問1
のとき、 の値を求めなさい。
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()
目次 / 指数関数・対数関数 / 数学II
—— 「倍々」で変わる量を、1 本のなめらかな曲線として眺める ——
第1章で、底が正なら $a^x$ はどんな実数 $x$ に対しても値が決まることを見ました。この章では $x$ を動かして、$y = a^x$ を $x$ の関数(指数関数)として扱います。グラフを描くと、$a > 1$ なら右上がり、$0 < a < 1$ なら右下がりで、どれも点 $(0,\ 1)$ を通り、$x$ 軸に限りなく近づく曲線になります。この「右上がり(右下がり)の一本道」という性質を使うと、第1章では何乗もして比べた数の大小が、底をそろえて指数を見るだけで分かるようになります。後半では、グラフの平行移動・対称移動と、定義域が限られたときの最大値・最小値を扱い、$2^x = t$ と置きかえて 2 次関数に持ち込む方法も練習します。
第1章で、 なら、どんな実数 に対しても の値がただ 1 つ決まることを確かめました。そこで今度は を変数として自由に動かし、 を の関数として眺めます。
まず と に、いくつか の値を入れてみましょう。
が 1 増えるたびに、 は 2 倍に、 は半分になっています。1 次関数 なら、 が 1 増えると は 増えるのでした。指数関数では が 倍になる。 は足し算で進み、 は掛け算で進む——これが指数関数の性格です。
, とする。 を、 を底とする の指数関数という。
のときは と、いつでも同じ値になるので指数関数からは除く。
コピー機の倍率を 200% にして、コピーしたものをまたコピーする……とくり返すと、図の横幅は 1 回ごとに 2 倍になります。 回コピーした図は元の 倍、倍率 50% の縮小コピーなら 倍です。 は「1 回前の原稿」、 は「2 回くり返すとちょうど 200% になる倍率で 1 回コピーした」ことにあたり、その倍率 は、A4 を A3 に拡大するときの「141%」そのものです。倍率 100%()では何回コピーしても変わらないので、指数関数の仲間から外すわけです。
指数関数 は、 が 1 増えるごとに が 倍になる関数で、底は ,、値はいつでも正だということです。
とします。
(1)
(2)
(3)
(4)
上の各式の値を求めなさい。
【解答】
(1)
(2)
(3)
(4)
どの値も正の数です。 が負でも分数でも、 が や負の数になることはありません。
表の点を座標平面にとってなめらかにつなぐと、次のようになります。
のグラフを左へたどると、 は ,,,……と半分ずつになり、 軸にいくらでも近づきます。それでも にはなりません。コップの水を毎回「残りの半分」ずつ飲むと、残りはどんどん減るのに、いつまでたっても空にはならない——グラフの左端では、この状態がずっと続いています。このように、グラフが限りなく近づいていく直線を漸近線(ぜんきんせん)といいます。
のグラフについて
また、 と のグラフは 軸について対称である。
点 を通るのは、どんな底でも だからです。 軸について対称になる理由は、 と書きかえると見えてきます。 上の点 を 軸で折り返した点は 。 に を入れると なので、折り返した点はちゃんと相手のグラフの上にあります。図の点 と点 が、そのひと組です。
底の大きさによる違いも見ておきましょう。 は と同じく点 を通る右上がりの曲線ですが、 の側では のほうが上()、 の側では下()にあります。底が大きいほど、点 を境に急な坂になるのです。
指数関数のグラフは、点 を通り 軸を漸近線にもつ曲線で、底が 1 より大きければ右上がり、1 より小さければ右下がり、底を逆数にすると 軸について折り返した形になるということです。
(1) のグラフ上で、 座標が ,, である点の座標を求めなさい。
(2) (1) の 3 点を 軸について対称移動した点が、どれも のグラフ上にあることを確かめなさい。
(3) のグラフが点 を通るとき、 の値を定めなさい。
【解答】
(1) ,, なので
(2) 対称移動した点は ,, です。 に代入すると
となり、3 点とも ことが確かめられました。
(3) で、底は なので
(3) で を答えに含めないのは、指数関数の底は正と決めているからです。
