問1
不定積分 を求めなさい。
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( は積分定数)
目次 / 微分積分 / 数学II
—— 微分を逆にたどって、もとの関数を探す ——
第1章から第6章までは、関数を微分して「傾き」を調べてきました。この章からは向きを反対にして、「微分するとこの関数になる、もとの関数は何か」を考えます。これが積分の入り口となる不定積分です。原始関数と積分定数の意味、$x^n$ の不定積分の公式、展開してから積分する計算を身につけたあと、「ある点を通る」「極値がこの値」といった条件から、関数を1つに決める方法へ進みます。
これまでは、関数 を微分して導関数 を求めてきました。この章では逆に、微分すると になる関数を探します。たとえば ですから、「微分すると になる関数」の1つは です。
ところが、, のように、定数を足しても導関数は変わりません。定数の導関数は だからです。そこで、候補をまとめて ( は定数)と書き表します。
となる関数 を、 の原始関数という。 が の原始関数の1つのとき、原始関数全体を
と表し、これを の不定積分という。
動画の逆再生を思い浮かべてください。コップが床に落ちて割れる場面を巻き戻すと、破片が集まってコップに戻ります。微分が「関数から傾きの関数を作る」再生だとすると、積分は「傾きの関数からもとの関数に戻る」巻き戻しです。ただしこの巻き戻しには弱点があって、コップが最初に置いてあったテーブルの高さまでは映像から読みとれません。それが積分定数 の分だけ残るあいまいさです。
不定積分は「微分するとその関数になるもの」を探す計算で、定数だけは決まらないので を付けておくということです。
の原始関数を3つ挙げ、不定積分 を求めなさい。
【解答】
なので、 は の原始関数です。定数を足しても導関数は変わらないので、たとえば
はどれも の原始関数です。これらをまとめて
※ 原始関数は、ここに挙げた3つ以外にも無数にあります。どれを答えてもかまいません。
第2章で学んだ を逆向きに読むと、 の不定積分の公式が得られます。微分すると次数が1つ下がるので、積分では次数を1つ上げればよいはずです。
が 以上の整数のとき
服を着るときは靴下をはいてから靴をはき、脱ぐときは靴を脱いでから靴下を脱ぎます。逆の操作は、手順も逆の順番になります。微分は「指数を前に出してから、指数を1つ下げる」でした。積分はそれを逆にたどって、「指数を1つ上げてから、その新しい指数で割る」です。
の積分は、指数を1つ上げて にし、その指数 で割ればよいということです。
次の不定積分を求めなさい。
(1) (2)
【解答】
(1) 指数を1つ上げて にし、 で割ります。
(2) で、 と考えると
※ 答えを微分すると、(1) は ,(2) は となり、もとに戻ります。
第2章で、微分は「定数倍は外に出せる」「和・差は1つずつ微分してよい」ことを学びました。積分も微分の逆なので、同じ性質をもちます。
を でない定数とするとき
スーパーで「全品2割引」のセールをしているとき、レジの合計金額を2割引しても、1品ずつ2割引してから足しても、支払う額は同じです。積分も同じで、多項式全体をいっぺんに積分しなくても、1項ずつ積分して最後に足し合わせればかまいません。
多項式の積分は、展開してから項ごとに公式2を当てはめ、積分定数を最後に1つ付ければよいということです。
次の不定積分を求めなさい。
(1) (2)
【解答】
(1) 項ごとに積分します。
(2) まず展開します。 なので
※ 項ごとに ,, と積分定数が出ますが、定数の和はまた定数なので、まとめて と書きます。
不定積分には積分定数 が残るので、導関数 がわかっても、もとの関数 は1つに決まりません。グラフでいえば、 は を上下に平行移動した曲線の集まりで、どれも同じ での傾きが等しくなっています。
この中から1本を選ぶには、「 のときの値」を1つ教えてもらえば十分です。
と、ある1点での値 がわかっているとき
