問1
放物線 と 軸、2直線 , で囲まれた部分の面積を求めなさい。
目次 / 微分積分 / 数学II
—— 曲線で囲まれた図形の広さを、定積分で測る ——
第8章の定積分は、原始関数の「差」として決まる1つの数でした。この章では、その数が**曲線の下の面積**と結びつくことを確かめ、放物線や3次関数のグラフで囲まれた図形の面積を求めます。x 軸より下にある部分の扱い、2つの曲線ではさまれた部分の「上 − 下」、計算を一瞬で終わらせる **6分の1公式**、接線と囲まれた部分の求め方を順に身につけます。数学IIの微分積分はこの章でひと区切りです。次の第10章からは数学IIIに進み、極限の考え方を広げます。
第8章の図 fig01 で、「 から までの定積分」を曲線の下の塗られた部分として描きました。ここで、そのつながりをきちんと確かめます。
でつねに とします。曲線 と 軸、直線 にはさまれた部分のうち、 から までの面積を とおきます。 を だけ増やすと、面積は幅 ・高さほぼ の細い帯の分だけ増えるので
とすると です。つまり は の原始関数の1つで、 なので となります(第8章 公式4と同じ形です)。 とおくと、次の公式が得られます。
でつねに のとき、曲線 と 軸、2直線 , で囲まれた部分の面積 は
山小屋の壁で、上の辺が曲線の屋根に沿っている場面を考えましょう。この壁に板を張るとき、細い縦板を1枚ずつ並べていけば、曲がった部分もきれいに覆えます。板1枚の面積は「高さ × 幅」で、高さは屋根の曲線の高さ です。縦板をどんどん細くして全部を足し合わせたものが、定積分です。
グラフが 軸より上にあれば、曲線と 軸の間の面積は、交点や指定された を端とする定積分そのものだということです。
放物線 と 軸で囲まれた部分の面積 を求めなさい。
【解答】
なので、放物線は , で 軸と交わり、 では 軸より上にあります(上に凸の放物線です)。
の区間では、定積分 は負の値になります。高さが負の細い長方形を足し合わせたことになるからです。面積は正の量なので、符号を反対にします。
でつねに のとき、曲線 と 軸、2直線 , で囲まれた部分の面積 は
地下にトンネルを掘る工事では、掘る場所の標高は海面より下、つまりマイナスで表されます。それでも、トラックで運び出す土の量をマイナスで数える人はいません。「どれだけ下にあるか」を正の量として数えます。 軸より下にある部分の面積も、定積分の値の符号をひっくり返して、正の量として数えます。
面積はいつも正なので、 軸より下の部分は定積分にマイナスをつけ、上下が入れかわるときは交点で区間を分けて足すということです。
曲線 と 軸、直線 で囲まれた2つの部分の面積の和 を求めなさい。
【解答】
なので、 では , では です。 とおくと
※ 区間を分けずに と計算すると、上の部分と下の部分が打ち消し合って になってしまいます。第8章 公式3の「奇数次の項は 」も同じしくみで、 でも、曲線 と 軸ではさまれた部分の面積は です。
で のとき、2つの曲線 , ではさまれた部分を考えます。縦に細く切ると、1本の帯の長さは「上の曲線の高さ − 下の曲線の高さ」です。
でつねに のとき、2曲線 , と2直線 , で囲まれた部分の面積 は
2人が階段に並んで立っているところを想像してください。兄が1段上に立っても、2人そろって2段上がっても、兄と妹の身長差は変わりません。帯の長さ「上 − 下」も同じで、2つの曲線がどれだけ高い所・低い所にあっても、差だけが問題になります。だから 軸の位置を気にせずに使えるのです。
2曲線ではさまれた部分の面積は、「上の式 − 下の式」を交点から交点まで定積分すればよく、 軸との位置関係は関係ないということです。
放物線 と直線 で囲まれた部分の面積 を求めなさい。
【解答】
交点の 座標は、 より で、, です。 では直線が上にあります( で比べると )。
※ どちらが上かは、区間の中の1点(計算しやすい など)で2つの式の値を比べれば確かめられます。
例題1・例題3のように、放物線と直線(または放物線どうし)で囲まれた部分では、「上 − 下」がいつも の2次式になり、交点の 座標 , で になります。そこで第8章 j17 で証明した式
が、そのまま使えます。
放物線と直線、または2つの放物線が、,()で交わるとき、それらで囲まれた部分の面積 は
ただし、 は「上の式 − 下の式」の の係数である。
電車の運賃は、乗った区間の長さで決まります。どの駅から乗ったかは関係なく、同じ距離なら同じ料金です。放物線と直線で囲まれた部分の面積も、交点の間の幅 と、放物線の開き具合 だけで決まります。放物線や直線がどこにあっても、この2つの数さえわかれば運賃表を見るように答えが出ます。