のグラフは、左から右へ上り続ける一本道でした。途中で平らになったり、下がったりすることはありません。すると、「 座標が右にあるほうが、 座標も大きい」と言い切れます。 なら、その逆です。このように、ずっと増え続ける(またはずっと減り続ける)性質を単調性といいます。
したがって、底をそろえれば、数の大小は指数の大小で判定できる。底が 1 より小さいときは、不等号の向きが逆になる。
上りのエスカレーターでは、先へ進んだ人ほど高い所にいます。下りのエスカレーターでは、先へ進んだ人ほど低い所にいます。どちらでも「どちらが先にいるか(指数の大小)」さえ分かれば「どちらが高いか(値の大小)」は決まります。ただし、乗っているのが上りか下りか——底が 1 より大きいか小さいか——を確かめ忘れると、答えがまるごと逆になります。
第1章では、累乗根の大小を「同じ回数だけ累乗して根号を外す」ことで比べました。底が同じ数の累乗に直せるなら、もっと楽な道があります。すべてを同じ底の指数の形に書きかえ、指数だけを比べればよいのです。
指数関数は右上がり(または右下がり)の一本道なので、底をそろえた数どうしは指数を比べれば大小が分かり、底が 1 より小さいときだけ向きを逆にすればよいということです。
(1) ,, を小さい順に並べた結果を求めなさい。
(2) ,, を小さい順に並べた結果を求めなさい。
【解答】
(1) すべて底 の指数で書きます。
指数を通分すると ,, なので、。底 なので、値も同じ順です。
(2) すべて底 の指数で書きます。 に注意すると
指数は 。底 なので、値の大小は逆になります。
(2) は底 にそろえて ,, としても解けます。この場合は底が 1 より大きいので、向きを逆にする必要はありません。どちらの底を選んでも、答えは同じです。
と はどちらが大きいでしょう。 と は、どちらも相手の累乗では書けないので、底をそろえる作戦は使えません。そこで発想を逆にして、指数のほうをそろえます。 と はどちらも の倍数なので
で、どちらも正の数なので、10 乗しても大小は変わりません(第1章 公式6)。したがって です。
お菓子の値段を比べるとき、8 個入りと 12 個入りでは袋ごとの値段を並べても意味がないので、「1 個あたり」にそろえます。ここでも同じで、 を「 が 10 個掛けてある袋」、 を「 が 10 個掛けてある袋」と、同じ 10 個入りにそろえてしまえば、中身 1 個の大きいほうが勝ちです。
公式4の は、 が正の整数なら第1章で確かめたとおりです。 が正の実数でも、 の底 が 1 より大きいので、公式3から となり、成り立ちます。
大小比較は、底がそろえられるなら指数で、そろえられないなら指数をそろえて底で比べる、という 2 本立てで考えればよいということです。
(1) ,, を小さい順に並べた結果を求めなさい。
(2) と の大小を比べた結果を求めなさい。
【解答】
(1) 指数 ,, の最大公約数 にそろえます。
底を比べると なので
(2) と見ます。指数は で、底 なので大小は逆になり、。
(2) は「1 より小さい数を、マイナス乗すると 1 より大きくなる」ということです。実際 で、分母が 1 より小さいので値は 1 を超えます。
2 次関数で学んだとおり、 のグラフを 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動したグラフの式は でした。指数関数でもそのまま使えます。
のグラフを
グラフの形を彫ったハンコを、紙の別の場所に押し直す——平行移動はそんな操作です。形そのものは変わらず、変わるのは押した位置だけ。指数関数では、目印になる点 の行き先と漸近線の高さの 2 つを追いかければ、移動後のグラフが描けます。平行移動すると、点 は点 に、漸近線 は に移ります。
指数関数ならではの見方も 1 つあります。 は 軸方向に の平行移動ですが、指数法則で とも書けるので、「 を縦に 2 倍に伸ばしたもの」でもあります。逆に、 のような「定数倍」は、 と見て と書けば平行移動として扱えます。
のグラフは を平行移動したもので、点 の行き先 と漸近線 を押さえれば描けるということです。
関数 について
(1) グラフは のグラフをどのように平行移動したものかを求めなさい。
(2) グラフの漸近線の方程式を求めなさい。
(3) グラフと 軸, 軸との交点の座標を求めなさい。
【解答】
(1) と見て、
(2) の漸近線 が だけ下がって
(3) のとき 。 のとき で、公式3(単調性)から指数どうしが等しく ,。
