問1
関数 の導関数を求めなさい。
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(公式 で )
目次 / 微分積分 / 数学II
—— 微分係数を「関数」としてまとめ、公式ですばやく計算する ——
第1章では、微分係数 $f'(a)$ を1点ずつ定義から求めました。この章では、それを「どの $x$ でも使える式」=導関数としてまとめ、$x^n$ の公式と計算のきまりを使って、多項式の関数を手早く微分できるようにします。
第1章では、 の微分係数を , のように1点ずつ定義から求めました。けれども、 の値を変えるたびに同じ計算をくり返すのは手間です。そこで、 のかわりに文字 のまま計算してしまいましょう。そうして得られる「 を入れると、その点の微分係数が出てくる関数」が導関数です。
関数 の導関数 は
登山道に立っている「この先、勾配 」という看板を思い浮かべてください。1枚の看板が教えてくれるのは、その地点の坂の急さだけです。これが微分係数にあたります。一方、導関数は、登山道のすべての地点の勾配をまとめた一覧表のようなもの。行きたい地点( の値)を探せば、そこの坂の急さがすぐに読み取れます。
導関数とは、各点の微分係数(接線の傾き)を の式として1つにまとめた関数のことです。
次の関数の導関数を、定義に従って求めなさい。
【解答】
(1) なので
よって
(2) を使います。
よって
※ (1) の答えに を代入すると です。導関数を一度求めておけば、どの点の微分係数も代入するだけで求まります。
いくつかの関数を定義から微分した結果を並べてみます。
「肩の指数が前に降りてきて、指数が つ減る」という規則が見えてきます。この規則は ,,…でも成り立ちます。
を正の整数、 を定数とするとき
なぜ が前に出てくるのかは、図で見るとよくわかります。1辺 の正方形の面積は です。1辺を だけ伸ばすと、面積は細長い帯2本(それぞれ )と、角の小さな正方形()の分だけ増えます。
増えた面積を で割ると 。 を に近づければ、角の小さな正方形は消えて だけが残ります。「帯が2本あるから係数が 」というわけです。立方体(体積 )なら、膨らんだときに薄い板が3枚の面に付くので になります。
を微分すると、指数 が係数として前に出て、指数は つ減る()ということです。定数を微分すると になります。
次の関数を微分しなさい。
【解答】
(1) 公式2で とします。
(2) と見て とすると、( です)
(3) 定数なので
※ 例題1(2) で定義から 行かけて出した も、公式なら一瞬です。
のように、項がいくつも並んだ式を微分するときに使うきまりです。
を定数とするとき
2つの貯金箱 A,B があるとします。A は1日に 円ずつ、B は1日に 円ずつ増えていくなら、2つを合わせた金額は1日に 円ずつ増えます。「合計の増え方」は「それぞれの増え方の和」です。また、中身をすべて 倍の価値の外貨で数えれば、増え方も 倍になります。導関数(増え方の割合)にも、これと同じきまりが成り立ちます。
和や差の導関数はそれぞれの導関数の和や差、定数倍の導関数は導関数の定数倍になるので、多項式は項ごとに微分すればよいということです。
次の関数を微分しなさい。
【解答】
(1) 1項ずつ微分します。
(2) まず展開します。 なので
※ (2) を「」のように、かっこごとに微分して掛けるのは誤りです( となり、正しい答えと合いません)。積の形は必ず展開してから微分しましょう。
導関数が求まれば、微分係数は代入するだけで求まります。また、変数が 以外の文字でも、同じように微分できます。
で微分するときは、 以外の文字( や、 などの定数)は数と同じように扱います。
変数の名前は、いわば「呼び名」です。同じ人を本名で呼んでもあだ名で呼んでも、その人自身は変わりませんよね。時刻なら (time)、半径なら (radius)と、中身に合わせて呼び名を変えているだけで、微分の計算のしかたはまったく同じです。
微分係数は導関数に値を代入して求め、変数が 以外の文字でも同じ公式で微分できるということです。
(1) 関数 について、 と を求めなさい。
(2) ボールを真上に投げ上げたとき、 秒後の高さが (m)で表されるとします。 と を求めなさい。