放物線と直線(放物線どうし)で囲まれた部分の面積は、「上 − 下」の の係数の絶対値と、交点の 座標の差だけで と決まるということです。
2つの放物線 , で囲まれた部分の面積 を求めなさい。
【解答】
交点の 座標は、 より ,つまり で、, です。 で比べると のほうが大きいので、 では が上にあります。
※ 例題1も なので 、例題3も なので と、一瞬で確かめられます。
放物線と、その接線で囲まれた部分を考えます。放物線 の における接線を引くと、第3章で見たように、「放物線 − 接線」は で重解をもち、 の形になります。このときは展開せずに、 のかたまりのまま積分すると楽です。
とくに
巻き尺で長さを測るとき、ゼロの目盛りを端に合わせれば、読んだ値がそのまま答えになります。 のかたまりで積分するのは、巻き尺のゼロを接点 に合わせることにあたります。 を代入すると になるので、下端の計算がまるごと消えます。
放物線と接線の差は の形になるので、展開せずに と積分し、接点で になることを使えばよいということです。
放物線 上の点 における接線を とする。放物線と 、 軸で囲まれた部分の面積 を求めなさい。
【解答】
より、接線の傾きは です。 の方程式は ,つまり です。
なので、放物線が接線より上にあり、囲まれた部分は の範囲です。
※ 展開して としても同じですが、かたまりのまま積分すると上端の で になり、計算が短くなります。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
放物線 と 軸、2直線 , で囲まれた部分の面積を求めなさい。
問2
放物線 と 軸で囲まれた部分の面積を求めなさい。
交点は 。
問3
放物線 と 軸で囲まれた部分の面積を求めなさい。
軸より下なので
問4
放物線 と直線 で囲まれた部分の面積を求めなさい。
交点は , で、直線が上。
問5
6分の1公式を用いて、放物線 と 軸で囲まれた部分の面積を求めなさい。
交点は ,, の係数の絶対値は 。
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
放物線 と 軸、2直線 , で囲まれた部分の面積を求めなさい。
なので、放物線はつねに 軸より上にあります。
問2 ★
放物線 と 軸で囲まれた部分の面積を求めなさい。
なので、 軸との交点は , で、その間では 軸より上にあります。
問3 ★
放物線 と 軸で囲まれた部分の面積を求めなさい。
なので、 では 軸より下にあります。符号を反対にして
(6分の1公式なら です。)
問4 ★
曲線 と 軸、2直線 , で囲まれた2つの部分の面積の和を求めなさい。
は で 以下、 で 以上です。 とおくと
問5 ★
放物線 と直線 で囲まれた部分の面積を求めなさい。
より交点は ,。 で比べると なので、直線が上にあります。
問6 ★
放物線 と直線 で囲まれた部分の面積を求めなさい。
より で、交点は ,。 で比べると直線が上です。
(6分の1公式なら です。)
問7 ★
2つの放物線 , で囲まれた部分の面積を求めなさい。
より で、交点は ,。 で比べると , なので、 が上です。
問8 ★
放物線 上の点 における接線と、この放物線、 軸で囲まれた部分の面積を求めなさい。
より接線の傾きは で、接線は ,つまり です。
なので放物線が上にあり、囲まれた部分は です。
問9 ★★
曲線 と 軸で囲まれた2つの部分の面積の和を求めなさい。
なので、 軸との交点は ,,。 では , では です(, で符号を確かめます)。
とおくと
(このグラフは点 について対称なので、2つの部分の面積は等しくなっています。第4章 小話3の点対称です。)
問10 ★★
放物線 と直線 で囲まれた部分の面積を求めなさい。
より , です。, とおくと、この間では直線が上で
6分の1公式より
(端に を代入する計算を避けられるのが、この公式の強みです。)
問11 ★★
曲線 と直線 で囲まれた2つの部分の面積の和を求めなさい。
より で、交点は ,,。 では , では なので、 では直線が上、 では曲線が上です。
2つのグラフはどちらも原点について対称なので、2つの部分の面積は等しく
( と区間を分けずに計算すると になってしまいます。)
問12 ★★
放物線 上の2点 , における接線をそれぞれ引く。この2本の接線と放物線で囲まれた部分の面積を求めなさい。
より、2本の接線は
2本の交点は より です。 では下の線が , では で
(接線どうしの交点の 座標 は、2つの接点の 座標 と のちょうど真ん中です。放物線ではいつもこうなります。)
問13 ★★
放物線 ()と 軸で囲まれた部分の面積が となるように、定数 の値を定めなさい。