漸近線が なので、グラフはどこまで左へ行っても より下には下がりません。図と見比べてください。
で、 の範囲が に限られているとします。グラフは右下がりの一本道なので、いちばん高いのは左端、いちばん低いのは右端です。 で最大値 、 で最小値 。途中の値を調べる必要はありません。
少し手ごわいのが のような式です。一見ややこしいのですが、, なので、 を 1 つの文字 で表すと
という、ただの 2 次関数になります。複雑に見えた式は、2 次関数が「」という着ぐるみを着ていただけでした。着ぐるみを脱がせたら、平方完成で最大・最小を調べれば済みます。
2 で大事なのは の範囲です。 はつねに正なので、 に制限がなくても 。 なら、 は右上がりなので 、すなわち です。この範囲を忘れて 2 次関数の頂点だけを見ると、実際にはとれない値を答えてしまいます。
指数関数の最大・最小は、単調なら定義域の両端を見ればよく、 と が混じる式は ()とおいて、 の範囲に気をつけながら 2 次関数として扱えばよいということです。
(1) ()の最大値と最小値を求めなさい。
(2) ()の最大値と最小値を求めなさい。
【解答】
(1) 底 で右下がりなので、左端で最大、右端で最小です。
(2) ()とおくと、 より 。
(範囲内)で最小値 。最大値は、軸 から遠い端 でとり、(もう一方の端 では )。 は 、 は にあたります。
答えには、そのときの の値も添えます。 の値のままにしないよう、最後に へ戻すのを忘れないでください。
| 見るところ | ||
|---|---|---|
| グラフの向き | 右上がり | 右下がり |
| 必ず通る点・漸近線 | 点 , 軸 | 点 , 軸 |
| 大小(底をそろえたとき) | 指数が大きいほど大きい | 指数が大きいほど小さい |
| 最大・最小() | 右端で最大、左端で最小 | 左端で最大、右端で最小 |
この章の道具はほとんどすべて、「グラフが右上がり(右下がり)の一本道である」という 1 つの性質から出てきました。第3章では、この性質を使って や のような方程式・不等式を解きます。「底をそろえる → 底が 1 より大きいか小さいかで向きを判断」という流れは、そのまま引き継がれます。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
のとき、 の値を求めなさい。
()
問2
のグラフと 軸との交点の座標を求めなさい。
(。指数関数のグラフはどれも点 を通る)
問3
で、 の値が 1 増えると、 の値は何倍になるかを求めなさい。
( が 1 増えるごとに底 が 1 回多く掛かる)
問4
と の大小を比べた結果を求めなさい。
(底 なので、指数が大きいほうが大きい)
問5
のグラフを 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動したグラフの式を求めなさい。
( を に、 を に置きかえる)
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
とします。
(1)
(2)
(3)
(4)
上の各式の値を求めなさい。
(1) (2) (3) (4)
に値を入れて、第1章の指数の計算をします。
(1)
(2)
(3)
(4)
どれも正の数になっていることを確かめておきましょう(値域は )。
問2 ★
(1) のグラフが点 を通るとき、 の値を定めなさい。
(2) のグラフが点 を通るとき、 の値を定めなさい。
(1) (2)
点の座標を に代入し、底の条件 を使います。
(1) より
(2) より ,。 なので
(2) のグラフは、 という左側で値が大きいので右下がり、つまり底が 1 より小さいはず、とグラフからも見当がつきます。
問3 ★
,, を小さい順に並べた結果を求めなさい。
すべて底 の指数で書きます。
指数を小数にすると ,, なので、。底 なので値も同じ順です。
問4 ★
,, を小さい順に並べた結果を求めなさい。
すべて底 の指数で書きます。
指数は 。底 なので、値の大小は逆になります。
指数が大きい がいちばん小さい、という向きに注意します。
問5 ★
,,, を小さい順に並べた結果を求めなさい。
と見ると、4 つとも底 です。指数は 。
底 なので、値の大小は逆になります。
実際に ,, です。
問6 ★
のグラフを、次のように移動します。
(1) 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動する