宝の地図に「井戸から東へ10歩、北へ5歩」と書いてあっても、井戸の場所がわからなければ宝は掘り当てられません。道順(導関数)だけでは足りず、出発点(1点での値)が1つわかって初めて、宝の位置が決まります。積分定数 は、この「井戸の場所」にあたります。
導関数を積分すると が残るので、1点での値を代入して を決めれば、関数がただ1つに決まるということです。
, を満たす関数 を求めなさい。
【解答】
より
※ 求めた を微分すると , を代入すると になり、2つの条件をどちらも満たしています。
「曲線 上の各点 における接線の傾きが である」という言い方は、第3章で学んだとおり と同じ意味です。さらに第4章の増減表と組み合わせると、「極大値が 」のような条件からも積分定数を決められます。
子どもの成長記録に「毎年の身長の伸び」だけが書いてあっても、何歳のときに何 cm だったかはわかりません。けれども「10歳のとき 140 cm」という記録が1つあれば、伸びを足したり引いたりして、どの年の身長も割り出せます。どの年の記録を手がかりにしてもよく、それが「いちばん背が伸びた年」の身長でもかまいません。極値の条件は、そうした特別な1年の記録にあたります。
「接線の傾き」は導関数のことなので積分でもとの関数に戻し、極値をとる での値を条件にして を決めればよいということです。
曲線 上の各点 における接線の傾きが で、 の極大値が である。 と、 の極小値を求めなさい。
【解答】
条件より なので
より、増減表は次のようになります。
| 極大 | 極小 |
で極大となるので、 です。よって
極小値は のときで
※ を決める前でも、増減表の形(どこで極大・極小になるか)は だけで決まります。 はグラフを上下に動かすだけだからです。
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
不定積分 を求めなさい。
( は積分定数)
問2
不定積分 を求めなさい。
問3
不定積分 を求めなさい。
展開して
問4
不定積分 を求めなさい。
( について積分)
問5
, を満たす関数 を求めなさい。
, より
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
不定積分 を求めなさい。
項ごとに公式2を使います。
(微分すると に戻ります。)
問2 ★
不定積分 を求めなさい。
問3 ★
不定積分 を求めなさい。
まず展開します。 なので
(積のまま「 の積分」と「 の積分」をかけるのは誤りです。積の積分は、積分の積にはなりません。)
問4 ★
不定積分 を求めなさい。
なので
問5 ★
不定積分 を求めなさい。
問6 ★
不定積分 を求めなさい。
なので について積分します。 より
問7 ★
, を満たす関数 を求めなさい。
で、これが なので 。
問8 ★
であるとき、関数 を求めなさい。
不定積分の定義から、右辺を微分すると になります。
(積分の逆は微分です。 は微分すると消えます。)
問9 ★★
不定積分 を求めなさい。
乗法公式 より です。
問10 ★★
不定積分 を求めなさい。
なので
( と書いても正解です。展開すると となり、上の答えとは定数 しか違わないので、どちらも原始関数全体を表しています。)
問11 ★★
を求めなさい。
公式3の差の性質から、1つの積分にまとめます。
(別々に積分しても、2つの積分定数の差はまた定数なので、 1つにまとまります。)
問12 ★★
曲線 は点 を通り、曲線上の各点 における接線の傾きは である。 を求めなさい。
接線の傾きが なので です。
点 を通るので ,。
問13 ★★
関数 は ( は定数),, を満たす。定数 の値と を求めなさい。
,
。次に より 。
(条件が2つあるので、未知の定数 と の2つが決まります。)
問14 ★★
関数 は , を満たす。 の極大値と極小値を求めなさい。
極大値 (),極小値 ()
より 。 なので
| 極大 | 極小 |
問15 ★★
関数 , は ,,, を満たす。 と を求めなさい。
,
2式を足すと ,引くと なので
それぞれ積分して
, より
