問1
を 進法で表しなさい。
答えを見る答えを閉じる
()
目次 / 整数の性質 / 数学A
—— 10 でまとめる約束をはずして、数の書き表し方そのものを考える ——
私たちがふだん使っている数の書き方は、「10 集まったら 1 つ上の位へ」という約束でできています。この約束を 2 や 5 に変えると、同じ数がまったく違う見た目になります。この章では、n 個ずつまとめて数を書く n 進法のしくみを学び、10 進法との行き来、小数の表し方、n 進法のままの計算までを順に見ていきます。コンピュータが使う 2 進法も、ここで正体が分かります。
という数を、私たちは「二千七百四十八」と読みます。この つの数字が何を表しているかを書き出すと
です。同じ数字 でも、左から2番目にあれば を、左から3番目にあれば を表します。数字の置かれた場所(位)が、そのまま の累乗を表す約束になっているのです。この書き方を位取り記数法といい、 個集まったら1つ上の位へ送るこの約束を10 進法といいます。
でまとめる理由は、人間の指が 本だからだといわれています(※諸説あり)。つまり という数に、数学的な必然性はありません。 のかわりに や でまとめる約束にしても、数の書き表し方としては何も困らないのです。この章では、そのまとめ方を変えた記数法を考えます。
なお、この分野のこれまでの章と同じく、とくに断らないかぎり文字は整数を表します。
を 以上の整数とする。 以上の整数 を
の形に表し、数字を並べて と書く表し方を 進法という。 を底といい、 進法で表した数であることを示すために
のように右下に を添える。 進法のときは を省略する。 進法で使う数字は の 種類である。
大事なのは、 進法では 以上の数字は使わないということです。 進法に という数字は出てきません。 が集まった時点で、1つ上の位へ送ってしまうからです。 進法にいたっては と しか使いません。
鉛筆がたくさんあるとします。ふつうは 本ずつ輪ゴムで束ね、 束ずつ箱に入れて数えます。これを「 本ずつ束ね、 束ずつ箱に入れる」というルールに変えてみます。 本の鉛筆なら、箱が つ( 本ずつ)、束が つ( 本ずつ)、ばらが 本になります。このとき 本を「箱 ・束 ・ばら 」と報告するのが 進法で、 と書くわけです。束が つそろってしまったら、必ず箱にしなければなりません。だから各位の数字は 以下になるのです。
底が より大きいときは、数字が足りなくなります。そこで 進法では、 から を表すのに の6文字を使う約束になっています。
進法とは「 個集まったら1つ上の位へ送る」という約束であり、位の重みが の累乗、使える数字が から までになるということです。
進法で書かれた数を 進法に直すのは、公式1 の右辺をそのまま計算するだけです。
進法の数 を 進法で表すには、各位の数字に位の重み を掛けて足す。
たとえば なら
です。位の重みは、右から順に と並びます。 進法なら 、 進法なら です。これを書き出してから、数字が の位だけを足すようにすると、 進法の計算は速くなります。
英語圏で使われるヤード・ポンド法では、重さを「 ポンド オンス」のように書きます。 ポンドは オンスなので、全部オンスで言い直すと オンスです。この計算を、私たちは何も特別なことだと思わずにやっています。 進法を 進法に直す作業は、これとまったく同じで、位ごとにばらばらだった単位を、いちばん小さい単位にそろえているだけなのです。
進法から 進法への変換は、位の重み を掛けて足すだけ、つまり「単位をそろえる」計算だということです。
次の数を 進法で表しなさい。
(1) (2) (3)
【解答】
(1) 位の重みは右から です。数字が の位は と と なので
(2) 位の重みは右から です。
(3) は を表します。
逆向きの変換は、割り算をくり返します。
進法の数 を 進法で表すには、 を で割り、その商をまた で割る、という操作を商が になるまでくり返す。得られた余りを下から順に読んだものが、 進法の表示である。
を 進法で表してみます。
余りを下から読んで です。確かめると で、合っています。
なぜ余りを読めばよいのでしょうか。 のうち、 以外の項はすべて の倍数です。 ですから、 は を で割った余りそのものです(第2章 公式1 の割り算の等式で、余りがただ1つに決まることを使っています)。そして商は なので、同じことをくり返せば、次は が余りとして出てきます。こうして下の位から順に数字が決まっていくのです。
人のクラスを「 人ずつの班」に分けると、 班できて 人余ります。次に、その 班を「 班ずつのグループ」にまとめると、 グループできて 班余ります。余った人と班を並べて「グループ ・班 ・人 」、つまり です。班分けのたびに出る「余り」が、下の位から順に数字になっていきます。