【解答】
(1) なので
(2) について微分します。
は「 秒後の高さの瞬間の変化率」、つまり 秒後にボールが秒速 m で上がっていることを表します。第1章のスピードメーターと同じ考え方です。
導関数の式がわかっていれば、逆に「微分係数の条件」から元の関数を決めることもできます。
2次関数 が、,, をみたすように、定数 の値を定めなさい。
【解答】
です。条件を順に式にします。
3つめに を代入すると より 。
(検算:, で、,, となり、すべて成り立ちます。)
まずは公式をそのまま使う、ごく簡単な問題で確認しましょう。
問1
関数 の導関数を求めなさい。
(公式 で )
問2
関数 の導関数を求めなさい。
(定数の導関数は )
問3
関数 の導関数を求めなさい。
問4
関数 の導関数を求めなさい。
(1項ずつ微分)
問5
関数 について、 を求めなさい。
より
難易度マークは ★=基礎、★★=標準、★★★=入試レベルです。★から順に取り組みましょう。
問1 ★
関数 の導関数を、定義に従って求めなさい。
なので
問2 ★
関数 の導関数を、定義に従って求めなさい。
なので
よって
定数項の は で打ち消し合って消えます。これが「定数を微分すると 」の理由です。
問3 ★
関数 の導関数を求めなさい。
1項ずつ微分します。
問4 ★
関数 の導関数を求めなさい。
問5 ★
関数 の導関数を求めなさい。
まず展開します。 なので
問6 ★
関数 の導関数を求めなさい。
展開すると なので
問7 ★
関数 について、 と を求めなさい。
,
なので
は、 で接線が横に平らになっていることを表します。この「傾き の点」は、第4章で山や谷を見つける手がかりになります。
問8 ★
関数 の導関数を求めなさい。
係数の分数と、降りてくる指数が約分できます。
問9 ★★
関数 の導関数を、定義に従って求めなさい。
を使うと
問10 ★★
関数 の導関数を求めなさい。
()
展開すると なので
答えは のままでもかまいません。
問11 ★★
関数 の導関数を求めなさい。
展開すると
なので
問12 ★★
の関数 について、導関数 と を求めなさい。
,
について微分します。
が投げ上げたボールの高さ(m)なら、 秒後には秒速 m で上昇中、という意味になります。
問13 ★★
半径 の球の体積 を の関数と考えるとき、 の についての導関数を求めなさい。
は定数なので、数と同じように扱います。
これは半径 の球の表面積と同じ式です。理由は小話「円の面積を微分すると円周になる」で紹介しています。
問14 ★★
関数 について、 となる の値をすべて求めなさい。
なので
問15 ★★
関数 について、 となるように定数 の値を定めなさい。
なので 。これが に等しいので
問16 ★★
関数 について、 が から まで変わるときの平均変化率と、微分係数 が等しくなるような の値を、 の範囲で求めなさい。
平均変化率は
より なので、,。 より
( で、たしかに と の間にあります。)2点を結ぶ直線と平行な接線が、区間の途中のどこかで引ける——という関係を式で確かめる問題でした。
問17 ★★★
2次関数 が、,, をみたすように、定数 の値を定めなさい。
なので、導関数の条件から
2式を足すと より ,これを代入して 。さらに
(検算:, で、,,。)
問18 ★★★
関数 が、,, をみたすように、定数 の値を定めなさい。
なので
上の式から下の式を引くと より ,そして 。また 。
別解: は の係数が の2次式で、 で になるので 。係数を比べて , としても求まります。
問19 ★★★
2次関数 が、すべての について をみたし、さらに であるとき、 を求めなさい。
()とおくと です。左辺と右辺をそれぞれ展開します。
すべての で等しい(恒等式)ので、係数を比べて
より、定数項の式から ,。 の係数の式から ,。
(検算:, で一致します。)
問20 ★★★
関数 について、 を求めなさい。
分母が なら、微分係数 の定義式そのものです。そこで分母と分子に を掛けて形をそろえます。
のとき なので、右側の分数は に近づきます。 より なので
(確認:直接計算すると なので、 で割って となり一致します。)
半径 の円の面積は です。これを で微分してみると 。なんと円周の長さが出てきます。