(関数が2つあるので、積分定数も別々に , とおきます。)
問16 ★★
関数 は の原始関数で、 の極小値は である。 と、 の極大値を求めなさい。
,極大値 ()
なので
| 極大 | 極小 |
極小値は で、これが なので 。
極大値は ()。
問17 ★★★
多項式 が ( は積分定数), を満たすとき、 を求めなさい。
両辺を で微分します。左辺の微分は 、右辺の は展開すれば多項式なので、第2章の積の形の注意(展開してから微分)と同じく、 を項ごとに微分すると になります。
これが についての恒等式(すべての で成り立つ等式)なので、 です。
より
確かめ: を微分すると となり、条件を満たします。
( の微分: とすると で、微分すると です。)
問18 ★★★
3次関数 は で極大値 、 で極小値 をとる。 を求めなさい。
は2次式で、 なので、定数 を用いて
と書けます。これを積分して
2式を足して ,。引いて ,。
確認: で、 の前後で から , の前後で から に変わるので、 で極大、 で極小となり条件を満たします( であることが大切です)。
問19 ★★★
曲線 上の各点 における接線の傾きが ( は定数)である。この曲線が点 で直線 に接するとき、 の値と を求めなさい。
,
点 で直線 に接するので、第3章の「接する条件」から
より 。このとき
より 。
(点 が直線 上にあることも、 で確かめられます。)
問20 ★★★
関数 は を満たす。方程式 が異なる3つの実数解をもつような、 の値の範囲を求めなさい。
で、 です。 より
| 極大 | 極小 |
第6章 公式1より、異なる3つの実数解をもつ条件は「極大値 かつ 極小値 」なので
(積分定数 はグラフを上下に動かす量です。第6章の「直線 を動かす」代わりに、グラフのほうを動かして 軸と3回交わる範囲を探したことになります。)
第1章の小話で、積分記号 はライプニッツが考えたものだと紹介しました。では「積分(integral)」という名前のほうはどうでしょう。
ライプニッツ自身は、この計算を「和の計算(calculus summatorius)」と呼んでいました。 が「和(summa)」の頭文字 S を縦に伸ばした形なのも、そのためです。これに対して、スイスの数学者ヤコブ・ベルヌーイが1690年の論文で「integral」という言葉を使い、ライプニッツもやがてこちらを受け入れたと伝えられています(※だれが最初に使ったかについては、弟ヨハンだという説もあり、諸説あり)。ラテン語の integer は「欠けていない、まるごとの」という意味で、細かく分けたものを集めて「まるごと」に戻す、という感じが込められています。
豆知識
ヤコブと弟ヨハンはどちらも一流の数学者でしたが、たいへん仲が悪く、難問を出し合っては相手の解答のあらを公の場で指摘し合いました。ベルヌーイ家はその後も数学者・物理学者を何人も生み、流体の「ベルヌーイの定理」は、ヨハンの息子ダニエルの名前にちなむものです。
GPS の電波が届かないトンネルの中でも、カーナビの矢印が進み続けることがあります。スマートフォンや車には、どちら向きにどれだけ加速したかを測る加速度センサーが入っていて、その記録から位置を推定しているのです。
加速度は「速さの変化の割合」、速さは「位置の変化の割合」です。つまり、加速度を積分すると速さ、速さを積分すると位置がわかります(くわしくは数学IIIの第13章で学びます)。潜水艦や旅客機、ロケットにも、この方法で自分の位置を割り出す慣性航法装置が積まれています。
ここで効いてくるのが積分定数です。積分するたびに「最初の速さ」「最初の位置」という が必要で、しかもセンサーのわずかな誤差が、積分をくり返すうちにどんどんたまっていきます。これをドリフトと呼びます。そのため実際の装置では、GPS や地図の情報で、ときどき「今の位置はここ」と を決め直しています。例題4で1点の値から を決めたのと、同じ発想です。
この章で見たように、多項式なら積分はいつでも計算できます。数学IIIに進むと、 や (指数関数)など、さらにいろいろな関数を微分・積分します。そこで気づくのが、微分と積分の難しさの違いです。