けた数も、位の重みから分かります。 進法で けたということは、いちばん上の位の重みが だということなので
が成り立ちます。逆にこの不等式を満たす を探せば、実際に変換しなくてもけた数が分かります。
進法から 進法への変換は で割り続けて余りを下から読むこと、けた数は で決まるということです。
(1) を 進法で表しなさい。
(2) を 進法で表しなさい。
(3) を 進法で表すと何けたになるか求めなさい。
【解答】
(1) で割り続けます。
商が になったら、その が最上位です。余りを下から読んで です。(確かめ) です。
(2) ,, なので、余りを下から読んで です。(確かめ) です。
(3) の累乗は ,, です。 なので 、すなわち です。(実際に変換すると で、確かに けたです。)
進法の小数 は、 のことでした。小数点から右へ進むと、位の重みが 倍ずつ小さくなるという約束です。 進法でも同じように考えます。
進法の小数 は
を表す。逆に 進法の小数を 進法に直すには、小数部分に を掛け、出てきた整数部分を上の位から順に取り出す操作を、小数部分が になるまでくり返す。
を 進法にしてみます。 進法の小数の位の重みは ,,, なので
です。逆に を 進法に直すときは、 を掛けていきます。
整数部分を上から読んで に戻りました。整数部分を取り出したら、残った小数部分だけに次の を掛けるのがこつです。
正方形の紙を半分に折ると 、もう一度折ると 、その次は の大きさになります。 進法の小数は、「半分に折った紙を使うか、使わないか」を順に と で答えたものです。 なら、半分()を使い、その半分()も使い、次()は使わず、その次()を使う、と答えていることになります。 進法で小数第4位まで必要だった数が、 進法では けたできれいに終わるのは、 がちょうど「折った紙の組み合わせ」で作れる数だからです。
ただし、どんな小数でもぴたりと終わるわけではありません。 進法では有限小数の も、 進法では と無限に続きます。どんなときに有限小数になるかは、この章の厳密定義で扱います。
進法の小数も位の重みが 倍ずつになるだけで、整数のときと考え方は同じだということです。
(1) を 進法で表しなさい。
(2) を 進法で表しなさい。
【解答】
(1) 位の重みは です。
(2) 小数部分に を掛けていきます。
上から読んで です。(確かめ) です。
進法に直さずに、 進法のまま筆算することもできます。やり方は 進法の筆算と同じで、「くり上がる(くり下がる)タイミング」だけが変わります。
進法の筆算では、各位の計算結果が 以上になったら を引いて上の位へ くり上げ、引き算で足りないときは上の位から を借りて を足す。
たとえば 進法では
となる。
を筆算でやってみます。右の位から なので を書いて くり上がり、次の位は でまた を書いて くり上がり……と進みます。
進法で確かめると で、 です。合っています。
車の走行距離計は、いちばん右の数字が から 進むと に戻り、左どなりの数字が 増えます。これが 進法のくり上がりです。もし数字が から までしか書かれていない計器があれば、 の次で に戻って左が 増える、つまり 進法の計器になります。くり上がりの位置が変わるだけで、計算のしくみは何も変わりません。
進法のまま計算するか、 進法に直してから計算して最後に戻すかは、どちらでもかまいません。けたの多い掛け算は、 進法に直したほうが速いことが多いです。
進法の筆算は 進法とまったく同じ手順で、くり上がりが「 で」ではなく「 で」起こるだけだということです。
次の計算をしなさい。答えもその 進法で表すこと。
(1) (2) (3)
【解答】
(1) 進法では です。 なので
です。筆算でも、右から2番目の位で ができないので上の位から を借り、 として同じ答えになります。
(2) なので、 です。 倍は 進法で 倍するのと同じく、右に を1つ付けて ですから
です。(確かめ) で、 です。
(3) 右の位から なので を書いて くり上がります。次の位は で を書いて くり上がり、最上位は です。よって
です。(確かめ), で 、 です。
最後に、底 や各位の数字のほうが分からない問題を考えます。公式1 の形に書き下して、方程式として解くのが基本です。このとき、各位の数字は 以上 以下という条件を忘れないことが大切です。この条件が、答えを1つにしぼる決め手になります。
(1) となる底 を求めなさい。