なので、 軸との交点は ,()で、その間では 軸より下にあります。6分の1公式より面積は
より 。 は実数なので です。
問14 ★★
曲線 と 軸で囲まれた部分の面積を求めなさい。
では , では です。 を にしても式が変わらないので、グラフは 軸について対称で、 で 軸より下にあります。
右半分()の面積を2倍して
問15 ★★
曲線 上の点 における接線と、この曲線で囲まれた部分の面積を求めなさい。
より接線の傾きは で、接線は です。曲線との共有点は
より (接点)と 。 では なので曲線が上にあります。
(接点で重解になるので、 で2回割り切れることを使って因数分解します(第3章)。厳密定義ページの定理3の「12分の1公式」でも と確かめられます。)
問16 ★★
2つの放物線 , の両方に接する直線を求め、この直線と2つの放物線で囲まれた部分の面積を求めなさい。
直線 ,面積
の における接線は 。 の における接線は
2つが一致する条件は、傾きと切片が等しいことです。
1つめから 。2つめに代入して , で ,。よって共通接線は です。
2つの放物線の交点は より 。囲まれた部分は、 では と接線、 では と接線にはさまれています。
問17 ★★★
放物線 と直線 の交点を , とし、放物線上の点で接線が直線 に平行になる点を とする。放物線と直線 で囲まれた部分の面積を ,三角形 の面積を とするとき、 の値を求めなさい。
より , なので ,。6分の1公式より(例題3)
直線 の傾きは です。 より で、。
を通り 軸に平行な直線と の交点を とすると で、。三角形 を で2つに分けると、どちらも底辺 で、高さ(横方向の長さ)の和は と の 座標の差 です。
(第8章 小話1で紹介したアルキメデスの「放物線の弦で切った部分は三角形の 倍」を、定積分で確かめたことになります。)
問18 ★★★
点 を通り傾きが の直線と、放物線 で囲まれた部分の面積を とする。 の最小値と、そのときの の値を求めなさい。
のとき最小値
直線は 。放物線との交点の 座標は
の解です。判別式は なので、どんな でも異なる2点 で交わります(点 は放物線の内側にあるからです)。
解の公式より なので、6分の1公式から
が最小のとき も最小で、それは , のときです。
( のとき直線は で、確かに です。)
問19 ★★★
放物線 と 軸で囲まれた部分の面積を、原点を通る直線 が2等分するとき、定数 の値を求めなさい。
放物線と 軸で囲まれた部分は にあり、面積は 6分の1公式より です。
直線 と放物線の交点は、 より ,。直線がこの部分を2つに分けるには、もう1つの交点が にあることが必要なので です。このとき、直線と放物線で囲まれた部分の面積は
これが全体の半分 に等しいので
は と の間の数()なので、 を満たします。
問20 ★★★
曲線 と直線 で囲まれた2つの部分の面積の和を求めなさい。
では , と では です( 軸より下の部分を折り返したグラフ)。
共有点を求めます。 では より ,。 では より ( は範囲外)。 では曲線は ,直線は なので共有点はありません。
の部分は、曲線の式が変わる で分けます。
(上下が入れかわる点 と、曲線の式が変わる点 の両方で区間を分けるのがポイントです。)
17世紀のイタリアに、ガリレオの弟子のボナヴェントゥーラ・カヴァリエリという数学者がいました。1635年の著書で、彼は図形を「無数の平行な線の集まり」とみなす考え方を広めます。そこから導かれるのが、次のカヴァリエリの原理です。
2つの図形を、ある方向の平行な直線で切ったとき、切り口の長さがいつも等しければ、2つの図形の面積は等しい。
トランプの束を横から押して斜めにずらしても、カードの枚数と大きさが同じなら、束の体積は変わりません。本文の公式3「上 − 下」も同じ発想です。2つの曲線をそろって上下に動かしても、縦の切り口の長さは変わらないので、面積も変わりません。放物線と直線で囲まれた部分の面積が、交点の幅と の係数だけで決まる(6分の1公式)のも、この見方をすると納得しやすくなります。
豆知識
同じ考え方は、カヴァリエリより1000年以上前の中国にもありました。5〜6世紀の数学者祖暅(そこう)は、球の体積を求めるときに「高さごとの切り口の面積が等しければ、体積も等しい」という原理を使ったと伝えられており、中国ではこれを祖暅の原理と呼ぶことがあります。数学IIIの第15章では、この「切り口を積分する」考え方で立体の体積を求めます。
地図の上で、湖や森のような形の決まっていない場所の面積を知りたいとき、どうすればよいでしょうか。方眼紙を重ねてマス目を数える方法もありますが、もっとスマートな道具があります。プラニメーター(面積計)です。
