4)
移動後のグラフ上の点を とし、それが移動前のどの点から来たかを考えます。
(1) もとの点は 。 より 。 なので、 とも書けます。
(2) もとの点は 。(定義域は )
(3) もとの点は 。 より
(4) もとの点は 。 より 。つまり逆関数の です。
問7 ★
(1) ()
(2) ()
上の各関数の最大値と最小値を求めなさい。
(1) で最大値 , で最小値 (2) で最大値 , で最小値
どちらも単調なので、定義域の両端で最大・最小になります。
(1) 底 で右上がりなので、右端で最大、左端で最小です。
(2) 底 で右下がりなので、左端で最大、右端で最小です。 のとき 、 のとき 。
問8 ★
(1) と
(2) と
上の各組の大小を比べた結果を求めなさい。
(1) (2)
底がそろわないので、目安の数をはさみます。
(1) をはさみます。 より 、 より 。
(2) をはさみます。底 なので、 より 。一方、底 なので、 より 。
問9 ★★
,, を小さい順に並べた結果を求めなさい。
底 , は の累乗なので、底を にそろえます。
真数 ,, を比べます。 より 。 より 。底 なので
問10 ★★
(1) と
(2) と
ただし (2) では をはさんで比べてよいとします。上の各組の大小を比べた結果を求めなさい。
(1) (2)
と分数 の大小は、 と の大小、つまり両辺を 乗した と の大小で決まります(底 )。
(1) をはさみます。 より なので 。 より なので 。
(2) をはさみます。 より なので 。 より なので 。
(2) で をはさもうとしても、どちらも より小さいので決着がつきません。目安の数は、2 つの値のあいだに入るものを選びます。
問11 ★★
(1)
(2)
上の各関数のグラフは、(1) は のグラフを、(2) は のグラフを、どのように移動したものかを求めなさい。
(1) 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動したもの (2) 軸について対称移動し、さらに 軸方向に だけ平行移動したもの
積・商の対数で、定数を外へ出します。
(1)
なので、 したものです。
(2)
は を 軸について対称移動したものなので、 し、さらに したものです。
(2) は、 から「 を 軸方向に だけ平行移動したもの」と言うこともできます。
問12 ★★
関数 ()の最大値と最小値を求めなさい。
で最大値 , で最小値
とおくと、 より 。
(範囲内)で最小値 。軸 は範囲 のちょうど真ん中なので、両端 , で同じ値 をとり、これが最大値です。,, はそれぞれ ,, にあたります。
問13 ★★
関数 の最大値と、そのときの の値を求めなさい。
で最大値
まず真数条件から、 かつ 、すなわち です。この範囲で積の対数にまとめると
真数 は、 の範囲で のとき最大値 をとります。底 なので、真数が最大のとき も最大です。
真数が に近づく両端(,)では はいくらでも小さくなるので、最小値はありません。
問14 ★★
関数 ()の最大値と最小値を求めなさい。
で最大値 , で最小値
商の対数で分けると ,。 とおくと、 より で
(範囲内)で最小値 。最大値は軸 から遠い端 でとり、(もう一方の端 では )。 は 、 は にあたります。
問15 ★★
(1) 関数 の定義域を求めなさい。
(2) 関数 の最大値と、そのときの の値を求めなさい。
(1) (2) で最大値
(1) 真数条件 より なので
(2) 真数は で、つねに正です(定義域は実数全体)。底 なので、真数が最小のとき は最大になります。真数の最小値は のときの なので
底が より小さいと、真数の最大・最小と対数の最大・最小が入れかわります。
問16 ★★
不等式 を満たす の値の範囲を求めなさい。
真数条件から です。底を にそろえると なので
なので で、かっこの中は正です。したがって、左辺が正になるのは 、すなわち のときです。
グラフで言えば、 と は点 で交わり、 の側では底の小さい のほうが上、 の側では下にあります。
問17 ★★★