偶然ではありません。半径をほんの少し だけ伸ばすと、円のまわりに細い輪がくっつきます。バウムクーヘンのいちばん外側の一層のようなものです。この輪の面積は「円周 幅」、つまり約 。増えた面積を幅 で割って を に近づければ、残るのは円周 というわけです。解説で見た「正方形に帯が2本くっつく」話と、まったく同じしくみですね。
豆知識
球でも同じことが起こります。体積 を で微分すると で、これは球の表面積です(実践問題 問13)。玉ねぎに薄皮を1枚かぶせると、増える体積は「表面積 皮の厚さ」になる、と考えると納得できます。
英語の calculus(微積分)、differential(微分)を「微分」「積分」と訳したのは、19世紀中国の数学者 李善蘭(り・ぜんらん)だといわれています。1859年、アメリカの教科書を中国語に訳した『代微積拾級』の中で使ったのが始まりで、この訳語が日本にも伝わって定着しました(※諸説あり)。「微分」は「細かく分ける」、「積分」は「分けたものを積み重ねる」。第1章で見た「区間を細かく刻む」考え方が、そのまま漢字2文字に込められています。
豆知識
この章で使った のプライム記号を広めたのは、18世紀の数学者 ラグランジュ です。第1章で紹介したライプニッツの に比べて書くのが速く、「 から作られた、 の仲間の関数」という感じが出るのが長所です。 のように点を増やしていく書き方も、彼の本から広まりました。
経済学の教科書を開くと、「限界費用」「限界効用」という言葉がよく出てきます。この「限界」は「もう限界だ」の意味ではなく、英語の marginal(ふち、ぎりぎりの)の訳です。
限界費用とは「あと1個よけいに作ると、費用がいくら増えるか」。たとえば、パン屋さんが1日に 個のパンを焼く費用を とすると、限界費用はほぼ にあたります。たくさん焼くほどオーブンの効率が上がって1個あたりのコストが下がるのか、それとも人手が足りなくなってかえって上がるのか——それを教えてくれるのが導関数です。企業が「あと何個作るのが得か」を考えるとき、その裏では微分が働いています。
※ここは発展ページです。高校の範囲では、公式を正しく使えれば十分です。「公式はなぜどんな でも成り立つの?」「和の微分が和になるのはなぜ?」が気になる人のために、きちんとした定義と証明を紹介します。
関数 が、区間 のすべての点 で微分可能であるとき、 は区間 で微分可能であるという。このとき、 の各点 にその点での微分係数を対応させる関数
を の導関数という。
微分係数 は「1つの数」、導関数 は「関数」です。定義の式は同じ形ですが、 を固定するか、 を動かすかという見方の違いがあります。なお、多項式の関数は実数全体で微分可能です。
, が微分可能で、 が定数のとき
証明 和について示す。 とおくと、
であるから、
のとき、右辺の2つの分数はそれぞれ , に近づく。第1章 定理1(和の極限は極限の和)より、左辺は に近づく。すなわち である。差・定数倍も、同じ第1章 定理1の差・定数倍の性質から同様に示せる。(証明終)
この定理は、微分という操作が「足し算と定数倍を崩さない」ことを言っています。大学ではこの性質を線形性と呼び、微分を「関数を関数に移す写像」として調べる出発点になります。
を正の整数とするとき、 である。
証明 二項定理より
であるから
右辺の第2項以降はすべて を因数にもつので、 のとき に近づく( のときは第2項以降がない)。よって
(証明終)
解説の図で「帯が 本」と数えたものが、二項定理の にあたります。 以上の項(角の小さな正方形など)は、 で割ってもまだ が残るので消えていく——これが公式の正体です。
注意:「導関数が なら定数関数」は、この章の道具だけでは証明できません。定数関数の導関数が であることは定義からすぐにわかります()。しかし逆向きの「区間のどこでも ならば は定数」は、直観的には当たり前に見えても、証明には平均値の定理(数学IIIで学ぶ)が必要です。区間が途切れていると成り立たない例もあり、たとえば で , で とした関数は、定義されているどの点でも ですが、定数ではありません。
この章の学習が終わったら
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