式で書ける関数(多項式・分数・根号・三角関数・指数関数などを組み合わせたもの)は、微分するといつでも同じ仲間の式になります。ところが積分は違います。たとえば という関数は、原始関数そのものはちゃんと存在するのに、それをこうした仲間の式の組み合わせではどう工夫しても書き表せないことが、19世紀にリウヴィルという数学者によって示されました。
「微分は手順どおりに進めればできるが、積分は職人芸」と言われるのはそのためです。コンピュータの数式処理ソフトも、積分では「式では書けません」と答えることがあります。
豆知識
のグラフは、つりがねの形をしています。テストの点数や身長の分布でおなじみの正規分布の曲線です。その積分は式で書けないので、昔から数表(正規分布表)を作って値を調べてきました。統計の教科書の巻末にある数の表は、書けない積分を代わりに計算しておいたものなのです。
※ここは発展ページです。高校の範囲では、公式を使って不定積分を計算し、条件から を決められれば十分です。「原始関数は本当に の形のものしかないのか」「 の等号はどういう意味か」が気になる人のために、定義と定理を紹介します。
区間 で定義された関数 に対して、 のすべての で微分可能で
をみたす関数 を、 における の原始関数という。
本文では区間を意識しませんでしたが、多項式はすべての実数で微分できるので、 を実数全体と考えれば問題ありません。区間を明示するのは、次の定理1に「途切れていない範囲」が必要だからです。
, がともに区間 における の原始関数ならば、ある定数 があって、 のすべての で
が成り立つ。
証明 とおくと、 で である。 の1点 を固定し、 の任意の をとると、第4章の平均値の定理より
をみたす が と の間にある。 は区間なので も に属し、。よって となり、 とおけば である。(証明終)
この定理は、第2章の厳密定義で「この章の道具だけでは証明できない」と保留し、第4章で平均値の定理を使って回収した「 ならば定数」を、そのまま原始関数に当てはめたものです。第2章で見たとおり、定義域が途切れていると成り立ちません。 で 、 で となる関数は、どこでも導関数が なのに定数ではないので、「 の原始関数は定数だけ」とはいえなくなります。
区間 における の原始関数全体の集まりを の不定積分といい、 で表す。定理1より、原始関数の1つを とすると
であり、これを略して と書く。
つまり不定積分の等号は、「2つの関数の集まりが一致する」という意味の等号です。そのため、見た目の違う答えが両方とも正しい、ということが起こります。たとえば
は、どちらも正しい答えです。 なので、2つの右辺は定数 しか違わず、 を動かしてできる集まりとしては同じものだからです。
, が区間 で原始関数をもち、 が でない定数ならば
が、関数の集まりの等式として成り立つ。ここで、集まりの定数倍や和は、要素ごとに定数倍・和をとったものの集まりとする。
証明 , をそれぞれ , の原始関数とする。第2章 定理1(微分の線形性)より , である。
左の式の左辺は ,右辺は である。 なので、 がすべての実数を動くと もすべての実数を動き、2つの集まりは一致する。
右の式の左辺は ,右辺は で、 はすべての実数を動くから、やはり一致する。(証明終)
の条件がないとどうなるでしょう。 とすると、左辺は (すべての定数関数の集まり)ですが、右辺は で、定数関数 ただ1つです。集まりとして一致しないので、公式3でも「 は でない定数」としていたのです。
関数 が区間 で連続ならば、 における の原始関数が存在する。
多項式なら公式2と定理2で原始関数を実際に作れますが、一般の連続関数ではそうはいきません。小話3の のように、式で書けなくても原始関数は存在する、とこの定理は保証しています。証明には「面積」を使って原始関数を作る方法を用います。これが第8章で学ぶ微分積分学の基本定理です。
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