,, を小さい順に並べた結果を求めなさい。
底も真数もばらばらなので、目安の数をはさみます。()と の大小は、 と の大小で決まります。
と : をはさみます。 より 。 より 。
と : ではどちらも小さくて決着しないので、 をはさみます。 より 。 より 。
以上から なので
別解:相加平均と相乗平均の関係を使うと、目安の数を探さずに示せます。, で、2 つは等しくないので
両辺を で割ると 。同じように から が出ます。
問18 ★★★
,, のとき、 の最大値と最小値、およびそのときの , の値を求めなさい。
で最大値 , または で最小値
, とおきます。, より ,。条件 の両辺の底 の対数をとると
より で、
(範囲内)で最大値 。このとき で、。
最小値は両端 , でとり、どちらも 。 なら ,、 なら ,。
積 の条件が、対数をとると和 の条件に変わるのがポイントです。
問19 ★★★
方程式 の解は だけであることを示しなさい。
が解であることを確かめ、 が右上がり(単調に増加)なので の解は高々 1 つであることを示す(解説参照)。
が解であること:, で、両辺が等しくなります。
ほかに解がないこと:方程式は と同じです。()とおきます。
とすると、底 なので 、また 。辺々を足して
つまり は、 が大きいほど値も大きくなります。すると、 となる が 2 つあるとすれば、小さいほうの値が大きいほうより小さくなるはずなので、両方が になることはありません。よって解は高々 1 つで、それは です。(証明終)
グラフで言えば、右上がりの曲線 と右下がりの直線 は、1 回しか交わりようがないということです。第3章 厳密定義の定理3(単調な関数の方程式の解は高々 1 つ)と同じ考え方です。
問20 ★★★
を定数とします。関数 ()の最小値を求めなさい。
のとき で最小値 , のとき で最小値 , のとき で最小値
とおくと、 より で
軸 が範囲 の左にあるか、中にあるか、右にあるかで場合分けします。
最小値をとる は、順に ,, です。 のとき、 を に戻すと より になります。
ふつうの方眼紙に を描くと、 で 、 で約 万になり、あっという間に紙からはみ出してしまいます。そこで、縦軸の目盛りを ,,,,…… が等間隔に並ぶように付けた方眼紙が使われます。これを片対数グラフといいます。
この方眼紙では、値 は高さ の位置に打たれます。 の点なら、高さは
で、 の 1 次式です。つまり、ふつうの方眼紙では急な曲線だった指数関数が、片対数グラフではまっすぐな直線になります。 でも、高さは なので、やはり直線です。逆に言えば、データを片対数グラフに打ってみて直線に並べば、「一定の倍率で増えている」と見抜けるわけです。
有名な例がムーアの法則です。1965 年、のちにインテルを創業するゴードン・ムーアは、集積回路(IC)1 個に載せられる部品の数が毎年ほぼ 2 倍になっていると指摘しました。1975 年には、この見通しを「約 2 年で 2 倍」に改めています(※年数の言い方には資料によって違いがあります)。1971 年のインテル 4004 に載っていたトランジスタは約 個。2 年で 2 倍を 50 年続けると 万倍なので、計算上は 万 億個です。実際、2020 年代の大型のチップには数百億個のトランジスタが載っています(※製品によって大きく違います)。ふつうの目盛りでは最近の数年以外が に張りついて見えるこのデータも、片対数グラフに打つと、半世紀分がほぼ一直線に並びます。
豆知識
縦軸と横軸の両方を対数の目盛りにしたものを両対数グラフといいます。 なら なので、傾き の直線になります。ケプラーが 1619 年に発表した第 3 法則「惑星の公転周期の 2 乗は、軌道の長半径の 3 乗に比例する」を両対数グラフで表すと、水星から土星までの惑星が、傾き の直線の上にきれいに一列に並びます。
暗い部屋でろうそくを 1 本から 2 本に増やすと、明るくなったことがはっきり分かります。ところが、100 本ともっている部屋で 1 本増やしても、ほとんど気づきません。増えた明るさは同じ 1 本分なのに、感じ方がまるで違います。