(2) ある自然数を 進法で表すと となり、 進法で表すと数字の順が入れかわって となる。この自然数を求めなさい。
【解答】
(1) なので
です。数字 を使っているので でなければなりませんが、 はこれを満たします。よって です。
(2) 進法でも 進法でも数字として使えるので、, は 以上 以下の整数です。どちらも けたなので , です。
より 、すなわち です。 と は互いに素なので、 は の倍数です(第1章 厳密定義 定理5(2))。 より で、このとき です。求める自然数は
です。(確かめ) なので 進法では となり、確かに数字が入れかわっています。
この章では、数の書き表し方が 進法だけではないこと、そしてどの底を選んでも同じ数を過不足なく表せることを見てきました。とくに で割った余りが最下位の数字になるという関係は、公式3 の土台であり、次の第5章で学ぶ「余りに注目して整数を分類する」考え方へまっすぐつながります。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
を 進法で表しなさい。
()
問2
を 進法で表しなさい。
()
問3
を 進法で表しなさい。
()
問4
を 進法で表しなさい。
()
問5
を 進法で表しなさい。
()
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
(1) (2)
上の (1)(2) を、それぞれ 進法で表しなさい。
(1) (2)
(1) 進法の位の重みは右から です。数字が の位を足して
です。
(2) 進法の位の重みは右から です。
問2 ★
を (1) 進法 (2) 進法 で表しなさい。
(1) (2)
(1) で割り続けます。
余りを下から読み、最後の商 を先頭に置いて です。(確かめ) です。
(2) の累乗 で考えると、 なので
です。割り算でも ,, から同じ答えになります。
問3 ★
(1) を 進法で表しなさい。
(2) を 進法で表しなさい。
(1) (2)
(1) 小数の位の重みは です。
(2) 小数部分に を掛け、整数部分を上から読みます。
よって です。(確かめ) です。
問4 ★
(1) (2)
上の (1)(2) を計算し、答えを 進法で表しなさい。
(1) (2)
(1) 進法に直すと です。 なので
です。筆算でも、右の位から とくり上がりを続けると同じ答えになります。
(2) 進法では です。 なので
です。(1) の逆の計算になっていることからも確かめられます。
問5 ★
を計算し、答えを 進法で表しなさい。
なので
です。 進法で 倍することは、右に を2つ付けることなので です。これに を足して
です。(確かめ) 進法では で、 です。
問6 ★
を 進法、 進法で表すと、それぞれ何けたになるか求めなさい。
進法で けた、 進法で けた
進法で けたであることは と同じです。
進法:, で なので 、すなわち です。
進法:, で なので 、すなわち です。
実際に変換すると , で、けた数は一致しています。
問7 ★
となる底 を求めなさい。
なので
です。 は 以上の整数なので です。数字 を使っているので が必要ですが、これも満たしています。よって
です。(確かめ) です。
問8 ★
進法で表すと けたになる自然数は何個あるか求めなさい。また、そのうち最大のものを 進法で表しなさい。
個、最大は
進法で けたになる条件は
です。個数は で、最大のものは です。
最大のものは、すべての位の数字が である にあたります。
問9 ★★
(1) を 進法で表しなさい。
(2) を 進法で表しなさい。
(1) (2)
なので、 進法の数字を下から けたずつ区切ると、その区切りがそのまま 進法の各位になります。 ごとに位が上がることと、 けたで表せる数がちょうど から であることが理由です。
(1) 下から けたずつ区切ると で、それぞれ なので
です。(確かめ), です。
(2) なので、 進法の各位を 進法の けたに置きかえます。, なので 、先頭の を取って
です。(確かめ), です。
問10 ★★
, を 以上 以下の整数とする。 進法で と表される数が 進法で であるとき、, の値を求めなさい。
,
進法の位の重みは右から なので
です。整理すると
です。 なので、 は 以上 以下です。これを満たす整数 は だけで、このとき です。よって
です。(確かめ) です。
問11 ★★
自然数 を 進法で表すと けたになり、 進法で表すと けたになる。このような の範囲を 進法で表し、 は何個あるか求めなさい。
、 個
進法で けたであることから
です。 進法で けたであることから
です。両方を満たすのは