(2) 軸について対称移動する
(3) 原点について対称移動する
移動したあとのグラフの式を、それぞれ求めなさい。
(1) (2) () (3)
公式5を使います。
(1) を に、 を に置きかえて 、すなわち
(2) を に置きかえて 。 なので、底を逆数にしたグラフです。
(3) を に、 を に置きかえて 、すなわち
問7 ★
関数 のグラフについて、漸近線の方程式と、 軸, 軸との交点の座標を求めなさい。
漸近線 , 軸との交点 , 軸との交点
を 軸方向に , 軸方向に だけ平行移動したグラフです。
漸近線は が 下がって 。
軸との交点: として 。単調性から指数どうしが等しく ,。よって
軸との交点: として 。よって
問8 ★
(1) ()
(2) ()
上の各関数の最大値と最小値を求めなさい。
(1) 最大値 (),最小値 () (2) 最大値 (),最小値 ()
単調なので、両端だけを調べます。
(1) 底 で右上がり。右端で最大、左端で最小です。
(2) 底 で右下がり。左端で最大、右端で最小です。 なので
問9 ★★
,, を小さい順に並べた結果を求めなさい。
底 ,, はそろえられないので、指数を最大公約数 にそろえます。
底を比べると 。正の数どうしなので、10 乗しても順は変わりません。
指数が最も大きい がいちばん小さい、というのは意外かもしれません。底と指数の両方が効いてくるので、そろえてから比べるのが確実です。
問10 ★★
ある薬を飲むと、血液中の薬の濃度は 4 時間ごとに半分になります。飲んだ直後の濃度を とし、 時間後の濃度を とします。
(1) を の式で表しなさい。
(2) 12 時間後と 10 時間後の濃度を求めなさい。
(1) (2) 12 時間後 ,10 時間後
(1) 4 時間で 倍なので、 時間は「4 時間が 回」ぶんです。
(2) 12 時間後は 回半分になるので
10 時間後は指数が です。
で、8 時間後の と 12 時間後の のあいだにあります。ちょうど真ん中の ではない点に注意しましょう。指数関数は「差」ではなく「比」が一定の割合で進むので、2 時間ごとに 倍ずつ減っています()。
問11 ★★
(1)
(2)
上の各関数のグラフは、 のグラフをどのように平行移動したものかを求めなさい。
(1) 軸方向に (2) 軸方向に , 軸方向に
定数倍は、 の累乗に直して指数へ入れると平行移動として読めます。
(1) なので 。 が になっているので、
(2) なので 。よって
(1) は「縦に 8 倍」と見ることもできますが、指数関数では縦の定数倍と横の平行移動が同じ結果になります。
問12 ★★
関数 ()の最大値と最小値を求めなさい。
最大値 (),最小値 ()
を平行移動したグラフなので、同じく右下がりです。左端で最大、右端で最小になります。
のとき
のとき
問13 ★★
関数 の最小値と、そのときの の値を求めなさい。
のとき最小値
()とおくと、, なので
の範囲に頂点 が入っているので、 で最小値 。 より 。
なお、 はいくらでも大きくなれるので、最大値はありません。
問14 ★★
関数 ()の最大値と最小値を求めなさい。
最大値 (),最小値 ()
()とおきます。 で は右上がりなので、、すなわち 。
, なので
頂点 は範囲内なので、 で最小値 。最大値は軸から遠い端 でとり、(もう一方の端 では )。
は 、 は なので
問15 ★★
(1)
(2)
(3)
上の各関数の値域を求めなさい。
(1) (2) (3)
のとる値が (正の数全体)であることから考えます。
(1) なので 。 は正の数すべてをとるので、値域は (漸近線 より上の全体)
(2) なので 、よって 。値域は
(3) 指数 は ( のとき )で、 以下のすべての値をとります。底 なので 、また 。値域は
(3) は で最大値 をとり、 が から離れるほど に近づく、山の形のグラフになります。
問16 ★★
,,, を小さい順に並べた結果を求めなさい。
すべて底 の指数で書きます。, です。
指数は (,,)。底 なので値も同じ順です。
問17 ★★★
関数 の最小値と、そのときの の値を求めなさい。
のとき最小値
と は「掛けると 1 のペア」(第1章)なので、和 を新しい文字にします。
の範囲:, なので、相加平均と相乗平均の関係から
等号は 、すなわち より のとき。よって 。
を で表す: より 。