19 世紀ドイツの生理学者エルンスト・ウェーバーは、手に持った重りで同じことを調べました。重さの違いに気づける最小の差は、決まったグラム数ではなく、もとの重さにほぼ比例していたのです。軽い重りなら少しの差で気づけ、重い重りほど大きな差が必要になります(※気づける割合は、感覚の種類や条件、人によって違います)。
これを受けて、物理学者のグスタフ・フェヒナーは 1860 年の著書で、「感覚の大きさは、刺激の強さの対数に比例する」という形にまとめました。式で書けば、感覚の大きさを 、刺激の強さを として
(, は正の定数)です。刺激を 倍, 倍, 倍にすると、感覚は 段, 段, 段と、等しい歩幅で上がっていきます。グラフにすれば、まさにこの章の対数関数の形です。強い刺激の中では、少し増えたくらいでは感じにくいのも、グラフの上がり方がどんどんゆるやかになることと重なります。
目や耳は、明るさや音の強さが何桁も違う世界を相手にしています。感覚が「差」ではなく「倍」で数えているおかげで、その広い範囲を扱えるのだと考えられています。音の大きさを表す「デシベル」も、この考え方に沿った対数の目盛りで、第7章で扱います。ただし、この法則はあくまで近似で、刺激がとても弱いときや強いときには合わなくなることも知られています。
豆知識
「年をとるほど 1 年が短く感じる」ことを説明する話に、ジャネーの法則があります。19 世紀フランスの哲学者ポール・ジャネが唱えたとされ、甥で心理学者のピエール・ジャネが紹介して広まったといわれます(※由来には諸説あり)。1 年を「それまでの人生に対する割合」で感じるとすると、10 歳の 1 年は人生の 、50 歳の 1 年は です。これを積み重ねると体感の長さは年齢の対数で測ることになり、 なので、10 歳から 20 歳までの 10 年と、20 歳から 40 歳までの 20 年が同じ長さに感じられる計算になります。ただし、科学的に確かめられた法則ではありません。
中心のまわりを回りながら外へ広がっていくらせんのうち、1 周するごとに、中心からの距離がいつも同じ倍率で大きくなるものを、対数らせんといいます。1 周で 2 倍になるなら、距離は ,,,,…… と増えていきます。反対に、距離が になるまでに回った回数は 周です。回った量が距離の対数になっている——これが名前の由来です。
対数らせんには、拡大しても形が変わらないという不思議な性質があります。1 周で 2 倍になるらせんを 2 倍に拡大コピーすると、もとのらせんをちょうど 1 周分回したものと、ぴったり重なるのです。
スイスの数学者ヤコブ・ベルヌーイ(1654〜1705)は、このらせんにすっかり魅せられました。第2章 厳密定義の「ベルヌーイの不等式」にも名前が出てきた人です。ベルヌーイは対数らせんを「驚異のらせん」と呼び、自分の墓石に彫らせて、「変えられても、同じものとしてよみがえる」というラテン語の言葉を添えるよう望みました。拡大しても同じ形に戻る性質を、死と復活に重ねたのです。
ところが、スイスのバーゼル大聖堂に残る墓碑に実際に彫られたのは、1 周ごとに同じ幅ずつ広がる「アルキメデスのらせん」だった、と伝えられています(※石工が区別できなかったとされる、よく知られた逸話です)。同じ倍率で広がるか、同じ幅で広がるか。掛け算で進むか、足し算で進むか。第2章の最初に見た、指数関数と 1 次関数の違いそのものです。
豆知識
オウムガイの殻は、対数らせんに近い形をしています。「オウムガイの殻の広がり方は黄金比になっている」という話がよく紹介されますが、実際の殻を測ると、広がり方の比は黄金比とは違うことが分かっています(※個体によっても差があります)。台風の雲の渦や、渦巻銀河の腕も、対数らせんに近い形として描かれることがあります。
※ここは発展ページです。本文では「 と を入れかえるとグラフは直線 について対称になる」「対数関数も右上がり(右下がり)の一本道になる」を、グラフを見て納得するだけにしていました。ここでは、第3章 厳密定義の全単射と、第4章 厳密定義の対数の定義を土台に、逆関数をきちんと定義し、本文の性質を証明します。最後に、 と のグラフが交わらない理由と、逆関数どうしのグラフについての注意も紹介します。