で、個数は です。
問12 ★★
を 進法で表すと、末尾に が何個並ぶか求めなさい。
個
進法で表したとき末尾に が 個並ぶことは、 が で割り切れて では割り切れないことと同じです。末尾の 個が なら、その数は でくくれるからです。
, なので、 で割り切れる条件は かつ 、すなわち です。よって末尾の は
です。(確かめ) で、末尾に が 個並んでいます。
問13 ★★
進法で と表される自然数が の倍数であることと、 が の倍数であることは同じであることを示しなさい。
より、一方が の倍数なら他方も の倍数になる。
です。, なので
と書けます。 は の倍数です。
が の倍数なら、 は の倍数の差なので の倍数です。逆に が の倍数なら、 は の倍数どうしの和なので の倍数です(第1章 公式1)。よって2つの条件は同じです。(証明終)
これは 進法における「各位の数字の和が の倍数なら の倍数」(第1章 公式2)の 進法版です。 進法では、 の倍数の判定が各位の数字の和でできます。
問14 ★★
(1) を 進法の小数で表しなさい。
(2) は 進法では有限小数になるが、 進法では有限小数にならないことを示しなさい。
(1) (2) 。 進法で有限小数なら となり、奇数が偶数に等しくなって矛盾する。
(1) 進法の小数第1位の重みは です。 なので
です。
(2) 進法の小数第2位の重みは なので、 で有限小数です。
進法で有限小数になったとすると、小数第 位までで終わるので、ある整数 を用いて
と書けます。分母をはらうと です。左辺 は奇数、右辺 は偶数なので、これは成り立ちません。よって は 進法では有限小数になりません。(証明終)
実際に計算すると と、 がくり返し現れます。
問15 ★★
(1) (2)
上の (1)(2) を計算し、答えを 進法で表しなさい。
(1) (2)
進法に直すと , です。
(1) です。 なので
です。 進法のまま筆算しても、右の位から で を書いて くり上がり、 で を書いて くり上がり、 となって同じ答えです。
(2) なので
です。
問16 ★★
ある自然数を 進法で表すと となり、 進法で表すと となる。 とこの自然数を求めなさい。
、自然数は
, です。同じ数なので
です。数字の条件も確かめます。 進法で数字 を使うので 、 進法で数字 を使うので ですが、 はどちらも満たします。求める自然数は
です。(確かめ) なので 進法では です。
問17 ★★★
から までの自然数を つ選んでもらう手品を考える。 枚のカードを用意し、 枚目()のカードには、 進法で表したときに の位の数字が であるような数をすべて書いておく。
(1) 選ばれた数が書かれているカードをすべて教えてもらえば、その数が必ず分かる理由を説明しなさい。
(2) 枚目・ 枚目・ 枚目の 枚だけに書かれている数を求めなさい。
(1) 各数の 進法表示はただ1通りなので、数字が である位の重みを足せば元の数に戻るから。 (2)
(1) から までの自然数は、 進法では けた以内で表せます()。しかも、その表し方はただ1通りです(厳密定義 定理1)。
選ばれた数を 、その 進法表示を とすると
です。 枚目のカードに が書かれていることと であることは同じなので、「どのカードに書かれているか」を聞くことは、 進法の各位の数字をすべて聞くことにほかなりません。あとは、そのカードの番号 に対応する重み を足し合わせれば が求まります。表し方がただ1通りだから、別の数と取り違えることもありません。
(2) 枚目・ 枚目・ 枚目の重みは ,, です。ほかのカードには書かれていないので、残りの位の数字は です。よって
です。(確かめ) で、数字が なのは 番目の位だけです。
問18 ★★★
自然数 を 進法で表すと けたになる。 を 進法で表すと何けたになるか、 を用いて表しなさい。
が偶数のとき けた、 が奇数のとき けた
進法で けたであることから
です。 進法で けたであるとすると で、 より
です。 の 進法のけた数は、 が 以上 未満であることから か のどちらかです。つまり
です。 が奇数なら 、偶数なら です。よって、 進法のけた数は次のとおりです。
これは、 進法の数字を下から けたずつ区切ると 進法になる(問9 と同じ理由)ことからも分かります。 けたを下から けたずつ区切ると、 が偶数ならちょうど 個、奇数なら最後に けた余るので 個の区切りができます。
問19 ★★★
から までの自然数のうち、 進法で表したときに数字 が現れないものは何個あるか求めなさい。
個
なので、 から までの数は 進法で けた以内です。数字が と しか現れないということは、各位の数字 が か で