プラニメーターは、腕の先についた針で図形のふちを一周なぞるだけで、面積が目盛りに表示される機械です。1854年にスイスのヤコブ・アムスラーが作った形のものが広く普及し、土木や建築の設計図、地図の面積を測るのに長く使われてきました。なぞっている間に小さな車輪が回り、その回転の量が面積になるしくみです。「周の情報だけで内側の面積がわかる」ことの裏には、大学で学ぶグリーンの定理という、積分の定理が隠れています。
豆知識
今では土地の面積も、境界の点の座標からコンピューターで計算するのがふつうです。頂点の座標 ,,… を順にたすきがけして足し引きする座標法(形から「靴ひもの公式」とも呼ばれます)を使います。不動産の登記で使う図面にも、この方法で計算した面積が載っています。
曲線 ()と 軸ではさまれた部分を考えます。右へ行くほど細くなりますが、どこまで行っても 軸にはくっつかず、図形は無限に続きます。この面積は無限大でしょうか。
数学IIIで学ぶ方法で、 から までの面積を計算すると になります。 を ,, と大きくすると ,, と に近づき、決して を超えません。無限に長い図形の面積が、ちょうど なのです。
ところが、少しだけ太い にすると、面積は を大きくするといくらでも大きくなってしまいます。細くなる速さのわずかな違いで、有限と無限が分かれます。こうした「無限に続く部分の面積」は、数学IIIで広義積分として扱います。
豆知識
17世紀のイタリアのトリチェリは、()を 軸のまわりに回してできるラッパのような立体の体積が、無限に長いのに有限()になることを示して人々を驚かせました。このラッパは表面積が無限大なので、「中を満たすペンキは有限なのに、表面を塗るには無限のペンキがいる」という逆説でも知られています。後に「ガブリエルのラッパ」と呼ばれるようになりました。
※ここは発展ページです。高校の範囲では、面積を公式1〜3の定積分で求められれば十分です。本文では「面積」をわかっているものとして使いましたが、曲線で囲まれた図形の面積とはそもそも何かを定め、定積分との関係、6分の1公式の仲間をまとめます。
関数 , が で連続で、つねに であるとする。平面の部分
を縦線図形という。その面積を
と定める。
長方形の面積「縦 × 横」は、図形の面積の出発点です。曲線で囲まれた図形は、内側に入る長方形の集まりと、外側から覆う長方形の集まりではさみます。長方形を細くしていったとき、内側の合計と外側の合計が同じ値に近づけば、その値を面積と呼ぶのが自然です。 が連続なら、この2つの合計はどちらも第8章 定義1のリーマン和の特別な場合( を各小区間で最小・最大になる点にとったもの)なので、同じ定積分に近づきます。定義1は、この結果を面積の定義として採用したものです。
が ()で連続で、つねに ならば
であり、等号が成り立つのは、区間全体で のときに限る。
証明 前半は第8章 定理1で とすればよい。
後半を示す。ある点 で であったとする。 は連続なので、 を含むある小区間 ()で となる(第1章の - 論法で とする)。区間の加法性と前半より
したがって、定積分が ならば、 となる点はない。(証明終)
定理1から、 なら も出ます( に定理1を使う)。定義1の面積が、図形が「つぶれていない」限りきちんと正になることも、定理1が保証しています。
が ()で連続ならば
が成り立つ。等号が成り立つのは、区間全体で であるか、区間全体で であるときに限る。
証明 を積分すると、定理1のあとの注意より
これが示すべき不等式である。
等号が成り立ち、 の場合を考える。このとき で、中身 は連続かつ 以上なので、定理1より区間全体で ,つまり である。 の場合も、 で同様にして を得る。逆に の符号が一定なら、等号は明らかに成り立つ。(証明終)
右辺 は、曲線と 軸ではさまれた部分の面積(公式2)です。例題2で なのに面積が だったのは、 が区間の途中で符号を変えるので、定理2の等号が成り立たなかったからです。
のとき
証明 と書きかえると
, はそれぞれ , の原始関数である(展開して微分すれば確かめられる)。よって
(証明終)
3次関数 ( の係数 )と、 で接して で交わる直線 があると、第3章の考え方から です。したがって、囲まれた部分の面積は となります。実践問題 j15 は ,, で です。
じつは、本文の公式4・公式5とこの定理3は、1つの式の仲間です。, を 以上の整数とすると
が成り立ちます(,)。 なら (6分の1公式)、, なら (公式5)、, なら (定理3)です。一般の場合の証明には数学IIIの部分積分(第14章)を使います。大学ではこの式をベータ関数という関数の特別な値として学びます。
この章の学習が終わったら
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