関数 が、集合 から集合 への全単射であるとする。このとき のどの要素 に対しても、 を満たす の要素 がただ 1 つ存在する。 にこの を対応させる、 から への関数を の逆関数といい、 と書く。定義から
が成り立つ。
, として とおくと、第3章 定理2 より は実数全体から正の実数全体への全単射です。第4章 定義1 の は「 を満たすただ 1 つの 」でしたから、これは そのものです。つまり は の逆関数で、定義1の 2 つの式は、第4章 公式2 の
にあたります。変数の文字を に書きかえたものが、対数関数 です。
2 点 , は、直線 について対称である。
証明 のときは と は同じ点で、直線 の上にあるので、対称移動しても自分自身に移る。
とする。線分 の中点は で、 座標と 座標が等しいので直線 上にある。また、直線 の傾きは で、直線 の傾き との積が なので、2 直線は垂直である。よって線分 は直線 によって垂直に二等分され、 と は直線 について対称である。(証明終)
を から への全単射(, は実数全体の部分集合)とする。 のグラフと のグラフは、直線 について対称である。
証明 点 について
である(2 つ目の は定義1)。したがって、一方のグラフ上の各点を直線 について対称移動した点(定理1より、座標を入れかえた点)は、もう一方のグラフ上にあり、その逆も成り立つ。(証明終)
本文の公式1の「 と のグラフは直線 について対称」は、定理2を に当てはめたものです。
次は向きです。, を実数全体の部分集合とし、 の中で ならいつでも となるとき、 は単調に増加するといいます。 となるときは単調に減少するといいます。
を から への全単射とする。 が単調に増加するなら、 も単調に増加する。 が単調に減少するなら、 も単調に減少する。
証明 が単調に増加するとする。 の要素 をとり、, とおく。もし なら となって に反する。もし なら、 が単調に増加することから となって、やはり反する。よって 、すなわち 。
単調に減少する場合も、不等号の向きを入れかえて同じように示せる。(証明終)
第2章 定理2 から、 は なら単調に増加し、 なら単調に減少します。定理3をこれに当てはめると、 も同じ向きに単調です。これが本文の公式3で、「」の逆向きは、 に定理3を の逆関数 に当てはめて が出ることから分かります。
とする。どんな正の数 に対しても
証明 は単調に増加する(定理3)ので、 なら 。 なら 。(証明終)
はいくら大きくとってもよいので、 のグラフは右へ行けばどこまでも高くなり、 を に近づければいくらでも低くなります。後半が「 軸が漸近線である」ことの中身です。第2章 定理4(指数関数は 軸に限りなく近づく)を、直線 で折り返した形になっています。前半からは、上がり方のゆるやかさも読みとれます。 にするには、 を (約 31 桁の数)より大きくしなければなりません。
本文の図では、 は直線 より上に、 は下にあって、2 本のグラフは交わっていませんでした。これを確かめます。
すべての実数 で なら 。 なら、 以下の最大の整数を ()とすると 。単調性から で、第2章 定理3(ベルヌーイの不等式)から ( のときも で成り立つ)。よって 。
すべての正の数 で とおくと、上の結果から 、すなわち 。
はつねに直線 より上、 はつねに下にあるので、2 本のグラフに共有点はありません。
ただし、「逆関数どうしのグラフは交わらない」わけでも、「交わるなら交点は直線 の上」というわけでもありません。底を にすると、, なので、 と のグラフは直線 上の点 と で交わります。底が より小さいともっと意外で、, から、 と のグラフは、どちらも 2 点 , を通ります。直線 の上にない交点があるのです。逆関数どうしの交点を求める問題では、「 との交点だけを調べればよい」と決めつけないように注意が必要です。
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