と書けること、つまり が の中からいくつかを選んで足した数であることと同じです。 進法の表し方はただ1通りなので(厳密定義 定理1)、選び方が違えば和も違います。
選び方は、 つも選ばない場合を除いて 通りあります。このうち を超えるものを除きます。
よって です。
(具体的には の 個です。)
問20 ★★★
ある自然数を 進法で表すと けたの となり、 進法で表すと数字の順が逆になった となる。この自然数をすべて求めなさい。
と
進法の数字なので ,, は 以上 以下の整数で、どちらも けたなので最上位の数字は でなく、, です。
整理すると 、両辺を で割って
です。 で、 は の倍数なので です。このとき です。
よって求める自然数は
です。(確かめ)、 で、どちらも数字の順が逆になっています。
微分積分の記号 や を作ったドイツの数学者ライプニッツは、 年に「二進法算術の解説」という論文を発表しました。 と だけですべての数を書き表し、足し算も掛け算もできることを示した文章です。
ライプニッツがこの記数法に強くひかれたのには、数学以外の理由もありました。彼は を「無」、 を「神」になぞらえ、無から万物が作られることの象徴だと考えていたのです。さらに、中国にいた宣教師ブーヴェから送られてきた『易経』の六十四卦の図を見て、陰()と陽()の組み合わせが、ちょうど 進法の と の並びと一致していることに気づき、たいへん興奮したと伝えられます(※古代中国側に 進法の意識があったかどうかは諸説あり、ライプニッツの解釈だという見方が有力です)。
進法が実用になるのは、それから 年以上あとのことです。電気回路のスイッチには「流れている・流れていない」の つの状態しかありません。この 状態に と を割り当てれば、数がそのまま回路で表せます。 けた分を ビット、 ビットをまとめて バイトと呼びます。 けたの 進法で表せる数は 通りなので、 バイトで から までが表せます。
ただし 進法は、人間が読むにはけたが長すぎます。そこで登場するのが 進法です。 なので、 進法の けたが 進法の けたにぴたりと対応します(実践問題 j09 でやった変換です)。ウェブページで色を指定するときの #FF0000(赤)や #00FF00(緑)は 進法で、赤・緑・青の強さをそれぞれ から ()の けたで表したものです。 バイトがちょうど 進法の けたになる、という関係がここでも効いています。
豆知識
パソコンの世界で キロバイトが バイトでなく バイトとされてきたのは、 だからです。 進法で数えると けた上がるごとにきりのよい数になるので、 のかわりに をまとめの単位にしたほうが都合がよかったのです。ただし混乱も多く、いまは バイトを「キビバイト(KiB)」と呼び分ける規格も定められています。
フランス語で は quatre-vingt-dix といいます。直訳すると「 個の と 」、つまり です。 は quatre-vingts( 個の )で、 にいたっては soixante-dix( と )です。 進法の国のことばに、 進法のかけらが化石のように残っているのです。ケルト系の言語の影響ではないかといわれています(※由来には諸説あり)。
デンマーク語はもっと徹底していて、 は halvfems、もとをたどれば「 個半の 」です。 という計算が、そのまま数詞になっています。
英語にも痕跡があります。 と だけが eleven,twelve という特別な名前で、 から までは thirteen,fourteen と規則的になります。eleven と twelve は、古いゲルマン語で「( から) 余る」「 余る」という意味だったと考えられています(※諸説あり)。 までをひとまとまりとする感覚があった名残です。実際、英語圏では 個を ダース、 ダース()を グロスと数え、 フィートは インチ、かつての シリングは ペンスでした。
日本語も例外ではありません。「二十歳(はたち)」「三十路(みそじ)」「四十路(よそじ)」の「はた」「みそ」「よそ」は、 進法の中に残った古い数え方です。私たちが 進法を「自然」だと感じるのは、慣れているからにすぎません。
豆知識
がまとめの単位としてよく使われたのは、約数が と多く、 等分・ 等分・ 等分・ 等分がどれもできるからです。 の約数は しかなく、 等分ができません。時間や角度が を単位にしているのも同じ理由で、こちらは古代バビロニアにさかのぼります(三角比と三角関数 第5章の小話でくわしく扱いました)。数を「分けやすいかどうか」で選ぶなら、 は必ずしも最良ではないのです。