軸 は範囲 の外(左側)にあるので、 では は増加します。最小になるのは端の で、。
だけを使って頂点 で最小値 としてしまうのが典型的な誤りです。 となる は存在しません。
問18 ★★★
関数 ()の最大値と最小値を求めなさい。
最大値 (),最小値 ()
指数の部分 の範囲を先に求め、次に の大小を考えます。
では、 で最小値 、軸から遠い端 で最大値 ( では )。よって 。
は底 で右下がりなので、 が最小のとき は最大、 が最大のとき は最小です。
大小が入れかわるところが、この問題のいちばんの落とし穴です。
問19 ★★★
のとき、,, を小さい順に並べた結果を求めなさい。
と :どちらも正なので、比をとって 1 と比べます。
底 ,指数 なので 。よって 。
と : で底 なので 。一方 で なので 。よって 。
グラフで見ると、 の側では底の大きい ほど下にあり(公式2のあとの説明)、右下がりの は より上にあります。 なら順はまるごと逆()になります。
問20 ★★★
のとき、,,, を小さい順に並べた結果を求めなさい。
底が同じものどうし、指数が同じものどうしを、単調性で 1 組ずつ比べます。 なので、指数としては です。
底 の 2 つ: で右下がり。指数 なので 。さらに指数 なので 。
底 の 2 つ: で右上がり。指数 なので 。
2 組は を境に分かれているので
, で確かめると、,,, で、たしかにこの順です。具体的な数で答えを見当づけてから、単調性で一般的に示す、という進め方が有効です。
「ねずみ算式に増える」という言い回しの出どころは、江戸時代のベストセラー数学書『塵劫記』(じんこうき、吉田光由、1627 年)です。そこには次のような問題が載っています。
正月に、ねずみの夫婦 2 匹が子を 12 匹産みます。子はオスとメスが半分ずつで、親と合わせて 14 匹、つまり 7 組の夫婦になります。2 月には、この 7 組がまたそれぞれ 12 匹ずつ産み、……と毎月くり返すと、12 月には何匹になるでしょう。
毎月、夫婦の組の数が 7 倍になるので、 か月目の終わりのねずみの数は 匹。底が の指数関数です。12 か月目には
で、276 億 8257 万 4402 匹。当時の日本の人口(1000 万人台といわれます)の千倍をはるかに超えます。 のグラフは よりもずっと急な坂で、最初の数か月は「ずいぶん増えたな」くらいでも、後半の 1 か月ごとの増え方はけた違いです。
『塵劫記』は、そろばんの使い方から面積の求め方、こうした遊びの問題までを絵入りで紹介し、何度も版を重ねて寺子屋でも使われました。ねずみ算は、多くの人が指数的な増え方に初めて出会った場だったのかもしれません。
豆知識
似た話に、豊臣秀吉とお伽衆(おとぎしゅう)の曽呂利新左衛門(そろりしんざえもん)の逸話があります。ほうびを聞かれた新左衛門が「今日は米 1 粒、明日は 2 粒、あさっては 4 粒……と、倍々にして 1 か月いただきたい」と願い、秀吉は最初こそ笑ったものの、あとで計算して青ざめた、という話です。30 日目だけで 粒、約 5 億 4000 万粒になります(※伝説で、日数や中身には諸説あり)。
木や動物の骨が何年前のものかを調べる方法に、放射性炭素年代測定があります。炭素には、ふつうの炭素のほかに、ごくわずかに「炭素 14」という種類が混じっています。炭素 14 は放っておくと少しずつ別の原子に変わっていき、その量は約 5730 年ごとに半分になります。この「半分になるまでの時間」を半減期といいます。
生きている植物や動物は、呼吸や食事で炭素を取り込み続けるので、体の中の炭素 14 の割合はほぼ一定に保たれています。ところが死ぬと取り込みが止まり、そこから炭素 14 は減る一方になります。死んでから 年たったときに残っている割合は
で、右下がりの指数関数です。たとえば炭素 14 の割合が生きていたときの になっていれば、半減期 3 回ぶんで約 年前と分かります。グラフが右下がりの一本道なので、割合が決まれば年代もただ 1 つに決まる——この章の単調性が、そのまま年代測定の原理になっているわけです。
この方法を 1940 年代の終わりに開発したアメリカのウィラード・リビーは、1960 年にノーベル化学賞を受けました。割合が小さくなりすぎると測れないので、さかのぼれるのはおよそ 5 万年前までとされています。
豆知識
半減期は、物質によってまったく違います。甲状腺の検査や治療に使われるヨウ素 131 は約 8 日、地球の年齢を調べるのに使われるウラン 238 は約 45 億年です。短い物質は「すぐ消える」、長い物質は「ほとんど減らない」ので、何を測りたいかによって使い分けられています。
と 。見た目は「2」と「」を入れかえただけですが、どちらが大きいでしょうか。 で並べてみます。
で並び、 では がわずかに前に出て、 でまた並びます。そこから先は の独走で、 では に対して 。もう勝負になりません。 が 1 増えると、 はいつでも 2 倍になるのに、 の増え方の倍率は で、 が大きくなるほど 1 に近づいてしまうからです。
実は、負の側にも交わる点がもう 1 つあり()、2 つのグラフは全部で 3 回交わります。相手を のような大きな累乗にしても、はじめは が大きく引き離しますが、 がおよそ を超えると が追い抜き、二度と追いつかれません。どんな が相手でも、最後には指数関数が勝つ——これが「指数関数的に増える」という言葉の本当の迫力です。
豆知識
「指数」を表す英語 exponent は、ラテン語の exponere(外に置く、示す)から来ています。底の右上の「外」に置かれて、何回掛けるかを「示す」数、というわけです。グラフの話でよく聞く「エクスポネンシャル(exponential)」は、その形容詞で「指数の、指数関数的な」という意味です。
※ここは発展ページです。高校の範囲では「グラフを描くと右上がり(右下がり)になる」で十分ですが、「右上がりだと、なぜ言い切れるのか?」「 軸に限りなく近づくのは本当か?」「 はどんな正の数にもなれるのか?」が気になる人のために、根拠を紹介します。実数の指数 の決め方は、第1章 厳密定義の補足2を前提にします。
, とする。実数 に を対応させる関数 を、 を底とする指数関数という。
グラフの向きを決めるのは、次の「1 より大きい底を正の数乗すると 1 より大きい」という、ごく小さな事実です。
, ならば である。
証明 ( が有理数のとき)(, は正の整数)とする。まず を示す。 であり、もし なら、 の両辺に正の数 を掛けることをくり返して 、すなわち となり、 に反する。よって 。すると は 1 より大きい数を 個掛けたものなので 。
( が無理数のとき) となる有理数 を 1 つとる。 は、 に下から近づく有理数の列 についての の極限であった。十分先の では なので、有理数の場合の結果と指数法則から 。極限をとっても 。(証明終)
のとき、 ならば である。 のとき、 ならば である。
証明 とする。 なので定理1より 。 を掛けて、指数法則から
のときは とおくと 。 より なので、前半の結果から 、すなわち 。(証明終)
本文の公式3は「」の形でした。逆向き(,)は、 とすると になって矛盾することから分かります。とくに なら で、これは第3章で方程式を解くときの土台になります。
次に、グラフが上へどこまでも伸び、左では 軸に近づくことを確かめます。道具は、2 項定理から出る簡単な不等式です。
, を正の整数とすると、 である。
証明 なら等号が成り立つ。 のとき、2 項定理により
で、3 項目以降はすべて正なので 。(証明終)
とする。どんな正の数 に対しても、 かつ となる正の整数 がある。
証明 とおくと、定理3より 。 となる正の整数 をとれば 。このとき 。(証明終)
定理2と合わせると、 なら 、 なら となります。 はいくら大きくとってもよいので、 のグラフは右へ行くほどどこまでも高くなり、左へ行くほど 軸にいくらでも近づきます(それでも なので 軸には触れません)。これが「 軸が漸近線である」ことの中身です。 なら左右が入れかわります。
本文の公式1では、値域を「正の実数全体」としました。 であることは第1章で確かめましたが、「どんな正の数 にも、 となる がある」ことは別の話です。
そのためには、 が連続(グラフが途切れずにつながっている)であることを使います。これは第1章の補足2の決め方から示せますが、ここでは認めることにします。, とすると、定理4から となる正の整数 がとれるので、中間値の定理により の範囲に となる があります。しかも定理2(単調性)から、そのような はただ 1 つです。
「どんな正の数 に対しても、 を満たす がちょうど 1 つある」。この に名前を付けて、 から を求められるようにしたものが、第4章で学ぶ対数です。
この章の学習が終わったら
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