から までの数を1つ思い浮かべてもらい、 枚のカードを順に見せて「この中にありますか」と聞くだけで、相手の考えた数をぴたりと当てる——そんな手品があります。使うのは次の 枚です。
答えのしくみは簡単で、「ある」と言われたカードのいちばん小さい数()を足すだけです。たとえばA・C・Dの 枚に「ある」と答えたなら、 が相手の数です。
種明かしは、もうお分かりでしょう。カードA には 進法で の位が の数、カードB には の位が の数……が集めてあります。相手は 回の「はい・いいえ」で、自分の考えた数の 進法表示を けたずつ教えてくれているのです。 進法の表し方がただ1通りしかないから、答えは必ず1つに決まります(実践問題 j17 は、これを までに広げたものです)。
「はい・いいえ」を 回聞けば 通りが区別できます。逆にいえば、 通りのものを言い当てるのに、質問は 回で足ります。情報の量を「 進法で何けた分か」で測るという考え方は、のちに情報理論として整理され、ビットという単位になりました。この手品は、その原理をそのまま遊びにしたものなのです。
豆知識
同じ原理で作られた有名なパズルに「ハノイの塔」があります。 本の柱と 枚の円盤を使い、 回に 枚ずつ動かして塔を移すもので、最小の手数は 回です(第1章の実践問題 j20 で出てきた数です)。何手目にどの円盤を動かすかは、手数を 進法で書いたときに「下から数えて最初に が現れる位」で決まることが知られています。
※ここは発展ページです。本文では、 進法の表し方を約束として受け入れ、変換のしかたを具体的な数で確かめました。ここでは「どんな数も 進法でただ1通りに表せる」ことをきちんと証明し、そのうえで、けた数・倍数の判定法・有限小数になる条件という3つの性質を導きます。最後に、各位の数字として を許すという変わった記数法を扱います。
このページでは、とくに断らないかぎり文字は整数を表します。第1章・第2章の厳密定義で導入した整除の記号 、素因数 の個数 、および第2章 定理1(除法の定理)を使います。
を 以上の整数とする。自然数 に対し、整数 と整数 が
を満たすとき、数字の並び を の 進法表示といい、 を の位の数字、 をけた数という。
を 以上の整数とする。どの自然数 に対しても、 の 進法表示がただ1つ存在する。
証明 (存在) 進法表示をもたない自然数があるとし、そのうち最小のものを とする。第2章 定理1 より
を満たす整数 , がただ1組ある。 である。
のときは で、 だから とすればよく、表示をもつ。これは の取り方に反する。
のときは、 より なので、 の最小性から は 進法表示 ()をもつ。すると
であり、最上位の数字 は でなく、どの数字も 以上 以下だから、これは の 進法表示である。やはり の取り方に反する。よって、表示をもたない自然数は存在しない。
(一意性) 進法表示を2通り以上もつ自然数があるとし、そのうち最小のものを とする。 を異なる2つの表示とする。このとき
だから、 は を で割った余りである。 も同じ理由で を で割った余りであり、第2章 定理1 の一意性から である。
そこで とおくと、 である。 なら となり( なら より )、2つの表示は の1けたで一致してしまい、異なるという仮定に反する。 のときは であり、 が2通りの表示をもつことになって、 の最小性に反する。
以上より、表示を2通りもつ自然数は存在しない。(証明終)
存在の証明は、本文 公式3 の「 で割り続けて余りを下から読む」手順そのものです。一意性の証明が使っているのは、除法の定理で余りがただ1つに決まるという1点だけで、ここが「最下位の数字は で割った余り」という事実の根拠になっています。
なお は として と書く約束にし、負の数は絶対値の表示に負号を付けて表します。
自然数 の 進法表示が けたであることと
が成り立つことは同値である。
証明 ( けたなら不等式), とする。下からの評価は である。上からの評価は、すべての が 以下であることから
である。ここで は、展開すると中間の項が打ち消し合うことから分かる。
(不等式ならば けた) のけた数を とすると、いま示したことから である。 なら となって矛盾し、 なら となって矛盾する。よって である。(証明終)
けた数が である自然数は 個あります。 進法の けたの数が 個であることの一般化です。
自然数 の 進法表示を とする。
(1) は の倍数である。したがって、 が の倍数であることと、各位の数字の和が の倍数であることは同値である。
(2) は の倍数である。したがって、 が の倍数であることと、下の位から交互に足し引きした値が の倍数であることは同値である。
証明 (1) 因数分解
より、 は の倍数である( のときは で、これも倍数である)。よって
は の倍数の和であり、 の倍数である(第1章 定理1(2))。したがって、 と の一方が の倍数なら、差をとって他方も の倍数である。
(2) は、 と の積に因数分解できる。この等式に , を代入すると
となり、 は の倍数である。あとは (1) と同様に
が の倍数であることから従う。(証明終)
とすると、(1) は「各位の数字の和が の倍数なら の倍数」(第1章 公式2)、(2) は「交互に足し引きした値が の倍数なら の倍数」(第1章 実践問題 j10)そのものです。第1章では , という関係から個別に示しましたが、記数法の側から見れば、どちらも底 の両どなりの数についての同じ1つの定理でした。
とすれば実践問題 j13 の の倍数の判定、 とすれば「 進法で下から交互に足し引きした値が の倍数なら の倍数」になります。 の倍数の判定は 進法では簡単な規則がありませんが、 進法では交互和で判定できるのです。
本文 公式4 のように、 進法でも小数が書けます。 以上 未満の数 が、ある に対して
と書けるとき、 は 進法で有限小数であるといいます。この右辺は ( は整数)の形に書けるので、有限小数とは「分母が の累乗である分数」にほかなりません。
を を満たす既約分数(, は互いに素な自然数)とする。 が 進法で有限小数になるための必要十分条件は、 のどの素因数も の素因数であることである。
証明 (必要性) と書けたとする。分母をはらうと で、 である。 と は互いに素なので、第1章 定理5(2) より である。 の素因数 をとると で、ユークリッドの補題(第1章 定理5(1))をくり返し使えば である。
(十分性) のどの素因数も の素因数であるとする。 の素因数を とし、 を のどれよりも大きい整数にとると、各 について
である( を使った)。 の素因数は だけなので、第1章 定理6 より である。 とおくと
であり、 より である。定理2 より は 進法で けた以内に表せるので、その数字を (上位を で埋める)とすれば、 は 進法で けたの有限小数である。(証明終)
のとき、 の素因数は と なので、「既約分数が有限小数になるのは分母が の形のときに限る」という、よく知られた事実になります。 が 進法では と終わらないのに、 進法では ときれいに終わるのは(実践問題 j14)、 が の素因数だからです。
逆に、 進法では有限小数の が、 進法では有限小数になりません。 の素因数 が の素因数でないからです。コンピュータが 進法で小数を扱うために、 を 回足しても にならない、という誤差が生じるのは、このためです。有限小数にならない場合に小数がどうなるか(循環すること)は、第6章で扱います。
最後に、各位の数字として 以上 以下という約束をはずしてみます。
どの整数 も、 である有限個の数字を用いて
の形にただ1通りに表せる(ただし のときはすべての を とし、それ以外は とする)。
証明 (存在) についての帰納法で示す。 は明らかである。 とし、 より小さい絶対値をもつすべての整数について成り立つとする。第2章 定理1 より ()と書ける。
いずれの場合も である。このとき である( より )。帰納法の仮定より は表示をもつので、その数字の右に を付け加えれば の表示が得られる。
(一意性) は から決まる。実際、 は の倍数なので、 を で割った余りが のとき、 はそれぞれ でなければならない( を で割った余りは とすべて異なるから)。よって が一致し、 も一致する。 なので、 についての帰納法により、残りの数字もすべて一致する。(証明終)
この表し方は平衡三進法と呼ばれます。応用として有名なのが分銅の問題です。 g, g, g, g の 個の分銅を、品物と反対側の皿だけでなく品物と同じ側の皿にも置いてよいことにすると、 g から g までのどの整数の重さも量れます。 が「反対側に置く」、 が「同じ側に置く」、 が「使わない」にあたり、 までのすべての整数が定理5 で表せるからです。ふつうの 進法の考え方( の 個で から まで)と比べると、「引く」ことを許すだけで、少ない分銅で広い範囲がまかなえるわけです。
こうして見ると、記数法の約束は「 個集まったら上の位へ」という1つに限りません。どんな数字の集まりを許しても、定理1 や定理5 のように「すべての数が、ただ1通りに表せる」ことさえ保証されれば、それは立派な記数法なのです。次の第5章では、この章で何度も出てきた「 で割った余り」を主役にすえて、整数を余りで分類する方法を学びます。
この章の学習が終わったら
学習完了テストを受ける